モンスターハンター 焔の心   作:たつえもん

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第33話:洞窟の真っ白妖怪

 寒冷群島に到着した一行は、支給品ボックスの中の応急薬や携帯食料をきっちり4等分し、向かう途中のポポ車の中でクロームの話した内容を再び確認する。

 

 フルフルは普段は動きが遅いが、怒り状態になると機敏に動くようになる。電気系の攻撃を得意とし、地を這うように発射される電撃ブレスを受けると麻痺状態になり、全身から放つ放電や弓なりに吐き出される雷球を受けると気絶しやすくなってしまう。また、噛みつき攻撃の際は特殊な骨格構造と全身の柔らかい皮膚により、首を伸ばすことができる…………

 

 

「まだ話したいことはあるが、肝心のフルフルの狩猟が遅れては元も子もない。行くぞ」

 最低限気を付けるべき要点を話したところで、一行はクロームが先導する形で拠点を出た。

 

 今回の装備は、ハルトがハンターシリーズにイーズルシックル、アリスはクルルシリーズとボーンホルン、そしてユーリがフロギィシリーズとクロスブリッツといういつもの装備。

 クロームの装備は全体的に丸みを帯びた土のような薄茶色の鎧の中にオレンジ色の尖った部分が目立つ防具に、各所に羽飾りのような装飾のある折り畳まれた機械仕掛けの武器を背負い、右手にはハルトのものよりもはるかに大型の盾を持っていた。

 防具は泥魚竜ジュラトドスの素材で作られたジュラSシリーズ、武器は蛮顎竜の異名で知られるアンジャナフの素材を使用したフラムエルハスタというガンランスだ。

 いずれも、今のハルト達には到底勝てるモンスターではない。改めて、三人はクロームが実力者であることを実感した。

 

 

 フルフルは洞窟の中で暮らす習性があるというクロームの情報に基づき、四人はまず拠点からすぐ近くのエリア2に向かう。

 しかし、エリア2の洞窟を壁や天井まで見渡すも、そこにはブナハブラが数匹飛んでいる程度で、肝心のフルフルの姿は見えなかった。当のクロームは特に気にする様子もなく、無言のままエリア2を出て次の場所へ向かう。

 しかし、先日クロームが初めてギルドを訪れた時から思っていたが、どうにも彼は無口で行動に一切の無駄がなく、機械的というか、人間らしさを感じさせにくい立ち回りを見せていた。一度もハルト達の前でヘルムを脱いだ素顔を見せていないこともあり、少し不気味さを醸し出している。

 

 そして四人は今、エリア10の前に来ている。寒冷群島の最奥に位置する大きな洞窟であり、クロームが言うには最もフルフルが姿を現しやすいらしい。

 エリア内に足を踏み入れると、陽が差して来ないからか一段と冷えた空気が全身を包む。しかし、中の広い空洞に進んでも肝心のフルフルはいない。エリアを移ろうかと思ったところで、突然クロームが声を荒らげる。

「真っ直ぐ走れ!」

 彼が大声を出すのは初めてであり、三人とも咄嗟に言われた通り正面に走り出す。刹那、背後に風圧を感じて振り返ると、

 

「ヒッ………………!」

 アリスは小さく悲鳴を上げ、固まってしまう。その表情は、まるでこの世のものではない何かを見るような目をしていた。

 全身は真っ白な皮膚で覆われ、ところどころに血管が浮かび、飛竜種らしく前脚は翼になっているが、折り畳まれた飛膜は皮に隠れて見えない。そして何より、顔には目も鼻もなく、赤い口からは無数に並んだ尖った歯が見えており、まさしく「怪物(モンスター)」と呼んで遜色のない見た目だった。これこそが、今回の標的(ターゲット)である奇怪竜フルフルである。

 

 そのフルフルは、フンフンと鼻(と思われる部分)を動かしながら周囲を探っている。洞窟の中で暮らすうちに、目は退化し、代わりに嗅覚や熱感知能力が発達したのだという。ハルト達は下手に手を出すようなことはせず、様子を伺っていた。

 そのうちフルフルは外敵の存在に気付いたのか、一行に顔を向け、

 

 

 

「ボォォアァァァァァァァァァァァァァァーッッッ!!!」

 

 

「ッ!?」

 首を持ち上げ、悲鳴に近い大音量の叫び声を上げる。過去に戦ったボルボロスやアケノシルムのものとは比較にならない程、精神に直接恐怖を訴えかけるような咆哮。それが洞窟の中で反響し、何重にもなって全方位から襲いかかり、四人はたまらず両耳を押さえて立ちすくんでしまう。

 そして咆哮が鳴り止むと、クロームは自身と同じく前線を勤めるハルトに短く「行くぞ」と声を掛け、二人同時に突撃するのだった。

 

 

次回へ続く




 皆様、本ッッッ当にお久しぶりです。作者でございます。


 前話から2ヶ月近く経過し、既に2022年になりました。明けましておめでとうございます(遅い)。
 というのも、私の職場では年末年始にかけて忙しくなる傾向にあり、加えて私の個人的な話なのですが、たつえもんは冬が本当に苦手で、世界で2番目に嫌いなものが「寒さ」だったりします(一番嫌いなものは「注射」。痛いとかではなく、針を体に刺すという感覚がイヤなのです)。

 気がつけばサンブレイクの実装もあと半年くらいにまで迫っていますし、早いところこっちのストーリーも進めないといけませんね。今年はもっと更新頻度を早めていきたいと思っております(もう何回目だろうコレ書くの)。

 では、今回はこの辺で失礼します。
 最後まで読んでくださってありがとうございます!
 また次回お会いしましょう。

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