登場人物
熊野 熊野事件の犯人。
時雨 実はエビを食べたことが無い。
満潮 エビは結構好きな方。
夕立 良い子に嫌われるとさすがに落ちこむっぽい。
谷風 名前だけ登場。谷風様。
利根 吾輩の時は歓迎会なんて無かったのじゃ……
初霜 名前だけ登場。心だけは少年漫画の主人公のよう。
間宮 名前だけ登場。やっぱりいる。
提督 最近後書きしか出番がないな。
阿賀野 後書きで名前だけ登場。これ登場って言うの?
時雨Side
乾杯を終えた僕らはご馳走に舌鼓を打ちながらしばらくの間談笑していた。
「改めて島流し鎮守府へようこそいらっしゃいました時雨さん、鎮守府一同あなたのことを歓迎いたしますわ」
「あ、ありがとう//////」
改まって言われると少し照れくさいね。
「一同って……ここにいるの時雨を除いたら3人だけじゃない」
「心配ご無用ですわ、反対するお方はこの熊野が一捻りで黙らせてやりますわ!」
熊野さんって良い人そうなんだけど、ちょくちょく物騒だよね。
「どうせ、とぉぉ↑おう↓!!ってやるだけっぽい」バリバリ
「そんなことはありませんわ」
…………何それ?
「谷風相手でも一捻りなのかしら?」
「谷風様を一捻り?そんなことができるお方が、この地球上にいらっしゃるとは思えませんわね」
「当たり前っぽい」パリパリ
……今熊野さん谷風様って呼んだよね。どういうこと!?
「谷風と熊野さん、そして熊野さんと利根さんの間には超えられない壁が存在するのよ」
「いや、今の話に利根さん関係なかったよね?」
何で比較されたの?
「ご安心なさってください時雨さん。あなたを歓迎なさらないお方は、谷風様以外この熊野が一捻りで黙らせてやりますわ!」
「う、うん……歓迎の気持ちは嬉しいけど一捻りはしなくていいからね」
そんなに捻りたいのだろうか…………
「……ま、心配しなくても歓迎してくれる奴とアンタに興味がない奴しかいないだろうから大丈夫よ。嫌がらせされるようなことにはならないわ」
「あはは……正直こんなに歓迎してくれると思わなかったからすごく嬉しいよ。もっと厄介がられるかと思っていたし」
ほんと、ここに来てから変な人もいたけど、みんな僕に普通に接してくれる人ばっかりだね。前の鎮守府だとそんな心の余裕がある人はほとんどいなかったし、僕が問題を起こしてからは関わろうとすらしてくれなくなったからね。
「ところで、夕立はそれ何を食べてるんだい?」
さっきから、水槽みたいなところから何か捕まえてバリバリと食べてるけど。
「甘エビの躍り食いっぽい」
「……げ、アンタまたそんなもの食べてるの?」
「躍り食い?」
聞いたこと無いけど、どういう料理だろう?
「魚介類を活きたままで食べる料理っぽい」
「生きたままで!?」
「口の中で逃げようともがいてる様がたまらないっぽい!」
「ええぇ…………」
なんだい、その楽しみ方は!?しかも味とかじゃ無くて様子がってこと?
「夕立さんは頭ごとお食べになっておられますが、本来は殻を剥いて中の身だけをいただくはずですわ」
「新鮮なものじゃないとできないし、ホントにとれたてを食べれられるから、躍り食い自体はそれなりに美味しいはずよ。…………あんな食べ方しなかったらね」
「失礼しちゃうっぽい。丸ごと食べるだけじゃ無くて、必死に抵抗するエビの頭を引きちぎって殻を剥いても楽しめるっぽい!」
「嫌な楽しみ方だなぁ…………」
なんというか、表現が悪すぎないかな?
「抵抗できないやつを一方的にいたぶるのは何よりの楽しみっぽい!」
「えぇ…………この子こんな性格だったんだ…………」
もっと明るい良い子だと思ってたんだけど…………、いや別に悪い子ってわけじゃないんだけどさぁ…………もうちょっとこう、ねぇ。
「……そういうことばっかりやってたから、おかしいヤツだと思われて前の鎮守府から追い出されたんでしょうが」
「いたぶるのは敵だけにしてたのに、みんな失礼しちゃうわ」
おいおい、いたぶるって…………
「……基本敵に弱いものイジメにしかならないからいけないのよ、アンタ初霜にもめっちゃ嫌われてるじゃない」
「初霜とは趣味が合わないからしょうがないっぽい。それに弱いものイジメがしたいわけじゃなくて、一方的にやりたいから自然と弱いヤツが多くなるだけよ。強いヤツでも弱らせてからいたぶるだけっぽい!」
「結局いたぶってる時点でダメじゃないかな?」
「……一方的やりたいって発言がもうあれよね」
「けれど、強者でなければ不可能な発言ではありますわね」
これを、強者と呼んで良いのかな?
「むしろ、弱いくせに強い奴と正々堂々戦いたがる初霜の方がおかしいっぽい」
「……あの子はあの子で、どこかおかしいのかもしれないわね」
「むしろあれだけ高潔な精神をお持ちになられて、あれだけ毎日トレーニングを欠かさずなさっていらっしゃるというのに、あんなにザコいのは不思議ですわね」
「いや、ザコいって……酷くないかい?」
みんな好き勝手言い過ぎでしょ。
「……正直初霜に関しては、かわいそうだけどザコいとしか言いようが無いくらい弱いのよね」
「満潮まで…………」
「でもすごく努力家で、ひたむきに頑張る良い娘よ」
「夕立も趣味が合わないだけで初霜のことは嫌いじゃないっぽい!」
「ええ、夕立さんが初霜さんに一方的に嫌われてらっしゃるだけですわ」ニッコリ
「………………………………」ズーン
あ、一応そのことは気にしてるみたいだね。夕立が目に見えて落ち込んでるよ。
「なんかテンション下がっちゃったっぽい…………残りは間宮さんに刺し身にしてもらってくるっぽい」
「わたくしの分もお願いいたしますわね。エビを剥きながらいただくなんて、淑女の食べ方ではありませんわ」
「僕もお刺身なら食べてみたいな」
「頭はから揚げにすると美味しいわよ」
「間宮さーん。これ調理お願いするっぽーい」
そう言ってあの不気味な受け渡し口にかけていく夕立。あれホントになんなんだろうね?どうして誰も疑問に思わないんだろう?
「エビの調理が終わるまでに時雨に着任の挨拶でもしてもらおうかしら」
「えっ」
「そうですわね、せっかくの歓迎会ですので主役から一言いただきたいですわ」
ど、どうしよう何も考えてなかったよ。それにこういうのは鎮守府の全員の前でやるんじゃないの?……いや、そっちの方が緊張するだろうからそれは別にいいんだけど。
「どうせ明後日からの顔合わせのときには、挨拶でしゃべらないといけないんだから、練習しといた方が良いわよ」
「それもそうだね、でも何を話せば良いんだろう?」
「何でも良いわよ、趣味だったり今後の抱負だったり……」
「どうしてここにいらっしゃることになられたのか、とかでもよろしいですわよ」
あれ?それって…………
「熊野さん……それ事前に司令官から伝えられてるじゃない」
「そういえばそういうルールでしたわね。しかし、本人から直接伺った方が余計なバイアス無しに聞くことができるのではありませんの?」
「本音は?」
「ちゃんと聞いてませんでしたわ」
「やっぱり、そうだと思ったわ。…………時雨も話しづらかったら別に話さなくてもいいのよ」
正直、もうつらくないって言えるほど時間が経ったわけじゃないし、話してしまって嫌われたくないって思いもあるよ。けどそれ以上にこの人達なら大丈夫かもって思えるし、僕のことをちゃんと知ってもらいたいって思えるんだよね。
「いや、大丈夫だよ。ぜひとも聞いてもらおうかな、僕がここに着任した理由を」
僕が挨拶をしようとテーブルの奥の少し広いところに移動しているとちょうど夕立が帰ってきた。
「間宮さんに頼んできたっぽい!……ん?時雨どうしたの?一発芸でもしてくれるっぽい?」
「あはは、さすがにそこまでの度胸はまだ僕にはないよ」
「熊野さんみたいに持ちネタとかないっぽい?」
「別にわたくしも持ちネタなんてありませんわよ」
「よく、とぉぉ↑おう↓!!ってやってるっぽい」
「あれはネタではありませんわ」
「時雨が着任の挨拶をしてくれるのよ」
「そういえばまだしてなかったかしら。ご飯食べるのに夢中になりすぎてたっぽい」
みんな揃ったことだしそろそろ始めようかな。
「えっと、じゃあ始めさせてもらおうかな。まずは、僕のためにわざわざこんなすてきな歓迎会を開いてくれて本当にありがとう。夕立にはいろいろ準備してもらったみたいだし、満潮も熊野さんも参加してくれて嬉しいよ」
本当に心から感謝の気持ちでいっぱいだよ。
「いや~照れるっぽい///」
「わたくしたちは参加させていただいているだけですし」
「……美味しいものも食べられるから断る理由もないのよね」
「僕はある事件を起こしてから、所属してた鎮守府みんなに腫れ物扱いされていたんだ。だからこうやって普通に接してくれるなんて思ってなかったし、ましてや歓迎会まで開いてもらえるなんてまるで夢でも見てるみたいだよ」
昨日までの自分にこうなるって言ってもきっと信じてもらえないだろうね。あの頃は狭い部屋に隔離されて、毎日毎日どこどこの鎮守府に断られたって報告を聞くだけだったからね。
「あら、時雨さんは事件起こし仲間でいらしたのね」
「さすがにあの熊野事件とは、規模が違いすぎて比較にならないっぽい」
「……時雨も仲間扱いはしてほしくないんじゃないかしら」
「あれは、別にわたくしが悪いわけではありませんわ」
「…………………………」
「…………………………」
なんか夕立と満潮が渋い顔をしてるけど、熊野事件ってなんなんだろう?聞いても大丈夫なのかな?
「あのー、それっていったいどんな事件なんだい?」
「え?時雨は知らないの?」
「僕の所は結構小さな鎮守府だったからね」
「それはおかしいっぽい!当時どんな小さな小さな鎮守府だったとしても、大本営から通達がいっていたはずよ」
そんな大事件だったの!?それならさすがに知ってるはずなんだけど…………あ、もしかして。
「あ、僕はまだ建造されて半年程しか経ってないんだ。もしかしてその事件って僕が建造されるより前の出来事なんじゃないかな?」
「……なんだ、そうだったの」
「そういえば、あれはだいたい5年くらい前のことでしたわね」
「……ここにいると時間の感覚がおかしくなってだめね」
「所詮夕立たちは今日を繰り返すだけの生きものっぽい」
やっぱりそうだったみたいだね。みんなは建造されてからどれくらい経ってるんだろう?艦娘は見た目の変化がほとんど無いからわからないんだよね。
「時雨さんがご存じないのでしたら教えて差し上げてもよろしいのですが、今は時雨さんが挨拶をなさっている途中ですからね、それが終わってからにいたしますわ」
はぁー、……やっぱり話さないとダメだよね。まあでも熊野さんも話してくれるみたいだし、僕も尻込みしてる場合じゃないよね。
「それじゃあ僕がここに来た理由を話そうかな。僕が建造されたのは……………………」
「何やってんだ?」
「うひゃあっ!…………ってなんじゃ、提督か。脅かすでないわ」
「そんなとこでコソコソ何してんだよ?怪しすぎるぞ」
「う、うむ。今日は早めに食事を済ませようかと思っていたのじゃが……、珍しくこんな時間から熊野がおるのじゃ」
「熊野?…………ってああそういや利根は熊野に……」
「やめるのじゃ提督…………その話は吾輩に効く…………」
「……………………」
「……お主こそここで何を?」
「……萩風に見つからないように移動中」
「………………………………、しかし、どうしようかのう?」
「どうせ歓迎会でもやってんだろ、普段の晩ご飯の時間になったら終わってるだろ」
「そういえば新人が配属されるのじゃったな。しかしそんなすぐに終わるものなのかのう?」
「それなりの時間に終わらせねえと、谷風様や阿賀野が食堂に来るかもしれんだろうからな」
「なるほどの、それなら出直すとしよう。……しかしそれまでどうしようかのう?」
「暇なら俺とゲームでもするか?」
「うむ、久々にそれも良いかもしれんな」
「よし、じゃあ執務室に行くぞ」
「うむ、参ろうか!…………………………って、お主はいい加減執務室でゲームをするのは止めよ!」
次回は時雨の過去話ですが、そんなにシリアスにはなりません。