二代目宇宙刑事ギャバン=十文字撃が宇宙犯罪組織との戦いの先に辿り着いたのは…。

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 宇宙刑事ギャバンの映画のチラシを見た時に、マイナーSNSに日記として投稿したものを加筆した二次創作です。

 今、読み返すと…、かなり前の事だったんだと…。

 時の流れは早い!

 まるで…。


 光の速さで明日へダッシュ!

 するみたいにwwwww



二代目襲名

 宇宙犯罪組織の台頭から数十年。

 

 今だ、宇宙は混沌の渦中であった。

 

 

 地球での任務を終えた宇宙刑事ギャバン=一条寺烈は、宇宙犯罪組織の新たな計画を察知し、調査を開始した。

 

 しかし、潜入捜査中に乗船していた宇宙船の爆発事故に遭い行方不明となった。

 

 

 一条寺烈が行方不明の後。

 

 彼が宇宙犯罪組織と癒着していた証拠が次々と発見される。

 

 それは、連日ニュースを騒がせる事になった。

 

 人々は、彼を『墜ちた英雄』と呼び蔑(さげす)み、心に刻み込んだ。

 

 

 

 それから、十数年後。

 

 一条寺烈の息子の撃(げき)は父の無実を晴らすため、信じる父の意思を継ぎ、宇宙犯罪組織と戦うことを決意した。

 

 そして、宇宙警察に入隊し厳しい訓練を受ける。

 

 コム前長官の根回しで、本名の【一条寺】ではなく、【十文字】の姓を名乗っていたために、一条寺烈の息子と気付く者は居なかった。

 

 

 厳しい訓練の末に、二代目の【宇宙刑事ギャバン】を襲名した十文字撃。

 

 それは、巨大な宇宙犯罪組織と戦い、行方不明の父親の汚名を雪(そそ)ぐ苦難の道の始まりであった。

 

 

 

 就任の日。

 

 本来なら、大勢の人に祝ってもらえるはずであった…。

 

 しかし…。

 

 コム前長官の私室で、

「おめでとう。」

 密かに、

「撃。」

 祝う二人。

 

 

 右腕は敬礼し、

「ありがとう御座います。」

 左の拳に決意を、

「ようやく、父と同じ舞台に上がれました。」

 固く握り締める。

 

 

 コム前長官の、

「やはり、父の跡を追うか…。」

 トーンは低い。

 

 思い出す…。

 

 初代宇宙刑事ギャバン=一条寺烈が、父親のボイサーの跡を追った後ろ姿を…。

 

 

 決意は、

「はい。」

 揺るがぬと、

「そのために宇宙刑事となりましたから。」

 十文字撃の瞳が語る。

 

 

 コム前長官の顔に、

「そうだったな…。」

 浮かぶのは憂い…。

 

 

 十文字撃の、

「はい!」

 その返事は力強く、コム前長官の思いを杞憂だと吹き飛ばす。

 

 ゆっくりと、瞬き…。

 

 そして…。

 

 揃える両腕が、

『バシッ!』

 音を出し直立不動の姿勢。

 

 鼻から、

『すーっ』 

 吸い込む空気を腹に溜め、

「十文字撃!」

 決意と共に、

「これより二代目宇宙刑事ギャバンとして宇宙犯罪組織と戦います!」

 言霊する。

 

 掲げる右手で、

『バシッ!』

 敬礼とする。

 

 

 コム前長官も、

「頑張りたまえ。」

 敬礼で返す。

 

 

 

 

 宇宙港から、今まさに2代目ドルギランが飛び立つ。

 

 十文字撃はコックピットで振り向き、

『ビシッ!』

 遠くなるバード星に敬礼。

 

 

 飛び去る2代目ドルギランを見守るコム前長官。

 

 その背中に、

「烈。」

 一条寺烈の姿が表れ、

「息子の撃が戦いの旅に出るぞ…。」

 次に十文字撃の姿が、

「見守ってやってくれ…。」

 被る。

 

 

 

 そして、2代目ドルギランは駆け登る流星となり、十文字撃の旅立ちとなった。

 

 

 

 

 十文字撃は宇宙刑事として激務を熟す日常をおくっていた。

 

 それは…。

 

 宇宙犯罪組織が活発に活動しているという証でもあった。

 

 

 また今日も、

「蒸着!」

 掛け声と共に電送される銀のコンバットスーツが、

「宇宙刑事ギャバン!」

 十文字撃を戦う姿に変える。

 

 

**ナレーション**

「宇宙刑事ギャバンが、コンバットスーツを蒸着するタイムは、僅か0.05秒に過ぎない。では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう!」

 

 

 

 いつ果てるとも無い宇宙犯罪組織との戦い…。

 

 その中で、取るに足らないと思っていた情報。

 

 それが…。

 

 一つ…。

 

 また、一つ…。

 

 また、一つと…。

 

 集まる。

 

 やがて、情報の点が線となる。

 

 そして…。

 

 情報の線が描く軌跡は、大規模な犯罪計画の絵となる。

 

 

 見開かれた目が、

「こ…。」

 声にも、

「これは…。」

 驚愕の表情を十文字撃に作らせる。

 

 

 一瞬。

 

 それは、十文字撃の思考が必要とした時間。

 

 伸ばす右手が、

「本部に…。」

 通信機のスイッチに触れる。

 

 そのまま力を、入れなかったのは、

「…。」

 宇宙刑事としての勘?

 

 それとも…。

 

 父親の事故からの一連の報道が、宇宙警察の組織の内部に裏切り者が居るのではと、疑う気持ちがあった?

 

 が…。

 

 本当の事は十文字撃本人にさえ解らなかった。

 

 

 そして…。

 

 無意識に、

「もう少し…。」

 口から出た言葉は、

「調べてからでも遅くはないな…。」

 自分を言い聞かせる呪文だった。

 

 

 それは…。

 

 宇宙犯罪組織と戦う事と、大規模な犯罪計画を追う事が一つになり、十文字撃をより過酷な日常へと送り込む事となる。

 

 

 

 その戦いの日々の中に現れたのは…。

 

 登場人物。

 

 そして、情報が描いた絵に物語が生まれた。

 

 

 大規模な犯罪計画の影に見え隠れする謎の敵。

 

 宇宙犯罪組織内でも、黒きローブを纏った謎の人物だと判ってきた。

 

 そいつは…。

 

 ある時は、繊細に…。

 

 また、ある時は、大胆に…。

 

 まるで、宇宙警察組織を嘲笑うかの様に、現れては消える影の存在であった。

 

 そして、いつしか十文字撃は自分が、その物語の一部だと知る事となる。

 

 

 

 戦いの日々が、物語を進め最後のページが見え始めた。

 

 

 パネルに付いた両手が、

『ドン!』

 弾みとなり、

『スタッ!』

 立ち上がりながら、

「まさか!」

 映し出された映像に、

「解ったぞ!」

 注がれる熱い視線。

 

 そこには、大規模な犯罪計画の最後の絵に嵌るはずの欠片(ピース)が、くっきりと十文字撃に見えた。

 

 今までの悔しさと、

「これなら…。」

 これからの決意を、

「先回りできる!」

 右手に握り締める。

 

 

 

 

 

 最後の欠片(ピース)に導かれ十文字撃が辿り着いた辺境の星の廃墟となった建物。

 

 

 少し離れた死角の場所に、蠢く影…。

 

 いえ、蠢く宇宙刑事。

 

 それは、言わずもがな十文字撃その人。

 

 

 彼は自然に、

「如何にも…」

 見上げ、

「って…。」

 口から、

「隠れ家だな…。」

 漏れる感想。

 

 首が、

『キョロ…。』

 音を出し、

『キョロ…。』

 周囲を確認する。

 

 直後。

 

 踏み出す足が、彼を疾風に変えた。

 

 そのまま、誰にも見咎められる事なく建物の入口へ辿り着く。

 

 そこには、辛うじて原型を留め、役割をはたしている古びた扉。

 

 事前に行ったスキャンでは、危険は皆無であったが油断は無い十文字撃であった。

 

 背中に建物の壁の冷たさを感じつつ、伸ばした右手でノブを握る。

 

 そして…。

 

 慎重に、

『ギィ…。』

 更に慎重に、

『ィィィィィ…』

 開いたはずの扉が、

『ィィィィィ!』

 久々に開く喜びの声を上げた。

 

 思わず!

 

 扉に、静かにのポーズは、

「しーっ!」

 お約束。

 

 

 開いた扉の先は通路。

 

 壁の亀裂から差し込む僅かな光。

 

 宇宙刑事の訓練を受けた十文字撃には、十分な明るさであった。

 

 小型端末のディスプレイで再生される建物のスキャン画像が、

「こっちか…。」

 自然に足を踏み出させる。

 

 

 いくつかの角を警戒しながら抜けた先に現れたのは…。

 

 奈落。

 

 冥界へと誘う地下への階段。

 

 

 十文字撃から発する気の質が変わった。

 

 警戒から臨戦態勢。

 

 無意識に、

『ゴクリ。』

 飲み込んだ固唾が、緊張状態だと語る。

 

 額に、

「ここから先は…。」

 伸ばした右手が、

「ブラックボックスだ…。」

 流れてない汗を拭う。

 

 そう、先程のスキャンでは建物の地下は探知不能であった。

 

 それが返って、宇宙犯罪組織のアジトであり、ここで間違いないとの確証であった。

 

 

 十文字撃は懐から、

『サッ…。』

 サングラスタイプの暗視ゴーグルを取り出し掛ける。

 

 それは直に、

『ピッ…。』

 小さな音と共に、

『ブォン。』

 作動を始めた。

 

 

 広がる視界を確認し、

「視界。」

 軽口に、

「良好!」

 続き、

『コッン…。』

 右足を一歩踏み降ろす。

 

 

 階段は直に終わりを迎え、通路へと変わる。

 

 

 進む…。

 

 その暗闇は、暗視ゴーグルにより昼間の明るさ。

 

 

 拍子抜け。

 

 そう感じる程の何も無さ…。

 

 だが、宇宙刑事である十文字撃の勘は【危険】だとビリビリと感じ取っていた。

 

 

 突如、現れた曲がり角。

 

 慎重に…。

 

 用心深く…。

 

 そして、大胆に…。

 

 素早く、

『サッ!』

 角から身を、

『スッ…。』

 乗り出す。

 

 そこから見える光景が、

『ニャリ…。』

 左の口角を上げさせる。

 

 その口で、

「どうやら…。」

 自分に、

「目的の場所らしいな…。」

 状況を説明した。

 

 

 曲がり角のに、短い通路に縦長の長方形が切り取る暗闇。

 

 それは、扉が少し開かれた状態。

 

 一呼吸。

 

 それから、

「鬼が出るか…。」

 小さく、

「蛇が出るか…。」

 口の中で、

「それとも…。」

 軽口で、

「宇宙犯罪組織の御一行様か?」

 気合を入れた。

 

 

 直後。

 

 踏み出した足は音も立てず、半開きの扉の前に十文字撃を運んだ。

 

 

 鼻が深呼吸の音を、

『すーっ。』

 出しタイミングは図る。

 

 

 音は、

『タッ!』

 極小で、

『シュ!』

 十文字撃を、

『ショウ!』

 扉の隙間の空間に踊らせる両足。

 

 僅かな滑空の後に、

『クルリ。』

 丸めた背中が、

『コロリ。』

 地面を捉える。

 

 

 それは、

『ゾクリ…。』

 感触ではなく、

『ゾワゾワ…。』

 感覚。

 

 宇宙刑事としての勘が体内に警報を鳴り響かせる。

 

 

 回転の勢いを、

『タン!』

 殺した右足を立て、

『タッ!』

 膝立ちの姿勢へ移行する。

 

 

 間髪入れず、

『バン!』

 大きな音が、

『バン!』

 連続で上がる。

 

 

 明転!

 

 

 十文字撃の上げた右腕が、

「うっ…。」

 瞼だけでは止められぬ、目を刺す大光量を遮る。

 

 

 天井から降り注ぐ大量の光が、床に十文字撃の影を薄く落とす。

 

 

 ゆっくりと、

『カチャ…。』

 暗視ゴーグルを外し懐へ戻す。

 

 傍から見れば、悠長な行為だと思われるだろうが、十文字撃には確信があった。

 

 殺すつもりならば、間髪入れず攻撃していたはずだと。

 

 

 肌を刺す、

『ビリビリ…。』

 強烈な気配。

 

 敵は気配を殺すのを止めたらしい。

 

 それに促され、

『そーっ。』

 ゆっくりと視線を上げる十文字撃。

 

 

 そいつは視線の先に、立っていた。

 

 全身に黒いローブを纏い、頭にはローブが目深に被さる。

 

 

 十文字撃の直感は、

「お前は!」

 予想以上の相手だと警告が、

『スーッ…。』

 戦闘の構えをとらせる。

 

 

 唐突に、

「よく来た…。」

 黒いローブは声を上げた。

 

 地下室に反響し、微かなエコーがかかる。

 

 

 エコー越しの声に、

〘何か…。〙

 違和感を、

〘おかしい…。〙

 感じる十文字撃。

 

 

 十文字撃の疑問など我関せずと、

「二代目宇宙刑事ギャバン…。」

 続け、

「いや…。」

 両腕の部分のローブが、

「十文字撃。」

 軽く揺らめいたのは否定の動き。

 

 その声に乗っている感情を、

「ようやく、ここまでたどり着いたな…。」

 例えるなら歓喜。

 

 その証拠はある。

 

 ローブから覗く右の握る拳が、

『ブルブル…。』

 込める力で震えている。

 

 

 その様子は、

〘あれは…。〙

 十文字撃の目から、

〘人の手!?〙

 脳へ送られる。

 

 そして…。

 

 先程の違和感と、

〘そうか!?〙

 一つになり答えを出す。

 

 ゆっくりと、

「お前は…。」

 右腕から伸びる人差し指が、

「誰だ!」

 黒いローブを指し示す。

 

 

 その問に、

 「…。」

 沈黙で答える黒いローブ。

 

 

 伸ばした右手を、

「いや…。」

 胸の前で握り込み、

「俺の知ってる誰だ!」

 もう一度、右の人差し指で指し問う。

 

 

 その答えは、

『がさがさ…。』

 ローブの中で動く手だった。

 

 ローブの胸元から這い上がり、首の辺りを何度か持ち上げた。

 

『カチャリ…。』

 

 それが、行為の終了を告げた。

 

 今度は、逆に首の辺りから胸元へ膨らみが移動する。

 

 そして、ローブを割って付き出す右手。

 

 そこに握られている何か…。

 

 それを、無造作に床へと、

『カチャン!』

 落とした。

 

 

 十文字撃の視線は、

「やはり…。」

 重力に引かれ落ちる物を、

「それは…。」

 追い掛け、

「変声機!」

 正体を確かめた。

 

 

 いつの間にか、

「久しぶだな…。」

 消える殺気に変わり、

「撃…。」

 懐旧の暖かさの声が響く。

 

 

 震える声は、

「その声は…。」

 現実を否定したいとの、

「父さん…。」

 願いが籠もる。

 

 

 しかし…。

 

 否定する様に、

『がさがさ…。』

 後ろに外したフードの下から現れたのは、

「大きくなったな…。」

 紛れもなく、

「撃…。」

 一条寺烈の顔であった。

 

 その瞳に父親の暖かさを湛えながら見詰める。

 

 

 十文字撃の中で、

「い…。」

 処理しきれない、

「生きて…。」

 現実が感情と共に、

「いた…。」

 混乱を引き起こす。

 

 

 ゆっくりと、

「ああ…。」

 頷き、

「生きてる。」

 優しく肯定する一条寺烈。

 

 

 次第に、

「な…。」

 現実が、

「何故…。」

 理解に、

「犯罪組織に手を貸す様な事を…。」

 追い付く。

 

 

 一瞬、浮かんだのは、

「宇宙警察は大きく成り過ぎた!」

 怒りの表情。

 

 握り込む、

『ギリギリ…。』

 右手が立てる音は、

「内部の腐敗が進み、一部の幹部連中は犯罪組織と手を組んで私腹を肥やしている!」

 怒りと腹立たしさの強さであった。

 

 吐き出すのは、

「その事に、気が付いた私を事故に見せかけて殺そうとしたのだ。」

 荒らげた声。

 

 そして…。

 

 ゆっくりと閉じた目は、

「だから、私はそれを利用して身を隠した。」

 当時を思い出す。

 

 

 暫時。

 

 それは、爆発寸全の怒りを抑えるまでの時間。

 

 

 開かれた眼から、

「最早、宇宙警察に正義は無い!」

 溢れる怒り。

 

 そして…。

 

 ゆっくりと伸ばされた右手は、

「私の元へ来い!」

 言葉の強さとは逆に、

「撃!」

 優しさを持つ。

 

 それは、十文字撃の持ち続けた疑問の答えには十分過ぎていた。

 

 

 十文字撃の心は、

「と…。」

 嵐に揺れ動く、

「父さん…。」

 小舟の様であった。

 

 そして…。

 

 力が抜け、

『だらり…。』

 下がる両腕。

 

 焦点の合わない瞳は、呆然と一条寺烈の伸ばした右手を見ている。

 

 それは、十文字撃の心を惑わす悪魔の誘い。

 

 

 無意識が後押しし、右腕を一条寺烈へと伸ばそうとする…。

 

 

 フラッシュバック!

 

 

 十文字撃が立っているのは、辺境の惑星の名も無い小さな村。

 

 駆け付けた十文字撃が見たのは…。

 

 惨劇!

 

 泣き叫ぶ、

「お父さん!」

 女の子に、

「お母さん!」

 男の子。

 

 離れた場所では、

「あぁぁぁぁぁ!」

 動かなくなった子供を抱き抱える母親。

 

 宇宙犯罪組織が放つ銃撃音は、

『ダダダダダーーーッ!』

 今だ、止まず。

 

 家は炎を上げ、

『ゴーーーーーー!!』

 幸せな家族の思い出さえ灼き尽くす。

 

 

 怒りに、

「蒸着!」

 声を震わせ、

「宇宙刑事ギャバン!」

 正義の姿に変わる十文字撃。

 

 

 そんな場面を傍から見ているのも自分…。

 

 

 

 フラッシュバック!

 

 

 そこは、街の路地…。

 

 あちらこちらに横たわる生気の無い人達。

 

 ここは、宇宙犯罪組織により持ち込まれた宇宙麻薬より、病んだ街。

 

 そして、それは宇宙刑事が間に合わなかった街でもあった。

 

 怒りに打ち震える十文字撃。

 

 

 それを、また傍から見ている十文字撃。

 

 

 フラッシュバック!

 

 

 また、過去の記憶が蘇り当時を見る十文字撃。

 

 

 伸ばしたが、届かなかった…。

 

 この手。

 

 

 走ったが、間に合わなかった…。

 

 この足。

 

 

 宇宙犯罪組織に対する怒りが、己の無力さへの憤(いきどお)りへと姿を変える。

 

 

 それは、やがて…。

 

 心の底の真っ暗闇へと、

『ぽつり…。』

 小さな火を灯す。

 

 

『ドクン!』

 

 胸の鼓動。

 

『ドクン!』

 

 

 伸ばしかけた右手が、

『ギュッ…。』

 自らの胸を抑える。

 

 感じる…。

 

 胸のエンジンに火が着いた事を!

 

 

 十文字撃の震える声は、

「父…さん。」

 悪に対する純粋な怒り。

 

 ゆっくりと、

「宇宙警察の腐敗は許されない事だ…。」

 上げる瞳には、

「でも…。」

 揺るがぬ正義が、

「宇宙犯罪組織の為に何の罪もない人達が犠牲になっているのは何故なんだ!」

 宿る。

 

 

 一条寺烈は、

「それは…。」

ゆっくりと目を閉じ、

「正義をなす為の必要な犠牲だ!」

 間とすると、

『クワッ!』

 一気に開く。

 

 

 その返答に、

「そ…。」

 ふつふつと、

「そんな犠牲は許されない!」

 正義の怒りが湧き上がる。

 

 

 一条寺烈に、

「そうか…。」

 浮かぶ悲しげな表情。

 

 それを右手で、

「ならば!」

 握り潰し、

「父親である私の手で解らせるまでだ!」

 威厳と共に伸ばす右腕で、

『ズバッ!』

 胸の前で解き放つ。

 

 

 

 

 胸の前で、構える左手に何を握り込むのか一条寺烈よ…。

 

 ゆっくりと低く、

「蒸…。」

 唱えるキーワードは、

「着…。」

 まるで呪詛の様で、

「ダーク・ギャバン。」

 黒のコンバットスーツが絡み付く。

 

 

 胸の前で構える左手に、全ての雑念を握り潰す十文字撃。

 

 迷い無き、

「蒸着!」

 叫びで、

「宇宙刑事ギャバン!」

 銀のコンバットスーツが纏う。

 

 

**ナレーション**

「宇宙刑事ギャバンが、コンバットスーツを蒸着するタイムは、僅か0.05秒に過ぎない。では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう!」

 

 

 

 対峙する…。

 

 黒の悪と銀の正義。

 

 だが、その姿は些細な違いの除けば同じ。

 

 

 両者は構えのまま、微動だにしない。

 

 

 だが…。

 

 十文字撃のコンバットスーツの下の生身は、

『つーっ。』

 冷たい汗を背中に流していた。

 

 黒いコンバットスーツを通して発せられる何か…。

 

 それが、十文字撃に見えない圧をかけている。

 

 また、

『つーっ…。』

 冷たい汗が流れる。

 

 それが、

『タンッ!』

 合図となり、

『ショー!』

 宙へ踊るギャバン。

 

 両腕を縮め、

「ディメンション・ボンバー!」

 伸ばす勢いを威力に換える必殺技を放つ。

 

 

 先手必勝…。

 

 そんな言葉が相応しい場面。

 

 残念なのは…。

 

 その言葉が当てはまるのが十文字撃ではなかった事だった。

 

 

 黒のマスクの下の口角が、

「ふん…。」

 上がり嘲笑を表す。

 

 コンマ遅れ、

『タン!』

 床を蹴る足が、

『ショー!』

 ダーク・ギャバンを宙へ舞わせる。

 

 同じく、両腕を縮め、

「ダーク・ディメンション・ボンバー!」

 伸ばす勢いを威力に換える必殺技を放つ。

 

 

 激突!

 

 空中で二つの技がぶつかった。

 

 

 結果。

 

 

 身を捩り、

「くっ!」

 体制を立て直すギャバン。

 

 

**ナレーション**

 今の激突をもう一度見てみよう。

 先手必勝と技を繰り出したギャバン。

 ディメンション・ボンバーが完成した。

 直後コンマ秒以外のタイミングに、ジャストタイミングで完成したダーク・ディメンション・ボンバーが放たれた。

 つまり、後から放たれたダーク・ディメンション・ボンバーの方が威力が勝っていたのだ。

 故に、ギャバンが弾き飛ばされた。

 

 

 ギャバンは、

〘今のは…。〙

 捻りながら、

〘何だ!?〙

 自らに問う。

 

 

 そう…。

 

 先手必勝では無く、ダーク・ギャバンが放つ気がプレッシャーとなり、ギャバンに先に動かせたのだ。

 

 残念ながら、ギャバンはその事に気付いていなかった…。

 

 

 答えよりも、若さ故の、

「くそっ!」

 悪態が口から漏れるギャバン。

 

 完了した、

『クルリ。』

 捻りが、

『タッ!』

 脚に壁を蹴らせる。

 

 頭から進む姿勢を、

「スパイラル・キック!」

 脚からに変え必殺の蹴り。

 

 

 ダーク・ギャバンはお見通しと、

『スッ…。』

 軽く握り上げた右の拳は、、

「ダーク・レーサー・Zビーム。」

 肩の高さから放つ。

 

 

 命中。

 

 一直線に、

『ビビビビ!』

 伸びる黒いビームが、

『ボン!』

 空中のギャバンを撃ち落とす。

 

 

 コンバットスーツを通しても、

「ぐはっ!?」

 衝撃は十文字撃にダメージを与える。

 

 そして、十分な受け身を取らせぬままに、

『グシャ!』

 床へとギャバンを打ち受けた。

 

 全身を、

〘これが父さ…。〙

 駆け抜ける痛みよりも、

〘いや〙

 早く、

〘伝説の宇宙刑事の強さか…。〙

 思考が巡った。

 

 

 それを身体に刻んだのは、訓練と特訓。

 

 反射的に、

『ゴロン。』

 転がり、

『スチャ。』

 右足立ちになる。

 

 隙かさず、

『ビビッ。』

 左腰から剣を抜き、

『チャリ…。』

 構えるギャバン。

 

 

 待機。

 

 ギャバンが再び戦闘態勢を整え終えるのを待ってから、

『ビビッ。』

 同じく左腰から剣を抜き、

『スチャ。』

 構えるダーク・ギャバン。

 

 

 格の違い…。

 

 そんな言葉が十文字撃の脳裏をよぎる。

 

 それを左右に、

『ブル…。』

 振る首が、

『ブル…。』

 否定した。

 

 そして…。

 

 前へと出す足が、

『ズサッ。』

 踏み込みとなり、

『ザシャー!』

 ダーク・ギャバンへと斬り込む。

 

 

 

 振り下ろすギャバンの剣を、

『カーン!』

 打点をずらし弾くダーク・ギャバン。

 

 

 突き出すギャバンの剣に、

『スーッ。』

 前に出した剣を、

『カン。』

 引きながら威力を殺すダーク・ギャバン。

 

 

 何回?

 

 何分?

 

 そんな、行為が繰り返される。

 

 

 傍から見れば…。

 

 稽古を付けている様にも…。

 

 もっと、砕けた言い方なら…。

 

 戯れ合う親子にも見えなくはない。

 

 

 だが、当人の十文字撃には余裕は無く、焦りだけが蓄積されていく。

 

 

 限界点。

 

 そう呼ばれるタイミングが十文字撃に訪れるのは、至極当然であった。

 

 

 焦りが生んだ隙に、

「しまった!」

 ダーク・ギャバンの一撃が、

『ザシャーン!』

 見舞われた。

 

 

 派手に、

『ビューン!』

 宙を舞うギャバンに、

「やるな…。」

 黒いマスクの下の口が、

「咄嗟に後ろへ飛ぶとは…。」

 称賛の言葉。

 

 

 

 

 ダーク・ギャバンの剣撃の威力を、

『ゴロン。』

 殺しながら、

『ゴロン。』

 後方回転。

 

 転がる勢いを、

『スチャッ!』

 両足で受け止め立ち上がるギャバン。

 

 そして…。

 

 右手で握る剣の鍔の辺りに、

『チャリッ…。』

 左手を添えて、

「レーザー!」

 切っ先へスライドさせ、

「ブレード!」

 蒼き光を纏わせる。

 

 

 少し待ってから、

「ダーク…。」

 合わせる様に、

「レーザー…。」

 剣に、

「ブレード!」

 黎(くろ)き光を纏わせるダーク・ギャバン。

 

 

 互いが、レーザーブレードを構え対峙した瞬間。

 

 今まで、この場を満たしていた戦いの熱気が鋭さを持つ。

 

 そして、緊張が二人を刺す。

 

 表現なら、

『ピリピリ。』

 から、

『ビリビリ。』

 へ。

 

 それが、レーザーブレードを構える意味であった。

 

 

 ギャバンの、その踏み込みには、

「や!」

 躊躇いは無く、

「ぁぁぁぁぁ!」

 無心であった。

 

 ただ、敵を倒し平和を守りたいとの願いを込めるのみ。

 

 

 黒いマスクの下の口が、

『ニヤリ…。』

 笑い、

「来い!」

 声も楽しげに、

「宇宙刑事ギャバン!」

 その名を叫んだ。

 

 

 蒼き輝きを放つギャバンのレーザーブレード。

 

 黎(くろ)き輝きを放つダーク・ギャバンのダーク・レーザーブレード。

 

 

 互いが宙に描くのは、美しくも一撃必殺の死の軌跡であった。

 

 

 

 互いにかすめる、

『ブォン!』

 切っ先が、

『ブォン!』

 コンバットスーツの表面を、

『チリチリ。』

 レーサーの熱で、

『チリチリ。』

 微かに焦がす。

 

 

 またも、繰り返される剣撃の応酬。

 

 ただ、前回と異なるのは、全てが一撃必殺の威力を持っていると言う事だった。

 

 

 

 千載一遇。

 

 それは、振り向かない若さが呼び込んだ瞬間。

 

 

 振り下ろしたレーザーブレードが、

『カァァァァァン!』

 ダーク・ギャバンにより弾かれる。

 

 弾かれたレーザーブレードが、

『グィッ!』

 ギャバンの右腕を媒介にして、

『ォォォォォ!』

 全身を後ろへ引っ張る。

 

 本来なら不利の状況で、

〘いける!〙

 銀のマスクの下の口元が、

『ニヤリ。』

 笑う。

 

 力の限り、

『グググッ!』

 全身の筋肉で、

『ゥゥゥゥゥ!』

 引かれる力に抗い、

「おぉりゃぁぁぁぁぁ!」

 踏み込む右足。

 

 床を捉えた右足の裏に、

『グィッ!』

 体重と力を乗せ、

「ギャバン!」

 振り下ろすレーザーブレードを、

「ダイナミック!」

 必殺技に変えた!

 

 

 眼の前の出来事に漆黒のマスクの下で複雑な表情を作る。

 

 眉間による皺(しわ)は、

『クワッ!』

 目に驚きを作り、

「ふん。」

 鼻から抜けた息は喜び。

 

 そして…。

 

 踏み込む右足に、

「ダーク・ギャバン…。」

 必殺技の、

「ダイナミック!」

 一撃を乗せる。

 

 

 蒼(あお)と漆(くろ)のレーザーの光。

 

 それぞれが、死の輝きを持って…。

 

 ぶつかる!

 

 衝突!

 

 激突!

 

 

 互いの必殺技が交わる。

 

 

 光が音を呼び、

『カッ!』

 音が波動と変わり、

『ババババッン!』

 大気を震わせた。

 

 

 衝突点で生まれたエネルギーは、

『カァーー…。』

 金属音を出し、

『ーーーン!』

 二振りのレーザーブレードを弾き返す。

 

 

 コンバットスーツの限界を超える光と音が、十文字撃をホワイトアウトさせた。

 

 刹那の無限…。

 

 無限の刹那…。

 

 十文字撃の脳裏に甦るコム前長官との想い出。

 

 

 四つん這いで、

「ハッ…。」

 肩で息をするのは、

「ハッ…。」

 地獄の特訓を、

「ハッ…。」

 終えたばかりの十文字撃。

 

 

 見下ろすコム前長官の厳しい表情。

 

 ゆっくりと、

「撃…。」

 開く口から、

「よくぞ…。」

 称賛の言葉が、

「耐え抜いた。」

 かけられる。

 

 表情が緩み、優しさに満ちる。

 

 そして、折る膝は地面の十文字撃を迎える右手と同時。

 

 

 今だ、

「ハッ…。」

 整わぬ息だが、

「ハッ…。」

 伸ばされた右手を、

『バシッ!』

 右手で掴むと、

『グイッ!』

 互いが力を入れ、

『グッ!』

 立ち上がる十文字撃。

 

 

 上げる顎で、

「ハッ…。」

 コム前長官に、

「ハッ…。」

 視線を向ける十文字撃は、

「ハッ…。」

 まだ肩で息をしていた。

 

 そのためか、コム前長官の顔は歪んで見え、聞こえる声も途切れ途切れだった。

 

 

 口の形から、

「撃…。」

 声が推測できた…。

 

 

 しかし、身体の回復を肺が優先させ、脳への酸素が不足し意識がはっきりとしない…。

 

 

 そんな回想シーンの中で、

〘あの時…。〙

 記憶へのアクセスが、

〘前長官は、何て言ったっけかな…。〙

 行われる。

 

 記憶の底から、ゆっくりと浮かび上がり、次第に形になって行き、十文字撃の脳裏にはっきりと聞こえた。

 

 それは、記憶の扉を、

〘確か…。〙

 開くキーワード。

 

 記憶の中の、

「お前の最大の武器は…。」

 コム前長官の口が、

「若さだ!」

 握る左の拳が、

「諦めない若さだ!」

 熱く語った。

 

 そして…。

 

 左手で、

「その事を忘れるな!」

 右肩を、

「撃…。」

 軽く叩く。

 

 

 意識が記憶の思い出から現実に切り替わる。

 

 銀のマスクの下の口が、

『ニヤリ…。』

 思い出し笑い。

 

 脳内に、

「そうだった…。」

 響く声も、

「俺の武器は…。」

 嘲笑を、

「若さだったな!」

 帯びる。

 

 直後。

 

 一歩下がる右足…。

 

 それは、衝撃波に押されバランスを崩した…。

 

 …。

 

 否!

 

 布石。

 

 引いた右足を軸に、上から見て時計回り。

 

 

 一瞬。

 

 見えた背中に、黒いマスクの下で、

『クワッ!』

 驚きの目が見開かれるダーク・ギャバン。

 

 次に見えたのは右肘から回転に乗り、流れる光のレーザーブレード。

 

 

 一回転。

 

 ギャバンの左足が、

『ドンッ!』

 床を踏みしめ、

「十文字斬り!」

 横一閃!

 

 この行為の全てが…。

 

 無意識…。

 

 咄嗟…。

 

 反射…。

 

 叫んだ技の名も同じだったが、コム前長官の用意してくれた【十文字】に思い入れがあったからかもしれなかった

 

 

**ナレーション**

 今の技を、もう一度見てみよう。必殺のギャバン・ダイナミックを縦一文字で放った直後に、半歩引いた右足を軸に時計回り回転し、横一閃を放ったのだ。それはレーザーブレードの軌跡が【十文字】を描く二段攻撃である。

 

 

 

 

 そして…。

 

 訪れた静寂が二人の間に満ち、この空間をも埋めた…。

 

 

 さらに静寂が二人の時の感覚を引き伸ばし、永遠へと変えた。

 

 

 そのまま、動かない二人。

 

 だが、実際の時間にすれば1秒程であった。

 

 

 

 静寂を、

「はっ…。」

 破ったのは、

「はっ…。」

 十文字撃の荒い息遣い。

 

 続き、

『ドサッ…。』

 右膝が床へ落ちる…。

 

 今の二段目の攻撃が放てたのは、若さ故の奇跡とでも言わんばかりに、全身の力が抜ける十文字撃。

 

 飛びそうになる意識を保つっているのが、

「はっ…。」

 やっとだと吐く息も語る。

 

 薄っすらと開いた瞼から見えるのは、今だ立つダーク・ギャバンの二本足。

 

 ゆっくりと、

「まだ…。」

 力を込め、

「届かない…。」

 レーザーブレードの柄を、

「か…。」

 握り直す。

 

 

 それは…。

 

 諦めでは無く!

 

 全身の隅に微かに残った…。

 

【力】

【氣】

【エネルギー】

【生気】

 

 そんな名前のものを掻き集め、

「うぉ…。」

 再び胸のエンジンに焚(く)べ、

「ぉぉぉぉぉ!」

 始動させるために。

 

 

 黒い指先に、

『ピクッ…。』

 再び力が、

『グイッ…。』

 込められる。

 

 それが、

『ス…。』

 柄を媒介にして、

『ーッ…。』

 黒いレーザーブレードの剣先をゆっくりと持ち上げる。

 

 

 その状況に、

〘動け!〙

 動かぬ身体の、

〘俺の足!〙

 もどかしさ。

 

 

 黒い右足が、

『す…。』

 踏み出すために、

『ーっ…。』

 床から離れる。

 

 

 噛みしめる奥歯は、

『ガリッ…。』

 全身に力を、

「うぉぉぉぉぉ!」

 戻すための十文字撃のスイッチ。

 

 

 

『ポン…。』

 

 小さく爆発…。

 

『シュー…。』

 

 小規模に吹き出す火花。

 

 それが、ダーク・ギャバンの胸の辺りで…。

 

『ボン!』

 

 大きく爆発。

 

『シュゥゥゥゥゥゥ!』

 

 盛大に吹き出す火花。

 

 

 それたちが、

『ボボボン!』

 連鎖的に起きながら、

『シワァァァァァ!』

 次第にド派手になる。

 

 そして!

 

『ボォォォォォォン!』

 

 特大の爆発。

 

 それが引き金となり、

『ゆらり…。』

 ダーク・ギャバンがゆっくりと、

『ふらぁり。』

 後ろ向きに倒れる。

 

 

『ヴォォォォォォン!!!!!!』

 

『ボォォォォォォン!!!!!!』

 

『ズドォォォォォン!!!!!!』

 

 上がる爆炎がダーク・ギャバンを包み込む。

 

 

 

 浴びせかけられる高熱。

 

 押し寄せる爆風。

 

 

 本来ならコンバットスーツで防げるのだが…。

 

 上げた左手で、

「くっ!」

 顔を庇うのは反射的な行動であった。

 

 

 

 束の間…。

 

 

 爆発が収まり静寂が、

『し…。』

 音を出し、

『ーんっ…。』

 この場を埋める。

 

 

 それに促され、

『す…。』

 庇っていた左手を、

『ーっ。』

 下ろし視界を戻すギャバン。

 

 

 目に入ったのは…。

 

 今だ、燻(くすぶ)り立ち昇る煙。

 

 そして…。

 

 爆心地に横たわる人…。

 

 そう…。

 

 ダーク・ギャバンだった者。

 

 

 それが、十文字撃のスイッチを入れ立ち上がらせる。

 

 同時に…。

 

 小さく上がる音は、

『ピロッ…。』

 蒸着の限界だとコンバットスーツを解除し、生身の十文字撃を曝(さら)け出す。

 

 

 踏み出そうと、

「くっ…。」

 上げた右足が全身に、

「ぅぅぅぅぅ!」

 激痛を走らせる。

 

 それが、左足を少し曲げ右足を引き摺(ず)り、右腕を左手で押さえる体制をとらせる。

 

 左足で、

『ズル…。』

 右足を、

「と…。」

 牽引し、

『ズル…。』

 歪な足跡を、

「父さん…。」

 刻みながら進む…。

 

 

 そして…。

 

 眼の前の距離が、無限とも思える程のもどかしさと、激痛との戦いの果に辿り着く…。

 

 横たわる父親の元へ…。

 

 

 傍らに辿り着くが早いか、

「と…。」

 そのまま左脚を曲げ、

「父さん…。」

 左足立ちになり上半身を被せる。

 

 伸ばす左腕が、

『グイッ。』

 一条寺烈の背中を持ち上げる。

 

 そのまま、

「と!」

 一条寺烈を、

「父さん!」

 揺らす。

 

 …。

 

 ……。

 

 ………。

 

 

 その反応に、

「父さん!」

 もう一度、

「父さん!」

 繰り返す。

 

 

 そして…。

 

 一条寺烈の、

『ピクッ…。』

 瞼が、

『ピクッ…。』

 反応する。

 

 ゆっくりと、

『す…。』

 開く一条寺烈の目に、

『…っ。』

 自分の顔を見る十文字撃。

 

 

 窄めたり開いたりする両の目が、まだ焦点と意識が霧中だと語る一条寺烈。

 

 

 再度、

「父さん!」

 呼びかけ、

『ユサユサ…。』

 体を揺する十文字撃。

 

 

 今度は届き、

「う…。」

 焦点と意思にかかる、

「ぅ…。」

 霧から引き上げる。

 

 それは、一条寺烈も十文字撃の瞳に自らの顔を見る事であった。

 

 そして…。

 

 一条寺烈の弱く震える左手が、

「げ…。」

 ゆっくりと、

「撃…。」

 十文字撃へと伸ばされる。

 

 

 

 反射的に、

「と…。」

 左手に自らの右手を被せ、

「父さん!」

 強く握る十文字撃。

 

 握り返す力と、伝わる温もり…。

 

 それが記憶を呼び起こす引き金となり、十文字撃の脳裏に再生される。

 

 

 

 幼少の頃の数少ない思い出…。

 

 父が仕事の合間に遊びに連れて行ってくれた真っ赤な夕日が印象的な帰り道…。

 

 手を繋ぎ歩く烈と撃…。

 

 不意に、

「撃。」

 自分に向きながら、

「肩ぐるましてやろう。」

 言った一言。

 

 

 宇宙刑事の仕事で忙しい父に甘えられる嬉しさが、

「うん!」

 作らせた満面の笑み。

 

 両脇に後ろから、

「それぇ!」

 力がかかり、

『ふわり。』

 浮遊感と共に視界が変わる。

 

 そのまま、烈は撃を肩に乗せた。

 

 

 下から、

「どうだ?」

 響く声が、

「撃。」

 聞く。

 

 

 下げる視線と共に、

「高〜い!」

 嬉しい声で答えた。

 

 夕陽に赤く染めあげられた楽しい時が流れをゆったりにした…。

 

 

 ふと、下げた視線…。

 

 撃の左腿を押さえる烈の左手に奪われる視線…。

 

 何気なく、

「父さん…。」

 聞いた。

 

 

 正面に戻していた首を、

「何だ…。」

 また撃へと向け、

「撃?」

 返す烈。

 

 

 体を左に捻りながら、

「その傷は?」

 覗き込むように聞く撃。

 

 

 

 烈の口元が笑うが、

『にこり…。』

 撃からは見えない。

 

 ゆっくりと伸ばす左腕を、

「これか?」

 自分の目線よりも挙げる烈。

 

 

 下がる顎が、

『こくり…。』

 音を出し、

「そう、その傷…。」

 見詰める撃。

 

 

 左手を左右に、

「これか…。」

 捻りながら答える烈。

 

 そして…。

 

 無言が口から漏れ、

「…。」

 思案中だと語る。

 

 

 そのまま、ゆっくりと流れる無言と時…。

 

 

 開いた口は、

「そうだな…。」

 考えが、

「これは…。」

 終わった証。

 

 

 待ちに待った答えを、

『キラキラ…。』

 今か今かと、

「うん。うん。」

 待ちわびる撃。

 

 

 悪戯っ子の笑みを、

「宇宙刑事の…。」

 浮かべながら、

「勲章だ…。」

 思い出を傷と重ねる烈。

 

 

 疑問が音となり、

『?』

 頭の上から出る。

 

 体を大きく捻り、

「ねえ。父さん…。」

 左側から烈の顔を、

「勲章って何?」

 覗き込む撃。

 

 

 答えの代わりだと、

「ハハハ…。」

 大きく笑い肩ぐるまの二人が、

「ハハハ…。」

 大きく揺れる。

 

 

 振り落とされないように、

「ねえ!」

 烈の頭を強く抱き、

「教えてよ!父さん!」

 食い下がる撃。

 

 

 

 撃を現実に引き戻したのは、

「はっ!?」

 こぼれ落ちる烈の左手。

 

 咄嗟に握り、

『グイッ…。』

 受け止める撃。

 

 もう一度、

「無い…。」

 烈の左手に、

「左手の傷が…。」

 視線を送る。

 

 浮かぶ疑問を、

「おい!」

 眼の前の人物に、

「お前は誰だ!」

 ぶつけるが、

「おい!」

 答えは無い…。

 

 もう一度、

「おい!」

 聞くが、

「お前は…。」

 答えは、

「誰なんだ…。」

 無い。

 

 そして、

「お前は…。」

 最後は、

「誰だなんだよな…。」

 消えそうな声で…。

 

 

 

 

 

 

 パネルのスイッチを、

『カチィ…。』

 入れながら、

「ドルギラン、通常空間航行へ移行。」

 モニターの宇宙の星々を見詰める十文字撃。

 

 ダーク・ギャバンとの戦闘から地球時間で約一週間後。

 

 まだ傷も癒えぬまま十文字撃は、宇宙刑事の任務に復帰していた。

 

 先程とは異なるスイッチを、

「自動操縦システム…。」

 押し、

『カチィ…。』

 目線は、

「起動!」

 モニターに表示された文字を確認する。

 

 ワープの緊張を、

『コキッ…。』

 首を左右に、

『コキッ…。』

 捻り緩和する。

 

 続き、深呼吸し、

『すーっ。』

 心の準備完了と、

『ポチッ…。』

 モニターのメールアイコンをタッチ。

 

 直後、アイコンが、

『ブォン…。』

 モニターいっぱいに広り内容を展開する。

 

 

 それは、

 【ダーク・ギャバン報告書】

 であった。

 

 

 撃の鋭い視線が、一文字一句漏らさないとモニターを走る。

 

 …。

 

 ……。

 

 ………。

 

 

 報告書の内容に関しては、宇宙警察の極秘事項のために、詳しくは記せません…。

 

 そのため、皆様に要約してお届けします。

 

 

 

☆報告書要約

 

 ダーク・ギャバンに蒸着していた一条寺烈はクローン。

 一条寺烈の記憶を直接クローンに転写していたと思われる。

 更に、脳にはチップが埋め込まれコントロールされていた。

 

 上記の事から推察のは…。

 

 一条寺烈は宇宙犯罪組織に捉えられている。

 

 記憶の転写には生きている本人が必要との事からも、生存の可能性の確率は高い。

 

 

 以上、報告書要約。

 

 

 尚、報告書は部外秘のため他言無用で、お願いします。

 

 

 

 報告書を読み終えた十文字撃の瞳に希望の光が点る。

 

 胸の前で、

『ギュッ!』

 右の拳が、

「必ず助けるよ…。」

 音を出し、

「父さん!」

 撃の決意を握り込む。

 

 

 一瞬の静寂を破り、

『ピコーン!』

 電子音の知らせが響く。

 

 視線を送り確認されたのは、ワープ準備完了の文字だった。

 

 

 伸ばす右手が、

「自動操縦システム解除!」

 掛け声と共に、

『カチィ…。』

 スイッチを押す。

 

 視線だけで、モニターの表示を読み取みとる。

 

 軽く頷き、

『こくり…。』

 確認完了とした。

 

 左手が、

「ドルギラン…。」

 掴んだレバーを、

『ギュィィィィィ!』

 押しながら、

「ワープ!」

 声も指示する。

 

 それに呼応し、ドルギランのエンジンが、唸りを上げ加速を開始した。

 

 そして…。

 

 銀河の星の瞬きを置き去りに、ワープ空間へ突入する。

 

 

 

 

 

 今日も…。

 

 宇宙の何処かで、

「蒸着!」

 十文字撃は、

「宇宙刑事ギャバン!」

 宇宙刑事犯罪組織と戦い続ける。

 

 その手に、父親の一条寺烈を取り戻し、平和な宇宙を作るまで!

 

 

 

 

〜end〜

 

 




 最後まで読んでいただきありがとうございます。



 少しだけ言い訳をば…。

 映画のチラシを見てとありますが…。

 そのチラシには…。

 宇宙刑事ギャバンの銀色のコンバットスーツに、周囲の闇が映り込み、漆黒のコンバットスーツのギャバンが一面に印刷されてました。

 これを見た瞬間!

 漆黒のコンバットスーツなら!!!

 と、頭に浮かんだストーリーを書いたものが、これですwww

 で…。

 実際の映画は、全く違うものでしたがww


 で、加筆する時に色々とネットで調べたのですが…。

 書いた時のままのテンションで、書きたい!

 で、実際の宇宙刑事ギャバンTypeGとは異なるものとなっています。









 また、機会がありましたら読んでやってください。

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