オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結) 作:ハヤモ
しかし、不良サンが何やら企んで……。
短め。
ベルノライト監修の元、脚回りを完璧にしたオグリキャップ。
再びレースへと挑む!
「後はスタートさえ決まれば大丈夫」
と言うのはベルノ談。
ベルノが言うなら そうなんだろう。
俺も信じよう。
例によって観戦するのは当然として、今回はマーチがいない。
正直ホッとしている。
代わりに忘れていたヤツがいた。
不良サンの……ギャル。
なんたらエース。
名前がご大層な割に、何で悪の道に走るのか。
或いは自覚が足りてないのか。
他者の人生……この場合はバ生だから、干渉しない方が良いだろうけど。
オグリを傷付けるのは許し難い。
もし度が過ぎた事をしでかすならば、口籠じゃ生温い……ッ!
「まさか同じレースに出走する事になるなんて……何も無ければ良いけど……」
ベルノが嘶く。
彼女最大の不安だろう。
俺も不安だ。
だけど。
「大丈夫だって」
俺はベルノを撫でた。
小さいから愛でやすい。
「オグリの脚に、そもそもヤツらは追い付けない」
ゲート体験授業の時を思い出す。
その時はチビとヤンキー相手だったが、先行していた不良どもを後方よりぶっちぎった。
圧倒的な差である。
「スパートを掛ければ、そうでしょうけど」
為すがまま、屈託を口にするベルノ。
確かに。
ウマ娘のレースは最初から全速力では無い。
それに本番と練習は違う。
距離、雰囲気、戦略。
距離が長引けば、それだけ体力がいる。
だから逃げに徹する娘もかもだが、体力を温存。
ラスト・スパートにて全力を尽くした走りを見せたりする。
そこは駆け引きだ。
だけど。
「それでもだ」
撫で続けながら言った。
「最後方からマーチに勝てたオグリだ。 それに今回は脚回りが完璧。 ベルノのお陰でな」
「それは……ありがとうございます」
パドックで準備体操するオグリを見ながら、俺は褒めた。
恥ずかしそうに礼を言うベルノ。
「で、でも……やっぱり不安です。 オグリちゃんに嫌がらせをしないかって」
本当に優しい娘だな、ベルノは。
オグリの評価も間違いじゃない。
「ありがとう」
代わって礼を述べた。
「へ?」
「オグリの事、支えてくれて。 これからも頼むよ」
「出来れば、リョウマツさんの事も……」
「はい?」
「い、いえ! なんでもありません!」
勢いで撫でる頭を払いのけられた。
急に悲しい……ジョーさんが見ていたらザマァ返しをされていただろう。
「それより! レース見ましょうレース!」
誤魔化された感があるが、ごもっともなので素直に従おう。
『さぁ 各ウマ娘、全員ゲートにおさまりました。 態勢完了です!』
実況が聞こえる。
いつの間にか直前まで来てしまった。
危うくスタートを見逃すところだった。
危ない危ない。
しばしの静寂が訪れた。
ゲートへ皆が注目し───。
───ガシャコンッ!
今、ゲートが開かれた!
『スタートしました!』
オグリは好スタート!
他の娘も綺麗に走り出す!
『8バほぼ綺麗なスタート!』
デビュー戦の時はバラけていたが、皆の成長が伺える。
トレーナーでもなしに、何故か嬉しいな。
「よし! 好スタート!」
ジョーさんが叫んだ。
あ、いたのねトレーナー。
『大外のノルンエース、内に切り込んで先団好位置に つけました!』
……あの娘。
オグリの後ろをマークしようと位置どりを始めた。
何か企んでやがるな。
だがレース中だ。
止めに入るのは無理だ。
だが後の事なら始末出来る。
周囲を見やる。
やはりか、不良がいた。
チビとヤンキーだ。
何か話している。
近寄って携帯で録音しよう。
「ちょっとオグリを見てて」
「えっ?」
ベルノの側を離れ、聞こえる位置まで移動。
やはりロクな会話じゃなかった。
「いいね予定通り♪」
「お前……よく次から次に そんな卑怯な事思い付くよな。
泥ウサギがスパートをかけるタイミングで踵を踏むなんて」
「ッ!」
思わず殴り掛かろうと思ったが、全力で堪えた。
まだだ、もっと決定打になるよう証拠を。
「あいつのスパートは地面を掻き込む為に、一度大きく踏み締める瞬間がある。
その踵に つま先を添えるだけ。 傍から見れば ただの不幸な事故さ」
事故、ね。
意図的にしたという証拠があれば、それは事件に様変わりするがな。
そろそろ出よう。
「やっぱ嫌がらせってのは、最も嫌なタイミングに仕掛けてこそだよね」
同意の声を出しつつ、前に出る。
「全くだな」
軽く挨拶といこう。
「えっ」
俺は手を振りながら不良に近寄った。
内心ビビってるが、オグリの為だ。
「今の会話は録音したよ。 もしこれが公になれば、君らはどうなるかな?」
「テメっ、ザケんなよ!?」
ヤンキーが庇うように前に出て嘶くが、その程度だ。
「ふざけてない、本気なんだが?」
そう言いつつ、録音したものを垂れ流してみる。
小さな音だが、ウマ耳なら拾えるだろう。
「うぐっ……」
「最悪は退学。 レースには二度と出られない。
いや、それだけで済めば良いな。 これが学園の外にも知られれば、君達は立派な不良として認知される。
やったなぁ!? 井の中の蛙じゃなくなるって訳だ……俺に感謝しろよ」
俺はたじろぐ相手の反撃を許さぬよう、捲し立てて───。
「オグリキャップが世話になったな。 たっぷり礼をしてやる」
この時、俺がどんな顔をしていたのか分からない。
ただすんごい怒っていた顔だと思う。
「ひっ……!?」
不良ウマ娘が、耳を後ろに下げて後退り。
目は見開き、ガタガタ震え始める。
それで気分が良くなるワケでもない。
肝心のオグリが、この後どうなるのか考えると……。
「もしオグリに何か起きたら……お前らには それ以上の苦痛を味合わせてやる。 楽しみにしてろや」
本能からか、逃げ出そうとする2バの髪の毛を引っ掴み、無理矢理レースの光景を見させた。
「閉じるな、刮目してしっかり見とけ。 大切な お仲間が ちゃーんと 悪さをするのを見届けるべきだろ、見捨てずに ちゃーんとな」
ガタガタ震えるばかりで、為すがままの不良。
バリキを出せば逃げ出せるだろう。
だが逃げても逃げられない状況だ。
俺がコイツらの手綱を握ってるんだからな。
身体能力でウマ娘に勝てる要素は無い。
だが、別の意味でなら勝てる。
こういう風にな。
「……ノルン、ルディ……ごめん」
チビが蚊の鳴くような声で懺悔した。
「謝るくらいなら、最初からするなよ」
それで掴む手を緩める俺は……。
本当、勝負の世界を知らない甘ちゃんだ。
それでも2バは逃げなかった。
ただ、レースを見据えてた。
ほっといても改心(?)しそうですが、成敗を試みた(殴。
しかし主人公、謎の威圧感。