オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結)   作:ハヤモ

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漫画通りにならないようにしたいとはいえ、あまりオリジナル過ぎても良くないかなと思ったり。

またも、グダグダ考えるリョウマツ。
冒頭は個人的な妄想と主観が混ざります。


中央編の漫画を見ました。
ルドルフ会長の「中央を無礼(なめ)るなよ」が怖いですね。
ベルノちゃんが尻餅をつく程です。
親父ギャグをかましている娘とは思えませんね……。


第10R「ヒトとの併走。 或いは添寝」

 

 

 

嫉妬すら程遠い。 憧れすら届かない。

 

 

 

ヒトがウマ娘に思う一片だ。

 

ハナから無理だと。 次元が違うと。

 

その差は歩み寄ってもゼロにはならない。

 

そんなの、子供だって知っている。

 

絶対に勝てない。

 

単純な身体能力じゃ無理なんだ。

 

何事にも絶対は無いと言う者がいる。

 

だが、あの差は間違いなく絶対がある。

 

だから、時にヒトとウマ娘の間で亀裂が入る事だってあった。

 

今の俺とオグリみたいにな……。

 

強きウマ娘は驕り、弱きヒトは憤慨し。

 

桁違いのバリキを生み出す蒸気機関の発明は、その反骨精神の一端だったのかも知れない。

 

圧倒的な質量で貨物を引っ張る機関車と併走するウマ娘の絵は、印象的だった。

 

圧倒的な腕力と脚力でヒトに勝るウマ娘に泥を塗ったのだ。

 

歴史の偉人達は その刹那、ヒトは道具のチカラであれど絶対の常識を機械の脚でもって踏み砕いた。

 

快挙である。

 

この世界において、ヒトは二足歩行のロコモーションで唯一無二の存在になれなかった。

 

隣人が常にいたのだ。

 

挙句に脚力や腕力の面で敗北を喫する。

 

耳と尻尾が生えている以外ほぼ同構造、同じ言語を話し、同じ飯を食べ。

 

なのに絶対の壁隣で走るウマ娘という存在は、ヒトにとって屈辱であり続けたのも事実である。

 

ヒトにしかなくて、ウマ娘に無いというのが無いからだ。

 

ちん……いや、そういうのは除いて。

 

ウマ娘が鹿や犬のように4足歩行の生物であれば、全然違ったのだろうが。

 

棲み分けはあれど完全が無い。

 

光と影が、そこにあり続けた。

 

本能直感。 生物界のピラミッド。

 

弱肉強食。 勝者と敗者。 被捕食者。

 

ヒトはウマ娘の下位に位置していた。

 

道具のチカラが発達し、勝負の外じゃ対等に見えるも、因習は根強く残る。

 

それでも歴史は険悪で無しと示唆してくれた。

 

ウマ娘とヒトが手を取り合い、時に結ばれて仔を成し、走りの世界の外でも幸せを掴んでこれるのだと。

 

古代壁画群でも、その姿は描かれている。

 

教科書にも載っている事だ。

 

だから……俺もオグリと結ばれたい。

 

幸せにしたいと思ってきた。

 

でも。 その心は揺らぐ。

 

頭で漠然と分かるのと、現実を見るのは違うから。

 

こうやって、またグダグダ考える。

 

これもアレも、オグリが謎の態度を取るからだ。

 

何に怒って落ち込んでるんだよ。

 

教えてくれないのも、分からないのも、余計に遠く感じさせる。

 

オグリの事を分かっていたつもりが、分かっていなかった事実も突き付けられて……辛い。

 

焦らされる。

 

オグリ。

 

お前は何を求めてるんだ。

 

俺は機関車じゃない。

 

もう、お前とは併走出来ないんだよ。

 

願わくば、一緒に もう一度……。

 

…………。

 

このままじゃ駄目だ。

 

動かなきゃ。

 

俺はベルノにオグリを調べて貰った。

 

同じウマ娘。

 

話しやすい事もあるだろう。

 

なにより。

 

あの娘は真面目そうだし、良い子そうだから信用出来る。

 

不良3バカより全然良い。

 

ジョーさんは……うん。

 

歳上とはいえ男同士、多少は話し易いけど。

 

オグリを どう思ってるか知らん。

 

出走バとトレーナー以上ではないと思うが。

 

NTRな事になるのは嫌だ。

 

とにかく。

 

頼むぞベルノ。

 

君の報告を待つ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

ベルノから早速報告があった。

 

オグリ自身、どうしてイライラしているのか分からないという。

 

えぇ……。

 

なんだそれは。

 

本当に思い当たる事が無いのか、他に無いのか聞いてみたけど……。

 

女の子の日かなぁとか、困った様に言うなよ。

 

そういう……その、デリケートな話は困る。

 

アレは とてもツライらしいからな。

 

イライラしたり、気持ち悪くなったり。

 

あまり触れない方が良いよとベルノは言う。

 

ううむ……。

 

男の俺が、どうこう言えないな。

 

今まで こんな事無かった気がするが、同じウマ娘の意見は尊重したい。

 

それに、とベルノ。

 

カサマツの川砂を敷き詰めたダートコースを走る為に特訓中との事。

 

サラサラした川砂を走るには、今の走り方ではチカラが分散してしまい、チカラを発揮出来ないらしい。

 

その為、ジョーさんの提案した走法を試すそうだ。

 

川砂をチカラ強く踏み固め安定させ、足首で掻く様にする……つまり、泳ぐ様に足を動かす事で、スピードを高めたり負担を下げる事を狙うらしい。

 

その為に足首を鍛えてるそうな。

 

俺にレース走法やルールは よく分からないが。

 

この影響もあるんじゃないか?

 

俺は身を引く事にした。

 

オグリは頑張っているんだ。

 

俺が厨房や他の場所で働く様に、オグリにはオグリの場所がある。

 

その青春を、戦いを邪魔したくはない。

 

アドバイス出来ることも無いしな。

 

暫くそっとしておこう。

 

だけども。

 

やっぱり寂しいものだ。

 

……あっ、そうだ。

 

新しい靴は、渡さないと。

 

オグリのデビュー戦まで時間は無いらしいからね。

 

ジョーさんは良いヒトだが、その辺の面倒は疎そうであるし。

 

やはり、俺が世話しなくちゃ。

 

それくらいなら許してくれるだろう。

 

 

 

俺は夜、オグリのいる物置部屋に靴を持って向かった。

 

知識が無いから普通の靴だが、大切なレースだ。

 

綺麗な新品で走って欲しい。

 

安物だけど、靴底が剥がれているより良い。

 

 

「リョウ? どうしたんだ?」

 

 

灰色のシンデレラは、嬉しそうな口調で出迎えてくれた。

 

耳は横にヘタっている。

 

良かった。

 

受け入れてくれているみたいで。

 

 

「靴を渡しに来たんだ」

 

「そうなのか! いつも、ありがとう……」

 

 

食堂で見せた不機嫌な様子は何処へやら。

 

嬉しそうに笑ってくれるオグリ。

 

良かった。

 

俺は新しい靴を渡しつつ言う。

 

 

「デビュー戦が近いんだろ。 だから、さ……邪魔はしたくないから、この辺で」

 

「待って!」

 

 

そう踵を返した俺に、オグリは裾を掴んで引き止めた。

 

顔を見やれば、赤らめて しおらしい。

 

どうしたんだ。

 

俺みたいな奴、オグリにとっても邪魔者だろうに。

 

 

「今夜は、一緒に寝て欲しい」

 

 

…………。

 

ファッ!?

 

 

「昔みたいに。 ダメ、か?」

 

 

上目遣いで、耳を前に倒して しょげる動作はズルいぞ。

 

バレたらヤバい。

 

俺がクビになるだけでなく、オグリは退学になる可能性が脳裏を過る。

 

 

「レースの邪魔をしたくないから」

 

「一緒に寝るくらい、邪魔にならない」

 

「それに昔みたいって……」

 

 

引かないオグリにオロオロしていると。

 

 

「リョウは私の事が嫌いになったのか?」

 

 

体の熱が上がった。

 

そんなワケない。

 

俺はオグリが好きなんだ。

 

嫌いになんか、なるもんか。

 

 

「嫌いじゃないよ」

 

「だって他の娘と話したり、ご飯を くれなかったり」

 

 

どれだけ根に持ってるんだ。

 

それに意地悪しているつもりはない。

 

働いている以上、オグリ以外のウマ娘とも関わるし、オグリにだけ優先するワケにはいかない。

 

 

「ここは学園、群れの中にいれば普通の話だよ」

 

「私にとってリョウは特別なんだ。 でも、リョウは私の事は普通、なのか?」

 

 

普通なワケない。

 

ここまで胸の内を話してくれるのは初めてかも。

 

特別でいたい。

 

それがオグリの望みなら、とっくに叶っている。

 

伝えよう。 それとなく。

 

 

「特別だよ。 オグリの事」

 

 

シンデレラに告白する勇気が無い、ヘタレ王子にはコレが限界。

 

 

「そうじゃなかったら、一緒にいない。 靴だって持ってこない」

 

「そうか。 うん、そうだよな」

 

 

にへらにへら。

 

満足そうに笑みを浮かべ、顔が綻ぶ。

 

可愛い。

 

久し振りに笑顔に出来た気分。

 

 

「また明日」

 

 

俺には王子なんて柄じゃない。

 

精々、靴を渡す魔女役だ。

 

逃げる様に去ろうとする。

 

そしてまた、掴まれる。

 

 

「特別だっていうなら……お願い」

 

 

もう逃げちゃダメだ。

 

特別なら。

 

魔法なら、いつか解ける。

 

それはオグリか俺か、はたまた両方かは分からない。

 

いつまでも いられる保証は無い。

 

だけど、今だけは。

 

今だけは良いんじゃ無いか。

 

俺は頷いた。

 

ちゃんと布団をひいて電気を消して。

 

 

「添寝なんだ。 1枚で良い」

 

 

……逃げちゃダメだ。

 

意を決して1枚の布団に潜り合う。

 

懐かしくて恥ずかしい温もりを互いに与え合う。

 

布団の中で手を繋ぐ。

 

兄妹の感情は、遠い昔に置いてきた。

 

 

「懐かしいな」

 

「そうだな」

 

 

暗闇の中、声が木霊した。

 

互いに寝付けないもんだ。

 

明日も早いだろうに。

 

興奮冷めぬままに会話してしまう。

 

昔も、こうだったな。

 

 

「リョウが学園まで来てくれて、本当に嬉しかった。

いつまでも一緒にいたいって本気で思う」

 

 

…………暗くて良かった。

 

今の俺は茹で蛸だ。

 

 

「お母さんを真ん中にして、両端にリョウと私で。

でも、リョウは私の隣が良いって言って。

結局、私が真ん中になって川の字で寝たな」

 

「覚えてるよ。 えと、その……オグリの側が良かったんだ」

 

「今は掃除洗濯、料理も出来て。 ジャージも洗ってくれるし、腰布も」

 

「制服だ」

 

 

そこはツッコミを入れる。

 

 

「靴もくれた。 ご飯は美味しい。 大好きだよ、リョウ」

 

 

俺もだよと、直ぐに言い返せない自分はヘタレ。

 

 

「これからもずっと……いたい。

だから、私の事を見ていて欲しい。 いつまでも、ずっと」

 

「分かったよ。 デビュー戦、見に行けたら行くよ」

 

「絶対見に来て欲しい。 来なかったら」

 

 

きゅっ、と軽く手を握られ。

 

耳元で囁かれた。

 

 

「酷いぞ?」

 

 

不覚にもゾクゾクした。

 

 

「お、おぅ」

 

「なら良し」

 

 

ぴとり、と身体を密着された。

 

逃がさないぞ、と言わんばかりに。

 

同時に体温がダイレクトアタック。

 

目も慣れてきた所為で、綺麗な灰色がボンヤリ見える。

 

それが どこか神秘的なお姫様みたいで。

 

俺はまたも、赤面した。

 

 

「ふふっ」

 

 

それが見えたからか分からないけど、笑われた。

 

それもまた、可愛いかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜……簡単な言葉じゃ離れませんね。 リスクを負ってまで会うなんて。 オグリちゃんからリョウマツさんの匂いを消さないと……ふふっ」

 

 

 

 

 

「ウマ娘寮にまた侵入して、泥ウサギと添寝なんてねぇ。 ヘタレなんだか男なんだか」

 

 

 

 

 

一瞬のフラッシュとシャッター音が聞こえた気がしたが、睡魔に襲われている中じゃ気にする事も出来なかった。

 




ウマぴょい(意味深)する勇気は無い……。

ハイライトが消えたベルノちゃんを妄想すると怖い。

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