男が少ない世界で人生を謳歌するために必要なのは? そう紳士道!! 作:庫磨鳥
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色々あって遅刻してしまったが、授業が始まるまでには学校に到着した。やたらでかくて派手な正門を車に乗ったまま通った後、そのまま地下駐車場へと向かう。最初みた時は本当に学校かここはと驚いたものだ。
「こちらをお持ちください」
「ボタン?」
「なにかあったさいは、それを押してください。すぐに駆けつけます」
「中まで一緒に来ないのか?」
「よろしいのですか? 校内ですよ?」
どうにも反応を見るかぎり、これより先は女性禁制らしい。よく見れば奈々子さんと同業者らしき女性が数人車内に待機しているようで、下校時刻までここで『男衛』を待機させるのは当たり前のことらしい。といわれても紅校の入学式でみた感じ、先生も女性ばかりで今更な気もするし、護衛と言うのならば近くに居てくれたほうが自分も安心である。
その事を正直伝えて、一緒に来てくれと頼むと奈々子さんは躊躇いがちながらもうれしさを隠しきれずニヤけながら了承。一緒に校舎内に入ることとなった、するとやはり普通ではないのか、別の『男衛』が目を見開いて驚いている様子なのが印象的であった。その視線はどこか羨まし妬ましそうに奈々子さんを見ていたが、とりあえず今は気のせいだと思っておこう。
「さすがに教室までは、ここで待機していますので何かあれば大声で叫んでください」
「わかったよ。それじゃあ行ってくる」
奈々子さんに背中を見守られながら、前扉を開けて教室に入ると、白雪先生が無事な様子で立っていたことが確認できて、とりあえず安堵した。しかし何故か口を開くほど驚いた顔をしている。休みだと思わせてしまったのだろうか? ともあれ遅刻したのは事実だ。謝らなければ。
「少々トラブルがあって遅れてしまった。申し訳ない」
しまった。丁寧語で言うべきだったのに、つい何時もの調子で言葉を発してしまった。地球では偉そうと不評ばかりであったというのに、やはり癖というものは抜けないものだ。
「い、いえ来てくれただけで……本当に来てくれただけで先生は嬉しいです!!」
お、おう。そんな大層喜ばれることかと疑問に持ちながらも、一番前の席に向かう。その道中に気付いたのが、入学式よりもクラスメイトが少ないのだ。人だけではない半分ほど机ごと消えており、元から教室そのものが広いため気付くのに遅れた。
「先生。入学式に比べて生徒数が半分もいないようだが、いったい何が?」
進行の邪魔をしている自覚はあるが、さすがに気になると先生に聞くと帰ってきた答えは転校である。驚きのあまり授業初日に半数が転校したのかと質問を重ねれば、紅校ではよく見る光景らしく、その理由は最下位の学校だと見切りを付けて、ランクがいっこ上の学校に再入学をするとか。
授業はおろか入学式でなにを見限ったのか、ちっとも理解できないが、残った他の男子を見るとあながち間違いないらしい、少数というか見た感じ二人を除いた同級生どもは、ここに居ることじたい不平不満でしかないと言った様子だ。
席が遠いおかげで、聞くに堪えないであろう文句を耳にしなくていいのは幸運なことなのだろう。高校や大学ならいざ知らず小学校でなにが変わるというのか、地球のころからとんと理解出来ない領域である。
そういえば反応が他とは違う二人のクラスメイト、どうにも他の男子たちと違うようで休み時間になったら話しかけてみよう。そういえば白雪先生、今は授業の最中だろうか? 教科書が見当たらないがどうすれば……なるほど、すべてパソコンの中にあるんですね。それで授業も基本的にはオンラインだと……。
先生、まず電源ボタンがどこにあるのか教えてほしい。というか前世があったとしても小学一年生にわかるわけないだろと、少々この世界の教育制度にケチを付けていたら、クラスメイトに鼻で笑われる……まさか、この世界の男子は小学一年生でもパソコンを使えるのか?
白雪先生は親切丁寧に電源の入れ方から、授業の受け方、教科書の開き方を教えてくれた。それによって授業が遅れて申し訳ないと思って、改めて周囲を見たらクラスメイト共は、ヘッドフォンをしてすでにパソコンで動画を見ている様子だった。
あれはいいのかと聞けば、そもそも男子校の授業は学校側が用意した動画を見ることを言うらしい。なんでも、女性に直で教えられるのはストレスになるためとか、もはや家畜扱いではと思った自分は悪くないと思う。
なので、その日のノルマとして公開される動画を見て、それが見終わったら好きに帰っていいとのこと……駐車場で置き去りにされている『男衛』が一日中あそこに居るわけではない事だけは安心した。それ以外に問題しかなくて悩ましいことこの上ないが、ふと白雪先生は自分たちが動画を見終わるまで眺めているだけかと思って聞けば案の定、そうだと寂しそうに笑いながら言った。
彼女も、こんな虚無に近しい教師生活は本意ではないのだろう、なんのために教師になったのか分からなくなる扱いに同情しかできない。であれば、そんな彼女の立場に全力で甘えるとしよう。
「先生。やはりパソコンを上手く使えなくてな、申し訳ないがしばらく傍に居てくれないか?」
「はえっ!? ももももちろんです! 先生を遠慮無く頼ってください!!」
「ありがとう」
先生、礼を言っただけで倒れそうにならないでほしい。今日は母が居ないから保健室には運べないんだ。
さて、白雪先生を隣に座らせて動画を見始めた。その内容はひと言でいえば色々な意味で面白いものではなかった。女教師が教科書の中身をかみ砕いて黒板に書いていき説明をしていくだけで、そこに無駄も遊びもない。科目別に先生が替わったのだが、違いと言えば授業内容と使うチョークの色ぐらいである。どうせ男たちを不快にさせないという理由なのだろう、感情を殺しながら授業を進める様は中々えぐいように思えた。
救いだったのは、専門には劣るものの他の科目にも明るい白雪先生が居てくれたおかげで、動画で気になったところを口に出せば答えてくれたことだろう、彼女の説明は大変分かりやすく理解というものがとにかくしやすかった。覚え続けられるかは別として楽しく、同時に白雪先生無しで動画を見終える自信は完全に喪失した。
数にして三時限分、時間にすれば90分ほどの動画を見終えた所で本日の授業は終了。これで自分はいつ帰ってもいいらしい。あまりにも終わるのが早すぎる。まさかこれから毎日昼前に終わるのか? 勉強は苦手であるが、これはこれで心配である……いや、というかもしかして給食がない?
「昼食は食堂があるので、お腹がすいたという子は自由に移動してもいいですからね」
絶望に打ちひしがれていると、白雪先生は時間を確認して、念のためにと説明をし始めた。さらに言えば、完全に無料らしい。これは行くしか無い!
「――ちょっといいか?」
「君は?」
唐突に話しかけてきたのは成長すればダウナー系として女性に人気がでそうな縮れた黒髪の男子。つまりクラスメイトだった。彼はこの学校で授業を受けることに対してあからさまに不満そうにしていなかった片割れであり、自分の方から機会があれば話しかけたかった人物だった。
「
「ああ、そうだ」
「なあ、どうしてあんたは女に優しくする? 女ってのは少し優しくするだけで襲いかかるもんなんだろ? 怖くないのか?」
単刀直入に真っ向から聞いてきた和車、その様子からして自分が理解できない怖いものであるから知りにきたといった風であった。確かにこの世界での自分の言動は異常でしかないのだろう。それに関しては最悪自分は白雪先生や奈々子さんのような女性なら襲われてもいいかなと思っているし、紳士道を極めるのとは別にハーレムを作って幸せな家庭を作る未来もありだと思っているから……と正直言うのはあまりにも紳士に欠けているので、極力言い方を変換できるように努める。
「ふむ。であれば逆に問いたい。どうして女性だからと冷たくするのだ?」
「どうしてって……」
「確かに男を見たら獣となって襲いかかってくるのが女性というものなのだろう。理性を失っている故に自分たちの異常などお構いなしに暴れ狂う存在なのかもしれない。だが白雪先生みたいな、そうでない素敵な女性も確かにいるのだ。和車よ。自分は自立しなければ叶えられない夢を持って生きている。故に自分は自分を尊重してくれる女性を一介の男性として同じように尊重したいのだよ。であれば逆に問おう和車よ。己はどうしてただ性別が違うだけで、そこまで怖がるのだ? 同性であればどうして安全だと思うのだ?」
「それは……」
始めに答えたのは、自分の言葉を盗み聞きしていた名前も顔も覚える気の無いクラスメイトだった。曰くそんなの女だからだろである。お前には聞いてない。しかし和車は七歳にも満たない小学生なのだ。こんな難しい質問をするほうがおかしいか。
そう思ったのだが、彼は顎に手を当てて長考している。そもそも質問の内容からして年齢以上に頭が良いのかも知れない。ちなみに自分の場合二周目というズルをしているから他と違うだけで、記憶を思い出さずに過ごしていたら、あまり頭が良くないため一般的な男となんら変わりない人生を送るところだったかもしれないな。考えるだけで中々にゾクッとする。
「……正直よくわからない。でも神詩の質問に答えられる男になりたいと思っている自分が居る。お前がいう“シンシ”を極めれば答えが見つかるか?」
「和車、いや、猟哉よ。すまないが自分もそれに対して答えを持っていないのだ。なぜならそれは君が自分で探して決めるものだからだ」
本当に分からないので答えは自分で探して欲しい。自分はそこまで賢くないんだ許せ。
「――ハハッ! お前等おもしれぇな!」
「お前は確か。
「なんだお前、もしかして同学年の名前全部覚えてんのかよ?」
「偶々だ。俺たちとは見た目が違いすぎるから自然と覚えた」
っと、割り込んできたのは話しかける予定だったもう一人のほうだ。真っ赤で逆立つ短髪もそうだが、なにより特徴なのはお前本当に小学生か? と疑うほどの高身長に体格の良さだ。性格も乙女ゲーの攻略対象そのもので、これでスポーツを始めたものなら秒でスターになること間違いないだろう。
「くそつまんねぇ男に生まれて嫌になっていた所だ。なあ、あんたの言う“シンシ”を極めれば、そんなつまらない人生から抜け出せるのか?」
「自分の答えは変わらんよ。紳士道というものはあくまで道でしかないのだ。その道をどう作り、どこへ到り、そして何を見るかは己次第だ」
粗暴の言動の中に懇願と言っても過言では無い今を脱却したいという気持ちを感じ取れた。だが、本当に申し訳ないことだが、それを自分に聞かれても正直困るので猟哉の時と同じく適当に誤魔化す。
「……へへっ。いいじゃねぇか。自分で道を作るって所が最高に気に入ったぜ! 決めた! オレも“シンシ”を目指す! そうして自分で道を作ってやるぜ!」
「俺も答えを見つけるために“シンシ”を極めたい。よろしく頼む」
……とりあえず友達が一気に二人も出来たと考えておこう。因みに白雪先生は猟哉と話している最中にきゅ~と言って気絶していた。他のクラスメイトも教室を出ており、恐らく帰ったのだろう。
「そうだな。まずは先生を起こしてお昼にするか」
そう提案すると二人とも了承してくれたので、白雪先生に何度か声を掛けると、男子に囲まれ……とじゃっかん錯乱しているもののきちんと目を覚ましたので、自分たち三人は教室の外に出た。
作者はどうしても男を多めに出したい人間なので、予定としてはあと二人ほど出るみたいです←。
これからもぽつぽつと書いていきたいので、よろしければお気に入り登録や評価、感想などをしていただけると幸いです。