男が少ない世界で人生を謳歌するために必要なのは? そう紳士道!!   作:庫磨鳥

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二週間後から個人授業を受けるまで

登校初日から二週間。学校生活は今のところ順調である。最近では言わずとも横に座ってくれて、色々と教えてくれる白雪先生のおかげで授業は詰ることなく受けられていた。ケアレスミスが多いのは許して欲しい。日本語に引っ張られてしまい、どうしても書き間違いが多くなってしまう、雰囲気で読めるから有り難いとしか思わなかったが文字が似過ぎているというのも問題だな。

 

時間が経って、それなりに慣れたのか白雪先生は感謝を伝えても悶えたりするが滅多に気絶することは無くなった。それに安心してか自分も先生とよく会話をするようになり、この世界のことをより知ることが出来た。

 

男子校の教師は勉強、理性試験、そして就職。そんな三難関を突破して初めてなれるかなり難しい職業らしい。特に後ろの二つはレベルが違うらしく全国一位の才女でも、この二つに躓いてしまいニートに転落してしまうとか、厳しいが過ぎる。

 

「でも、理性試験は使われた男性の声とか匂いが私の好みから外れていただけだし、就職も偶々担任を募集していたのに乗っかっただけで、私は幸運なだけなんです。先生としては全然で……」

 

そう言って恥ずかしそうにする白雪先生。どうやら自信の無さが謙虚でお淑やかな性格の理由になっていたらしい。行き帰りに見る外の女性たちとはえらい違いだ。彼女たちはどうも男子校を車で往き来する生徒目的に、わざと屯っているらしく、目的の男子が登校下校する時間を予測する阿漕な商売も存在しているとのこと。

 

なので、奈々子さんはそんな女性たちと読み合いバトルを日夜繰り広げているらしく、定期的に会社が貸し出している車を入れ替えたり、ルートを変えたり、偽情報を拡散したりしているとのこと。車の窓はマジックミラーで外側から見れないからそこまでしなくていいのではと思って聞いてみたら、下手をすると囲まれてしまい車を乗り捨てないといけなくなるらしい。やっぱりゾンビの類いか? 飢えているからこその言動なんだろうが、それならなおさら人に戻ってほしいものだ。

 

閑話休題。白雪先生は自分を幸運と評するが本当にそうだろうか? 猟哉が言うには男子校の担任というのは、なにかあったさいに責任が学校に向かないようにするために用意される生贄と聞いた。だから、斬り捨てても諦められる人員、つまり新人が配置されやすいとのこと。白雪先生は例に洩れず、ゆえに紅校の先生になれたというのは、どちらかと言えば不幸な気がした。

 

この二週間でまた一人転校した、猟哉と到自を除いた男子共は授業動画を流すだけ流して、堂々とゲームをする始末。白雪先生は自分の傍にいながらも、そんな彼らも担任として、きちんと気にしているのか心配そうな視線を向けるが気付かない、気付いたとしても無視している。

 

……もしこんな奴らでも白雪先生が嫌だと喚けば簡単に辞めさせられてしまうのが担任という立場なのだ。やはり幸運と祝福される職業とは思えなかった。まあ、もしそんなことがあったとしても、男という武器を最大に使い全力で止めてみせるがな。

 

「……ならば。先生には感謝しなければな」

「え?」

「なぜならば。白雪先生が幸運だったからこそこうやって会えることが出来たのだから。本当にありがとう。貴女は自分にとって幸運を象徴する白い花のようだ。できることならば長く長く傍で咲いて欲しい」

 

意気込みが過ぎたのか自分でも驚くほど歯の浮いた言葉を並び立てる。案の定、白雪先生は顔を沸騰させて、言語中枢が麻痺してしまう。あうあうとしか言わなくなった彼女を宥めて……若干悪化させてしまった後、仕方ないと動画に集中する。

 

……やはり自分は白雪先生なしでは賢さを上げられないようだ。ちっとも理解が進まない。自業自得とはこのことか。

 

授業動画を見終わり、自分たち男子三人組と『男衛』の奈々子さん。そして自分が誘ったことで一緒に食べるようになった白雪先生の計五人で食堂に向かいお昼にする。

 

「食堂の料理って本当に美味しいですね!」

「はい。会社にも食堂があるのですが、それよりも断然に調理も食材もグレードが違います。これが無料で食べられるようになるなんて……感謝してもしきれません」

「……私もです。本当に夢みたい」

 

白雪先生、そして自分の割としつこかったであろう説得に負けて昼は普通に食べるようになった奈々子さんは、自分たち男子とはひとつ離れた席に座り一緒に食事していた。本来であればここは生徒専用の食堂らしいのだが、自分たち以外に使う奴がいないしと、調理場の婦人方々に直接交渉を行った結果、彼女たちも食材を腐らせるだけだと許可を頂いた。いずれは他の教員職員さんにも解放できればいいと思うが、まあ本格的に交流をし始めてからでいいだろう。

 

ちなみに奈々子さんは『男衛』の仕事があるのでと最初は断っていたのだが、執拗に説得を行ったことで根負け、今では一緒に昼食を摂っている。当初は自分の安全に関わることとあって、仕事そのものに干渉しないようにとは思っていたのだが、白雪先生を誘ったことで考えを変えざるをえなかった。

 

一緒にと言っても、じゃあ男女同じ席で食べるわけには行かず。自分だけならともかく到自も猟哉も平気とは言ってくれたが、まだまだ二人は完全に女性慣れしているように見えないからと白雪先生が遠慮をして、少し離れて食べることとなった。

 

本人は至ってもの凄く幸せそうではあったが、その光景は客観的に見ると虐めにしか見えず。さすがに気になると、奈々子さんも普通に食事をしてもらうようにしたのだ。おかげで自分の天使度が上がったみたいだが、まあ満点になったら天に還らないといけないというものでもないため安い代償だろう。

 

「しかし相も変わらず。こんなに美味い食堂を自分たち以外誰も使わないな。二週間通い詰めても上級生一人も見ないとは、もしかして全員が転校しているとでも?」

「そうだと思う。紅月男子小学校は進学するだけで恥と認識されている。二年になる頃には大半の生徒は転校してしまい、どうしても転校できなかった男子は不登校になるとのことだ」

「そこまでか?」

 

冗談にしか聞こえないが嘘を吐かない猟哉の言うことだ、事実なのだろう。六、七歳の子供が考えるものではない。どうにもこの世界の人間は地球の同年代に比べて早熟な気がする。法の年齢制限が地球よりもずっと低いことが影響しているのか?

 

軽自動車であれば15歳から免許を取れたり、中卒就職は当たり前らしく、特に女性に関しては十代後半ではすでに社会人になっている者が圧倒的に多い。実際に奈々子さんは16歳で会社員。姉も中卒で就職しようと思っていたのだが、母の強いすすめによって高校に進学。自分が産まれたことで金銭的余裕ができ、そのまま大学へと通うことになったと言う。成人基準が江戸時代である。

 

「紅校に何かしら問題があるとは思えんがな」

「確かになー。飯がうめぇし、授業も先生がいるおかげで分かりやすいしよ」

「ああ、全くその通りだ」

 

何気ない到自のひと言に同意すると食堂の婦人たちと白雪先生が一斉に照れ出す。男というものはどうにも、女性という理由で評価をマイナス100から始めようとする。しかし到自も猟哉も自分を真似ているのか、ここ最近、授業でも分からない所や疑問に思ったことがあれば白雪先生に質問しており、詰ること無く回答を提示して、自身が知らないことがあれば正直に伝える先生のあり方を真っ当に評価してくれている。その事に純粋に良かったと思うものの、最近は独占とは行かないため少し寂しさと嫉妬を抱いてしまう。やはり紳士の道はまだまだ遠いようだ。まあ渡す気はないがな。

 

ついでに白雪先生たちが自分たちの会話を当然と言わんばかりに聞いていることには、数日前に内心でツッコミ済みなので指摘はしない。男子に関するものに限り五感が鋭くなるものだ、この世界の女性は。

 

「別の男子校を見たことあるが設備で言えば比べものにはならないほどの差はある。ただ過剰な悪評の裏には他の男子校の思惑もあるみたいだ」

「思惑? 随分ときな臭い話だな」

「ああ。分かりやすいのはランクが一段階上の『聖なる男たちが学ぶべきに値する学園』のやり方だろう。『紅月男子小学校』に入学した家族に甘い言葉で近づいて中途入学や転入で高額な料金を要求する。そうやって大金と男子を得るために噂ではわざと合格率を低く設定しているみたいで、『紅月男子小学校』を入学して即転入したくなるような悪評を率先してばら撒いているという話だ」

「そうか…………すまないが、もう一度そのランクが上の小学校名を言ってくれないか?」

「『聖なる男たちが学ぶべきに値する学園』だな。正確には小中高大一貫制で、入学してしまえば大人になるまで二度と学校から出られない男子の監獄なんて呼び名も聞く」

 

もう正式名称の時点から相性が悪そうだ。『聖なる男たちが学ぶべきに値する学園』、よくもまあここまで自己中且つ自負心溢れた名前を付けられるものだ。略して聖学でいいだろう。

 

「ごちそうさま――さて、白雪先生」

 

食事が終わったことで白雪先生に声を掛ける。すると彼女はビクッと肩を震わせてる。こちらを見る顔は青く、どこか脅えているように見える。

 

「……ほ、本当にやるんですか?」

「勿論。数日前に決まったことだ。今更変えることはできない」

「わ、私じゃやっぱり……」

「白雪先生じゃないとダメなんだ。それに先生は言ってくれたはずだ。なんでも協力してくれると」

「うっ……わ、分かりました。先生として全てを捧げる覚悟で挑みたいと思います! えいっえいっむんっ! むん! むんむんむん!!!」

 

意気込む、というよりも死中に活を求める勢いで気合いを入れる先生に大袈裟だと、リラックスしてほしいと言いながら、手を差し出す。先生は死すらも受け入れたような悟りきった表情で自分の手を取って立ち上がった。

 

――授業の動画は1日3時限分全て合わせても90分ほどしかないが、本人が望めば先生による専門科目の直接授業を受けることが出来る。自分はこれから毎日、昼食後に白雪先生の授業を受けることを選んだ――ひとりで。いわゆる個人授業(マンツーマン)という奴である。

 

「さあ先生。昼の専属授業と行こう。よろしく頼む」

 

ちなみに、先生の科目は音楽だ。――自分は知らなかったが、この時自分以外の人全員が、先生の明日を心配したらしい。

 




脳死で書きすぎて思いの外長くなってしまい。とりあえず先に投稿することにしました。後半に当たる次話はもう少しお待ちください。

そろそろあっちの作品も書かねば( ̄▽ ̄)。
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