モンスターハンター 焔の心   作:たつえもん

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第8話:気焔万丈

 体勢をを立て直しエリア9を離れ、次にハルト達がオサイズチに会ったのは前回オサイズチと出会ったエリア7だった。

 

 オサイズチは二人に気付くと、発達した後脚の跳躍力を活かして飛びかかって来る。離れていた為難なく避けるものの、一瞬にして距離が縮まる。先程と同様にアリスは狩猟笛で鎌鼬竜の頭を殴り付けていく。一方のハルトは、尻尾の方に回るとその先端、湾曲した刃尾に斬り掛かる。

「ハルト様、オサイズチの刃尾は簡単にダメージを与えられません!他の場所を狙ってください」

 アリスの言葉通り、尻尾の棘は硬く剣が弾かれてしまう。ハルトは諦めずに何度も尻尾を斬りつけていくが、やはりことごとく弾かれ効果的なダメージを与えられない。

 攻撃を受け続けていたオサイズチはハルトの方へ向き直り、尻尾を振り下ろす。刃尾が当たる直前に盾を突き出し、何とか軌道を逸らしてダメージは防ぐ。

 攻撃を受け流されたことで先端が地面に突き刺さり、動けないでいる鎌鼬竜。チャンスとばかりに攻めに転じるも、先程と同じようにハルトは刃尾に攻撃を加え続ける。当然、同じように攻撃を弾かれるばかり。

「ハルト様………どうして?私は信用に至らないというのですか?」

 アリスが辿り着いた時には既にオサイズチは尻尾を引き抜き、後ろに跳躍して距離を取っていた。そして短く鳴くと、先程の回転攻撃の構えを取る。ハルトがその予備動作を見るのは既に四回目であり、真横に走ってオサイズチの刃尾を回避する。

 

 

「ぐぅ………っ!?」

 

 だが、次の瞬間ハルトは腹に衝撃を喰らい、吹き飛ばされていた。翔蟲を出す間もなく、地面に叩きつけられる。何とか起き上がり、追撃してくるオサイズチを横転して避ける。

「まさか…………イズチか!」

 確かにハルトは、オサイズチの攻撃は躱した。しかし、従えていた両隣のイズチも連携して同様の回転攻撃を仕掛けて来たのだ。オサイズチがイズチの群れの統率を行うのは知っていたが、まさか連携攻撃までしてくるとは。幸い、イズチは攻撃力が低く、更に尻尾の付け根に当たったので大したダメージにはならなかった。

「はあぁっ!」

 そこへアリスが駆けつけ、思い切りボーンホルンをオサイズチの頭にぶつける。すると、

 

「ギャワォォッ!?」

 オサイズチが目を回してその場に倒れ、起き上がろうと手足をばたつかせてもがく。アリスは上手くいったとばかりに笑みを零し、続けてオサイズチに打撃を加える。

 ハンマーや狩猟笛など、打撃系の攻撃ができる武器は頭部を何度も殴ることで、脳を揺らし一時的に閃光玉のようにモンスターを気絶させることができる。なおかつオサイズチは頭への攻撃が効きやすく、だからアリスはオサイズチの頭を重点的に攻撃していたのだ。

 その一方で、応急薬を飲みダメージを回復させたハルトは周りのイズチを掃討していた。

 狩猟笛は片手剣に比べて攻撃力が高めで、一撃の威力も大きいものの大振りで隙が大きく、攻撃の途中で小型モンスターに奇襲されることも少なくない。アリスがオサイズチに攻撃する役をしているのを見て、更に片手剣は小回りが効きやすい為ハルトがイズチの対処に回ったのだ。

 周りのイズチを全て倒した頃、ようやくオサイズチは起き上がり坂道を駆け下りてエリア3に向かう。ハルトが砥石を使って片手剣を研いでいると、不安そうな顔でアリスが歩み寄って来る。

「ハルト様、どうして尻尾ばかり狙うのですか?攻撃が通用しないのは分かってるはずなのに………

私の言っていることは、信じられませんか?」

「言ってたことを無視したのは素直に謝るよ、でも俺にだって考えがあるんでね」

「そうだったのですね、よければ教えてもらえませんか?」

「いいぜ、実はな………」

 

 

 作戦を話し合った後、二人はエリア3へと向かう。そこでは周りにイズチをおき、オサイズチが口から涎を垂らしながらモンスターの死骸に齧りついていた。攻撃を受け続けた結果、オサイズチも疲労しているのだ。

「あのまま回復されたら困るな、よし!」

 ハルトは懐からクナイを数本取り出し、オサイズチ目掛けて投げ付ける。それらは全て背中に突き刺さり、ハルト達の存在に気付いたオサイズチは食事をやめ襲いかかって来る。

 しかし、オサイズチ達が標的にしたのはアリスの方だった。ハルトはアリスよりも遠くから投げクナイを投擲したので、近くにいたアリスの仕業だと思ったのだろう。

「来たぞ、準備はいいか?」

「はいっ!」

 ハルトの問いかけに返事をし、アリスは背負っていた狩猟笛を担ぐ。そして、眼前まで迫ったオサイズチが尻尾を振り下ろして来る。アリスは刃尾が当たるギリギリのタイミングでボーンホルンを振るって受け流し、そのまま演奏に繋げ自己強化を行う。

 演奏を終えるとすかさず、地面に刺さって動けない鎌鼬竜の尻尾に攻撃を加える。アリスは刃尾に攻撃するのは初めてであり、硬い感触を感じながらも弾かれることはなく打撃を続けざまにヒットさせていった。オサイズチは疲れていることもあり、先程よりも刃尾を抜くのに時間がかかっており、その分多くの攻撃を加えていく。その間、ハルトは首元をカムラノ鉄片刃で斬りつける。研がれた刃はオレンジ色の毛皮を斬り裂き、辺りに毛を舞い散らせる。

 詳しい原理は不明だが、狩猟笛の演奏には自分の攻撃が弾かれにくくなる効果もあるらしい。これにより、普通は攻撃が通用しない硬い部位に繰り返しダメージを与えることができるのだ。

「行きますっ!」

 そして、尻尾目掛けて翔蟲の糸を纏わせたボーンホルンを突き立てる。

 

ヴヴゥゥゥンッ!!

 

「ギャワゥゥッ!?」

 そのまま狩猟笛を吹き鳴らし、音の波は糸を伝わって尻尾に届き、振動による衝撃波となって更なるダメージを与える。

 翔蟲の糸を使ったこの地方独自の技、鉄蟲糸技(てっちゅうしぎ)。そして今放たれたのは、狩猟笛の鉄蟲糸技の一つ、震打(ふるえうち)である。

 

 尻尾に重点的にダメージを受け続けたことで、オサイズチは大きく仰け反る。

 そして立ち直る頃には、息は荒く目を血走らせながら何度も二人を威嚇しており、怒っているのは一目瞭然だった。その怒りの矛先は、自身の尻尾に執拗に攻撃を仕掛けてきたアリスに向けられている。

 大型モンスターは、一定量ダメージを受ける等の特定の条件を満たすと怒り出し、攻撃力や移動速度が向上する。その為、怒っているモンスターを相手にする際は一層気を付けなくてはならない。

 オサイズチの噛み付きを前転で回避するアリス。しかし、

「ギャァッ!」

「っ、しまっ……!」

 横から尻尾攻撃を仕掛けるイズチへの判断が遅れ、足を引っ掛けて転んでしまう。更に、そこへ待っていたとばかりにオサイズチが飛びかかり攻撃を仕掛けて来る。体勢を崩したアリスには防ぐ術がなく、オサイズチの上半身に勢いよく当たり吹き飛ばされる。

「アリスッ!」

「ぐっ…………あ………」

 背中を強く地面に打ち付け、一気に肺の空気が押し出される。アリスはホムラ地方の狩りにまだ慣れておらず、翔蟲を出して受け身を取る余裕はなかった。何度か地面を転がり、全身の痛みで視界が霞む中、どうにか体を起こすが、

「いっ……つぅっ……!」

 立ち上がった瞬間、左足に鋭い痛みが走り膝をついてしまう。先程の攻撃で捻挫してしまったらしい。

 足の痛みで立ち上がれない中、オサイズチがこちらに駆け寄って来るのが見える。武器を持つ手にも力が入らず、今この状態から攻撃を防ぐのは絶望的だ。

「ガゥゥゥ!」

 そして、オサイズチが噛み付こうと口を開き、アリスは恐怖に目を瞑る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、いつまで経っても身体に痛みは訪れない。恐る恐る目を開けると、

 

 

「ガ……ガァゥ………」

「くっ……そ、どうにか、間に合ったみたいだな」

 

「ハルト…………様……?」

 そこには、自分の前に立ち塞がり、鎌鼬竜の口に盾を押し込んで牙を封じるハルトの姿があった。

 

「カムラの民たる者」

「えっ………?」

 不意に、ハルトが何かを呟き始める。

 

「カムラの民たる者!燃ゆる(ほむら)の心を携え、万事に(じょう)を尽くすべし!

それこそが…………」

 そこまで言うと、ハルトは盾を構えた右手を振るい、オサイズチの牙を振りほどく。そして、

 

 

 

「気焔、万丈ッ!!」

 

 

「グギャオォォォ!?」

 

 オサイズチ目掛けて突進斬りを放ち、それは寸分の狂い無く刃尾に命中する。

 剣を受けた刃尾は細かいヒビが入り、乾いた音と共に曲がった先端が砕け散る。先程から二人が狙っていた、尻尾の部位破壊に成功したのだ。

 刃尾を破壊されたことで、鎌鼬竜はハルトに狙いを変更する。ハルトも気付いたらしく、一度剣を収めて走って距離を取る。

「こっちだ、掛かって来い!」

 彼の挑発を受け、オサイズチは二匹のイズチを呼び回転尻尾攻撃の構えを取る。だが、ハルトは盾も構えずその場で直立して動かない。

「ハルト様………何を……?」

 

「ギャウゥッ!」

 そして、オサイズチは両隣のイズチと共に連携攻撃を放つ。折れた刃尾と二つのまだ未熟な刃尾が、風切り音と共にハルトに迫る。

「ハァッ!」

 

 

「ギャオゥッ!?」

 しかし、ハルトは突然オサイズチ達の目の前から姿を消す。獲物が見えなくなり、三匹は振り返るがそのにはいない。彼は────頭上にいた。

「おらぁっ!」

 

「グギャオォォッ!」

 そして、落下重力を活かしてカムラノ鉄片刃を後脚に叩きつけ、皮が裂けオサイズチは横倒しになる。

 

 オサイズチ達が尻尾攻撃を仕掛けて来た時、ハルトは空中に翔蟲を放ち、糸で高速移動する疾翔(はやか)けを行ったのだ。横にも後ろにも避けるのが難しいなら、上に避ければいいと判断しての行動だった。

 アリスは自分に襲いかかるイズチに、動けないなりにボーンホルンを懸命に振り回して反撃する。どうにか三音演奏を行い、その音色を耳にしたハルトの攻撃力が高まる。

 演奏による支援を受け、勢いよく攻め立てるハルト。次々に斬撃を繰り出し、オサイズチの皮に傷が刻まれていく。

「これで、終わらせるッ!」

 気合いを込めた掛け声を放ち、柄に翔蟲の糸を括り付けたカムラノ鉄片刃を振り回してオサイズチを切り刻む。片手剣の鉄蟲糸技、風車が決まったのだ。そして、ようやく起き上がった鎌鼬竜の顔面に、とどめとばかりに力強く踏み込み剣を振り抜く。

 

「グワォォォーーーーーー…………ッ……!」

 渾身の一撃を弱点に喰らい、首をもたげて断末魔の叫びを上げると、オサイズチは生気を失い倒れて動かなくなった。群れのボスを失ったことで、イズチ達は一斉に退却する。

 絶命したオサイズチを前にしても、まだ実感を掴みきれず立ち尽くすハルト。息はあがり、何度も斬りつけたせいで剣は刃こぼれを起こし、柄を握る腕は痺れている。

「やった………のか、俺達」

 

「はい………私達、オサイズチに勝ったんですよ」

 そこへ、足を引きずりながらアリスが歩み寄る。彼女は疲れと足の痛みに耐えつつ笑顔を見せ、それを見たハルトの胸の内に喜びと、そして初めて大型モンスターを討伐した感動が広がって来る。

「そうか……………俺達、本当に倒したんだな……!」

 

 次の瞬間には、彼は込み上げる感情を抑えることなく爆発させたのだった。

 

 

次回へ続く

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