オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結)   作:ハヤモ

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リアルがしんどく、中々落ち着いて書けない……。

漫画内でのレース実況では、ウマ娘を『人』と言う事がありますが、当作では なるべく『ウマ』や『バ』と表記します。
主人公とウマ娘を区別する為です。

漫画に登場する不良達が(中央だろうと)存在しているのを考えると……。
ウマ娘の勝負の世界は、チカラ同士による正々堂々のタイマンばかりではなく。
人格無視、不敬、慇懃無礼な態度もあり。
裏では嫌がらせや工作による非美徳的な犯罪行為もある世界なのかも知れない。
前に書いた様に、ヒトにあってウマ娘には無い事が無いならば。
ヒトの持つ悪意を、娘たちは持っていないと何故断言出来ようか。

更新遅れ&短めです……。


第18R「勝負の美醜」

 

『先頭は直線コースに向きました!

オグリキャップは2番手、その後方にノルンエースがピッタリと ついています!』

 

 

実況のハキハキとした声も、時間経過を伝える淡々としたモノに感じる。

 

熱意の中に、悪意が走っていれば そうもなる。

 

それでも陰謀知る者は僅か。

 

それも今更止められない。

 

レースが好きになれたと思ったら、今度は嫌いになりそうだ。

 

蹴落とし合うにも種類があるが、これは嫌な部類だ。

 

それを率先するヤツは もっと嫌いだ。

 

そんな不良の髪を引っ掴み、俺は見る。

大人しく趨勢を見守っている。

 

腐っても勝負の世界に身を置く者だからか。

 

仲間意識からか。

 

両方か。

 

だとしても、俺はコイツらを許さない。

 

髪の毛を握る手は緩めても、離さない。

 

 

「……この後、仕掛けるよ」

 

 

主犯であろう、チビがチカラなく言った。

 

頭は良いのだろう。

 

問題は使い方だ。

 

今まで咎めた奴がいないなら、俺が言おう。

 

オツムは悪いが、分別は あるつもり故に。

 

 

「その観察眼や頭脳は、今後悪さをする為に使わないで欲しい。

少なくとも悪戯の域を超えるな」

 

「…………」

 

「返事」

 

「……分かった。 もう、こういう事はしない」

 

「約束だぞ」

 

 

流れるように、ヤンキーを見る。

 

粗暴だが筋の通らない事は やらなそうではあるが……。

 

その見、コイツは良心的な方だ。

 

方、というだけだ。

 

付き合いがある中で、こういった行為を見るのは1度や2度では無い筈。

 

その度に、コイツは見過ごしてきた。

 

身内に甘いのだ。

 

守るのは称賛したいが、悪党を庇うのは嫌悪する。

 

ある種、筋は通すべきだった。

 

 

「お前もだ。 悪行を庇うのは美徳じゃない。

それは ただの甘えだ。 ダチだっていうなら、止めろ。 遅くても叱れ。

それくらい、お前なら出来るだろ。 会っていきなりメンチ切れるんだから」

 

 

待ち伏せを思い出す。

 

面識の無い俺に、随分な真似をしてくれたモンだ。

 

 

「…………」

 

「お前もか。 愛想が無いのは お違い様だな。

ヒトの事言えねぇじゃねえか」

 

「チッ、わかったよ」

 

 

舌打ち。 申し訳程度の威勢。

 

行儀が悪いが、目を瞑ろう。

 

尚も逃げないのは褒めてやる。

 

それより、現在進行形の問題を優先だ。

 

 

『残り200M!』

 

 

レースは終盤。

 

最後の直線。

 

 

「見とけよ。 事の成り行きを」

 

 

俺らは再びレースを……オグリとギャルを見た。

 

オグリは先頭を捉え続けている。

 

同様に、オグリをギャルがマーク。

 

オグリは本気を出していない。

 

だがレースはラストだ。

 

ここでスパートを掛けるのは違いなく。

 

毒牙がオグリの脚に迫るタイミングである。

 

そして……オグリがスパートの為、地面に踏み込む。

 

観客席から その瞬間を捉えるのは困難。

 

同時にギャルの悪意が見えない。

 

何か起きても不幸な事故にしか"見えない"だろう。

 

が、しかし。

 

 

「ッ!」

 

 

オグリは問題なく全速力を出した。

 

 

『オグリキャップ、ここでスパート!!』

 

 

大きな砂を巻き上げ。

 

マークしていたギャルに強制砂浴びを味わせ、一瞬でトップに。

 

 

『サウスヒロインを抜き、先頭に躍り出た!』

 

 

豪脚は砂と不幸を跳ね除けた。

 

 

「ノルン、仕掛けなかった……のか?」

 

 

ヤンキーは困惑。

 

安心と不安心が混ざって、何とも言えない表情だ。

 

それはチビも同じ。

 

その答えが出る前に、オグリはゴール板を1番で潜り抜け、またも勝ち戦に華を添えたのだった。

 

 

『オグリキャップ誰1バ寄せ付けず、1着でゴール!!

デビュー戦から続く連勝です!』

 

「ヨッシャアアア!!」

 

「やった!」

 

 

遠くでジョーとベルノが歓喜する。

 

共に祝いたいが……手放しで喜べない。

 

まだ不良の手綱は握らなきゃならない。

 

俺は先程の疑問に答えた。

 

正確には推測だが、ほぼ合っている筈。

 

 

「仕掛けたと思う」

 

「えっ?」

 

 

チビが疑問の声。

 

やらなかった様に見えたのだろう。

 

急に良心の呵責に襲われたとか、ポジティブに考えたい所だが。

 

でも、そんなんじゃない。

 

 

「やらなかったんじゃない。 できなかったんだ」

 

「なんでだよ。 あの位置からなら、確実に」

 

「踵に脚を添えられた?」

 

「……その筈」

 

 

状況が状況なので、気まずそうに話すチビ。

 

反省の色が無いとキレられるのを恐れてか。

 

大丈夫だ。

 

オグリが無事だったのもあり、冷静になれている。

 

……冷静に、やや怒っているがな。

 

 

「オグリの脚力は並大抵じゃない。 瞬発力も或いは。

それに合わせられなかったんじゃないか?」

 

 

仮に添えられたとしても……ここからでも分かる地面への踏み込みと威力だ。

 

あの娘が吹き飛んでいた可能性すらある。

 

オグリ自慢になっているのは否定しないが、脚色しているつもりは無い。

 

 

「……極論だよ、それは」

 

「そうかもな。 真実を知りたきゃ後で直接聞く事だ」

 

 

論破する面倒はしない。

 

口も上手くないし。

 

言い放つと、手綱も放す。

 

晴れて自由という刑に処す。

 

 

「えっ……?」

 

「被害が出なかったし、あの娘には何もしない。 録音したモンもチクらない。

次は無いがな。 だけど、お前らは もうしないだろ?」

 

 

レース場を再度見やる。

 

オグリがギャルに手を差し伸べている ところだった。

 

オグリの事だ。

 

砂を掛けてしまって すまない とでも言っているのだ。

 

悪意にすら気付かずに。

 

これ以上、波を立てる事も無い、か。

 

 

「許してくれるのか……?」

 

「今は。 後はお前ら次第だから」

 

 

2バは互いに見合わせ、らしくなくオロオロするばかり。

 

普段はオラオラしていそうな癖して、そういう態度を取られると、それはそれでムカつくな。

 

アレだ。 ダサい。

 

そんなツラ、見たくない。

 

俺は さっさと退かせる事にする。

 

 

「ほら、レースは終わったぞ。 大切な友達の元へ行ってやれ。

じゃ、俺もオグリの所行くかねぇ」

 

 

最後はわざとらしく言いながら、観客席を後にした。

 

これが格好良いなんて思わない。

 

仮にも女の子である彼女らに暴力的に なった訳だし。

 

被害が無かったから安心してしまったし。

 

オグリも持前の天然で悪意を感じていないし。

 

ダサいのは俺の方だ。

 

終わり良ければ全て良し。

 

そう片付けてしまおう。

 

便利な言葉に縋って、目を逸らす。

 

だけど俺の脚はオグリに向いていた。

 

ウィニングライブとやら、今度はゆっくり堪能させて貰おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ〜♫踊れ踊れやカサマツ音頭♩」

 

 

ま た か 。

 

綺麗なドレスで盆踊りを披露するオグリ。

 

俺は……いや。

 

観客もジョーもベルノも、顔を両手で覆った!

 

悪いのはトレーナーのジョーだ!

 

ジョーってヤツの所為なんだ!

 

指導不足だ。 そういう事にしておく。

 

校長室の件から まるで成長していない……!

 

そう思った矢先、ぷっと誰かが吹き出した音が聞こえた。

 

オグリを笑うのは……この際仕方ない。

 

それでも反射で振り返ると。

 

そこには例のギャルがいた。

 

憑き物が取れたような、晴れやかな笑みを浮かべて。

 

 

「……ダンス、教えてやるか」

 

 

……そっか。

 

もう大丈夫そうだな。

 

不良サンは腐ってなど いなかった。

 

それが分かっただけで。

 

俺も自然と笑みが溢れた。




後腐れ無しが良いですよね。
カサマツ編を目処にしているつもりですが、終わるか不安に……
(ドロップキック。
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