モンスターハンター 焔の心   作:たつえもん

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第34話:怪奇 電撃竜

 いち早くフルフルに肉薄したハルトは、右脚目掛けて握り締めたイーズルシックルを振るう。しかし、その表皮の不思議な感触で刃が受け流され、大したダメージにはなっていないようだった。

 その一方で、クロームのガンランスは火属性を伴った突きで確実にダメージを与えていく。ユーリも遠距離からボウガンで援護を行い、アリスも先程の咆哮で我に返ったのか狩猟笛を担いで接近する。

 

 奇怪竜も攻撃を受けっぱなしではなく、地面に前脚を付けると激しく放電し、周りに青白い電気が迸る。幸い、事前にクロームから予備動作を聞いていたおかげで素早く距離を取っており、全員電撃を受けずにすんだ。

 放電が止んだタイミングを見計らい、再びハルトは斬り掛かる。尻尾目掛けて剣を振り下ろすが、そこは脚とは違い石のように固く、ガッという音と共に刃が弾かれてしまう。

「ってぇ、尻尾は固いな………こんな見た目のくせに」

 姿勢を崩したハルトに、回転攻撃で振るわれたフルフルの尻尾が襲いかかる。動作は遅いが、先程実証した固さに加え、長さがもたらす遠心力で相当な威力になっており、ハルトは簡単に吹き飛ばされてしまった。

「ハルト様っ!」

 いつもと同様にフルフルの頭部を狙っていたアリスは、尻尾攻撃を受けたハルトを見てボーンホルンを振るい、演奏を行うもののボーンホルンの旋律には回復効果はなく、攻撃力と防御力を上げるだけに終わる。マギアチャームなら体力を微量に回復できるのだが、氷属性の攻撃はフルフルには効果が薄いため今回は装備しなかったのだ。

 ハルトは吹き飛びながらも翔蟲を出し、空中で受け身を取り着地する。そして改めて奇怪竜の方を見ると、口元が帯電しているのが見えた。

「アリス、電撃ブレスが来るぞ!」

「はいっ!」

 クロームとユーリはフルフルの両脇にいたので、正面のアリスを狙ったのだろうと判断して合図を送り、彼女もそれに応じてフルフルから距離をとりつつ斜め前に移動する。

「ブォォッ!」

 その直後、おおかたの予想通りフルフルは電撃ブレスを放つ。しかし、ブレスは三方向に分かれながら直進していく。アリスは正面にだけ発せられるものとばかり思い込んでいた為、電撃をもろに喰らってしまった。アリスの全身に電気が走り、身体を小さく痙攣させその場にぱたっと倒れてしまった。

「あ…………う……」

「アリスっ!」

 アリスは追撃を避けるべく距離を取ろうとするが、電撃を浴びた影響で身体が麻痺してしまい、指一本すら動かせずにいる。ハルトは動けないアリスの前に立ち塞がり、武器を構えてキッとフルフルを睨む。だが目のないフルフルには無意味であり、奇怪竜は痺れさせた獲物にとどめを刺すべくゆっくり歩み寄る。

 やがてフルフルが二人のもとに到着すると、奇怪竜は口を開けて噛み付こうとする。ハルトが覚悟を決めた時、

 

発射(ファイア)ッ!」

 

 

ズドゴァァア…………ッ!!

 

 

「ブゴォォォッ!?」

 

 突如、掛け声と共に凄まじい爆発音が鳴り響き、横から強い力を受けたフルフルの巨体が揺らぐ。声のした方を見ると、クロームがフラムエルハスタを構えており、その砲身は白い煙をもうもうと上げていた。

 これこそがガンランスの切り札、竜撃砲である。その凄まじい見た目に違わず、ハンターの攻撃手段の中でも指折りの破壊力を持つが、発射の瞬間は無防備になる上、一度使うとガンランスがオーバーヒートしてしまい、再使用するには放熱のために時間が必要なため連発はできない。

「あれが本物の竜撃砲かいな、聞いた話通りごっつい威力やなあ」

「フルフルは普段は動きが遅い。放電にさえ気を付ければ、当てるのはそう難しくない」

 

 竜撃砲の直撃を喰らったフルフルは、堪らずその場から逃げ出し、洞窟の奥、天井の抜けた部分から飛び立っていった。フルフルは普段は洞窟内で過ごすが、外で活動ができない訳ではない。既にアリスは麻痺から立ち直っていたが、まだ身体が上手く動かないのかハルトに肩を借りながらクロームとユーリの元に歩いて来た。

「すみません、私のせいで貴重な竜撃砲を使わせることになってしまって」

「いや、どのみち竜撃砲は二回くらいは使うつもりだった。それに、フルフルのブレスは三方向に枝分かれすると言っていなかった俺の責任でもある。悪かった」

 素直に謝罪の言葉を口にし、すっと頭を下げるクロームに、三人はどうにも違和感を覚えた。

「いや、もう今ので俺達は全員覚えたんで。アリスにも大事はないみたいですし、次から気を付けましょ」

「…………そうだな、フルフルは恐らくエリア10に向かった。見失う前に追いつくぞ」

 ハルトの言葉で気持ちを切り替えたのか、クロームはエリア12の出口を指し、武器を納めて歩き始め、三人もそれに続いて出口を目指した。

 

 

 洞窟を出てエリア10に着くと、丁度フルフルが降り立つ直前だった。飛竜種は本来、翼で空を飛びエリアの境目に関わらず移動を行うが、フルフルは飛ぶのがあまり得意でないのか、陸上モンスターと同じく隣りあったエリアにだけ移動するようだ。

 フルフルも近付いてくるハンター達に気付いたらしく、太く強靭な後脚で飛びかかり、四人との距離を一気に縮める。幸い、誰も奇怪竜の下敷きにはならなかったものの、その巨体と普段の緩慢な動きに見合わぬ瞬発力に、クロームを除く三人は舌を巻いていた。

 着地のタイミングに合わせて、クロームはガンランスに備わっていた火器を用いて砲撃を行う。一度距離を取ったハルトとアリスは再び接近し、ハルトは脚、アリスは頭をそれぞれ狙い、ユーリはLv2通常弾の速射で遠距離から胴体を狙撃する。フルフルは反撃とばかりに体当たりを繰り出し、それを喰らったクロームは尻餅を突いてしまうが、大したダメージではなかったようで攻撃をすぐに再開した。

 そしてハルトが旋刈りを叩き込むと同時に、フルフルは一度動きを止めた。もしやと思い奇怪竜の顔を見ると、口元から電気が零れており、それが怒りによるものだとすぐに理解する。

 そして、フルフルは再び首をもたげて咆哮を放つ。ユーリを除く剣士三人は至近距離から受けてしまい、耳を押さえて立ちすくんでしまう。やがて咆哮がやみ、目の前に意識を戻すと白く長いものが横薙ぎに迫って来ており、ハルトは咄嗟に腹這いの姿勢になる。その直後、頭のすぐ上をフルフルの尻尾が通り過ぎ、彼の背中に嫌な汗が滲む。

 今までの鈍い動きに目が慣れていたせいか、怒ったフルフルの動きは非常に速く感じられた。アリスもフルフルの動きに戸惑っているのか、繰り返される尻尾攻撃をギリギリで躱す。

「まさか、ここまで速く感じるなんて…………今まで通りの感覚で戦うのはやめた方がよさそうですね」

 フルフルは再び電撃ブレスを繰り出すが、今度は枝分かれする弾道をしっかり見て全員避ける。続けざまにフルフルはその場に前脚を付け、放電を行うが、これも距離があった為誰も喰らわずにすんだ。そして、放電が終わる隙を見てハルトは剣を抜き突撃する。

「グォォッ!」

バリリリッ!

 

 

「な……………!」

 ハルトは、雪の上を転がりながら直前のフルフルの行動に驚いていた。フルフルは放電が終わり後脚で立った後、再び四つん這いになって再び少量の放電をしたのだ。そしてそれは「電気」とは思えない程の質量を持っており、電撃を受けたハルトは簡単に吹き飛んでしまう。

「アイツ、あんなことできるんか!」

「ああ、だから放電の時は攻撃が完全に終わるまで近付くなと言った」

 ハルトはどうにか起き上がり、応急薬を飲み干す。だが、全身には先程受けた電気が残っており、このまま攻撃を受ければ簡単に気絶、フルフルの追い討ちを喰らうことになるだろう。

 そうならないために、ハルトはポーチの中のウチケシの実を探りながら、どんな攻撃が来ても回避しやすいようにフルフルの斜め前で様子を見る。そしてフルフルが噛みつきの予備動作に入った時、ハルトはウチケシの実を取り出す。だが、

 

 

ズルルルルッ!!

 

 

「ぐぁぁっ!?」

「ヒャアァァァァァ!?」

 

 目の前の怪奇現象ともいえる光景に、アリスは悲鳴を上げながらボーンホルンを落としてしまう。なぜなら、フルフルの首が伸びたのだ。正確には、体の中に仕舞っていた部分が出てきたようなものだろうが、それでも全身と同じくらいまで伸びた首は、初めて戦うハンターの肝を冷やすのには十分であり、ハルトは不意を突かれまたも吹き飛ぶ。

 そして、倒れ込んだままハルトは動かない。恐らく、放電攻撃を受けた影響もあり気絶したのだろう。それを見て、アリスは先程自分がされたように、今度はハルトをかばうように狩猟笛を構えて立ち塞がる。だが、手足は震えており、顔には目に見えて恐怖が浮かんでいる。

 そんなアリスの様子を意に介さず、フルフルは二人のもとに迫るのだった。

 

 

次回へ続く




 どうも皆様、作者です。

 今回は、本作ではかなり長くなってしまいました。ですが、理由が二つあります(どちらも私情が絡んでしまっていますが)。
 まず、自分が投稿した話を読んでいて「内容が濃くないなあ」と思ったんですね。かといって、長くすれば濃い内容になるとも言えないんですが、たまにはちょっと長めの回もいいんじゃないでしょうか。最初は次のエリアに向かう場面で終わる予定でした。
 そして、最近当サイトでめっっっっっちゃ面白い作品を見つけて、毎日読んでるうちに、自分の中での書きたい欲が増幅してったんですよね(その作品も1話あたり10000字を超えるのが普通だったりします)。
 そんなわけで、今回は3500字を超えることになっちゃいました。「長すぎて疲れる」みたいに思ったら、遠慮なく感想に書いてください。どんなお声も真摯に受け止めるつもりです。
 ということで、今回はこの辺で失礼します。
 最後まで読んでくださってありがとうございます!また次回お会いしましょう。
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