「そうですか……では、我々からハンターズギルドにオサイズチの出現報告をしておきますね」
「あぁ、頼んだ。もう何日かすれば、正式に依頼として公開されるかもな」
カムラの里に帰るやいなや、ハルトはすぐに鎌鼬竜が大社跡に現れたことをミノトに伝える。
「ともかく、しばらく大社跡には行けないでゲコね。オサイズチの狩猟クエストが出るまでは里の中で過ごすゲコ」
「あぁ……それはいいんだけど」
そこまで言うと、ハルトは茶屋の座席のとある一角をちらりと見る。
そこでは、一緒に戻って来たアリスがカムラの住民(半分以上が男)に質問攻めに遭っていた。
出身はどこか、年齢はいくつか、いつ頃ハンターになったのか、何故カムラに来たのか、恋人はいるか、等々次から次へと質問を投げ掛けるものだから、アリスはあちらこちらを見ながら戸惑っていた。
そんな様子を見かねたハルトは、
「お前ら、いい加減にしとけよ。アリスが困ってるの、見て分からないのか?」
彼にしては珍しく怒気を込めた口調でそう言うと、群がっていた衆は静まりかえる。
それを見ていたヒノエとミノトは軽く微笑み、ゴコクは黙って頷いていた。そしてフゲンは肩を組んで来て満面の笑みで、
「カッハッハッ、ハルトらしいのう!
こやつの言う通りじゃ。お主ら、この辺りで女のハンターが珍しいからと言ってそう追い詰めるでない」
フゲンの忠告を聞いた里の民は、各々顔を見合わせ自重する。
「アリスと言ったな。質問全部に答える必要はないから、答えられるものから答えてやれ。
ウチの民達がすまないことをしたな」
フゲンが里の衆の代わりに謝罪すると、アリスは立ち上がり自己紹介を始める。
「はい、では………
アリス・フューリと申します。年齢ですが、今16歳で……」
「まぁ、ハルトの一つ下じゃないかい!仲良くなれそうだねぇ」
「おばさん、別に俺そういうつもりじゃ……」
「そ、それで、一ヶ月前にハンターになったばかりで」
「一ヶ月!?それもハルトと一緒ときた。ハルトよ、やるじゃねぇか!こんなべっぴんさんの、歳も近くて同期のハンターを偶然捕まえて来るなんてよっ!」
「あんたらは少し黙ってろ!」
その夜、里では宴会が開かれ、集まった住民は各々盛り上がっていた。ハルトは住民の輪の中に拘束され、抜け出せないでいる。
そしてアリスは、少し離れたヒノエのところと一緒だった。
「アリスさん、カムラの里はいかがですか?」
「私の故郷とは文化が全く違って、楽しいです。
里の皆さんも、さっきはあんなことがありましたけど悪い人ではなさそうですし」
「ええ、そういえばアリスさんは、オサイズチに襲われていたハルトさんを助けたんですって?彼から聞きましたよ」
「助けたなんて……私はただ、偶然その場に通りかかっただけです。
それに、私も先程はハルト様に助けていただいて」
ヒノエはそれを聞き、口元に手を当て上品に笑う。
「うふふ、情けは人の為ならずとはまさにこのことですね」
「情けは人の為ならず………ですか?」
「はい、それにハルトさんは昔から困っていそうな人を助けずにはいられないお方なんです。あいつの親そっくりだって、いつも里長は嬉しそうにするんです」
「ハルト様のご両親は、お優しい方なのですね」
「ええ。父親譲りの勇気と、母親譲りの優しさ。そんなハンターを持てて、この里は恵まれています。
アリスさんは、しばらくカムラに滞在するのでしょう?
ハルトさんと仲良くしてあげてくださいね、私はあなた達二人はいいご関係になると思いますよ」
ヒノエの言葉を聞き、アリスは赤面しながら俯き慌て出す。
「わっ、私は別にハルト様と、その………そのような関係でいたいなどと……」
「あら、私は何も言っていませんよ?」
顔を赤くして狼狽するアリスを見て、ヒノエは悪戯っぽい笑みを見せた。
時間が過ぎ、そろそろ宴会も終わろうかというところで、
「さて、アリスよ。お主は
「問題、ですか?」
「うんむ、今ちょうど里に商隊が訪れていてな、宿が空いておらんのだ。そこでだ」
そこまで言ったフゲンは、ハルトの方を見ると、
「ハルトよ、お主の家に泊めてやってはくれんだろうか」
「えぇぇえっ!?」
しばらくの沈黙の後、ハルトは驚きの声を上げた。
「俺の家じゃないと駄目なんですか?」
「うむ、ハンターが使う武具や道具には危険なものも多く、普通の民間人の家にそれらを置いておくのは厳しいだろう。幸い、お前さんの家は空き部屋も多いし問題はなかろうて」
「でも、家に女性を泊めるなんて俺一回も……」
「お前がそんな輩ではないことはよく知っとるゲコ。それとも何か、彼女にそういうことをする気があるゲコか?」
「ないッ!断じて!!」
更にゴコクも加勢し、ハルトはどんどん追い込まれていく。
ハルトは助け舟を求め、アリスの方を見やる。その視線に気付いたアリスは、
「そうですね、私も里長様やギルドマスター様に賛成です」
「はぁぁぁ!?」
「他に私が泊まれるような場所はないのでしょう?それに、ハンターが同じ家に住んでいれば、アイテムや情報の共有なども出来ますし利点も多いかと」
「う………ぐ」
アリスの言葉は正論であり、ハルトは返す言葉がなく言葉を詰まらせる。
「分かったか、ハルトよ。もうお前さんに拒否権は無いに等しい、大人しく
更には、住民までも加わり口々に抗議の声を上げる。いよいよ観念したのか、ハルトは頭を掻いた後宣言する。
「分かったよ、他に場所がないんなら、仕方ねぇ!
アリス、俺の家に来い。少しの間よろしくな」
「はい、ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いしますね」
とアリスは満面の笑顔で礼を伝えるが、ハルトはそれを最後まで聞かずに「俺の家はこっちだ」とその場を後にする。
「まぁ……なんだ、少々不器用で大雑把な奴だが、仲良くしてやってくれ」
「はい、それでは私も失礼します」
丁寧にフゲンに頭を下げると、アリスも後を追ってハルトの家へと向かうのだった。
次回へ続く
皆様、前回ぶりです。作者のたつえもんです。
今回はそんなに書くこともないので、挨拶だけで失礼します。
では、最後まで読んでくださってありがとうございます!
また次回お会いしましょう。