Magolor In Under World   作:青ボタン

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レベル2 オイリースノーフル 【ステージ1】

数多くの犬型モンスターだとか、無人のパズルだとか氷だとかを踏み越えて、ようやく街らしき場所までたどり着く。わんと鳴く生き物が現れる度にキャラが木の枝を投げて追い払っていたのは見ていて面白かった。この寒さの中アイスクリームを手渡された時はどうしようかと思ったが、固形物は食べられないだとか適当な嘘を言って突き返した。寒い中冷たいものを食べるだなんて、ニンゲンはよっぽど寒いのが好きらしい。

 

「ヤ〜ットついたヨォ……もう、手足の感覚無くナッチャッタァ」

「足は元から無いだろ」

「ただの例えダヨォ」

 

『ようこそ!スノーフルのまちへ!』とでかでかと書かれた看板を見て、思わずため息をつく。比喩でもなんでもなく、もはや指先の感覚は完全になくなっていた。ごしごしと手袋越しに手を温め、地下世界に落ちてから初めて見る集落を見渡してみる。

お世辞にも発展しているとは言い難いが、それでも温かみのある町だ、とマホロアは思った。表を歩いている人も少ないし、建っている家だって木製のレトロな建物ばかりだ。間違いなく、文明レベルは自分の思う最低水準を下回っている。

 

「……でも、ナンカにぎやかダネェ」

「そうだね。まあ……主に、アイツらのせいだろうけど」

 

とキャラが指さす先を見て、「アッ」と小さく声を上げる。少し離れた場所に建っている一際大きめの家の前に、二人のスケルトンが並んでいた。

 

 

レベル2 オイリースノーフル

 

 

「に、兄ちゃん!あれって……ニンゲン!?」

「いや、モンスターじゃないか?話によると旅人らしいぜ」

「そっか。じゃあ、うちで歓迎会しないとね!」

「おい、その隣にいるのはなんだ?」

「あれって!……兄ちゃん、もしかしてあれがニンゲン?」

 

コントのように並んで話し始めた二人に近づき、マホロアはふわりと頭を下げる。先程の経験を踏まえて、キャラの腕は掴んでおいた。

 

「ヤア。ボクはマホロアっていうんダ!キミがサンズの弟さんカナ?」

 

にこやかにそう挨拶をすると、背の高いスケルトンはくるくると(何故か)回転し、

 

「そうッ!おれさまはパピルス!旅人とニンゲン、よく来たな!」

「パピルスって言うんだネ!ボク、実は外を歩き回って凍えそうなんだヨォ。チョットでいいから、おうちに入れてくれないカナ?」

「もちろんッ!ニンゲン、キサマもくるのだ!ホントは町に着くまでにいっぱいパズルがあったんだけど、来ちゃったら仕方ないもんね!」

 

どうぞどうぞと促されるまま、家の中へと足を踏み入れる。暖かい……とまでは行かなかったが、それでも外よりはずっとマシだった。

サンズの気使いで渡された暖かいお茶を両手で抱え、ソファーの上に座ってひと口飲む。

 

「……おい、何まったりしてるんだよ」

 

キサマはここでカンキンされるのだ!だのなんだの言いながら、パピルスは足取り軽く家から出て行ってしまう。サンズはとうの昔にどこかに行ってしまったし、どうしてこんな状況になっているのか、家主不在のまま時間が進んでいた。

紅茶のカップを手に持ったまま、キャラは肘でマホロアを小突いた。完全に停滞したムードが流れる中、カップの中身をひと口飲んで扉の方を見る。

 

「コンピューター、あるカナ」

「は?コンピューター?」

「ソウ。コンナニ長い間ローアと引き離されるとと思ってナクテサ、連絡手段を用意して無カッタ

ノ」

「ローア?」

 

誰?と無表情のまま首を傾げるキャラに、隠すこともないかと話し始める。もうひとくち、と口をつけたカップの中身は、すでにほとんど空だった。

 

「ボクの愛船ダヨォ。異空間を自由に渡航デキル、ココロを持つ船ナンダ」

「心を持つって……生き物みたいなもの?」

「そんなトコロダヨォ。わずかでもインターネットに繋がれば、ローアの回線にハッキングして連絡が取れると思うんダケド」

「ハッキングって……君、そんなことできるの?」

「難しいのはムリダヨ。旧式ダケドモニターが置いてアルシ、コンピューター自体はどこかにあると思うんダケドナァ」

「それでパピルスが帰ってくるまで待つつもりだったのか。……多分、しばらく帰ってこないと思う。勝手に探しちゃえよ」

「エェ、帰ってきたトキ怒らないカナァ」

「大丈夫」

「ソウ?」

 

じゃあそうしよう、と体温を取り戻した体を起こし、カップをテーブルに置いて捜索を始める。この部屋に無いことはすでに確認済みだったので、可能性があるならば、それは二階にある部屋に絞られた。

どちらの部屋にも鍵がかかっていたが、あいにくその程度で諦めるような精神性は持ち合わせていない。自分の魔力では異空間ロードに繋がるゲートを安定して開けることは出来ないが、現実空間と現実空間を繋ぐほんの僅かな隙間であれば、異空間を通してこじ開けることが出来る。大量のシールが貼ってある部屋の扉の向こうに座標を設定し、魔法陣に魔力を注ぎ込む。あらゆるセキュリティを無視して、あっさりと星型の扉は開いた。

 

「……!」

「おじゃまシマ〜ス……オッ、いきなり当たりダヨォ!」

 

絶句しているキャラを後ろに、躊躇なくゲートをくぐり抜ける。入ってすぐ、部屋の右奥にコンピューターらしき大きな箱が目に入った。分厚いモニターに大きな本体、物理的に押し込むことで入力するキーボード。動くかどうか不安になるほどの遺物ではあったが、スイッチを押してみると見事にモニターは色を映した。

 

「オォ……スゴイ、ちゃんと動くヨ。インターネットは……繋がってるネェ!それならパパッとプログラムを書いて接続……アー、スペック足りないナァ。本体の方いじって上げチャオ」

「おい、マホロア?」

 

異空間ゲートを通過することなく、外から声をかけてくるキャラの言葉を一旦無視して、箱を机に乗せ分解。空間を歪ませている原因が機械だった時のために持ってきた、工具と部品一式が役に立った。

 

「エート、まず容量増やして……コッチがモニターに繋がってるカラ、コッチが回線ダネ。ウッワァ、すっごく弱いヨコレ……もう、直接ローアのサーバーに繋イジャオ。ってことはココはイラナイネ」

「あの、マホロア……それ、元に戻せるの?」

「ア、確かに。じゃあ切断は止めて分離にシヨウ。このキーボードじゃボクが使ってる文字がうてないカラ外してこっちに変えて、モニターの画素数ハ……」

「早く、パピルスが帰ってくるよ」

「アー、ソレもそうダネ。じゃあ最低限使える程度でやめトコウ。……これで繋がるカナ?」

 

かちりとスイッチを入れると、青色のスクリーンに文字が流れ出す。最後まで読み込んだ所でパスワードを入力すると画面は切り替わり、中央に星のマークが現れる。

 

「ヤッター、成功ダヨォ!」

 

背中にキャラの視線を感じつつ、急いで操作盤に文字を打つ。空間値の現状報告を求めると、一瞬の待機時間の後、画面の中央に大きく何かの数値が表示された。モニターはその数値を強調するように、画面いっぱいにまで数値の表示を拡大する。

 

「……」

「その数値、何?」

 

何故かかたまってしまったマホロアに痺れを切らしたのか、苛立ちを隠さない声でキャラから声がかかる。表示された当初は一定だった数値は、レスポンスがないことを追求するように増え始めた。

 

「ゴ……」

「ご?」

「ゴメンネローア!ボクだって、こんなに時間がカカルとはおもってなかったんダヨ!キゲンなおしてヨォ!」

 

数値は、ローアが待ちくたびれた時に表示してくる、待たされた時間のカウントである。そういえば、少しの外出だと言ってローアを出たにもかかわらず、ほぼ丸一日連絡無しで放置したのだ。あわてて謝罪の文を入れると、数値は拗ねたようにさらに大きく表示される。端の方はついに見切れてしまった。

 

「コンド一日メンテナンスするカラ!前に欲しいッテ言ってた機能も付けるヨォ!」

「……なにやってんの?」

 

そこまで打ち込むと、『待たされた秒数カウント』はようやく消える。信じますからねとでも言うように今度は画面の色を変えると、常識的な大きさで時間とは別の数値を表示した。――いくつかの文字も混じったそれは、先程マホロアが頼んだ、現在のローアのいる位置の座標である。

 

「……アレ?結構安定してるネ。多少の乱れはあるケド、この程度なら飛べそうじゃナイ?……もしかして、ズット待ってれば改善したのカナァ」

 

地上にいた時、馬鹿げていると思うほどに乱れまくっていた数値は、無理をすれば異空間ロードへの道をあけられそうな程度にまで回復していた。そもそも空間が歪んでいる場所から異空間に突入するということは自殺に等しいのだが、ローアならば耐えることが出来るだろう。瀕死の状態でポップスターまで飛ぶことが出来たほどだ。その後の自分の改造の影響もあり、おそらくはちょっと揺れる程度で済むだろう。自分がここまで来た意味はなんだったのかとゆるゆると首を振る。

 

「じゃあ、もうここにいるイミはナイネ。ローア、地上までの道を開けて――イヤ」

 

コノ周辺の電力量を調べてクレル?と。今度は言葉には出さずに打ち込んだ。

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