オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結) 作:ハヤモ
漫画ではオグリは2着です。
突然だが話をしよう。
それは宇宙空間の中に浮遊しているような、超絶対非法規的な、時と精神の部屋のような場所が好ましい。
安心して。
これは個人による内々脳内の独り言であり、誰にも聞かれる恐れは皆無だ。
逆に言えば、全俺以外に誰も聞いてくれないし、自己完結せざるを得ない悲壮的な内容となる。
御託は良い。 始めよう。
諸君、歴史の授業は好きか?
若くは生物は?
保険体育の教科用図書の、性教育のページに折り目は付けたか?
ふむ。
興味があれば幸いだ。
生命の神秘とは何か、少し語りたいからね。
生物の進化論を思考するのでも喜んで。
人類史において、ヒトの始まりは猿であったとは、今となっては有名な話である。
猿から進化し、二足歩行し、道具を使って……まぁコレは語るべくもない。
問題なのは共に歩んできた別種の生物だ。
犬や猫ではない。 ウマ娘だ。
我々ヒトと酷似した、しかし違う点は耳と尻尾が生えている点と、身体能力……特に脚力においてヒトを圧倒している点である。
後は女の子しかいないとか、ヒトとうまぴょいして繁栄しているとか、謎がある。
ヒトが猿から進化したならば、彼女らは?
当然、疑うは収斂進化の果ての産物か、何故この世界には二足歩行によるロコモーションを行う生物がヒトとウマ娘なのか、この両者は限りなくフォルムが酷似している件とか、女の子しかいないのか、そんで ヒトと うまぴょい して子孫を残してきた等、専門家やら学芸員が研究しては思考放棄するオカルトである。
あまりに ぶっとんだ説としては、ウマ娘は別世界の魂の転生的な話すらある。
笑って良いのか?
これは未だに悩み答えが出ない。
出す気もない。 俺もまた、宇宙に投げ出されて考えるのを止めるタイプだから。
だって、しょうがないじゃないか。
そこに存在しているんだから。 諦めようよ。
ヒトとウマ娘は有史以前より共に歩み、手を取り合っていたのはパンピーな俺でも認めよう。
可愛くて脚の速いパートナー。
時に伴侶である。
物心つく前から、身近にいた。
受け入れた方が楽だ。
恐怖に両脚どころか全身を浸かっているとしても、現実から目を逸らそう。
でなきゃ俺は死より恐ろしい重バ場より重いナニかを彼女達に味合わされる事になる。
前にも思考の海に漂っていたが、身体能力……特に脚力では絶対に敵わないと 今一度 全俺達に答えておく。
ウマ娘の美しく華奢な、細くか弱そうで柔らかな、綺麗な健脚に秘めるのは……。
大の男を つま先でアッサリ 蹴り殺せるパワーであり。
目を付けられたオスは、絶対に愛バから逃げられないというコトを絶対に忘れるな。
嗚呼。
なんで こんな思考になったかを知るには、現実に戻らねばならない。
願わくば夢であって欲しいが、時間とは進めねばならないものだ。
決して俺だけのものではない。
さて。
リョウマツ君。 目覚めなさい。 現実へ。
目を開ける。
目の前に光の無い目で俺を見つめる馴染みの芦毛がいて。
俺の腕に抱き着く芦毛がいた。
レース後の光景である。
2人とも、はしたなく尻尾がブンブン暴れている。
だがしかし。
感情は別々であるコトは明らかだ。
第1、耳の姿勢が決定的に違う。
「リョウ。 なんで私じゃなくて、マーチに話し掛けたんだ? 私は特別じゃなかったのか。
新しい靴で1位になったのに。 応援してくれたのに。 2位のマーチの方が良いのか……?」
「尻尾巻いて帰るんだな。 お前は『ここ』でも、この先も私に負けるんだ♪」
圧倒的……! 圧倒的謎の独占力……!
腕に当たる柔らかな感触……!
香る汗と石鹸……!
対する天然物からの絶対零度視線……!
嗚呼……………………ッ!
重バ場……!
圧倒的重バ場である……!
レースが終わっても重いモノは重いのである!
イケメントレーナーは助けに入らないし!
ジョーさんとベルノも助けてくれない!
薄情者どもめ!
ヒトという字は支え合ってどうのとかって聞いた事ない!?
何故助けない!?
why!? ホモ・サピエンスッッ!!
くそっ! ならばチカラがあったらしいネアンデルタール人に!
しまった! 助け合いに疎くて絶滅した説もあったか!
はっ……まさかウマ娘に滅ぼされ……いやまさか。
って、今は それどころでは無い!
マーチに話し掛けたばかりに、こんな目に遭おうとは。
俺の意思は俺だけのもの。
その筈なのに逆らえない。
本能が反逆を許さない。
甘い言葉を耳元で囁かれるなら、恍惚のイエスマンになるしかない。
それで悪夢を見ずに、甘い夢だけを見られるなら……世のオス共は その限りをウマ娘に尽くすだろう。
恐らく人類は、ウマ娘と愛し愛される度に、何処かで甘美な恐怖を感じていたのだと悟る。
人類が生き延びてきたのは、ナニも技術や行為の結果ではない。
全てウマ娘の裁量だ。
ヒリキなジンリキでは 、どうする事も出来なかった。
認めざるを得ない。
生かされて来たのだと。
時間を遡って思い出す。
後悔するまでの、レース中の経緯を。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『ゼッケン3番サウスヒロインが先頭!』
サーロインは好きだが今はオグリだ。
最後方に位置してこそいるものの、バ群に入るオグリ。
「良いぞー! オグリ追い抜け追い越せ引っこ抜けー!」
「あっ、厨房のスタッフ」
「なんだよ 引っこ抜けって」
不良サンがやっと此方の存在に気がつくが、関係ないね。
俺はオグリを応援する。
まだ巻き返せそうだぞ。
『1番人気のフジマサマーチは ここ、3番手の位置です!』
ええい!
実況はもっとウチのオグリを語ってどうぞ!
いや10バもいるから仕方ないか。
そんな実況された期待の星ことマーチは、イヤホンみたいのをしているウマ娘のやや背後。
アレは食らいついているというより、群を引っ張るように逃げているサーロインを抜かすタイミングを図っているというところか。
言うのは簡単だが、ついて行くにも相応の体力と脚力が必要だ。
マーチの実力は高い。
詳しくないが、そうだろう。
だが同じ芦毛のオグリだって負けてない。
カーブに差し掛かり、皆は内側を最短ルートで走るように曲がり始める。
『初出走のウマ娘10人、第3コーナーのカーブを曲がります』
「!!?」
皆が外へ膨らんでいく!?
オグリは並んだウマ娘に ぶつけられるようにして、大外へと弾き出された!
なんでだ!?
「なにアイツ? どこ走ってんのよ」
見ていたギャル……ノルンエースが嘲笑した。
くそっ!
だが これくらいでオグリは負けない!
見てろよ! きっと凄いぞ!
「え!? 何で外に!?」
ベルノも分からないと声を上げ、答えるはトレーナーのジョーさん。
「遠心力だ! カーブを曲がる時、体の重心に遠心力が働き、外側に押し出される。
ただでさえカーブのきつい このコースで その上あの人数だ。
こうなる事は予測してたが…………」
流石はトレーナー。
解説ありがとう。
でもね、それ、オグリに伝えた?
兎に角、アレか。
群から逸れるのは良くないと思ったが、そうでもないのか。
あまり側にいると群に沈む……。
かといって離れ過ぎても良くない。
難しいな、レースは。
対してマーチは考えて走れている様子。
他の娘に邪魔される様子が無い。
レース勘、というヤツか?
学ぶべき点は多いんだな、この世界も。
『第4コーナーのカーブに差し掛かる! 先頭はサウスヒロイン!
続いてフジマサマーチがピッタリとついている!
後続のウマ娘もぐんぐん差を詰めてきた!』
ここまで逃げ続けていたサーロインは、もうシンドそうに走っている。
体力がもう無いのだろう。
あっ、大きく息を吐いた。
バテたのを合図にするようにして、マークしていたマーチが速度を上げる!
明らかに速度が違う。
襲歩。
全速力。
ヒトじゃ到達出来ない脚力だ!
ゲート体験授業の時に見た時とは違う、別の興奮が俺をゾクゾクさせる!
レース、スゲェ。
『ゼッケン1番フジマサマーチ、スパートをかけた! サウスヒロインをとらえる!』
抜かした!
先頭はマーチだ!
『フジマサマーチ先頭!!』
「ヤバっ! 超速い!」
「すっげ」
「がんばれー!!」
不良サンも興奮している。
くっ……コイツらと同等になるのはシャクだが、正直に俺も興奮して……。
ハッ!?
ナニ他の娘で興奮しているんだ俺!
オグリ一筋だろう!
オグリは何処だ!
『残り200M!』
バ群の何処にいる!?
最後の直線!
もうゴール板まで距離がない!
そろそろ真ん中!?
いない!
まだ最後方……いた!
芦毛が、灰色の影が!
10着、ドベだ!
「はわわ……」
ジョーが左手を口に突っ込んで震えている。
確かにココから勝つのは絶望的かも知れない。
でもオグリだ!
俺は信じてるぞ!
ちょっと浮気、じゃなくて余所見しちゃったけど!
「よし! よし!」
イケメンは勝利を確信したようにガッツポーズ。
「まだだ!」
俺は叫んだ。
不良サンも、ジョーも、ベルノもイケメンも此方を見た。
俺じゃなくレースを見るんだ。
「まだ終わってない! なにも終わってないッ!」
ウチのオグリを舐めるなよ!
レースは勝負なんだろ。
たった200。 されど200。
最後まで分からない。
なら、俺だって……!
「頑張れオグリーーッッ!!」
最後まで応援しなくちゃ!
「そうだ……トレーナーの俺が信じなきゃどうすんだ」
ジョーとベルノは直ぐに向き直って、俺同様に声を張り上げる。
「キャップ頑張れッ! 全力で走れー!!」
「頑張ってオグリちゃんっ!」
そんな声援が届いた様に。 答える様に。
オグリが音立て地を抉った!
───ドバァアアアッッ!!
ジョーの指導で鍛えた足首と、そのギャロップは凄まじい砂埃を立てる程で。
走った、というより飛んだ。
芦毛の幼馴染は風になった。
ほんの僅かなストレート。
されど他の随従を許さぬ圧倒的なスピードで、大外から次から次へとウマ娘を抜かしていく。
なんたる追い込みか。
次元が違う程に……!
『おおおっと!!? 大外からゼッケン5番!!
オグリキャップ!! ここで仕掛けてきたぁー!!』
超前傾姿勢と、あの脚だけのチカラじゃない。
ジョーの指導が良かったのだ!
俺が見てきた砂地での走りより、アレは速い!
速い! 速すぎるっ!
良いぞオグリーッ!
「「「はァーーー!!?」」」
不良サンが驚愕の声!
気持ち良い!
もっと叫べ! 怯えろ! 竦め!
「よぉおし!! 行けぇえー!!」
「逃げろマーチぃい!!」
息を吹き返したように叫ぶジョー!
確信が揺らぎ、慌てるイケメン。
勝て! 勝つんだオグリ!
『逃げるフジマサマーチ! 追うオグリキャップ!
一騎打ちだぁー!!』
とうとう芦毛2バにスポットが当てられた。
皆がバカにしてきた"灰被り"が、今やレースのヒロインだ!
『フジマサマーチ、ここにきて更に加速!! オグリキャップ、負けじと喰らいつく!』
マーチが一気に並び立てたオグリに咆哮するように底力を絞り出す。
凄まじい剣幕。
それでもオグリは打ち負けない。
一歩も引くことない、差を付けない競合いを続ける。
互いの芦毛は意識し合いながら、尚も唯一天辺を取りに行く。
『残り100M!! どうなる!!?』
長くあっという間に。
ラスト・スパートは2バが支配した。
芦毛への愚評も因習も全てを置き去って。
けれど頂は1バだけ。
栄光を浴びるシンデレラは誰なのか。
だけど決まってる。
心に決めた愛バを応援するのみ。
そうだろう?
「行けッ! 行けオグリーッ!!」
そして。
シンデレラは同時に ゴール板を潜った。
『ゴールイン!!』
刹那、夢の時間は終わったのだ。
『オグリキャップ、体勢有利か!?』
出し切ったように、みるみる速度を落とすオグリとマーチ。
後続が何バ身も間をつけて同様に落ちていく。
「ど、どっちだ……ッ!?」
ジョーかイケメンか、観客か。
走り終えたウマ娘か。
それとも俺か。
いや、全員だろう。
汗を吹き出し、刮目して電光掲示板に食い入る。
中々表示しない。 焦る気持ちからか。
『判定中です、暫くお待ち下さい……』
オグリが1番に決まってる。
祈るように、或いはワクワクする様に見守る。
そして、無機質で待ち望んでいた結果が出た。
『確定ランプ点灯しました!』
ゴクリ。
息を飲むのは、俺だけじゃなかった筈。
『ハナ差で1着はオグリキャップ!
2着はフジマサマーチ! 3着は……』
オグリキャップ!
激戦を制し、記念すべき初戦で初勝利を飾った!
「オグリサイコー! 良く頑張った!」
ひとり勝手に盛り上がり、席を立って讃美の拍手を送る。
つられるように……閑散とまではいかないが、決して多くはいない客が 疎らに拍手を送った。
「なっ……納得いかねー!」
ここで異議を唱えるは、不良サン。
いや納得しようよ。
写真判定とか機械的なので判定を下したんでしょ。
いくら寂れた感じのカサマツレース場だからって、そこはテキトーじゃない筈だ。
「マーチが先行してた! マーチが1番だ!」
「ちょっと競ったくらいで良い気にならないで」
「そうだそうだー!」
ブーブー文句を垂れる不良サン。
しかし、世間様の冷ややかな視線には勝てないらしい。
やがて静かになった。 ザマァないッスね。
一方でトレーナーサイドは……。
「よォしッ!! どうだ柴崎ィッ! キャップの勝ちダァアアアァッ!!」
「くっ!」
ジョーがイケメンに指さして、マウントを取っていた。
小物臭がする。
フラグ回収やめてくれよ……。
うん? アレ?
一緒にいた筈のベルノは?
見渡すも、観客席にはいない。
前を見やる。
いた。
トラックに出て行って、オグリの側まで駆け寄っている。
アレは良いのか?
いくらレースが終わったからって、不法侵入じゃね?
前科アリアリな俺が言えた話じゃないが。
そんなオグリは電光掲示板を見続けて、打ち震えている。
そんなに感動したのか。
嬉しいなら、俺も嬉しいが……。
「みんな……」
周りもつい、見てしまう。
オグリ以外の娘を。
1バの勝利の土台は、9バの敗北だ。
汚れるのも厭わずターフに倒れる子。
勝者を睨み付ける子。
泣き崩れる子。
勝負の世界が嫌いな理由が、そこにあった。
夢は終わった。 コレが現実だ。
オグリさえ見ていれば良いのに。
本当、俺はバカだ。 救われない。
俺がスタッフだからか。
皆に飯を作ってあげて、挨拶してるから。
情が湧いてしまうというか。
その中で、オグリの近くに立ち尽くす彼女を見た。
フジマサマーチ。
惜しくも2位だった、もう1バの芦毛。
両手を膝に乗せ、下を向いていた。
「マーチッ」
気が付いたら駆け出して。
ただのヒトなのに、ターフに立ち入っていた。
トレーナーでもナシに。
耳をピクッと反応させ、此方に向くマーチ。
悔しさからか、表情は鬼気迫るもので、俺に憤慨してきた。
ビビる。 正直チビりそう。
「私をバカにしに来たのか!? 敗者を詰りに来たか!
ハナ差とはいえ、私は お前のオグリキャップに負けた!
それが事実だ! どうだコレで満足したか!?」
特に聞いてないのに、さも俺の気持ちを分かってるぞと、息も絶え絶えに叫ぶ。
敗者への同情は、闘争心溢れるウマ娘には屈辱のひとつなのかも知れない。
だがな。
ヒトの気持ちを分かった気になる発言をされた側も、イラッと来るんだよ。
現に、そんな気持ちになっている俺を無視して言葉を続けてくる。
「ウマ娘でもない、トレーナーでも何でもないヒトの お前に私の何が分かる!?」
「分からないさ」
だから、俺は分かった気にならない。
ウマ娘の気持ちは知るか。
俺はヒトだ。 ウマ娘じゃない。
勝負の世界なんか知るか。
勝利の歓喜も、敗北の苦渋も、当事者でなければ絶対に分かり得ないからだ。
俺が見たくないものは、上面に過ぎない。
「なら出しゃばるな!」
「出しゃばってない」
「ふざけるな!」
ふざけてない。
俺はポケットから小さなスポーツドリンクを手渡した。
どこで買ったんだろう俺。 忘れた。
「ヒトが……スタッフがウマ娘を支える事の、何が出しゃばるというんだ?」
マーチの耳が立った。
怒りが四散。
キョトン、と目を丸くする。
あー……この様子だと、まだイケメントレーナーと打ち解けてないのか。
あの時、遠回しに言ったのに。
トレーナーと打ち解ければ強くなる……とか、そういう打算はしていない。
だが、ウマ娘とてヒトと同様の社会に身を置く時が来る筈なのだ。
その時 苦労するだろうから、早めに慣れて欲しいと考えている。
レース レースばかりだと、後がきっと大変だ。
「観客を見た事あるか? お前を応援していた娘やヒトがいたのは知っているか?
そのヒト達やトレーナーは、この敗北程度で お前を見放すか?」
「───チカラある者は常に、相応しい結果を求められる」
だろうね。
だから君に期待して応援する者がいたんだろうね。
負ければファンも減るかもね。
この世界の外に出れば、意味も変わるが。
バシャウマのように良い様に駆け回される姿は想像したくない。
その意味では、チカラある者は常に利用されると言い換えられる。
応援も打算なき無邪気な純粋でなく、自身の利益の為に他者に犠牲になって貰う精神に置き換わる。
幸いウマ娘のレースは公営ギャンブル会場では無い。
裏の事は知らないし、知りたくないけど。
「……君は強い。 けど仮に弱く、脆くなっても忘れるな。
ウマ娘の脚力は、君達だけのチカラじゃない。
飯を作るヒトや指導するヒトがいる。
オグリも、それで前より強くなった。
なんかの本か何かを引用するなら……ヒトは大志へと続く道を共に歩む、信頼に足る杖に値する。
ヒトにはウマ娘と併走出来る脚は無い。 でも支えられるんだ。
俺は杖でありたい。 そう思うように、君を支えるヒト達を忘れないで欲しい。
悔しい、次は勝ちたいと思えるなら、諦めないなら、まだまだ君を支えるヒトはいる。
だから、その……ヒトに頼っても良いんじゃないか?
少なくとも俺は支えるさ」
オグリを支えたいと思うように。
マーチのトレーナーも、きっとそうだ。
俺に関しては、もっと言えばカサマツトレセン学園のスタッフだ。
生徒であるマーチを支えるのも、仕事だしな。
ああ、その意味では皆の分のドリンクを買わねばならない。
……ヤベェ。
生徒数400人弱もいるんだよな?
えーと……1バ150円として……。
6万以上掛かる。
………………。
オグリの食費と比べたら安いかも!
その辺は学園に押し付けられたからな!
そうだ。 6万ちょいも、学園に押し付けられないかな?
ヒトである俺は打算した!
こうして下(大人)の世界に行くんだって。
ヤダねぇ……。
そんなヒトの思考をマーチが感知する事もなく。
ナニやら赤らめて、俺からスポドリを受け取った。
「お前が、そこまで言うなら……」
ヤダ。 ツンデレのデレ部分かな?
あっ、そういやそれ、ひと口飲んでたんだった。
マーチが口つけた後だが、一応謝るか。
「すまん。 それ、口付けたんだよ」
マーチ硬直。 からの。
「それは、つまり……そう言う事か?」
そうだよ。 量が僅かに少ないけど許せよ。
ああ、この反応は……怒ってる?
でも耳は倒れてないしな。
ウマ娘の耳は口ほどにモノを言うと考えている。
どう言えば良いんだ。
それか……俺が支える件か?
「俺じゃ不満か?」
「いや。 支えてくれるなら……」
スタッフだ。 支えるさ。
そうこう話している内に、ベルノと話し終えたオグリがやって来た。
何故か目に光が無い。
握り拳を作り、爪が柔肌に喰い込んだからか、鮮血が湧水のように流れ出ている。
漆黒の空間に俺が囚われて末恐ろしい。
「オ、オグリ?」
声が震えたね。
そんな様子にナニかを察してか、マーチは片腕に抱き付いた。
オグリに見せびらかすように。
ただでさえ光の無いオグリの目が、更に漆黒の闇へと変貌した……気がした。
そうして今に至る。
何でこうなった。 だれか たすけて。
主人公が新しい靴を渡し、
それでオグリが勝ちマーチがデレる恋愛ifストーリー♡
(ただし、常に血祭りの予感❤︎)