遥か昔。遠い遠い昔。
誰かが言った。
「ウマ娘が想いを継承するなら、トレーナーも担当ウマ娘に関係ある魂の想いを継承できるんじゃね?」
そして、その試みは成功してしまった。
してしまったのだ。
「は? 担当ウマ娘を勝たせる事ができない? ウマ娘のせいにすんな? お前が未熟だからだろ? 嘆いてる暇あるなら努力したら? ほら、さっさとトレーニングメニューとウマ娘のデータを見せろ。本当に悔しいのはウマ娘なんだから」
「未勝利に終わった? 担当ウマ娘は走りたいて言ってる? ソコに草レースと企業主催レースがあるじゃろ」
「担当ウマ娘が怪我した? 二度と走れない? 借金してでも手術受けさせるのが当たり前だろ? 臓器とか売れるモン全部売れよ。常識だろうが。少ないけどこの金を足しにしろ」
「なんで、ウマ娘が掴んだ栄光を自分が掴ませたみたいに言ってんの? お前の努力が実を結んだんじゃなくて、ウマ娘の努力の結果だろ? 俺達トレーナーの仕事はウマ娘の夢を叶える事と笑顔にして幸せにする事だろうが。誇るならソレを成し遂げてから誇れ」
そして、覚悟ガンギマリトレーナー達は大暴走を開始した。
全てのウマ娘の笑顔と幸せの為に。
「なに? 海外G1に挑みたい? 費用とかは気にするな。取り敢えず用意したこの海外コースを完全再現したコースでトレーニングを積むんだ。ん? どうやって用意したかって? 俺と同士達の臓器に値段が着いて借金を背負って無一文になっただけだ。気にせずトレーニングに打ち込め」
「ん? もっと走りたい? 安心しろ。あと一週もしないうちに開催レース数は二倍になる。俺達トレーナーを舐めるな。思う存分走る為にコンディションを調えておけ」
「骨折して二度と走れないのが辛い? 寝言を言ってる暇は無いぞ。これから海外に行って手術なんだからな。費用は気にするな。全額俺が持つ。お前は手術後のリハビリに全力で挑めば良い」
「引退後の生活が不安? 大丈夫だ。お前がちゃんとやっていけるようにウマ娘生活支援センターが面倒を見てくれる。引退したトレーナー達が立ちあげたヤツだからな。支援は万全だ」
全てのウマ娘を幸せにする。
その為に。その為だけに、彼等彼女等は文字通りに死力を尽くした。
その結果、別の世界線では起きた悲劇・惨劇は無くなった。しかし、死力を尽くされた側であるウマ娘達にとっては堪ったものではなかった。
迂闊に、海外に挑みたいと言ったウマ娘達はトレーナー達を助ける為に命懸けで海外G1レースを走った。
不用意に、もっと走りたいと言ったウマ娘達も、トレーナーのレース新設の為に背負った借金返済の為にひたすら頑張った。
自分の不注意で骨折や怪我をして引退を覚悟したが、借金漬けになったトレーナーを助ける為に、必死にリハビリを終わらせたウマ娘達も再び懸命にレースを走った。
その結果。彼女達の名は最強の代名詞になる。
神のごときウマ娘。シンザン。
天のウマ娘。トウショウボーイ。
比較対象外と詠われたウマ娘。タケシバオー。
超特急と称賛されたウマ娘。キーストン。
史上最強のウマ娘。クリフジ。
完璧と詠われた幻のウマ娘。トキノミノル。
至高の怪物ウマ娘。タニノチカラ。
彼女等は言う。
「トレーナーが居なければ、今の私は無かった」
その言葉を聞いたトレーナー達は感涙した。自分達は間違っていなかったと。今度こそ、彼女達を幸せにしてみせたのだと。
その後に続いた言葉。
「トレーナー。特に専属トレーナーに大きな夢を言ってはいけない。絶対に大きな怪我をしてはいけない。自分の為だけではなくて、トレーナーが大変な目に合うから。そして、自分も物凄く大変な目に合って苦労するから」
その言葉をガン無視して。
三女神が悪いんです。