Magolor In Under World   作:青ボタン

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お待たせ致しました。続きです。


レベル3 アルテリア ラボ【ステージ2】

死んだように眠っていたニンゲンを起こして、そろそろ行こう、と声をかける。携帯電話についている時計を見れば、意外にも一時間近くここにいたらしい。そう急がなければならない理由は既に無いとはいえ、のんびりする理由も無い。

 

――――ニンゲンを置いてこっそり先に行ってしまおうか、と考えなかったと言えば嘘になる。ただ、この先のことを考えれば、残念ながらここで置いていく訳にはいかなかった。

 

「オォ……ナンカ、温かくナッテきたネェ」

「この先はホットランドだからね」

「ホットランド……?」

「溶岩と機械ばっかりの場所」

「ヘェ……火山でもアルノ?」

「そもそも、ここが火山の下だから」

「ア、ソッカ」

 

なんで知ってるんだ……とは言わず、代わりに他愛のない話で場を繋ぐ。デカデカと歓迎の文字をばらまく電光掲示板の前を過ぎると、意外にもすぐに、見覚えのある場所が見えてきた。

 

ギラギラと滾る熱気の中。涼しげに、けれどどこか居辛そうな顔をして立っている研究所。間違いなく、先程連れてきてもらったアルフィーの研究所だ。

 

「ア、アソコ!さっきサンズに連れてきてもらったんダヨォ」

「へえ」

「ヨカッタ!意外と早く戻れたネッ!待ってるだろうし、早く行コウ!」

 

また逃げるのではないか、とやや強引に手を引くと、危惧したよりもあっさりと人間はついてきた。道の中央で少し止まったのを行きたくないという意思表示だと取ったのだが、どうもそうでは無いらしい。

 

手を引かれたのが嫌だったのか、人間はマホロアを押しのけて先に研究所へと入っていった。

一度来てからそう時間は経っていないので、何の変哲もない研究所……と思いきや、見渡して直ぐに視界に異物が映る。

 

「ブツブツ……ブツブツ……」

 

白衣を纏った黄色い物体が、真新しいパソコンにへばりついていた。

猫背を通り越してアルマジロのように丸まっているそれは、消去法で考えるまでもなく、当然アルフィー博士だ。

 

「アルフィーハカセ!戻ったヨォ!」

「ひっ、だ、だれ!?」

 

大きな声で声をかけると、漫画のように飛び跳ねてこちらを振り向く。扉が開いたのにも気付かないほど熱中していたらしい。

 

マホロアや人間の姿に驚いたり、焦って着替えてこようとしたりするアルフィーを落ち着かせること、約十分。ようやく冷静さを取り戻したアルフィーは、今度は興奮した口調でマシンガンのように言葉を連ねた。

 

「た、旅人さん!あなたが改造したこのパソコン、とっても凄いよ!あんなに短時間でここまで凄いものになるなんて」

「大したコトないヨォ!ハカセが代わりに、色々見せてくれる約束ダシ!」

「その……た、大したものは見せられないけど、それでも良ければ見て行って!ち、ちょっとした質問なら答えられるし…」

「助かるヨォ!ジャ、まず1階から見せて欲シイナ〜!」

「ま、任せてちょうだい!」

 

博士は元気よく返事をすると、研究所のあちこちを歩いて、都度説明をしてくれた。

二階建ての建物ではあるが、その外装の威厳とは裏腹に、……なんとも、形容のしがたいものばかりではあったが。

 

マホロアが期待していたような面白いものは、残念ながら見つからないまま。わずか30分程で、研究所の見学会は終わってしまった。

 

開けた一階には、ニンゲンを映すモニターとPC以外に何も無く、二階なぞもはや趣味のスペースと言っても過言ではないラインナップ。何を研究しているのだが、これでは全く分からない。

 

「こ、この研究所にあるのは、この位かな……どう?ま、満足してくれたかな……?」

「エッ?……ウン!なかなかに興味深かったヨォ、ハカセ!」

「そ、そっか……!なら良かったよ……!」

 

心にもないセリフを心を込めて言ってみれば、アルフィーは『心底安心した』とでも言うような顔を浮かべた。

 

「コノ研究所にある設備はコレダケ?上の階がアッタリしないノォ?」

「う、うん……!大した研究もしてない、小さな研究所だから……」

 

念の為聞いてみれば、すぐにふるふると首を振る。

 

「あ……も、もう見たい場所はない?ホ、ホットランドの中くらいなら、案内するけど……」

「ジャア、セッカクだしお願いしようカナッ!……あ、その前にトイレ、借りてもイ〜イ?」

「え……と、トイレ?」

 

一箇所だけ。……一箇所だけ、話題にもあげられなかった場所を指さすと、アルフィー見るからに狼狽して、何かに縋るようにキョロキョロと周りを見回し始めた。

 

「ハカセ?」

 

視線を合わせるように覗き込むと、アルフィーは「あ…」と小さく声をこぼした。

 

「ドウシタノ?」

「い、いや……その、ト……トイレは今壊れてるの……!ごめんなさい……」

「エェ〜?デモ、この辺にトイレがある建物って、ココだけなんだヨォ……チョットでいいカラ、オネガイ!」

 

ぼふ、と手袋をはめた手を顔の前で合わせてみれば、アルフィーは見るからに冷や汗をかき始める。

 

「あの……その……ご、ごめんなさい!とにかくダメなの……」

「……ソッカァ。――――なら、仕方ないヨネッ!」

 

ぱっ、と手を下ろすと、安心させるために笑顔を向ける。そしてくるりと踵を返して、暇そうに辺りをウロウロしていた人間に向き合った。

 

「キャラ、別のトイレ探しに行こうヨォ!」

「え?でも、トイレなんて……」

「イイカラ!……また来るネ、アルフィーハカセ!」

 

軽く手を振りつつ入口から出ると、すぐに人間も後を着いて外に出てきた。

そのまま研究所から少し離れると、マホロアは人間に顔を向ける。

 

「……マホロア、悪いんだけど、地下世界にトイレは――――」

「キミは」

「……?」

 

困ったような、諭すような声を出す人間の言葉を遮る。

 

「キミは、あのトイレにナニがあるか、知ッテル?」

 

そう聞くと、人間は少し考えたような顔をした。

 

「見たことないな、言われてみれば」

「フゥン……」

 

ふわりと高くまで浮き上がって、真っ白な研究所を見下ろしてみる。高さは二階建て。広さは……見て回ったのと、おそらく同じ程度。ならば、アルフィーが決して見せようとしない、あのトイレの先は……?

キャラに見えないようにほんの少しだけ笑顔を浮かべ、パチリと携帯電話を開く。

 

「マホロア、どうしたの?」

「ン〜〜」

 

そのままボタンを2回ほど押して、ふわりと地上へ戻ってくる。そして、そのまま携帯電話をしまって、企むような顔で笑った。

 

「ネェ、キミ、あの場所……気にならナイ?」

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