一年前くらいに思いついたネタ。
続きはない。

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一年くらい前に思いついたネタ。
続きはない。


ヒーロー部

「きゃあああ!!! ひったくりよ!」

 

 日が傾き始め、空が赤く染まり始めた夕暮れ時の商店街に悲痛な声が轟く。

 甲高い声で叫んでいるのは買い物帰りの若い主婦。

 人の追い付けない速度で遠ざかっていくのはひったくり犯。

 バイクを走らせ、主婦から奪い取ったカバンを引き下げて逃走していく男を止められるものはいない。

 

「ヒャッハー!最高だねぇ!!

 神樹なんてもういない! これからは俺の時代だぜぇ!!」

 

 神樹様が消えて早一年と半年、こうした軽犯罪が四国中のいたるところで少しずつ増え続けている。

 少しずつ悪化していく治安に大赦の後継組織も奔走しているが絶対的上位存在というものが消えれば羽目を外したくなる馬鹿がどこにでも現れるというもの。

 本気の犯罪に手を染めるほどの度胸もなく、かといって普通に戻ることのできない所謂(いわゆる)はみ出し者がここ一年で事件を起こし続けていた。

 

「そこまでだ!!!」

「な、なんだお前たちは!?」

 

 だが、影あるところに光あり。

 軽い悪行に手を染める愚者(バカ)がいるのなら、軽い善行に手を染める愚者(アホ)もまた存在するのだ!!!

 

「聞こえる!聞こえるぞ!!助けを求める人々の叫びが!!!」

「え、マジですか。俺の耳には全然……」

「耳のイヤホンを外すんだ!」

「よっと……あ、ほんとだ。若いレディーの悲鳴の残響が聞こえる」

 

 黄色とピンクの全身スーツをそれぞれ身に纏った二人組(変態)が夕暮れをバックに現れる。

 一人はやたらやる気満々に、もう一人はとても軟派に。

 夕日をバックにした変態たちは、なおもバイクで逃走を図ろうとするひったくり犯をみて顔を見合わせると軟派な男は背負っていたリュックをガサゴソと漁り始める。

 

「えーっと。部長~、こういう時はどれを使うんでしたっけ?」

「馬鹿者!ちゃんと説明書を配っていただろう!こういうときはNo.34だ!」

「えっと、34…34………」

「舐めてんのかお前ら!?」

 

 なんとも手際の悪い黄色とピンクの変態どもにひったくり犯がたまらず突っ込みを入れる。

 ひったくり犯の彼からすれば世紀の大犯罪を犯しているというのに、なんとも締まらない展開である。

 

「……というかなんで俺がピンクなんですか。普通こういうのは紅一点の女の子とかでしょ?」

「仕方ないだろ。それしか余ってなかったんだから」

「それにしてもピンクて……うちら男だけの部活なのになんでこんな色にしたんですか」

「それはあれだ、かつてオレ様が見た空飛ぶ本物のヒーローたちの色が赤・黄・緑・紫・ピンク色だったからだ!」

「空飛ぶ本物のヒーローなんているわけないでしょ?」

「いーまーすー!オレ様は二年前確かに見たんですー!!!」

「まじめにやれやコラ!?」

 

 いつまでも締まらない二人組の変態に業を煮やしたひったくり犯はついに怒髪天を越える。

 もう知ったことか!ひったくり犯から轢き逃げ犯になってやらぁ!と怒りで覚悟にGOサインを出した男はもう止まらない。

 二人の変態をひき殺すため、更なる加速をいれようと男がハンドルをひねろうとしたとき加速した視界の中でふと、変態たちがリュックの中から何かを取り出していることに気がついた。

 

「これぞ我らが秘密兵器No.34、暴漢制圧用ネット『ねばねばスパイダー』だ!」

 

 リュックサックの体積とはあまりに不釣り合いな大きさのバズーカ砲が取り出される。

 

「ちょ、ちょっとまて!?なんでこんなガチめの装備を!?」

「言っただろう!オレ様たちは助けを求める人々の声で現れる正義のヒーローなのだと!!!」

「ということなんで、大人しく捕まってください」

 

 スピードを上げた男にもはや回避のために急ブレーキをする暇も引き返すための余裕もない。

 意気揚々と射出を命じる黄色と仕事をこなすように淡々とバズーカ砲を人間に向けるピンク。

 

ドッカ―――――ン!!!

 

 轟音とともに吐き出された視界を覆うほど巨大なネットはバイクごとひったくり犯を絡めとり一瞬にして捕獲してしまう。

 

「ふう!これで事態は万事解決だな!?」

「ですね、後は他のメンバーの到着でも待ちましょうか」

「あの~……」

 

 ひったくり犯を捕まえて「いい仕事したぜ」とやりきった顔をしている黄色の下にカバンをひったくられた女性が申し訳なさそうに話しかけてくる。

 

「おお、ご婦人!どうですか、見事ひったくり犯を捕まえて御覧に入れましたよ!」

 

 胸を張り、自身の功績を誇示する黄色。

 

「あの、私のカバンも張り付いちゃってるんですけど……」

「「あ……」」

 

 変態共が顔を見合わせる。

 今しがた捕まえたひったくり犯を拘束しているトリモチ製のネットには、犯人とバイクの他にひったくられたカバンまで引っ付いていたのだった。

 

「も、もうしわけありません!すぐさま外してみますので!おいピンク手伝え!」

「りょ、了解です!」

 

 二人の変態は慌ててネットに引っ付いたカバンを取ろうと手を伸ばす。

 だがこのネットは特別製のトリモチで作られている。

 そんなネットに策もなく手を伸ばせばおのずと結果は見えてくるだろう。

 

「……おいピンク、どうにかしろ」

「無理です部長。完全に引っ付きました……」

「このトリモチを外すための道具とかは一緒に入ってなかったのか!?」

「無いです、一度ついたら離れません」

「なん…だと……?」

「……ちくしょう、俺はこんな奴らに捕まったのか」

 

 無様に張り付く変態二人と、そんな二人に捕まったことことに本気で落ち込んでいるひったくり犯。

 実際に見ていた人も、今来たばかりの人もこの光景を見ればこう思うだろう。

 

 

 

『なにこれ?』

 

 

 

 と。

 

「はーい、みなさん退いてくださーい」

 

 そんな見る人全員が疑問符を浮かべる光景の中、人だかりの合間を縫って透き通った綺麗な声が響き渡る。

 夕方の商店街に出来た人だかりが少しづつ裂けていき、その向こう側から見目麗しい少女達が姿を現した。

 

「…はぁ、あっきれた。まさかここまで馬鹿だとは…」

「貴様ッ!おのれ犬吠埼、何をしに来た!?」

「なにって勇者部の活動の帰りにうどん食べに行こうとしたらあんた達が道を塞いでいたんじゃない」

「何ィ? つまり我らの活動の邪魔しに来たというわけかッ!?」

「もうとっくに失敗してるじゃない!!」

「お、お姉ちゃんも部長さんも落ち着いてください…!」

「あ、結城さんだ。やほやほー」

「新城君だ、やほやほー!」

「はぁ……結城さんの笑顔は癒されるなぁ。結婚して」

「えぇ!?」

「友奈ちゃん、行きましょうか」

「そうよ友奈、こんな馬鹿どもと一緒に居たら馬鹿が移るわ」

「誰が馬鹿だ、このクレイジー国防とツンデレにぼしめ」

「「誰がクレイジー国防とツンデレにぼしですか(よ)!?」」

「ふむふむ、今回の発明はトリモチネットなんだねぇ。これは園子博士も負けていられないんよぉ〜!」

 

 網に絡め取られたままの黄色と犬吠埼風が口論を交わし、軟派なピンクと友奈親衛隊が火花を散らす。その傍らで二人の仲裁をしようと悪戦苦闘する犬吠埼樹と爛々と目を輝かせる乃木園子。

 

 これこそ新世紀二年、讃州高校『勇者部』と讃州高校『ヒーロー部』の日常の光景であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成功したと聞いて来てみれば…まったく、いつもと同じじゃないか」

「今回も派手に失敗したね~。あ、みんなお菓子食べる?」

「ふむ。今回の発明品も改良が必要、と。糖分補給のためだ、頂こう」

「は、はやく助けてあげようよ~!」

 

「あの~ところで私のカバンは……」

「ちくしょう……俺の晴れ舞台が……」

 

 




ゆゆゆ二次創作を語っている癖にゆゆゆキャラが出ているのがほんの数行だけって詐欺では?


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