「いらだつ。実に苛立つなあ博麗霊夢」
惜しまれるべき桜の花もまだその量の多さに捨て置かれる頃、はくれい神社の社務所の上がりがまちの先の襖の閾に足を掛け、入り口の柱に肩を預け、素足桜の花で彩った咲夜は、春の柔らかな光にもかかわらず、鳶色の逆光の中こういった。
今、銀色のボブカットの少女は赤いリボンをつけた黒髪のロングストレートの少女に語りかけていた。
こたつの中で寝ながら耳をかっぽじっていた霊夢だが、その指を鼻に刺し換えてあまつさえねじってこう受けた。
「はあぁぁ?いきなりそんなこといわれてもねぇぇ」
咲夜は春風の中で湿った舌打ちをする。
「何故なのだ、私に対するその態度、…。いや、私に対してならいい。お嬢様を、お嬢様を前にしても同じようなその巫山戯た態度、なんだというのだ」
「はあぁぁぁぁ?そんなにふざけておりますかねぇぇ、そこに立っていて暇ならお茶をいれてきてくれませんかねぇぇ、喉渇いちゃってさあぁ」霊夢は少しだけ動いた
「ふん、私はお前に対して、まだ本気で戦ったことは無かったな。」腰に下げた懐中時計が一秒一秒拾い上げるように時を刻みはじめる。
「弾幕勝負でもしようっていうの」霊夢は依然こたつの中で少しだけ緊張する
「弾幕勝負?くだらん、そんな事に興味は無い」
「では、殺し合いでもするつもりかね」霊夢は口にするや殺気立つ
「殺し合いか。ふふん、それはできないな」
「怖じ気づいたの?」赤い、脇の無い巫女服に身を包みながら、咲夜に挑発をする霊夢
「そうではない。負けなのだ、霊夢。私はお前に傷一つつけた時点で負けてしまうのだ。この件に関してはな」
「なんかよくわかりませんけど、それじゃあどうしたいってんだよ」
「これだ。」
寄っかかっていた柱から腰をうねらせ垂直に戻る咲夜。
神社の中は可愛いぬいぐるみだらけになっていた。十六夜咲夜は時と空間を支配する能力を持っていた。そして、時を止めて博麗神社の中にぬいぐるみを配置したのだ!!
「本気の勝負…。ではないな。コレは検査だ、博麗霊夢。おまえという人間性のな。可愛いものに対する耐久レースだ!!」
霊夢は容易く負ける。ちょっと離れたところに出現したての大きな熊さんのぬいぐるみに抱きつき、蟻地獄のようにこたつの中に轢きづり混んでいき、タガメが獲物を捕らえたように動かなくなった
「馬鹿な、なんなのだ、普段はやせ我慢をしているというのか」白いエプロンをしたメイド服の昨夜は思いもよらぬ決着にうろたえる。
「してないわよ」霊夢はぬいぐるみを捉えているため、多少くぐもった声であっけらかんと言う。
「ではなぜお嬢様にめろめろにならないのよ」
「可愛くないもん」
「ほげえ」
咲夜はショックで倒れる。たまたま下に居た猫さんのぬいぐるみが彼女を救った。
「どっちかといえばあなたの方がやや可愛いわよ」
「た、助けてくれっ」化け物を見たかのように外に飛び出す咲夜
後に残された二人前のお弁当を発見し、寝転んだまま払い棒で引き寄せながら霊夢は独りごちる。
「ご飯…。咲夜ったら遊びに来てたのね。」
「しゃくや、どこいってたのっ?」
ほわほわのドレスをはためかせて紅魔館の城主、永遠に幼い吸血鬼レミリアが咲夜に駆け寄ってくる。
お嬢様、と心の中で呼びかけつつ昨夜はレミリアを見る。すみれ色に近い銀髪に深紅の瞳、身長は10歳の子供のように小さく、コウモリの羽がある。、
「しゃくやっ」可愛い声だ。と十六夜咲夜は感じる。
「しゃくやっ」とんでもない。と十六夜咲夜は興奮する。
レミリアはぴょんぴょん跳ねて昨夜の返事を待つ。そんな姿もまた可愛い。
「なんだというのだ」昨夜は霊夢に発したような声を出す。
「なにが?」レミリアには分からない。
「お嬢様のことではないのでございます。」突然かしこまる咲夜。
「しゃくやー気になるよー」
「いったいなんだというのだ」
「しゃくや」
「お嬢様は、誰がなんと言おうとかわいさの特盛りですゆえ!」咲夜はレミリアを抱っこする。
「500歳の帝王にむかって、まったく無礼者だなぁ咲夜は」と抱っこされたままのレミリア。