オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結) 作:ハヤモ
と思いつつ、中々進まない。
当てウマだってヤる時はヤるらしい。
止まない雨は無い。
いつまでも重バ場じゃない、いつかは良バ場に……ほんとぉ?
当てウマ扱いをしていたウマ娘。
ベルノライト。
名前で遊んだのを根に持ってか、或いは当てウマを察してか、反撃に出てきた。
オグリと添寝した翌朝の食堂。
いつも通りの朝になる筈だった。
だけど。
厨房と隔てるカウンター越しに、彼女は言葉を投げてきたのだ。
安穏は許さないとばかりに。
その笑顔は、世界を暗転させる。
そう。 知られたくない真実の話を合わせて。
「オグリちゃんと昨日の夜、楽しんでいたからですか?」
刹那。 視界が暗闇に落ち、チカラが抜ける。
落とした調理器具の金属音で我に返るまでの僅かな時間。
だけど、とても長く感じられる無の空間。
その嫌な感覚は こびりつき、芯を冷やすには十二分であった。
「答えてくださいね、リョウマツさん♪」
可愛い太陽───寒くなる程に素敵だ。
懐から1枚の写真を取り出して、追い込みを掛けるベルノライト。
慌てて見た。
そこには俺とオグリが1枚の布団の中で寄り添っていて、目を閉じているだけの写し絵。
ただ、それだけ。
それだけで追い詰められる俺。
学園であってはならない、安直な行為に及んでしまった証拠が そこにあったから。
まさか、ああ、そんな。
何故。 どうして。 何の為に。
俺の事、そんなに嫌いなのか。
それとも風紀に厳しいのか。
素直で良いウマ娘の君は、どこにいった。
唇は震えるばかりで、弁解の言葉が出てこない。
脚は竦み、逃げる事も ままならない。
そこを差すように、芦毛の来訪者。
写真と同じウマ娘、オグリキャップだ。
「おはよう、ベルノにリョウ……どうしたんだ?」
まだ何も知らない、純粋な笑顔を俺に見せてきた。
「ゴメンね……オグリちゃん、ゴメンね」
歪んだ笑顔で謝り始めたベルノは、恐怖以外の何者でもない。
見なきゃ良いのに、思わず見て後悔する。
憎悪と歓喜が入り混じった顔。
───狂気との邂逅は誠に恐怖である。
「何故、笑いながら謝るんだ」
オグリがクビを傾げる。
何も知らない純粋な表現。
それに可笑しさを感じたのか、僅かな先を妄想してか、肩で笑い始めるベルノ。
俺は硬直する他ない。
そうしながらも、ベルノは俺からアッサリ写真を引き抜いてオグリに手渡す。
「ねぇ見てみて。 見てよオグリちゃん。 どこで撮ったと思う? ねぇオグリちゃん!?」
目は点で、焦点が定まらない。
その興奮のまま、写真を見せるベルノ。
写真をマジマジと見るオグリ。
怖い。 ただそれだけに尽きる。
何が怖いって、2人だけの秘密が露呈していた事。
そして、それがベルノだって事。
なんとか解放されたくて、悪足掻きしようと嗚咽を漏らした。
「なんで……」
そんな情けない俺を押し潰すように、ベルノはマウントを取る。
「なんで? なんで だと思います?」
なんでか?
それは……俺が、ベルノに対して酷い事をしたからか?
名前で遊んだり、当てウマにしたからか?
それで怒っているのか?
写真を見ているオグリを尻目に伝えると、ベルノはクビを振った。
「アナタはやっぱり、私の気持ちに気付いてないんですね」
なんだよベルノの気持ちって。
出会ってから日も浅いのに。
ワケワカンねぇよ……。
「私の質問にも答えて下さいよ。 オグリちゃんと昨日の夜……どこで、何してたんですか?」
笑顔で攻め入る彼女。
答えを知った上でヒトの心に、ズケズケと脚を突っ込んでくる。
やめてくれ。
いよいよ足の感覚が無くなってきた。
「何って」
俺じゃない声が鼓膜を震わす。
向けば、オグリだった。
「写真の通りだ。 リョウマツと私は添寝してたんだ」
あっけからん、と。
オグリは 何時もの表情と口調で答えていた。
「別に疚しいコトはしてないぞ」
言って、ベルノに写真を返すオグリ。
今度は、此方が呆気に取られた。
暫くして。
「ふふっ……ふふふっ」
ベルノが肩で笑い始める。
怖い。
胃に穴が開くどころか、胃がもげそう。
「本妻の余裕? 過ごした時間の差?」
ただの天然。
思ったが言えなかった。
ご自慢の脚力で、傷害事件を起こされそうで。
「学園にとっては疚しい行為だよ。 ウマ娘寮に男が入ってるんだから」
「あっ、そっか」
やっと気が付いた素ぶりのオグリ。
もう少し慌てろ、この状況。
ベルノは続ける。
「これを知っているのは私だけ。 ノルンエースさんも知っているかもだけど、まぁ大丈夫だよ。
嫌がらせが目的なら、退学なんてさせない」
ノルンエース?
オグリと同部屋のギャル娘だったか?
まさか他にもいたなんて。
いやまぁ、段ボールの話を振ってきた時点で可能性は高かったが。
だとしても……ベルノは何を言いたい?
「でも私は違うよ。 嫌がらせの為に写真を持っているワケじゃない」
「そうか。 ありがとう」
礼を言うな。
もっと訝しめ。
何で持ってるか考えろ。
「私は あの娘達と違って、コレを公に出す事だって」
「しない」
言葉を遮るオグリ。
「ベルノは そんな事をするウマ娘じゃない。 だって、ご飯を私にくれた良い娘なんだ。
そんな良い娘が、大切な友達が、私やリョウを傷付ける筈がない」
「…………本当、その根拠の無い自信は どこから来るの?」
全くだよ。
天然なのもあるけど、良い子過ぎやしないか。
俺、時々オグリが心配。
今は自分の心配をしなきゃだが。
「まぁ良いや。 でも忘れないでねオグリちゃん。
私はいつでも、貴方達をつき出せるんだから……」
そう言って、飯も食わずにベルノは去っていった。
ああ。 なんで こんな事に。
オグリの所為にはしないけど。
ベルノが あんな事をする娘だなんてショック。
いや分かるよ?
言っていることはマトモだ。
公序良俗に反する行為は駄目だ。
でも、そこはさ……目を瞑って……ダメか。
取り敢えず、危機は先延ばしに出来たようだが……解決はしていないよな。
「ご飯」
オグリ。 お前は危機感を持て。
お前らしいけどさ。
「……オグリに お願いがあるんだ」
酷い目に遭ったが、お願いをする。
俺は余分にトレーを出すと、普通の一食分を差し出した。
「これ、ベルノに頼む」
腹を空かせるのは本望じゃないからな。
それに。
あの様子だと、ベルノも訴えるのは本望ではなかった筈。
このままチームワークや仲が拗れるのは良くない。
「分かった」
「摘み食いするなよ」
「し、しない」
目を逸らすオグリに苦笑する。
する気満々だろ。
俺は知っているんだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
友達だから。
そう言われた私は、我に返った。
入学して、同じクラスに隣の席、友達が中々出来ずに慌てかけていた時。
オグリちゃんと仲良くなれた。
スカウトされなかった私に手を差し伸べてくれて同じチームにもなれたのに。
恩があるのに。
2人の仲を裂こうだなんて。
奪ってしまおうだなんて。
最低だ。
本当に最低だよ私。
「うっうっうぅ……ごめんね、ごめんねオグリちゃん……」
食堂から逃げ出して、隅で嗚咽を漏らす。
今度は本当に悔いて謝っていた。
2人がいないのに、意味なんて無いのに。
それでも自己満足から謝っていた。
もう合わす顔が無いよ。
今日から どうしよう。
もうチームを抜けて、レースも諦めて。
それが贖罪になるのなら喜んで……。
「ここにいたんだ」
オグリちゃんの声。
弾かれるように振り返ると、ご飯粒を頰に付けたオグリちゃん。
手にはトレー。
季節の野菜炒めと、山が欠けたご飯に味噌汁。
どれも湯気が立ち、良い香りを出していた。
……泣いたからかな。
お腹、空いてきたな……。
「リョウがベルノに」
「えっ」
リョウマツさんが?
「何があったか知らないけど、ご飯食べて元気出して。
それと、出来ればリョウの事、嫌いにならないで」
本当、2人には敵わないな。
それにリョウマツさん。
こんな事するから、どんどん好きになっちゃうんだよ……。
「うん。 大丈夫だよオグリちゃん」
涙を拭って向き直る。
諦めても逃げちゃ駄目だ。
かといって差したり追い込んじゃ駄目だ。
なら、私に出来る事は。
まだ友達でいてくれるオグリちゃんに出来る事は。
「一緒に食べよう?」
共に歩んで、2人を見守る事だよね。
無理矢理仲直りした感が……。
拗れすぎるとね……。
主人公やオグリが差(刺)されるENDになりそうなので。
てか、はよデビュー戦(漫画版であったレース)をしろよ状態(殴。