登場人物
時雨 止まない雨は……ないのかな?
満潮 割と優しい。
夕立 萩風は許さねぇ。
谷風 名前だけ登場。遭遇注意。
榛名 名前だけ登場。新人では相手は難しい。
熊野 神戸生まれのお洒落な重巡。過去にとある事件を起こしたらしい。
利根 名前だけ登場。死にかけた。熊野は怖いのじゃ。
鳥海 名前だけ登場。鎮守府一の適当艦娘。
阿賀野 名前だけ登場。満潮にボディを狙われる。
山風 名前だけ登場。非力。
大井 名前だけ登場。古参メンバー。北上さん人形といつもいっしょ。
川内 名前だけ登場。古参メンバー。
睦月 名前だけ登場。熊野のルームメイト。
不知火 名前だけ登場。お断り済。
瑞鶴 名前だけ登場。哨戒任務中。
北上 名前だけ登場。北上さん人形。
時雨Side
「やっと追いついた。2人とも速すぎるよ」
「あ、ごめんなさい」
「谷風に遭わないようにすることで、頭がいっぱいだったっぽい」
不知火と分かれてから3分程走ったところで、足早に去ってしまった夕立と満潮にようやく追いつくことができた。正直この鎮守府ちょっと怖いから、あんまり1人にされたくないんだよね。それに、この建物かなり広いみたいだけど、いったい何人の艦娘が在籍してるんだろう?あ、でも1人部屋と2人部屋しかないって話だったからそうでもないのかな?提督もあの人一人しかいないらしいし、そうだよね。……というより、萩風みたいな子がたくさんいるとか想像したくないんだけど…………。
「ちょっと夕立、案内係が新人を一人にしちゃだめじゃない、危ないでしょ」
「時雨が真面目だったからちょっと油断してたっぽい。反省するっぽい」
相変わらず息をするかのように不穏なセリフが出てくるね。…………もう気にしない方が良さそうな気がしてきたよ。今は歓迎会のことだけ考えていよう、その方が楽しいし気が楽だからね。
「それで、次は誰に声をかけるのかな?」
「私は呼ばれた側だから知らないわ、榛名さんでも呼ぶのかしら?」
「榛名さんは、会話にならないからパスっぽい。この前いつの間にか怒らせちゃってマジ焦ったっぽい」
「あー、……確かに新人がいきなり相手するのは難しそうね」
なんだろうね、会話にならないって。外国の方なのかな?
「次は熊野さんを呼ぶっぽい!」
「はぁ?!何いってんの?熊野さんはダメでしょ。……利根さんが殺されかけたの忘れたの?」
……………………え、今殺されかけたって言った?いや、そんなわけないよね。……うん、聞き間違いだということにしておこう。
「あれは案内係だった鳥海が、ちゃんと教えてなかったのが悪いっぽい」
「あの人結構適当よね。……なんで司令官はあの人に案内係させたのかしら?」
「どうせ同じ重巡洋艦だからとかそんな理由っぽい。それより、時雨が他の熊野に会ったことが無ければ問題ないっぽい。時雨、どうかしら?」
「え、……熊野さんには会ったことがないね。演習なんかでもみたことないや」
あれ?そういえば熊野さんには本当に会ったことが無いね。僕が元いた鎮守府は結構規模が小さい所だったからいない艦も結構いたけど、他鎮守府との演習でも見たこと無いのはおかしくないかな?最上型の他の人には会ったことがあるのに。……熊野さんってレア艦なのかな?
「やっぱり、あの事件以来熊野さんの数もまだ回復してないっぽい」
「そんな絶滅危惧動物みたいな…………、というより各地の提督が熊野さんを隠してるんじゃない?」
「確かにその可能性もあるっぽい。とにかく時雨、熊野さんには他の熊野さんの話は絶対にしちゃいけないっぽい!」
「……ま、それさえ気をつければ熊野さんはいい人よ」
「わ、わかったよ」
あの事件っていったい……それに対応を間違えたら殺されかける人はいい人と言っていいのかな?…………まあでも僕は実際熊野さんには会ったことが無いわけだから、自然にしていれば大丈夫だよね。…………本当に大丈夫かなぁ?
「さっそく熊野さんのとこに行くっぽい!……でも正直夕立的には熊野さんでメンバーは打ち止めっぽい。他にまだまともなヤツはいたかしら?」
えっ、夕立基準でまともなヤツって満潮、不知火、熊野さんの三人だけなの?これは夕立の基準が厳しいの?それとも本当にこの鎮守府にはまともな艦娘がほとんどいないの?後者だとしたら…………僕はここにいても大丈夫なのかな……。
「そんなに心配しなくても、性格は良いヤツもいる安心しなさい。……それに、アンタだって事情を抱えてる身でしょ」
「……え、僕のこと何か聞いてるのかい?」
「一応新しく配属される艦娘の情報は、司令官からある程度伝えられてるのよ。真面目に聞いてないヤツも多いからなんとも言えないけど、ここにいるほとんどの艦はアンタがここに送られてきた事情は知ってるわよ」
そ、そうだったんだ。そういうのは提督が上手くごまかしてくれたりするものだと思ってたよ。…………でも、それを隠したまま受け入れてもらおうなんてのは、虫の良い話なのかもしれないね。
「……その、…………2人は僕のこと、気持ち悪く思ったりしないのかい?」
「え?」
「ぽい?」
僕の脳裏に思い浮かぶのは、僕のことをおびえたように見る目、理解できない化け物を見るような目、さげすむように見る冷たい目。つい昨日まで仲間だったはずのみんなから、ああやって見られるのは正直少しつらかったね。
「だって、僕はみんなと違ってリミッターの壊れた欠陥品だって…………」
「夕立的にはむしろ羨ましいっぽい。いつでもソロモンの悪夢見せ放題っぽい!」
「え」
「萩風あたりの顎を粉々にしてやりたいっぽい」
「えぇ…………」
「私は阿賀野の腹に一発入れてやりたいわね」
「えー…………」
「……まあ、とにかくここにはアンタなんて可愛く見えるヤツらばっかりいるから、ほとんどのヤツが気にしないと思うわよ」
「そうっぽい。性格がまともなだけでだいぶ楽っぽい」
「ははは……、そんな風に言われるとは思わなかったよ」
……そうだね、いつまでも悩んでいてもしょうがないのかもしれないね。ここでなら僕は本当の仲間を見つけられるかもしれない。止まない雨はないんだから。…………………………いや本当に大丈夫かな?話を聞いてる限り、たとえ僕が受け入れてもらえても、僕の方がここのみんなを受け入れられるのか不安なんだけど……
満潮Side
時雨はどうも自分がここのみんなに受け入れられるのか、不安に思ってるみたいね。ここまでの印象だとなんでここに送られてきたのかわからないレベルで良い子なんだけど…………。力に関しても利根さんと山風ちゃん以外は軽くあしらっちゃいそうだし。
「ここにいる人はみんな自分より後から来た人の事情は知ってるの。だから夕立は熊野さんや不知火の事情は知ってるけど、満潮とかの事情は知らないっぽい」
「へー…………あれ?さっき萩風の事情は知ってるって言ってなかったっけ?」
「それは、本人に聞いたっぽい」
私はここがこうなる前からここにいるから、別に何か特別な事情があるわけじゃいんだけどね……。私の他にも大井さんや川内さんなんかもそうだけど、…………あの2人はいろんな意味で普通じゃないし。
「はぁ…………、熊野さんは参加してくれるかな?」
「心配しなくても熊野さんは仲間には優しいから大丈夫っぽい」
ま、色々悩んでるみたいだけど一晩ここで過ごせばそれどころじゃなくなって、悩みなんて吹っ飛ぶでしょうね。私達は些細なことは気にしないからアンタがその気になればすぐに馴染めるわよ。…………ここに馴染むことが一般的な意味で良いことかは微妙だけどね。
時雨Side
「熊野さんの部屋に着いたっぽい。くーまーのさーん」コンコンコン
「何か御用ですの?」ガチャ
そう言って中から上品な佇まいの人が出てきた。……ここのみんなノックしてから出てくるまでが早すぎないかな?どうなってるんだろう?それに相変わらずひらがなで(くまの・むつき)って書いてあるし。
「時雨の歓迎会をするから呼びにきたっぽい!」
「あら、今回は歓迎会をお開きになるのですね」
「……ここ最近ろくな人が来なかったから久々なのよ」
「もう消えてしまわれた方のことなんて、どうでも良いですわ」
…………何やら怖いことを言ってるけどもう慣れてきたね。
「それで参加してくれるっぽい?」
「もちろん承りましてよ。それで、あなたが時雨さんですのね?」
「あ、うん。僕が白露型駆逐艦2番艦の時雨だよ。よろしくね」
「ごきげんよう、わたくしが重巡、熊野ですわ!」キラーン
熊野さんには初めて会ったけど、明るい笑顔の素敵な人のようだ…………この人が利根さんを殺しかけたって本当なんだろうか?……まあ、今は余計なことは考えないでおこう。
「神戸生まれのお洒落な重巡ですの」
「これでメンバーがそろったっぽい。さっそく食堂に移動するっぽい!」
「あら、これだけですの?」
「……他に誰か呼べそうなヤツいたかしら?」
「不知火さんや瑞鶴さんは、いかがですの?」
「不知火には断られたし、瑞鶴さんは哨戒に出てるわ」
「それでしたら、榛名さんや利根さんは?」
「だから、榛名さんは疲れるっぽい」
「利根さんって…………熊野さんが誘っても怖がって来るわけ無いでしょ」
え、熊野さん的にはもう気にしてないのかな?怖くて聞く気にはならないけど。…………というか、殺しかけておいてあんまり気にしてないのもそれはそれで怖いね。
「それでしたら……後は大井さんくらいですわね」
「いや、それは…………」
「参加してもらっても、北上さん人形と会話し続ける不気味な絵面が展開されるだけよ。時雨の精神にダメージを与えることになるっぽい」
「ははは、心配ないよ。その話だけでもう十分にダメージを受けてるよ…………」
なんなんだよ、北上さん人形って!?北上さんにベッタリなわけじゃなくて人形なの?どういう状況なんだよ、それは!
「他には…………もう思いつきませんわね。ああ、朝潮さんと川内さんが……」
「その2人はこの時間は無理でしょ」
「もー、会話してないでさっさと行くっぽい」
そう言って階段を降りていく夕立の後に僕たちも続くのだった。何はともあれ僕の歓迎会メンバーはこれで揃ったようだ。
「歓迎会って、何をなさるんですの?」
「夕立は食堂で料理を頼んでるって言ってたよ」
「……そういえばこの前司令官が、“食材の追加発注分、搬入するの面倒くさいなぁ”ってぼやいてたわね」
「それでしたら、久しぶりに間宮さんの凝った料理をいただけそうですわね」
「間宮さんの料理は美味しいんだけど、材料の仕入れの関係で普段は毎食単品メニューなのよね」
「何が出るんだろ、楽しみだね」
「神戸牛を、食べたかった……ですわ……」
「何でそんな今際の際みたいな言い方なんだい!?」