冬は良い。しかして春も良い。だが夏は好かん——なんだ、分からんのか?私はアイスを所望する! 作:FG廃課金ユーザー
だけども自分自身が書いた小説の中で、この小説が一番面白かったのです。自分で書いたものは展開を知っているので詰まらなかったりするのですが。初めてですよこんな心地は。やっぱりスカディ様を布教するためにこの小説を書いてて良かったとしみじみと感じましたね。
これからも司波千影(スカディ)と月影依琉(オルトリンデ)をよろしくお願いします。
あと誤字報告してくださった方、誠にありがとう御座います。読み返していてもどうしても見落としているところがあるので凄くありがたいです。
「千影さん、平均308msです」
おぉ…というどよめきをよそに講師のもとへ好評を聴きに行く。
「最大加速から見ても、干渉力は充分なようです。タイムも素晴らしいですね。ただ……」
ほめられたのちに若干の改善点を述べられた後に千影はクラスメイトの輪へと戻る。
すったもんだがあった後の実習で行われたのは、基礎単一系の移動魔法である。レールの上に載る金属の物体を魔法を使用して10メートル程動かすというものである。
魔法師は一般的にサイオンを感じることができる。半透明であるフォースフィードバックパネルより返されてきた起動式であるサイオン波を認識する。そのサイオン波を自らの魔法演算領域に送り込む。
魔法式という干渉力を持ったサイオン構造体となった代物。それを意識領域の最下部のゲートから、イデアにある対象のエイドスへ投射することで効果を得る。
実は千影はエイドスをFate世界における根源のようなものだと認識していた。だが、その割には抑止力が仕事をしていなかったのでFate世界におけるヤバい概念、『根源』では少なくともあり得ないという事が分かった。
まぁ、それはともかく。
当たり前のような顔で平均300ms台に乗るのは一科生であっても難しいと言えるだろう。なお、当たり前のように300msを切る速度の深雪はこの年代の魔法師の卵からすればびっくりものなのだ。ちなみに千影と依琉は人間の一般的な反応時間を大きく上回る速度で魔法を展開する事もあるが、それはよほどの緊急事態であるため、今はこうして猫を被っている。
「すごいですね、千影さん!平均300msだなんて」
と言うようにクラスメイトに囲まれ称賛され始めた。千影はその称賛を、顔を赤らませながら受け入れる。さすがにこの程度の賞賛で「やめよ、恥ずかしいではないか」と発言はしないのだ。しないったらしないのだ。
「ええい、やめよ!依琉も同じことができるわ」
いや、どうやらこの程度で羞恥心が降り切れたらしい。スカディ様は可愛いね。
そんなことを言うと、大抵エイミィが寄ってくるのだ。エイミィは大抵冷静沈着な千影の姿を見て珍しく思い寄ってきたのだ。弄ると面白そうだ、と
「えー、千影恥ずかしいの?可愛いね……ふごっ!
哀れ、余計なことを言ったエイミィはその余計な事を言う口にガリガリ君ソーダ味を突っ込まれたのだ。なお、あずきバーではなかったのは一種の温情であろうか。
「ふん!エイミィが余計なことを言うのが悪いのだ!」
なお、周りの千影のクラスメートはおおよそ照れ隠しに行ったであろう行為を行った千影に生暖かい目線を送るのだった。
ちなみに、エイミィは突っ込まれたガリガリ君を普通に食べ始めたとさ。
「ガリガリ君久しぶりに食べるとおいしいね」
「そ、そうか」
実技の後でそんな会話が成されたのは言うまでも無い
★
放課後、担任であるカウンセラーの方から話を聞いた。風紀委員に推薦されているので、今日の放課後に風紀委員会の方に赴いて欲しいとのことであった。
知らせるのが遅くなって申し訳ないとの言葉もあったが、前に直接風紀委員会長に話を聞いていたのでそこまで問題は無かった。
エイミィと依琉にその旨を話したところ、私の用事が終わるまでクラスで待つと言っておいた。
どうせ達也や深雪は一足先に行くと言っていたので、部屋には既に居るのかもしれないが、話はまだ始まってはいないはず。そう思って来てみれば。
「……誰もいないではないか!」
せっかく少し急いできたのに何か損をした気分の千影であったが、さすがに誰も居ないのは可笑しいと思ったために、もぬけの殻になった部屋にいるべき風紀委員の面々が良そうな場所を考える。
考え始めて、一つの場所しか思い浮かばなかった。
「……生徒会室か、あるいは……全く、達也め。集合場所が変わるならそう言ってほしいのだが」
1を聞いて100を知るスカディの能力をもってすれば、0に限りなく近い情報から1を導き出すことも可能である。ただ、さすがのスカディであっても今達也がどんな目に合っているのかは想像が付かなかった。自分自身がすべてを把握できるのは、自身の部屋に展開している
ちなみにどうでもいい話だが、
ただ、読者にとってみれば、おおよそ8月の熱い時期でありながら、家に帰れば10℃のひえっひえっの部屋が有れば最高であろう。
そのため、夏の暑さ真っ盛りな時期になるとスカディの部屋は
余計なことを解説してしまった。本題に戻るとしよう。
千影はいなくなった風紀委員の面々が生徒会役員室に居ると予想(と言う名の予言を)し、一つ上に存在する生徒会室へと赴いてみる事にした。
「しかしこの風紀委員会本部は好まぬ。達也に片付けさせるか、どうせあ奴も風紀委員になる予定なのだろう」
一度風紀委員会本部を出て上の階へと続く階段を上り、生徒会役員室がある階まで登ると生徒会室に向かった。ちなみに一校の制服はタイトワンピースに分類されるであろう代物なのだが、一般的にスカート部分に切れ込みが入っていてある程度動けるようになっている。が、それが無い。その代わりにサイドに三角プリーツが存在するが、やはり動きにくいのだ。二槍術を取り扱う千影からすれば動きやすいに越したことはないのだ。
千影からすると、制服よりかは千影の半ば部屋着と化している紫のドレスの方が動きやすい。
斯くして生徒会役員室前に来てみれば、激しい口論が行われているではないか。これは達也が原因かと直感で感じた千影は思わず溜息をついた。
「達也はトラブルを引き付ける体質なのではないか?ここまでだと笑うしかないぞ全く……」
そんな事を宣っている千影だが、スカディ様も幸運がDと普通に運が低いので人の事は言えない。だがとりあえず入ってみなければ状況把握ができないためにドアを開けば、お昼に会った生徒会の面々に風紀委員長の顔があった。
「失礼する、風紀委員は……どういう状況なのだ、これは?」
どことなくギスギスしている空気に千影が疑問を呈す。
「千影か、待ちくたびれたぞ」
「そのようなことを言われても集合場所が生徒会役員室だなんて知らぬわ」
「言っていなかったか?」
「聞いていないんだが」
「………すまん、いろいろあってな、すっかり忘れていた。すまなかったな」
摩利はたまに伝えるべき情報がすっぽ抜ける事が有る人物である。雰囲気によらずそういう事がある一面は意外だった。だが……そのことを伝えたのは千影がご飯を食べ終わり生徒会役員室を出ていき、それに続こうとした達也や深雪を呼び止めてその連絡をしていたため、千影だけが知らなかったのである。
ちなみに達也と深雪は千影が放課後に生徒会役員室に集合だという事を既に知っているものだと思っていた。だが過ぎたことはしょうがないので、部屋から適当にアイスを取り寄せてアイスを食そうとする。
「どーれーにしようかな?」
ぎすぎすしている空気の中で、食べるハーゲンダッツを選び始める千影は明らかに空気を読んでないが。摩利はこの空気の中で当たり前のようにアイスを食べ始める千影に若干引いていた。
この部屋には生徒会役員が全員揃っていて、何故か達也も深雪もいた。達也は生徒会役員と思わしき人物とにらみ合っている。ハーゲンダッツのストロベリー味を食べながら深雪の方へ寄り、今の状況を聞くとあらかたの情報を話してくれた。
「……」
「あの……お姉さま?」
「まぁ仕方ないだろう、達也本人が望んだことだ」
深雪が言うには服部半蔵と言う伊賀忍者の末裔だと確信できる名前の副生徒会長とトラブルとなり、深雪を守る意図もあってか決闘を仕掛けたという。なお決闘とはいえ殺し合いではなく技量の競い合いみたいなものなので千影さんとしては良いんだか悪いんだか分からない。なお本名は服部半蔵ではない。
だがそんな事は知らない。
そんな事よりスカディとして命の奪い合いと言うのはできるだけ避けたい感情を持つ千影は、どことなくその内容を聞いて安心した溜息を吐いた。決闘と聞くと危険な物というイメージが千影にはあったのだ。
ちなみに達也は
その後は風紀委員の本部に戻って風紀委員についての説明を受け、いろいろあった濃密すぎる一日が終わる……はずだった。
それは達也、深雪、依琉とともに食卓を囲んでいた時の事である。千影はその時部屋着とかしている紫のドレスを着ていたのだが、食卓に置いていたスクリーン型の携帯端末から音が発せられた。携帯端末に書かれていた名前は…
「お姉さま、だれからですか?」
「母からだ」
すると深雪は若干息を飲んだ、千影が“母”と呼ぶのは現在四葉家の当主を務める四葉真夜その人のみである。千影は応答ボタンをタッチすると、すぐさま携帯端末に耳を当てながら席を離れる。
「私だ。母よ、何か用か?」
そうして始まった会話を行いながら、ダイニングから離れ廊下へと出ていった千影だった。
一方取り残された3人は。
「お兄様、一体何なんでしょう?」
「分からん。だがろくでもない事だけは確かだろう」
そういうと苦々しそうな顔をする達也だった。四葉の当主候補としては千影と深雪が挙げられるが、深雪としてはその話が出たら姉のように想っている千影に譲ると考えている。
千影は氷を司る
千影は雰囲気と言葉遣いからして近寄りがたい印象を与えるが、言葉の端々に現れる愛情は千影の本質を表している。その事を知ったのは数年前のとある夏休みの一件が関係していた。
その夏休みの一件もあって深雪からしたら千影が四葉本家の当主になるべきだという思いを抱うのはいわば当然だった。ちなみに深雪は姉と兄と双方と結婚したいとか考えているが、姉の方は一応従姉なので何とかなるが、同じ両親を持つ兄ともなると普通に無理な話なので胸に留めてある。
だいたいそんなことを深雪が考えていたら会話を終わらせたのかドアを開けて廊下から千影が入ってきて席へと着いた。席に着いた千影に達也が疑問を投げかける。
「真夜様はなんと?」
「どこまで言えばいいのかが分からんが……どうやら我々の学校生活を乱す可能性のあるやつらが居るそうだ。気をつける様に、と。とりあえず聞いた名は……
エガリテ
……だそうだ。とりあえず気を付けるに越した事は無いだろう。どうせ達也も私もちょうどよく風紀委員だ。学校内に手が伸びてくる可能性が無きにしもあらずだからな」
「真夜様は何故エガリテという組織を放っている?危険ならば……」
達也が疑問に思うのも仕方がない。何しろ四葉はその程度の組織ならあっさりと壊滅させられることができる。
「どこかで使いようが有るだろうと判断したようだ。そんな組織どこで使えるのか分からんがね」
「……なるほど、気をつけよう」
「あぁ、そうしてくれ達也。そうだ、ついでに部屋に帰ってアイスを取ってきたのだ。何が良い?今あるのはバニラ、ストロベリー、チョコチップ、ミントの4つだが」
夕食はすでに食べ終えているのでデザートを兼ねて、と言いながら抱えてきたアイスをテーブルの上に並べる。黙って達也がミント味を取り、深雪はストロベリー味を取った。依琉はバニラを取ったので千影が残りのチョコチップを手に取る。
しばらくすると4人の同級生たちがアイスの甘さに顔をほころばせるほほえましい光景が見られた。
それは、何にも代えがたい日常の一幕である。
ちなみに千影さんの制服のシルクテイストオーガンシーの刺繍は紫を基調として千影と依琉が住む氷の城を模した城影を白抜きにした刺繍で、依琉の方は黄色い三日月に、いつもの城影をかたどった模様を紫で刺繍したものです。
過去偏(追憶編に相当)は書いた方が良いか否か
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ぜひ書いてほしい
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書いてほしいが無理強いはしない
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書いて貰わなくても問題は無い