Magolor In Under World   作:青ボタン

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レベル2 オイリー スノーフル 【ステージ2】

その後。魔改造されたコンピューターは無事に――多少スペックは上がってしまったが――元に戻り、異空間ゲートを閉じて元通りの状態に整えた。家主が未だに帰ってこないことは不安だったが、サンズの話ではパピルスはニンゲンハンターらしい。警戒か怯えか、異空間ゲートを断固として潜らなかったあの子供がハントされては困る。……もっとも、困るのは利用価値があるからなのだが、とにかく。家に入れてくれた恩を無視する形にはなるが、さっさとこの家を出て、先に進む事が正しいように思えた。

 

一応逆恨みはされないようにと書置きだけ残し、ろくに他の部屋を見ないままパピルスの家を後にする。扉を開けた瞬間に流れ込んでくる冷風に思わず開いたばかりの扉を閉じかけたが、キャラに無理矢理押し出され、無事雪国に放り出された。

 

「エート、出口はアッチカナ」

「あ、待って。出る前に買い物だけさせてよ」

 

家を出て左方向を向くと、すぐにマントを引っ張られ停止する。今更だが、この子供は随分と力が強い。並の防御の敵なら、棒やおもちゃでまっぷたつに出来そうな様相である。それとも、ニンゲンはそのくらいの力を持っているものなんだろうか。ヨーヨーで敵をなぎ倒しながら進む親友を知っているだけに特別驚きはしないが、万が一でも敵になると脅威だろうと思う。

 

「イイヨ。それまで家の中にいるカラ」

「だめ。一緒に行くのが嫌なら先に行っててよ。しばらく一本道だし、すぐに追いつく」

 

なんでそんなこと知ってるんだよとはあえて言わず、その案に乗ることにして左右に別れる。

 

長い道を歩いていると、だんだんと霧が深くなってくる。気にせず早足で進んでいたのだが、そのうちに足元も見えないくらいの濃霧になった。若干の心細さを感じながら、一本道を突き進む――――

 

「本当だな?」

 

と、声がして、ピタリと動きを止める。息を殺して通路の端にくっつくようして身を隠すと、足音と話し声が二つ、霧の向こうからこちらへ近づいて来た。

 

「本当だよ!ニンゲンを捕まえたんだ、アンダイン!」

「それが本当ならお手柄だ。今はどこにいるんだ?」

「おれさまの家だ!」

「鍵は?」

「してないよッ!入れなくなっちゃうからね!」

「……そうか」

 

二人の声が自分の横を通り過ぎてから、マホロアはほっと息を着く。どうやら霧のおかげで気づかれなかったようだが、

 

――――今の声、片方はパピルスの声だったヨネ

 

長い間家に戻ってこなかったのは、応援を呼びに行っていたかららしい。ニンゲンであるキャラを閉じ込めたつもりで、家の中に入れて放置したのだ。彼が外から鍵をかけなかったおかげで難なく出られたとはいえ、あのまま中に居続ければ危なかった。もてなすフリまでして、自分たちを騙していたのだ。

よりにもよって自分が騙されていた事に衝撃を感じる――――が、今は動揺している場合ではない。彼らが行った方向は町の方で、彼らのターゲットであるキャラは今、おそらくこちらの方に向かってきているのだ。このままでは鉢合わせになってしまう。

 

「……」

 

わざと鉢会うまで待ってから助けて恩を着せてもいいが、その後の展開が間違いなく面倒くさい。こっそり、穏便に済ませてしまおう。

離れていく話し声を追って少し近づき、彼らの踏みしめる雪道に向けて両手を差し出す。座標は……自分とサンズが初めて出会った、あの一本道で良いだろう。大して代わり映えのない景色であるのだし、狐につままれたとでも思ってくれれば良い。進行方向にあわせてゲートを繋いで、自然に距離を離してしまおう。

 

「パピルス、何度も言うが鍵は外から閉めないと意味が無いんだぞ。オリを作るなら通り抜けられない間隔で――――止まれ」

「ヤバッ」

 

声が警戒を帯びたことに気付き、展開した魔法陣を急いで発動させる。魔力の動きでバレたか、もしくは霧から光が漏れたか。とにかく、バレてしまったならば仕方ない。グラデーションのように繋ぐつもりだった魔法陣を即効性のものに書き換え、発動する位置を調整し直す。少し落下することになるだろうが、怪我をする高さにはならないだろうから許してもらおう。

 

「サヨナラッ!」

 

がぱりと二人の足元に大きな穴を開ける。警戒していたらしい彼らも流石に下までは注意していなかったようで、あっさりと落ちていってくれた。異空間で繋げた先は、ここからならかなり距離がある。急いでこの場を離れれば、もう見つかることはないだろう。

 

「まだこんな所にいたの?足、遅いんだね」

「……間一髪だったみたいダネェ」

 

キャラが来ないうちに彼らを追い払う判断は間違っていなかったようだ。60秒も経たないうちにやってきたキャラを見てほっと息をつく。放っておけば、間違いなく顔を合わせていただろう。パピルスの方はともかく、もう一人の方はおそらくちゃんとした戦士だ。まともにやり合っては勝ち目がない。

 

「サッサとここを離れるヨォ。買い物は済んだんデショ?」

「うん、済ませたよ。本当なら来てすぐにするつもりだったんだけど、なんかゴタゴタして出来なかったから」

「ジャアもうここにいるイミはナイネ!ほら、イクヨ!」

 

強引に話を切り上げ、すぐに移動を始める。さっきまでゆっくりしてたのに、と愚痴るキャラの腕を取り、ばてない程度の最高速度で雪道を駆け抜ける。ローアも待たせてしまっていることだし、目的がはっきりした以上もたもたしている暇はない。

洞窟の入口をくぐると、じっとりとした空気が肌を包む。代わりに身を切るような冷気はだんだんと薄れていき、再び冷え始めていたマホロアの体を緩やかに温めた。とはいえ、ここは地下洞窟。快適な温度とはとてもじゃないが言えない。このエリアも、出来るならばそうそうに出ようと心に決めた。

 

少し落ち着いたところで、ちょっとした不安要素を思い出し小さく声を上げる。スケルトン兄弟の兄の方、未だ行方の分からないサンズの事だ。

 

「……そういえば、サンズはドコに行ったのカナァ。いつの間にかいなくなってたヨネ」

「サンズなら――」

「オイラならここだぜ」

 

お前さんたち、随分と急いでるな――――と。雪の積もった見張り小屋の下から、スケルトンが顔を出した。

 

レベル2 コンプリート!

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