島流し鎮守府   作:レイノス

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プロ野球で応援しているチームが、久々に交流戦を優勝したのでとてもウキウキしています。前回優勝したときは私がまだ10代のころだったので、時間の流れを感じてしまいます。この調子で未だ経験していない、リーグ優勝&日本一を目指して頑張ってほしいです。

登場人物

時雨 まさかこんなに早く語ることになるとは…………この先の話どうするの?

夕立 夕立がいたところの白露とはえらい違いっぽい。

満潮 熊野さんが疲れる。

熊野 シリアスな空気にはさせませんわ!

提督 ボードゲームは強い。

あいつ 名前だけ登場。二度と固形物は食べられない。

白露 名前だけ登場。故人。

利根 後書きだけ登場。むしろ得意なことは何も無い。

若葉 後書きだけ登場。実は最後のセリフはこの人。



第8話

 

時雨Side

 

それじゃあ、聞いてて面白い話じゃ無いだろうけど、僕がここに来た理由、というか僕のこれまでの話を聞いてもらおうかな。

 

「僕が建造されたのは今からだいたい半年前くらいかな?所属艦娘が50隻くらいの小さな鎮守府で、働いている職員も20人くらいしかいなくて、妖精さんの力を借りてなんとか運営できてるようなとこだったね」

 

「妖精さんとか懐かしいっぽい」

 

「……そういえばそんなのもいたわね」

 

「わたくしは、皆さんよりは最近までお世話になってましたので、覚えていますわ」

 

そういえばここに来てから妖精さんの姿を見てないね。どうなってるんだろう?

 

「提督の方針でとにかく戦果を挙げることを重視しててね、人も艦娘も休み無く働き続けてたんだ。食事の時間が勿体ないからって、軍用のレーションしか与えられないし、睡眠以外の時間はほぼ訓練か戦闘の時間だったよ。幸いにも、パフォーマンスが落ちたら困るからって、睡眠時間とレーションの量だけは十分に確保されてたけどね」

 

「……何それ、それでパフォーマンスが落ちないと本気で思ってたのかしら?」

 

「優雅さに欠けますわね。娯楽が無いなんて、生活に潤いが足りていませんわ」

 

「夕立的には娯楽は戦闘で十分っぽい。…………けど毎日レーションは嫌よ」

 

「それが一番効率的だって信じてたんだよ。誰かが意見しても、無駄にプライドが高くて全く聞き入れようとしないんだ。しょっちゅう、“俺はこんな小さな鎮守府に収まる器じゃ無い”、“俺が間違っているわけが無い”って言ってたよ。能力が高ければまだ救いはあったんだけど、艦隊指揮もお粗末だし、やる気とプライドの高さ以外に取り柄の無い男だったね」

 

「……無能な働き者ほど厄介な奴はいないってやつね。少しうちの司令官を見習うべきね」

 

「提督さんはもう少しやる気を出した方が良いっぽい」

 

「やる気を出したところで、ここではなさることがありませんわ」

 

ん?……ここに来るときに、俺もそれなりにやることがあるとか言ってなかったっけ?もしかしてあれは嘘だったのかな?…………ふふふ…………もしそうなら許せないねぇ…………

 

「どうしましたの時雨さん?変な顔になっておられますわよ」

 

「……えっ、あ、ああごめん、何でも無いよ。えっと、どこまで話したっけ?」

 

そんな変な顔になってたかな。気をつけないといけないね。

 

「提督さんにやる気も仕事も無いって話っぽい」

 

「それはうちの司令官のことでしょ。…………時雨のいた鎮守府の提督が、やる気とプライドの高さ以外に取り柄の無い男だったってところまでよ」

 

ああ、そうだったね。

 

「そんな鎮守府で建造された僕は、回避や運のステータスが高いとか言い出したあいつに結構早くから前線で使われてね、そしたら思ってたより良い結果を出せちゃったんだ」

 

「あら、期待の大型(ウーパー)新人(ルーパー)でしたのね」

 

大型(スーパー)新人(ルーキー)ね。…………このネタ知ってる人いるのかしら?」

 

「…………というかついにあいつって呼び出したっぽい」

 

「だけど、いきなりそんな風に活躍しちゃったから変に目立っちゃってね、結果を出さないと怒鳴られるからみんな心の余裕が無いみたいで、そもそも鎮守府内で会話してるような人がほとんどいないような状態だったから、1人を除いて誰も僕に話しかけてくれなかったんだ」

 

「……そりゃ、そんな環境にいたら心の余裕なんてあるわけないでしょ」

 

「そうだね。…………でもそんな中でも、白露だけはいつも僕のことを気にかけてくれてね、演習の手の抜き方とか、遠征の上手なサボり方なんかを教えてくれたよ」

 

「基本的に同じ鎮守府で建造された姉妹艦は、特別になりやすいっぽい」

 

「……ろくなこと教えてないじゃない」

 

「あはは、まあ普通に考えたらそうだろうね。でも僕のいた鎮守府は、毎日休み無くそれらが繰り返されてたからね、適度に手を抜くのは大事なことだったんだ。それができない人から見えない疲労がたまって、ちょっとしたミスで沈んでいったよ。…………あいつは睡眠さえとっていれば問題ないって考えてたみたいだけどね」

 

「本当に酷いところでは、食事や睡眠さえまともにとることができない所もあるらしいですわよ」

 

それなら僕のところはまだましな方だったのかな?…………でもホントの最前線なんかは、そうでもないと支えられないのかもしれないね。

 

「別に激戦区でも無いのに、あの男の出世欲のせいでそんな環境になっていたからね。誰も頑張ろうなんて気にならなかったんだよ」

 

「確かに最前線ならそれも仕方ないって、頑張る気にもなれる人もいるかもしれないっぽい」

 

「慢心、環境の違いってやつですわね」

 

「違うわね」

 

「慢心か……確かにあの頃の僕は少し慢心しちゃってたのかもしれないね」

 

「いや、熊野さんが言ってたのはそういう意味じゃないわよ」

 

「だいたい建造されてから1月半くらいたった頃だったかな、毎日の仕事にも慣れてきて僕がすっかり油断してたときに、あの事件のきっかけになる出来事が起きたんだ」

 

「そういえば、事件の内容は提督さんから聞いてるけど、きっかけとかは知らないっぽい」

 

「あれは、ちょうど今日みたいに冷たい雨の降る日のことだったね…………」

 

「いや、今日雨降ってないわよ。…………アンタ私がツッコムからってだんだんボケ役にまわりだしてない?」

 

満潮がいると楽でいいね。夕立とか提督相手だと自然と僕がツッコミ役にならざるを得ないし。

 

「僕らはその日も新たな海域開放のために、未開放海域の偵察に出撃させられてたんだ。白露を旗艦に、軽巡3隻と駆逐艦3隻の編成だったかな?そこで油断してたせいかなのかはわからないけど、普段ならなんでもないはぐれ艦に、思いの外苦戦しちゃってね。軽巡の人が2人中破しちゃって、そのうち1人は大破寸前だったんだよ」

 

「微妙な場面ですわね。現場の状況や艦隊の志気などを考慮して、進軍か撤退か決めることになりますわ」

 

「あの男にそれを読み取れるような力があったら、もう少し僕らも楽だったのにね…………」

 

「まあ……、これまでの話を聞いてる限り無理そうね」

 

「旗艦の白露は、悪天候の中での未知の海域だったこととか、連日の疲労の蓄積による現場の志気の低さを理由に、撤退を進言したんだけど、“碌に戦果も挙げてない奴が俺に意見するんじゃ無い!”って言われて、進軍を命じられたんだよね」

 

まあ、これに関しては普段手を抜いてあんまり成果を出してない白露も悪いのかもしれないけど……………………いや、やっぱり誰が言ったとしても聞かなかっただろうね。

 

「その後は予想できるだろうけど、敵の艦隊に遭遇しちゃってね。特にまともな対空装備が無いのに敵に空母がいたせいでこっちは壊滅状態。まだ比較的動けた僕と白露が、それぞれ2人ずつ連れて二手に分かれて逃げることになったんだ。……僕はほとんど会話したことも無い4人のことよりも、白露と2人で逃げたかったんだけどね。旗艦の白露が、絶対全員で生きて帰るんだって言うからそうしたんだ。もともと僕が気を抜いていたことも、こんなことになった一因だったから強く言えなかったんだよ」

 

あのときもっと強引にでもそうすればよかったと、今でも後悔してるよ…………

 

「二手に分かれたおかげで敵も分散されたからなのか、僕らは3人とも大破して1人は轟沈寸前までいったんだけど、なんとか鎮守府までたどり着いたんだ」

 

「なかなかやるっぽい」

 

「そのまま急いで入渠させられて、この分はきっと取り返してやるなんて思ってたら、二手に分かれたもう一隊の方も帰ってこれてね、…………………………だけどそこに白露の姿は無かったんだ。駆逐艦の子が、自分のことをかばって沈んじゃったってことを泣きながら話してたんだけど、僕は頭の中が真っ白になって、何を言ってるのかしばらくの間理解できなかったよ」

 

「ん、仲間が沈んだ時は、そうなっちゃうわよね………………」

 

「なんとなく、もう一隊の方って表現なさった時点で察しがつきましたわ」

 

「僕にとって、あの鎮守府で本当の仲間だって言えるのは、白露ただ1人だったんだ。建造されたばっかりで何もわからない僕に、いろんなことを教えてくれて、いつも応援してくれてたんだ…………。なんであの時白露と別れちゃったんだろう……、なんで出撃中なのにあんな気の抜けた態度で臨んじゃったんだろう……、白露が沈んじゃったの自分のせいなんじゃないか……、そう思い悩んでしばらく何も手に着かなかったんだよね」

 

「建造されて二月もたってないころなら、そんなものっぽい」

 

「艤装の修理も終わって、偵察結果の報告のためにあいつに呼び出された時も、ほとんど上の空だったよ。“あの海域に空母が出るなんて仕様が違うのか!?”とか、“どうなってるんだ!話が違う!”とか言ってたけど、何のことか聞く気にもならなかったよ。…………でもあいつが、“まあ、この程度の損害で情報が得られたから良しとするか。”って言ったときに、今まで我慢していた何かが限界をむかえてね。つい、“……白露が沈んじゃったのは、君にとってこの程度の損害なのかい?”って聞いちゃったんだ。そしたらなんて答えたと思う?」

 

「……セリフから漂う小物臭がすごいわね」

 

「ここまでの話の印象では、ろくな答えが返ってこなさそうですわね」

 

「“駆逐艦ならどうせすぐに代わりが見つかるだろう。そもそもあいつは本来のスペックの割に戦果が低すぎたんだ、今度はもっとましな白露が建造されるだろうし丁度良かったな。”なんて抜かしたんだよ。さっきまでとは別の意味で頭の中が真っ白になって、気がついたらあの男がボロボロの執務机の上に転がってたよ」

 

「むしろもっと早く、誰かがぶん殴って差し上げるべきでしたわね」

 

「夕立なら多分、レーション渡された時点でやっちゃってるっぽい」

 

それはさすがに早すぎるね……

 

「……でもそういう理由なら、こんな所に飛ばされるほどの罪にはならないんじゃないかしら」

 

「……隣にいた子の話だと、僕はあいつの顎を一発殴っただけだったみたいなんだよね。どういうことだ?ってなった憲兵に、大本営の研究施設に送られたんだ。そうしたらそこで、僕は陸上で力を押さえるための安全装置(セーフティ)が、正常に機能してないことが判明したんだ」

 

「普段あんな戦闘をしてるというのに、どうして簡単に憲兵に取り押さえられてしまったのか不思議でしたが、わたくしたちにそのようなものが備わっていたとは……」

 

「なんで知らなかったのよ…………」

 

「割と常識っぽい…………」

 

というか、取り押さえられた経験があるんだね…………僕は素直に投降したから、取り押さえられるようなことは無かったけど。

 

「建造された時点からそうだったのか、後天的にそうなったのかは、わからなかったけどね。本当は別の鎮守府に移動することになるはずだったんだけど、そんな欠陥品は要らんってどこからも断られたんだ」

 

「……それで最終手段としてうちに来たってわけね」

 

「ここはある意味解体処分場みたいなところだから、実質解体処分みたいなものっぽい」

 

「ここ以外に選択肢なんて無かったからね。……これで僕の話は終わりかな。…………………………その……聞いてみてどうだったかな?」

 

やっぱり、あんまり印象良くないかな?

 

「夕立たちは最初からある程度聞いてたけど……」

 

「詳しく聞いても、いたって普通の子にしか思えないわね」

 

…………えっ?

 

「あくまで肉体面に異常があって、精神性に問題が無い時点で、この鎮守府でも珍しい良識派でいらっしゃると思いますわ」

 

「……そうね、熊野さんよりよっぽどまともね」

 

「あら、失礼しちゃいますわ」

 

「……………………ぐすっ…………ぅぅ!……ぅうぅぅ!!」ポロポロ……

 

「うわっ、急にどうしたっぽい」

 

「ご、ごめんね。…………なんだか嬉しくて、……ぐすっ……」

 

「やれやれ、泣き虫なら袋を被っていただきませんと」

 

「…………?なんの話よ?」

 

「ロ○ー・ホワイトですわ」

 

「……ごめん、知らないからツッコメないわ」

 

………………白露、君が沈んじゃった時はもう何もかもどうでもよくなっちゃたけど……、僕、もう一度ここで頑張ってみようかなって思うよ。だから、あのころみたいにまた、僕のこと応援してほしいな。

 

 

 

 





「あー!!」

「お主また0機ではないか、相変わらずアクションゲーム下手すぎんかの?」

「…………おかしいな、まさか利根にまで馬鹿にされるとは」

「吾輩も別に得意なわけではないがの、……って、バカな!」

「あー、すごいタイミングでフラワー出てきたな」

「ぬかった!…………お主既にコンティニュー二桁ではないか。いい加減ダッシュジャンプくらいできるようにならんのか?」

「いや、一つのボタン押しながら、もう一つ別のボタン押すとか無理だろ」

「情けないのう。吾輩など1回だけなら壁キックができるようになったのじゃぞ」

「なにっ!?」

「何度もお主とやっておるうちに習得したのじゃ。礼を言おう。筑摩のやつより、また強くなってしまったな」

「まあ、うちに筑摩はいないが」

「様式美というヤツじゃ」

「低レベルすぎないか……、2人でやって1-2もクリアできないっておかしいだろう!?」






満潮や夕立は時雨のことを普通の子と言っていますが、彼女たちの感覚が麻痺しているだけであって、上官のことをぶん殴るのは普通のことではありません。
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