甘き夜明けよ、来たれ   作:ノノギギ騎士団

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Qの手記
ヤーナムの外から来た異邦者が、ヤーナムについて書き綴った手記。
筆記者クィレルは、雲隠れした身の上のため本文中に名を残すことは無い。
破棄が約束された物であれ、気分転換になるのならば、まぁ、よいではないか。


2年生まで
ヤーナム紀行[筆記者Qの手記]


はじめに

1 ヤーナムの近況について

2 ヤーナムの人々について

  月の香りの狩人

  学徒達

  月の香りの狩人の仔ら

  ・クルックス

  ・テルミ

  ・ネフライト

  ・セラフィ

 

 

 

 

はじめに

 

 ヤーナム。

 その名は、現在、わずかな書籍の中に数行存在するのみである。──とは以前の手帳に書き綴ったことであるから、話を先へ進めよう。

 

 まず最初に断っておかなければならない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()、読む人に対し(私以外にいないと思うが……)説明するためのものではないということである。

 

 ヤーナムの秘に触れることを望んだ者は、ここで読むのを諦めたほうがよいでしょう。

 

 私が見て聞いたことしかここには書かれていない。真実か。虚偽か。私にはほとんど判断が及ばない。ヤーナムの秘匿も枢機も全ては闇のなか。果たしてヤーナムにおいても探ることができる人々はいるのだろうか? かつて秘匿した『誰か』──くれぐれも私の知人ではない──でさえ知らないのではないか。

 

 本書は、このような調子で続いていく。

 

 なぜ私は真実を確かめないのか?

 どうせ誰も見ない手記であるから、告白してしまおう。

 それは私に勇気が無いからである。

 名前を言ってはいけないあの人に立ち向かった少年のような勇気が無いからである。

 今後、振り絞る気も無いからである。

 なによりヤーナムの闇を明かし、積み上げられた屍を数え、異常を正し、イギリス魔法界に相応しい『普通の街』にするという真っ白な勇気を持てないからである。

 

 この種の勇気は、きっと尊敬すべきダンブルドア教授であれば当然持ち得ただろう。

 義を重んじるグリフィンドール生の多くも持ち合わせることだろう。昼行灯と揶揄されるハッフルパフの人々は温厚であり、心優しい。彼らも胸を痛め、きっと立ち上がったに違いない。スリザリンでさえ打算的に立ち向かうに違いない。我が母寮レイブンクローの生徒達も多めに見積もって半分くらいは憂えにより杖を取るだろう。

 これらを魔法界にいる我々は『勇気』と呼ぶ。素晴らしい勇気は、胸に使命の炎を灯し、鼓舞するだろう。

 

 しかし、無駄である。

 

 根っからの小心者であり道を踏み外してヤーナムに存在する私が言うのは我ながら「どの口を」と憚れることだが、少しばかりヤーナムのことを知ったこの私が言うのだからヤーナムの「ヤ」の字も知らない魔法使いが言うよりは、多少の信憑性があると自負している。

 

 それゆえ、断言しよう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ヤーナムにおいて一個人でなせることは限られている。人間の、例え魔法使いや魔女であったとしても、このヤーナムにおいては大河に落とされた一滴の雨粒に過ぎない。「たかが魔法使いが何をなせるというのか」──そう思い込んでしまうほどにヤーナムの闇は深い。深淵を覗き込んでも向こうから見つめ返す瞳も探せないほどに、深い。

 

 私の目的は、もう一度、イギリス魔法界の土地を踏むことである。

 そして、願わくば今度は、いいや、今度こそは正しく生きたい。

 例え大成しなくとも私は精一杯を生きたのだといつか自分に誇れるようになりたい。

 

 ……死の間際に、私は死にたくないと願った。

 身を焼く目に合うならば、なぜ死に物狂いの抵抗をしなかったのか。

 後悔をした。

 もう二度と惨めな思いは嫌だ。

 

 我が身に起きた幸運は、ただの偶然である。

 

 自らの行いによる原因と結果に基づく結果ではない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 市街の上層から深い森のビルゲンワースに至るまでに、私は月を見た。

 いつかの月は、悪行の報いとして幽閉された人の姿に見えたが、その日は違った。

 

──月は微笑を傾けた!

──たしかに、私を見て笑ったのだ!

 

 

 

 

ヤーナムの近況について

 

 この街は、とにかく普通ではない。

 普通ではない点を挙げていけばキリが無い。

 けれど、何より()()()()()()一年が繰り返し二〇〇年以上続いているということだろう。

 

 今日日、イギリス魔法界のマグル世界に詳しい者ならば相対性理論というものを(私を含め、完全な理解はできないまでも)現代物理・古典物理の基本的な理論であるとかの知識を持っている。しかし──当然のように!──ヤーナムにおける異常は、マグルの知恵の範疇に収まるものではない。

 

「では、魔法ならばこの異常を解き明かすことができるか?」

 

 もしも、魔法の秘奥を探求する神秘部ならば異なる解答ができるかもしれないが、この問いに対し私のような一般魔法使いは「ノー」と言わざるを得ない。

 魔法界において。

 時間についての研究は、生涯を時間旅行の研究に捧げてきた神秘部ソール・クローカー教授が先駆けであり研究の体系を作った人物として知られる。だが、氏の有名な著作『時間旅行者の死因の最終結論』においてしばしば語れる「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である」との言葉のとおり、魔法界は時間の支配──これは少々適切な表現ではないかもしれないが──総じて「時間の法則に干渉しよう」という試みを放棄しているのではないかと思われる。その理由についても氏は述べている。「()()()()()()()()()()()()()」損害が起きるからだ。

 

 彼の言葉は、真実の一側面を言い当てたと思える。

 実際にヤーナムの異常の原因にも解決方法にも妙案というものが思い浮かばない。

 ヤーナムの異常は、物理学でも魔法でも説明がつかない。

 時間旅行者がひとりふたりならまだしも、狩人や学徒達の話を聞く限り、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのである。しかも、この状態が二〇〇年以上も続いているのに、ほとんどの人々は異常を異常だと認識していない。認識もできないのである。

 

 この異常を解き明かすには、二〇〇年以上前に何が起こったかを知る必要があるだろう。

 私は興味が無いので調べるつもりはない。

 しかし、学徒達の話では()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言っていたのを聞いた。

 

 私には獣狩りの夜が何なのか、分からない。

 額面とおりに言葉を受け取ると、獣を狩る夜なのだろう。しかし、獣とは単純に毛むくじゃらの──マグルが考える狼男のような──モノだけではない。

 では、何を? それは分からない。私の想像を超えるようなモノを狩っているのだろう。何か巨大な質量が湿った地面を這いずる音を思い出してしまったので、私はこの項を書き飛ばすことにする。

 

 ともあれ、この獣狩りの夜を明かした──これも不思議な言い方である。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ギリシア神話において、太陽は天空を翔けるヘーリオスの馬車だと信じられているが、ヤーナムにも類似する言い回しがあり、そのような意味なのだろうか? 私には違うニュアンスに聞こえたものだが……。──とにもかくに()()()()()()()()()()()()()()()と私は聞き取った。

 

 時系列で考えてみよう。

 一、二〇〇年以上前に(なんらかの手段によって?)獣狩りの夜を明かした

 二、夜を明かしたことにより(何かが起こり?)一年が二〇〇年以上続く異常が発生した。

 三、(異常は発生し続け?)現在に至る。

 

 謎が多すぎて分からないが、書いている私も全然分からない。

 分からないが『誰が異常を起こしたか』ということは、恐らく、月の

 

 推測はやめよう。

 私にとってやはり無駄なことであるから。

 

 

 

 

ヤーナムの人物について

 

 分からないなりにヤーナムの現状について説明を終えたので、このようなヤーナムに『運良く』生きている私は、そこで生きている人々、繰り返し続ける時間の異常を知る者達について記さなければならない。

 最初に書くべきなのは、私をヤーナムで目覚めさせた張本人だろう。

 

 

 

 

月の香りの狩人

 

 この月の香りの狩人──失名の青年について、月の香りの狩人といちいち書くのが大変なので、以降はだいたい月の狩人と書き綴ることにする。実際のところ彼は「狩人」と呼ばれることが多いのだが、ヤーナムにおいて狩人は社会的な地位のある職業の名称でもあるらしい。滅多に呼ばれないが、彼のもう一つの名前である『月の狩人』とする。

 月の狩人は、他のヤーナムの人々とは違う……ような気がする。具体的にどこがとは言い難いのだが、どこか浮き世離れしたというか、つかみどころのない、不思議な人物である。

 私が生活している学舎、ビルゲンワースへはしばしばやってくる。数日に一度は見かける。滞在時間は半日いることもあれば会話を済ませて数分で出て行くこともある。

 背は……二人いる学徒のうち、一人、男性の彼は自分の身長を一九〇cmと言っていたから、彼と比較すると握り拳大程度小さい。だから一七〇cmから一八〇cmだろう。そういえば、彼らはブーツを履いているからプラマイ五cm程度の誤差があるかもしれない。

 

 ありふれた黒髪。

 銀灰色の瞳は、すこし珍しいかもしれない。

 

 口を開かない時の彼は、無愛想で近づきがたい雰囲気だ。何事にも丁寧で順序よく話す、明晰な人物であるが、それだけではないような……いいや、これ以上はやめよう。

 そんな彼と私が出会ったのは、ヤーナムに旅行に来た約一年前であるが、その時はニコニコと近寄ってきたのをよく覚えている。いえ、あれもだいぶ無理をした笑顔であった……。

 私がヤーナムで目覚めてから数日後のこと、彼と二人きりで話す機会があった。

 

 

 ──あらためて、ご挨拶を。先生。私は狩人。

 ──皆には月の香りの狩人と呼ばれている。

 ──幸いを貴方に手向けたい。幸運をモノにした貴方が無事に帰れる日を祈っている。

 ──ヤーナムに来て不安なことも多いだろうが、ここにいる限り安全を保証しよう。

 ──私と学徒達が貴方を守るからだ。

 ──不自由をさせるが、貴方は限られた自由のなかで自由に過ごせばよい。

 ──ここでは何が起きても悪い夢でもある。

 ──十年など蛍火が生まれて死ぬまでの話さ。

 ──貴方とは、友好的な関係を築きたい。

 ──ああ、それと。

 ──こども達のことを気にかけてくれないか?

 ──俺は、どうも、こどもというモノが……むぅ……だからさ。

 

 

 彼は困ったときに発作的に笑ってしまう癖があるようだった。

 私は彼と握手と約束を交わした。

 恩人に対し、得体の知れない何かと感じてしまうのは、本当に申し訳ないと思うのだが、しかし、どうしてもその感覚を振り切れない。

 

 彼は、謎めいて優しげな深い人である。

 

 

 

 

学徒達

 

 次に、私と最も接することが多い学徒達について綴ろう。

 二人いる学徒のうち先輩である女性だ。

 名をユリエと言う。

 いつも目を隠すための帽子を被っている。私は彼女が目隠し帽子を外す様子を見たことがない。

 

 

 ──月の香りの狩人が招いた客人、歓迎しましょう。

 ──私はビルゲンワースの学徒。聖歌隊のユリエ。

 ──あなた達風に名乗るとすれば、そうね、ユリエ・コーラス=ビルゲンワースになるのかしら。ふふっ、自分の名前を名乗るなんて、久しぶりだわ。きっと二〇〇年くらい。

 ──月の香りの狩人の協力者よ。

 ──あふふっ。外来の神秘があっても、ヤーナムのことはさっぱり分からないでしょう?

 ──理解しないほうが幸せなのよ。

 ──けれど、外来の神秘の話は、とても興味深いわ。

 ──たくさん話をしましょうね?

 

 

 すらりと細身の女性で、とても若い。恐らく二〇歳前後であると思われる。

 ところで魔法界での成人年齢とは、十七歳である。学校を卒業して数年後の若者が、異常極まるヤーナムで渦中の人物と思しき月の狩人の協力者をしている──と考えると私は何とも言い難い気分になり、酸っぱい顔をしてしまったと思う。

 また、ヤーナムの市街では若い女性は全く見かけなかったので私は彼女と出会った時に、とても驚いてしまった。

 

 彼女は月の狩人に学徒と呼ばれる。

 すでに師事を受けていたのは遠い昔の出来事──それこそ二〇〇年以上前!──だが、ビルゲンワースという学舎のなかで生活し、未だ研究を続けている人物であるから学徒と呼称されているようだった。

 

 しかし、彼女の社会的立場は聖歌隊と呼ばれる、ヤーナムの医療を取り仕切る宗教団体である医療教会に属する上位学派の一派であるらしい。

 

 私の知識を整理するために、以下の三点を記してみる。

 一、医療教会を統括するのは『教区長』であるが。

 二、そのほかに医療教会には、大小さまざまな会派がある。

 三、二大会派の一翼が『聖歌隊』である。

 

 ヤーナムを実効的に支配しているのは医療者ひいては医療教会である

 私は、ひとまずイギリス魔法界における魔法省のような存在だと思うことにした。

 実態は……悍ましいモノのような気がするが、知りたくないので詮索はしていない。

 

 さて、そんな彼女だが、立場だけを見れば魔法省高官的立ち位置にいると思える。

 

「そんな彼女がなぜ寂れた学舎にいるのか?」

「月の狩人との関係性はどのようなものなのか?」

 

 興味が無いと言えば嘘になるが聞いてみようとか探ってみようとか、私は考えないことにしている。この手の好奇心を持つ者は──ヤーナムでは特に!──長生きできないだろう。私は生きて帰りたい。再び忘れることにする。

 

 ユリエは、いつも杖を携帯している。

 

 杖といっても魔法族が持つ杖(ワンド)ではなく、足が不自由な人が持つ杖のことである。

 もっとも、彼女の足は野山を駆ける兎のような健全さだ。特に百合の茎のような足首などは思わず目を奪われる。無論、いつも眺めているワケではないことを言い訳として書き残しておく。私以外に見る人は以下略だが、いちおう、名誉のために。

 

 彼女が携帯しているのは仕込み杖と呼ばれる『仕掛け武器』の一種だ。

 武器にはさまざまある。それらについては私の心の状態がもうすこし落ち着いたら書き綴るとして今は割愛する。

 

 さて、武器を片時も手放さない理由は、ユリエ達が学舎の守り手であるからだ。

 ビルゲンワースが存在するのは、深い森を越えた先の湖畔に面している。道中の森は医療教会が禁域として指定している。人は滅多に訪れない。だが、訪れる者がいるとすれば友好的な存在ではないだろう。少なくとも医療教会が定めた禁を破った以上、医療教会の敵である。

 

 学徒達について、ここから先は私の想像だが……。

 

 立ち入りが禁じられた森にビルゲンワースが設立されたのではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のではないだろうか。

 ビルゲンワースの書架には明らかに人体実験の記録と思しき書類や痕跡が──部外者の私が思わずつまずいて驚いてしまうほど──堂々と置いてある。だから「ここでかつて何をしていたのか」について、私は絶対に知りたくないと思っている。

 

 しかし、未だビルゲンワースに留まり、研究を続ける学徒達は、いったい何をしているのだろう……?

 

 

 

 

 背後が怖くなってきたので、次の人物について綴ろう。

 二人いる学徒のうち後輩である、男性だ。

 

 名をコッペリアと言う。

 ユリエと同じ所属である、医療教会の聖歌隊である──らしいのだが、彼は「除隊された」ということを一度だけ言ったことがある。そのときの彼の声色からは「自分から望んで辞めた」ではなく「辞めざるを得なかった」という意味合いがよく感じられるものだった。

 けれど。

 一見して同じ聖歌隊という所属にあるユリエからは、除隊についての言葉を聞いたことが無い。もし、彼女も除隊しているのならばコッペリアをなだめてもよさそうな雰囲気であったが、そうはしなかったのでユリエは、未だ正式な聖歌隊の所属であるのかもしれない。

 

 とても奇妙な状況である。

 

 除隊した聖歌隊が棄てられた学舎であるビルゲンワースに存在することが──ではない。

 

 むしろおかしいのは、正式な聖歌隊がここに存在することだろう。

 

 月の狩人が生活を支援しなければ、週をまたがずして干からびるのにここにいるのはなぜか。いいや、違う。彼女はなぜここにいなければならないのかを考えたほうが正解が近いだろう。

 

 私は怖いので考えるのをやめた。

 

 さて、この項はコッペリアを書く場所である。

 彼は、動く人形を作ったドクター・コッペリウスではない。

 名乗るのは、動く少女人形である『コッペリア』の名である。

 彼が『彼女』の名を語るのは、恐らく深い理由があるのだろう。

 

 月の狩人のこども達をまるで自分の子供のように扱っていることからは、彼の重々しい愛情らしきものがうかがい知れる。そういえば月の狩人は彼のことを「コッペリア、あるいはビルゲンワースの閉じた瞳」と呼ぶが、その意味はよく分からない。

 

 ところでヤーナムの民の彼らは『瞳』という言葉をよく使う。私が思い浮かべるのは眼球のことだが、物質的な意味の言葉として使われることは少ない。既存の言葉にするならば、心の目で見つめる、とか。そういった文脈で使う『目』のように感じられている。

 

 また話が逸れてしまった。

 

 彼との出会いは、最悪に類するものだった。

 月の狩人からは「これがヤーナム名物、典型的な医療者だ。高飛車で嫌みなヤツだが、しかし、彼はマシな医療者だ」と紹介された。月の狩人のこどもの一人、クルックスはそれを聞いて突然、喉を痛めたような咳を繰り返した。

 

 実際のところ。

 

 コッペリアは、やや不遜な人格であるが、親切である。もっとも私は月の狩人が招いた客人と言うことになっているので、その立場が加味された対応であるには違いないが。

 

 

 ──僕は、コッペリア。

 ──君たち風に名乗るのならば、コッペリア・コーラス=ビルゲンワースだよ。僕はテルミのお兄さんでもあるからね。それにしても……。姓が無かったので適当に名付けられたが、長い名前になってしまうのだねぇ。

 ──ユリエと同じ聖歌隊でビルゲンワースの守り手さ。

 ──もっとも聖歌隊は除隊されてしまってね。もはや道は違えたが、僕から捨てた覚えはない。だから、この名乗りは変わらないのさ。ハハッハッハ。

 ──ところで外来の神秘を宿す者。君は、冒涜を失ってしまったのだね。気配の残滓しか感じない。

 ──あぁ、死者を腑分けして弄ぶ類いの冒涜の気配だよ。それが君たちの神秘なのだろうか。なぁんだ、()()()()()()()()()()()()()()

 ──君を手術台に上げられないのが、とても残念だ。得難い治験になっただろうに……。

 ──まぁいい。

 ──外の世界の話を聞かせておくれよ。

 ──外の世界の神秘を語っておくれよ。

 ──人間は、己が右回りに変態する原因について究明と証明を終えたのかい?

 

 

 私は、コッペリアが語る内容について書き出した今なお理解が及ばない。

 彼は私が話していない事柄もまるで知っているように話すことがある。幾分かは月の狩人のこどもに聞いた話だろうが、それにしても察しが良すぎる。『閉じた瞳』に秘密があるのかもしれない。

 

 しかし、私が一番気掛かりなのは彼が患っている頭痛だ。私が傷病に関して素人であるからかもしれないが、何というか、とても酷いように思う。

 

 学徒達の間でしばしば語られる気の狂いというものについて、私が初めて目の当たりにしたのが彼の症状であった。

 

 気の狂いというヤーナム特有──と思いたい──症状について。

 

 まず、特徴的なのは一目でまともではないと分かることである。

 私が彼を見たとき、彼は何かを呟きながら書架に収められている本を一冊ずつ抜き出しては天地を逆にして収め直していた。耳を傾けてみれば、彼の言葉は支離滅裂であり、話す言葉に一貫性がないため傍で聞いている私は記憶に留めておくことができなかった。あらゆる単語を思い浮かべて無作為に並べ直したら、彼の言っている言葉に近くなるだろう。

 

 とにもかくにも神経科医に話すべきありさまであった。

 時おり内容のある言葉として捉えられるものもとんでも極まりない空想の類い──もっとも彼はそれこそが真実であり、現実だと思い込んでいるだろうけれど──が現実と交錯し、傍目には質の悪い白昼夢のようだった。

 

 このような気の狂いを目の当たりにして、私が驚いてしまったことは、もう一人の学徒ユリエが全く問題にしなかったことである。これはいわゆる交流を拒むための無視であるとか、諦念による放置ではない。単純に慣れていて、ありふれた症状ゆえに看過しているだけなのだ。しかし、そんな彼がいよいよ取り乱し──既に乱れているが──始めたら、ようやくユリエが鎮静剤──マグル世界や魔法界で見られる成分は一切入っていない──を持ってきて、赤く濁る液体を彼の口に押し込むのである。あれは、きっと錆びた鉄の味がする。

 

 常日頃から気の狂いに陥りがちな彼は、私にとってどうしても症状の印象が強いが、何事もない日常を送ることもある。

 

 体の調子が良いときは、私に学舎の外に出ないかと誘ってくれる。

 

 

 ──学舎は埃っぽいし風の通りも悪い。

 ──ずっといたら黴が生えてしまうよ。どうだい。散歩でもしないか。

 ──僕と一緒ならば大丈夫だ。狩人君ほどではないが、僕は強いからね。

 ──今日は頭も痛くないし、天気も、まぁいい。

 ──ここにはヤーナムでは数が少ない、綺麗な風景がある。

 ──分かりたまえ。僕らにも見栄というモノがあるのだ。客人には、綺麗な景色を見てほしいのだよ。

 

 

 月の狩人からも「いいだろう」とOKをもらえた。

 それから数日に一回、彼に誘われて学舎の外、湖畔に面した敷地内を一緒に歩いている。

 学舎のなかにいるのは苦ではないが、気が滅入る時もある。だから彼の誘いは本当に有り難いものだ。

 

 ビルゲンワースは、閉ざされた環境である。

 そこにある小さな集団とも言えない人間関係をコッペリアはこうして円滑に保とうとしている。

 

 発作が起きなければ彼は、温かな賢人である。

 もちろん。彼が心許す者に限定されるだろうけれど。

 

 

 

月の香りの狩人の仔ら

クルックス

 

 さて、次は月の狩人のこどもについて綴ろう。

 

 奇妙なことに月の狩人や学徒達は彼らのことを「仔」と呼ぶ。仔とは「動物の仔」に使う言葉で、人間に対し使うのは、正しい使い方とは言い難い。

 しかし、学舎のなかでこれを疑問に思うのは私一人だけのようであるから、これにも深い事情があるのだろう。学徒という探究の先端を歩む人々が誤るワケがないのだから。

 ──ここまで書いていて、私は、この疑問が──仮に──正しい場合にどう反応すべきなのか分からない。

「子」ではなく「仔」を使う理由が、本当に意味ある行いであるとして、それこそが正しい名称であるとして、では、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 私は、恐ろしくなり考えるのをやめた。

 

 とにかく手を動かすことにする。

 まずは最も親しい──と思いたい少年だ。

 月の狩人のこどもの一人、クルックスだ。

 

 

 ──改めて自己紹介する必要を感じないが……挨拶を怠るのは、よろしくない。狩人的によろしくない。たとえ、敵対者であれ礼は尽くすべきなのだ。死体の上で勝利を誇る飲酒をしてはいけない。……今の言葉は忘れてくれ。

 ──俺はクルックス。連盟に名を連ねる最も新しき狩人だ。

 ──連盟とは何か?

 ──世の中を綺麗にするために戦う狩人集団だ。この世界は、淀んでいる。淀まずにはいられないのだ。

 ──だから、我らがいる。淀みの無い世界を……俺は見てみたいのだ。

 ──お父様も所属している。

 ──つまり、ヤーナムで最もまともだ。

 

 

 ヤーナムの外においては、クルックス・ハントと名乗っている。

 ところで、学徒達もそうであるが、ヤーナムの人々には基本的に姓というものが存在しないのだという。ゆえに彼がヤーナムで名乗る場合は、ただのクルックスとなるらしい。とても不思議な風習である。

 また新しい団体組織の名前が出てきた。

 

 連盟

 クルックスと狩人の会話の端々から理解できることは『長』という人物を中心に、一つの信念のもとに狩りをする人々であるらしい。

 

 私はクルックスの話を聞いたときに『狩人という存在は、きちんと組織された人々の集団なのだな』と妙な感心をしたものだったが、その後──連盟について、そもそも学徒達の口にのぼることが少ないが──特にコッペリアが、狩人やクルックスのいないときに「ありゃなんだい。集団幻覚を見ている異常者だよ」と話していたので私は途端に不安になった。

 ヤーナムは大丈夫なのだろうか。

 いいや、そもそも一年が二〇〇回以上続いている時点で異常も極まっている。連盟が幻覚異常者集団だったところで「だからなんだ」と言うべきであり、今さらである。そもそもヤーナムを統べる医療教会の正体も、きな臭さを感じずにはいられないのに。私は街の人々の陰気な顔を思い出した。

 

 コッペリアは連盟を嫌っているような風であったので彼の言う「集団幻覚を見ている異常者」との言葉は、ややオーバーな表現だろうと思っていた──のだが、あるとき、クルックスが幻覚らしきものについて話していた。

 

 

 ──そういえば、貴方の中に『虫』はいなかった。

 ──いいえ、貴方の血は見ていないが……砂になってもいなかったということは、いないのだろう。

 ──幸いなことである。そう。幸いだ。……そう思うべきなのだ……。

 

 

 彼は、自分に言い聞かせるように言った。

 何が彼を苦しめているのか。

 私には分からなかった。

 聞くべき勇気を私は持てなかった。

 けれど。

 ホグワーツにおいてグリフィンドールに選ばれた彼に、多くの場合、助けはいらない。

 

 

 ──貴方を責めているワケではない。

 ──俺が、夢に憧れただけなんだ。

 ──だから貴方はこれからも血の淀まぬ生活をするといい。

 

 

 彼は、強い。

 私の助言が無くとも、悩んで時間がかかっても、自分の選んだ道を進んでいく。

 四人いる狩人のこども達のなかで最もこの傾向が強いのではないかと思う。

 

 クルックスは、こども達のなかで代表的な立ち位置にいる。

 しかし、真面目である以外に特徴があるワケではないように見える。

 

 聡明さではネフライトが上のように思われるし、機転の早さではテルミが上である。

 愛想の無さだけは、まるで私のことを存在しないかのように扱うセラフィといい勝負だ。

 しかし。

 

 

 ──貴方の悪行を俺は知らない。

 ──何の意味があったのか、俺は聞かないことにする。貴方は本来、死人であるから。

 ──だが、お父様が救った命でもある。

 ──今度は有意な人生を送ることを期待する。

 ──それから。もし、貴方が十年を経て再びヤーナムの外に出るならば、もうヤーナムに関わるな。

 ──ヤーナムに……貴方の幸せは、どこにも無いのだから。

 

 

 私が最も聞かれたくないと思っている、闇の帝王についてのあれこれを彼は詮索しない。

 人の心の機微について、彼は時にテルミより鋭い勘を発揮する。

 

 彼が中心的な人物として扱われるのはヤーナムに似つかわしくないことに、そしてグリフィンドールに相応しく、勇敢で善良な人柄だからだ。

 月の狩人が静かに彼を見守り、ユリエが人間を人間と思わない発言を控え、コッペリアが暴投気味の悪態を抑えるのは、全て彼のためなのではないか。

 私にはそうとしか思えないときがある。

 

 

 

 

テルミ

 次に、綴るべきは彼女だろう。

 月の狩人のこどもの一人、テルミである。

 

 

 ──まぁまぁ。ふふっ。死人が歩いている。面白いわ。

 ──ねぇ、地上を歩く御機嫌を聞かせてもらってよろしくて?

 

 

 最初に書かなければならない事実は、私は彼女がとても苦手だ、ということである。

 よってこれから綴られる文章の多くは偏見が含まれるだろう。

 何より底が見えない少女だ。

 私が綴れる内容は、とても不正確で少ない。

 

 しかし、私にも分かることがある。

 テルミは絶対に、女子トイレに入る前に女友達と一緒に入るタイプの女子学生だ。絶対に。

 そんな彼女の所属は──驚くべきことに!──ハッフルパフである。

 ハッフルパフの特徴とは『心優しく正直で、勤勉な者が集う寮』であるが、こればかりは組分け帽子が間違ったとしか思えない。……彼女は、ある意味で自分に正直と言えるのかもしれないけれど。

 

 テルミと話していると彼女の小さな手のひらで転がされる自分を自覚してしまい嫌になってしまう。

 この手の違和感は、彼女の父──月の狩人との会話でも感じられることだ。

 けれど、ホグワーツにおいて彼女と話したときはそんなことを感じなかったので実に上手く隠していたのだろう。

 

 

 ──あら。クリスマス・カードを交わした仲なのに、御挨拶が必要なのね。困った御方。

 ──ヤーナム風の冗談です。落ち込まないでくださいね? 慰められたいのなら別ですけれど。

 ──わたしは、月の狩人の仔の一、テルミ。そう。御存じ、テルミ・コーラス=ビルゲンワースですわ。

 ──コールミー、テルミーってね。……引きつけみたいな顔をなさらないで、普通に笑ってくださる? 潰れた鼠みたい。お上手なこと。

 ──わたしは聖歌隊のユリエお姉様やコッペリアお兄様と同じ聖歌隊……と言いたいところなのだけど、聖歌隊が運営する孤児院の子供なの。

 ──お父様がいらっしゃるのに孤児院にいるのはなぜって?

 ──あら。わたしの口からそれを言わせたいのね、非道い御方。

 ──お父様はわたしをそばに置きたがらないの。理由? お話しする義理は見当たりませんね。

 ──ともあれ、わたしは十歳になったら拝領の儀式を! 十五歳になったら聖歌隊の入隊式!

 ──聖歌隊きってのエリートになるの! だから、成長のお楽しみは目白押しなのです!

 

 

 それにしては、全然楽しみにしていない声音であった。

 テルミは、しばしば言葉と声色が合致しない。

 悲しげに笑っていたり、楽しげに怒っていたりする。

 学徒達は彼女の個性だと思っているようだが、実のところ彼女のこれは気の狂いの一種なのかもしれない。ヤーナム医療の専門性など──当然!──私は持ち合わせないのだが、不意にそう思うことがあった。

 

 テルミがビルゲンワースに留まる時間は短い。彼女は孤児院に存在しなければならないからだ。

 あるとき、珍しくビルゲンワースで出くわした時。

 真っ黒な祭服を着たテルミは、にこりと笑った。

 辺りはもうすっかり夏の暗闇だというのに彼女の藍の瞳は凍った湖面のように光り、煌めいているように見えた。

 あれは、私の錯覚だったのだろうか。

 

 

 ──ヤーナムを楽しんでください、先生。

 ──こんなに素敵で目の眩むような悪夢は、世界中のどこにもないでしょう。

 ──お父様が祝福した呪われた地を踏みしめて歩いてね?

 ──とても有意だと思うの。

 ──ヤーナムにとってね!

 

 

 私はテルミが苦手である。

 けれど、テルミが月の狩人を心から慕っていることは分かる。

 むしろそれしか分からない。

 彼女の考察は、お手上げである。

 別の誰かに預けることにする。

 

 

 

ネフライト

 

 こども達の紹介も三人目だ。

 ネフライト・メンシス。

 ホグワーツにおいては、私の母寮であるレイブンクローに所属している。

 すなわち、私の遠い後輩にあたる。

 

 

 ──私はネフライト。メンシス学派付の使用人だ。

 ──ネフと呼んでほしい。『ネフライト』は時間の無駄だから。

 ──使用人? そう、私は、ただの使用人。学徒ではない。学徒の服を着ているのは単純な所属を示すためだ。教会の黒服も白服も着たくない。

 ──メンシス学派は、ヤーナムで唯一、人々を救うことを考えている団体と覚えておくといい。

 ──つまり、ヤーナムで最もまともだ。

 

 

 私は困った。

 最もまともな集団がまた出てきたのも困った。

 何よりまともな学者集団が発明した最も優れた装置だという品が頭にかぶる、六角柱の檻であることに気付き、私はどうしようもなく困ってしまったのだ。

 

 ネフライトの所属するメンシス学派について分かっていることをまとめてよう。知識を整理するために、以下、四点を記してみる。

 一、医療教会には、大小さまざまな会派がある。

 二、二大会派の一翼が『聖歌隊』であるが。

 三、もう一翼が『メンシス学派』である。

 四、『聖歌隊』と『メンシス学派』は、とても仲が悪い

 

 ヤーナムは大丈夫なのだろうか。

 いいえ、そもそもヤーナムは一年が……以下略。

 

 そんなネフライトであるが彼は、テルミと同じくほとんどビルゲンワースにいることはない。

 その理由は彼がふだん過ごす『ヤハグル』という地区で使用人の仕事があるからだろうが、学徒達と仲が悪いことが、その理由の一端ではないかと思うことがある。

 

 聖歌隊とメンシス学派の不仲は彼らの関係にも影を落としているようだ。

 彼らは、互いに互いを見下しているというか……。

 交錯する感情には、刺々しいものがある。

 

 さて。

 ネフライトは、ホグワーツにおいて私が驚くほど──というより、余人を置き去りにするタイプの学生であり、ホグワーツではほとんど人と関わることがない。

 月の狩人に四人の学校生活についてコッソリ聞かれたとき、ネフライトについてどう話したものか私は困ってしまい、結局、見たままを話した。月の狩人は驚きもせず、紅茶を傾けながら「あー」と納得したように頷いた。

 

 

 ──ネフは四人の中で最も面倒見がいいヤツだが、ホグワーツの世話をする気はないのだろう。

 

 

 私は「そうだろうか?」と思ったが、面倒見がいい様子は、しばしば見られた。

 

 

 ──諸賢、宿題計画を立案した。

 ──各々、夏休みは連盟活動だとか孤児院生活だとかカインの使命だとか、さまざまあるだろう。私も下働きが忙しい。実に結構だ。

 ──そこで夏休みの終了日から逆算して十日で終わる計画を立てた。

 ──十日が長いだと? 夜の活動時間と聖杯マラソンと睡眠時間を確保した結果、このような計画となった。

 ──異論は代案を持って示すがよい。無いな。よろしい。

 ──では、充実した夏休みを送るといい。私は、三日に一度はビルゲンワースに立ち寄る。

 ──何事か相談があれば……聞くこともあるだろう。

 

 

 また、私が確実に困るであろう学徒達が実施している、外来神秘についての調査──という名の尋問──にも同伴してくれた。

 私の、きつ音でひどく聞き取りにくい言葉を辛抱強く待ち、ヤーナムの学徒達が理解できる言葉に置換する作業はネフライトでなければ、たいへん時間がかかってしまい月単位で拘束されてしまったことだろう。

 しどろもどろに礼を述べたところ、彼は「気にしなくていい」とぽつりと言った。

 

 

 ──それに、貴方はお父様の客人だから丁寧な取り扱いをしているだけだ。

 ──打算的な行いに対して礼を述べることを、私は適切と思わない。

 ──そのように軽々しく頭を下げることは避けるべきだ。……ヤーナムでは、特に。

 

 

 それきり彼は去った。

 檻を被る外見の奇妙さやホグワーツでの奇行が印象的だったが、彼に抱く感情は私の中で大きな変化を見せた。

 物言いほどキツイ声音ではない。

 彼を深く知らなければ気付けなかったが、意外なほど強い優しさをもつ人物のようだ。

 

 

セラフィ

 最後の紹介となった。

 ホグワーツにおいてスリザリンに配された彼女、セラフィである。

 なぜ最後になったのかと言うと彼女について私が書ける内容というものは、とても限られているからである。

 

 

 ──僕は、セラフィ。

 ──セラフィ・ナイト。カインハーストの夜警だ。

 ──貴方の名乗りは不要。

 ──せめて死人のように過ごすといい。

 

 

 他の三人に比べ、最も感情が揺らぎ見えない。

 表情らしい表情というものがなく、トリコーンを目深に被っているため目を合わせることも難しい。

 年頃にしては背が高い。身長が、ほとんど並んでいる他の三人に比べて拳数個分、成長が早いようだ。

 

 私のことをまるで存在しないように振る舞うので、興味もないのだろう。

 偶然、目が合えば最低限の礼儀として目礼をするが、それも私が彼女の父たる狩人の客人であるから行っているにすぎない。

 

 では、三人の『きょうだい』である彼らに愛想が良いのかと思えば、そうでもない。

 しかし、彼らが気を害することはないので慣れているのだろう。

 

 セラフィが所属しているのはカインハーストと呼ばれる、ヤーナムにある古い大家である。

 身につける装束を見ると貴族的な趣がある場所のようだ。

 むしろ、本当に貴族なのかもしれない。マグルの貴族文化は、私は詳しくないが……。

 

 月の狩人やクルックスが革や布の身軽な狩人服を着るのに対し、彼女の装束は──本物の銀だろうか──輝く金属の意匠が見て取れる。

 文化的な隔たりが大きいように見えた。セラフィの属するカインハーストの方が、市街を生活圏とする月の狩人より古いのだ。

 

 そういえば、マルフォイ家が王族と関わりがあったとか何とか風の噂で聞いたことがあるが、それも今は昔の話だろう。

 

 セラフィについて私が知っていることは、この程度だ。

 もしも、あと数年成長したセラフィがニコリとでもすれば、クラリとする男性は多いだろう。

 

 これは一般論だ。もちろん。一般論として書き綴っておくだけである。

 誰も見ないとは思うが、私のなけなしの名誉のため以下略。

 

 




【登場人物イラスト】
15話『ビルゲンワースの閉じた瞳』の後書きにおいてあります。


【解説】
筆記者Q……いったい何者なんですかね(前書き)


【あとがき1】
 ご感想でもいただいてしまったのですが、オリジナルの登場人物がどこの所属なのかが分かる話について、いつか書こうと思ってずっと先延ばしにしていたのですが、ようやく書けました。ちょっとホッとしています。
 長い本編を見るよりは、まとまっていると思います。こんな感じでどうでしょうか?

 ちなみに今後、主要人物達に近いオリジナルの登場人物は一人(教会の黒服君)くらいしか増えませんのでご安心ください。なぜこんな断りをするかと言うとオリジナルの登場人物が増え続ける二次ではない、という宣言でもあります。
 いえ、単純にね……筆者のスタミナがね……保たないんですよ……。


【あとがき2】
 リンク・太字・傍線を多用していますが、当分は本話限りのリスペクト表現です。


【次の交信はいつ?】
8月から9月頃ということで、ひとつ目安にさせていただいたら……(絶対しますとは言っていない)
ヤーナム編(約15話)、ホグワーツ編(20~30話)
予定なのですが、現在、ヤーナム編が6割進捗です。
正直、8月から9月も危ないかもしれないので気長にお待ちいただければと思います。
登場人物イラストが、ざっくり完成したのが幸いですね。
全然関係ないんですが、おじさんって何であんなに描くのが難しいんでしょうね。あとシモンって何で襟が多いんですかね。破廉恥ですよ。


【おめでとう、エルデンリング。ありがとう、エルデンリング】
 早く砕けてくれなんて言ってすまなかった。赦してくれ……赦して……くれ……
 トレーラーを見た不死人、ヤーナム民、葦名の民は沸き立ったことでしょう。
 筆者は、最近隻狼を買ったばかりだったので、とても嬉しかったです。
 あすこ、キャンプファイヤーがあるので実質ヤーナムでしょ。
 ところで、褪せ人君が墓場を歩くシーンで薄霧の向こうから三角帽とノコギリ鉈が見えた時には痺れましたね(粉末状の青い秘薬を吸いながら)

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