オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結) 作:ハヤモ
ベルノちゃんが怖くなった……。
ほら、正史は兎も角、この世界の皆の運命は誰にも分からないから(殴。
懐かしい夢を見た。
一緒に走って、笑い合えた日々を。
他のウマ娘や同い年の子らが追い抜いていっても、2人の世界は幸せだった。
オグリと併走して。
同じ景色の中で笑い合う。
走り疲れたら、一緒に歩く。
時に負ぶってあげて、綺麗な夕日を眺めた。
芦毛が反射して、夕闇を照らす。
そんな思い出。
誰かに勝ちたい想いも無い。
速くなりたい思いも無い。
一緒にさえ いられれば、それで良い。
オグリキャップ。
俺は、これからも一緒に……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ウマ娘の脚力はスゴいよね。
夢の中で走っていたオグリ。
その脚に轢かれた現実の俺は、物置部屋の末端まで吹き飛ばされた。
腰からビッターンである。
実に刺激的な目覚め。
「……ッ。 腰が、イテェ」
強打した腰を摩りながら、ボヤく俺。
小さい頃、添寝するオグリに何度蹴飛ばされた事か。
まだ脚が悪かった頃だが、それでも日に日にパワーアップしていた蹴り。
良く生きていると思う。
これも、日々オグリに意図せず鍛えられてきた結果だろう。
時間は……。
朝4時になるところ。
オグリはモソモソと起き上がる。
「うぅん……リョウ、激しいな」
誰の所為だと思う?
……ハッ!?
「し、仕方ないだろ」
「音立てると、他の娘が起きるぞ」
…………。
ややこしくなる前に、言おう。
「オグリが俺を蹴り飛ばして吹き飛んだ、それだけだ」
「ごめん」
「良し」
素直に謝るのは良い事だ。
オグリの頭を撫でる。
ついでに寝癖も直してやる。
最も、大食いに関しては直った事はないが。
反省だけならなんとやら。
いや良いんだ。
いっぱい食べる君が好き。
って今は それよりも。
「朝練?」
「そう。 行ってくる」
入学前からのトレーニングか。
継続は力なり。
「いつものメニュー通りにやるのか?」
「少し変えた。 足首を徹底して鍛えろって、北原が」
「そっか。 頑張れ、応援してるぞ」
「ありがとう」
そう言って、新しい靴を持って出て行くオグリ。
靴はともかく、またジャージを汚しまくって帰ってくる未来が見える。
腹を空かして食堂を襲うまである。
なら、やる事は決まっている。
俺も続くように部屋を出た。
綺麗にした予備のジャージを用意。
その後、いつもの様に厨房へ赴く。
それぞれの朝。
違う時間。
その中で朝日を浴びながら、伸びをした。
だけど。
決して悪くない。
寧ろ。
「久し振りに気持ち良い」
心地良い感覚と共に、足を動かす。
今日もオグリを、ウマ娘達を陰ながら支える1日が始まった!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
少し早く起きちゃった私は、オグリちゃんとリョウマツさんの添寝の様子を見ようとして……部屋から大きな音がしたのに驚いた。
片耳を向けて、ピトリと壁に当てる。
中から声が聞こえる……。
何か話しているのかな?
「腰が、イテェ」
へ? 腰?
いったいナニを……。
「うぅん……リョウ、激しいな」
喘ぐようなオグリちゃんの声。
激しい!?
これは……そんな まさか。
「仕方ないだろ」
リョウマツさんの恥じらう声。
コトを思わす、初々しくも恥ずかしいソレ。
「音立てると、他の娘が起きるぞ」
続くオグリちゃんの声。
追い込んで差し(挿し)切った(意味深)とでも!?
これは……。
想定こそすれ、可能性は低いと切り捨てた最悪の事態。
そう。
ふたりは うまぴょい したんだ!
「ふふふっ」
変な笑いが起きた。
小さな身体が痙攣した結果だった。
思考は遅れて やってくる。
やっぱり早いなぁ、オグリちゃんは……と。
ズルいなぁ。 ズルいよ。
レースでも活躍出来る期待の脚に、恋心も成熟させようなんて。
ふたりだけの秘密?
やだなぁ。
私も仲間に入れてよ。
だってチームでしょ。 友達でしょ。
隠し事は良くないなぁ。
まぁ良いんだけどね。
もう知っちゃったもん。
ふたりは幼馴染だし、添寝をするくらい大目に見たけど、それが甘かった。
でも抜駆けなんて悪い娘だなぁ。
まさかふたりに、そんな勇気があるなんて。
嘶きそうになる私。
煽るように、リョウマツさんからの声。
「久し振りに気持ち良い」
ふふっ……。
ふふふっ……。
リョウマツさんったら。
それは良かったね。
でもね。
レースは終わってないよ?
油断大敵。
逃がさないから、ふたりとも。
レースには追い込みも差しもあるんだよ。
オグリちゃんは朝練で学園の外へ。
リョウマツさんは食堂へ。
私は食堂へ向かった。
ゆっくり話すには、今が都合良いかなって。
今度は私の番だよね。
「おはようベルノ。 早いんだな」
朝から良い笑顔を向けてくるリョウマツさん。
加えて私の名前を ちゃんと呼んでくれる。
何も知らなければ、素敵だと思えた。
だけど、うまぴょいしたから笑顔なのだと思うと、腹が立つ。
私は我慢して、努めて笑顔を返した。
「おはようございます。 なんだか目が覚めちゃって」
「そうなのか、少し待っててな。 飯の支度がもう少しで出来るから、今日は季節の野菜炒めだ」
「はい……なんだか上機嫌ですね?」
「そうか?」
「ええ。 やっぱり ソレって」
ニコニコしながら、カウンター越しに言葉を投げかける。
「オグリちゃんと昨日の夜、楽しんでいたからですか?」
───カランッ。
金属の調理器具が落ちた音がして。
貴方がしたような、素敵な笑顔を向ける事が出来た。
「答えてくださいね、リョウマツさん♪」
懐からオグリちゃんとリョウマツさんの添寝写真をカウンターに置いた。
引ったくるようにして、ソレを見る彼。
上機嫌な顔は、どんどん青ざめていった。
ああ……この感覚。
癖になりそう。
そこにオグリちゃんがやってきた。
同じように、どこか上機嫌だ。
「おはよう、ベルノにリョウ……どうしたんだ?」
笑顔で尋ねる灰色の お姫様。
どうしたと思う?
ふふっ。
オグリちゃんゴメンね。
大事な彼、追い込んじゃった。
そして、これから奪っちゃうから。
この後、オグリちゃんも写真を見て青くなるのかなぁ。
心で謝りながら、だけど敗走するオグリちゃんの背中を妄想する。
「ゴメンね……オグリちゃん、ゴメンね」
私は謝った。
勿論、笑いながら。
チームが出来た時、私に負けないって言ったよね。
でもね。
勝つのは私だ。
あかん……漫画みたいにスイスイ進まへん。
ボクみたいな三流作者じゃ相手にならんのや!
まぁでもね、重バ場はね、足を遅くするからね(言い訳。