モンスターハンター 焔の心   作:たつえもん

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第37話:カムラ防衛戦線

 ハルトや里長の力強い言葉に奮起した里の民は、各々が準備をを済ませた後対百竜夜行の最前線へと向かう。その中には、本来ハンターではない団子屋のヨモギやオトモ仲介担当のイオリ、受付嬢姉妹のヒノエ、ミノトの姿もあった。

 

 

 

 そうして辿り着いた翡葉(ひよう)の砦の入口には、石材と木材で造られたかなり広い部屋が設けられ、普段ハンターが向かう狩場の拠点のように仮眠用のベッドも設置され、事前にギルドに申請を済ませていた為アイテムボックスには応急薬や携帯食料などの支給品も入っていた。

 ハルト達のチームにエリザベスが加わった四人のハンターは、支給品を均等に分けると、石造りの通路を通って砦の中へ入っていく。

 

 そこには、巨大なドーム状の空間があり、至る所に配置されたやや高い段や床の数箇所には何かの設備を取り付けると思われる四角い板が張られていた。大部屋の一角には大きな(かまど)があり、設備の動力炉を担っている。

 四人はウツシから砦の設備について説明を受けると、それぞれの役割を分担する。

「まず、バリスタと大砲の操作は基本的にユーリに任せようかと思う。普段からボウガンを扱っているユーリなら、バリスタでの狙撃も可能だと思うんだが………ユーリは問題ないか?」

「ああ、任されたで。チームのガンナー担当の意地を見せたるわ」

 事実、先程の設備の動作について説明をされた際に、最も早くバリスタや大砲の扱い方を覚えたのはユーリだった。砦のバリスタは回転式の台に巨大なクロスボウを取り付けたような形をしており、日頃のクエストでライトボウガンを使っているユーリにとっては感覚を掴みやすかったのだろう。

「俺とアリスは、ユーリのサポート的に防衛設備を使いながら交代で動力炉を見ていよう。エリザベスは陽動を頼む、出来るだけモンスターを関門に近付けないようにしてくれ。もし余裕があればエリザベスもバリスタや大砲を使ってくれ」

「はい、頑張ります」

 ユーリとアリスがハルトの言葉に賛同する中、エリザベスはどこか興味深そうな笑みを浮かべていた。

「うん?エリザベス、何か不満だったか?」

「いいえ、ただハルトちゃんがリーダーらしくしてるのって初めて見たから」

「ん………ボルボロスの時は、エリザベスがメインだったからな。偉そうだったかな?」

「まさか。これが日頃からチームの皆をまとめてる普段のハルトちゃんなんだなって。アリスちゃんが貴方を慕ってたのも納得できるわ」

「ああ、ホンマにハルトはんは、どこに見せても恥ずかしゅうないウチの自慢のリーダーやで」

「そ、そうですよ。ハルト様はとっても頼りになりますし、それに……………」

「それに、何かしら?」

 エリザベスは言葉を止めたアリスに視線を向け、ハルトとユーリも首を傾げる。アリスは三人の注目を一斉に浴びて緊張しているのか、顔をほんのり赤く染める。

「え…………えっとですね、ハルト様は」

「皆、モンスターが来たぞーっ!持ち場に付けっ!!」

 それを遮るように、見張り番の声が響く。ハルト達の足元に小さな地響きが伝わり、それが砦に接近するモンスターによるものであるのは明白だった。

「全く、タイミングが良いんだか悪いんだか分からへんな」

「すみませんハルト様、お話の続きはまた後で」

「いや、この後のことは考えなくていい。砦を守る。今はそれだけ頭に入れときゃいいさ」

「…………はい、絶対に守りましょう。この砦を、里を」

 

 そして全員がバリスタや大砲を始めとする設備のもとに着くと、モンスターの足音が近付いてくる。いよいよ、百竜夜行との戦いが始まるのだ。エリザベスは丸太の柵を睨み、ユーリはバリスタの照準器を覗き、アリスは目を閉じ合掌して祈り、ハルトは深く息を吐くと静かに呟く。

 

 

 

 

 

「気炎、万丈」

 

 

 

 まず柵を超えてやって来たのはアオアシラとオサイズチ。姿を現したモンスター達に、バリスタと大砲の弾が次々と襲いかかる。

 いずれもハンターの武器に比べてかなりの威力だが、それでもモンスター達は足を止めない。アオアシラは自身に弾を当て続けるバリスタを煩わしく思ったのか、里の民の一人が操るバリスタに向けて突進する。

 

 

「ガルルルッ!?」

 

 しかし突如として、青熊獣の足元で爆発が起こる。ハルト達ハンターはよく知っている、ユーリがいつの間にか仕掛けておいた起爆竜弾だ。アオアシラは一瞬怯んで動きを止め、その隙にバリスタの射撃を大量に浴び、堪らずアオアシラは退却する。

 さらに、エリザベスが鎌鼬竜の気を引いてアオアシラの近くに誘導してくれたお陰で、アオアシラに向けて放たれたバリスタの狙撃の巻き添えをオサイズチにも喰らわせた。そこへ大砲の弾を喰らうと、オサイズチは逃げて行った。

 

 しかし息付く暇も無く次軍がやって来る。次に砦に侵入して来たのはアケノシルムと二体のクルルヤックだった。

 アケノシルムは空を飛びながら、バリスタや村民を狙って火炎液を吐きつけて来る。一発の損害は大して大きくはないが、砲台に燃え移った火がバリスタにダメージを加える。

「バリスタのダメージが大きくなって来たら一度バリスタを下げろ、完全に壊されなきゃすぐ修復できる!」

 そのハルトの言葉に従い、アケノシルムの火に加えてクルルヤックの攻撃を受けていたバリスタの一基が収納され、次のバリスタが現れ一人の乗り手が搭乗し、攻撃を再開した。

 

 

 

ドズゥゥウ………ンッ!!

 

 

 すると、突如として柵の方から重いものが落下する音が鳴り響く。そちらを見ると、ヨツミワドウが砦に入って来ていた。

「そんな、まだアケノシルム達の対処が終わってないのに………!」

 嘆きの言葉も虚しく、ヨツミワドウは防壁に向けて一直線に侵攻する。どうやら、モンスターによってバリスタ等の設備を集中的に狙うものや、反対に砦だけを攻撃するものがいるらしい。

「アカン、このままじゃ里が…………」

 

 

 

「お前ら、止まらんかあぃぃぃいッッ!!!!」

 

 

ギィンンッッッ!!!

 

「ガァァゥ!?」

 

 突然、勇ましい怒鳴り声と共に甲高い音が響き、モンスターは怯んで動きを止める。その隙を突いてバリスタや大砲の弾が降り注ぎ、アケノシルムとクルルヤックの一体を撃退する。

 

「ふう、思ったより大きな音が鳴るのね。ちょっと驚かせちゃったかしら」

 と言い、エリザベスはバリスタから降りる。先程の音の正体は、エリザベスが使った後退弾である。音爆弾のように、着弾するとモンスターを音で威嚇し一時的に動きを止めることができるのだ。

 しかし、最も近くでそれを聞いたユーリをはじめとしたほぼ全員はこう思っていた。

 

 

「(さっきのアンタの男らしい叫び声の方が驚きだよ…………)」

 

 

 しかし、全員すぐに気持ちを切り替え、目の前のモンスターに集中する。まだ、百竜夜行は始まったばかりなのだから。

 

 

次回へ続く




 皆さん、こんにちは。作者のたつえもんです。


 まずは、この「モンスターハンター 焔の心」が、連載開始から一年を突破しました!
 いや~、早い!そして遅い!もう一年も経ってるのにまだ物語の半分も到達してないんだから!百竜夜行はとにかく多くのモンスターが登場する上、通常のクエストと違ってバリスタ等のギミックの扱いをメインに書かないといけないので時間がかかってしまいました。一ヶ月も待たせてしまい申し訳ないです。


 さて、活動報告でも通知しましたが、私たつえもんはTwitterのアカウントを開設しました。基本的には当サイトやライブドアブログの更新報告がメインになると思います。(リンクは活動報告から)

 では、今回はこの辺で失礼します。
 最後まで読んでくださってありがとうございます!
 また次回お会いしましょう。

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