オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結) 作:ハヤモ
オグリは『独占力』を会得していく……。
漫画ではマーチと初めて面と向かって話し合い、オグリが目標とライバルを得るキッカケになる重要な場面です。
当然 恋バナなんて ありませんでしたよ。
血を見る事も無いのです……。
連戦と距離増加、ベルノのデビュー戦に備えて、体力作り。
そうジョーに言われて、私とベルノは山を走った。
上り坂。
ベルノは早々に辛そうで、併走するようにリョウがついてくる。
昔の様に自らの脚で、涼しい顔のまま。
が、それは見た目だけだ。
ジョーが併走出来る謎を突っ込んだのを皮切りに倒れてしまった。
やはりヒトの身では無茶だったのだ。
それでも凄いと思う。
ランニングとはいえ、それも途中までとはいえ……ヒトが私達ウマ娘と並々併走するのは叶わないから。
でも『私』のリョウなら、また昔みたいに……。
そう、いつまでも一緒に……。
時々壮絶な俤の片鱗を見せるリョウ。
料理等の家事だけじゃなくて、体力的にも。
なにより、憤慨した時の威圧感は想像を絶する威力。
幼い頃から ずっと。
喧嘩を起こす理由だって、私を守る為にと動いた結果だった。
その才は全部私の為に割り振っている。
想う程に……身体が熱い。
不思議だ。
レースの感覚とは違う、熱い感覚。
胸の内からコンコンと沸き上がり、ウマ耳の先から尻尾の先までぴんと火照っていく。
でも嫌じゃない。 寧ろ心地良い。
いっそ、この感覚が続いてくれれば良いとさえ。
…………いけない、冷まそう。
私もだが、それ以上にリョウを休ませないと。
私は飲み物を買ってこようと、自販機を探しに出た。
整備された場所だ、直ぐ見つかるだろう。
と、展望台に到着したら。
ウマ娘……マーチと出会った。
「……オグリキャップ。 こうして ふたり で話すのは初めてだな」
「…………」
なんでここにマーチが?
さも来るのが分かっていた様な、待ち伏せをしていたように。
次の行動を予め用意しているような、流れるように自然な話し掛けに警戒する。
「そう警戒するな。 別に取って喰おうなんてワケじゃない」
「嘘だ。 リョウを私から奪う気だろ」
敵意を込めて睨み付けた。
マーチもリョウに特別な感情を抱いているのは既に知り得ている。
それを独占したい事も。
待ち伏せの類なら、私以外にもリョウがいるのも分かっている筈だ。
この機会を狙って、何かする気か。
「……1つ、聞いておきたい事がある」
マーチは意に介さず、話し続けた。
何を言われても、リョウは手放さない。
私のリョウだぞ。 他の誰でも無い、私だ。
「貴様の目標は何だ?」
ところが、話されたのは別の事。
「目標……?」
「あぁ。 私の目標は東海ダービーだ。
カサマツだけじゃない、東海全体の同世代、その頂点を決める最高峰のレース。
私は その頂の景色を見てみたい。
貴様は何の為に走っている? 何を目指してレースに出る?」
「何の……為……」
「或いは勝利を捧げる相手がいるとでも?」
考えた事もなかったな……。
走れるのは嬉しいし、楽しい。
勝てばジョーやベルノも喜ぶ。
そうした後に食べるリョウの ご飯は美味しい。
でも、目標とは違うのだ。
目標……か。
「……どうりで気に食わんワケだ」
顔を横に背け、だけど呆れるワケじゃなく。
諭すように勝負を語る。
「貴様は速い。 おそらく学園でも屈指のウマ娘だろう。
だが、そのままでは速いだけだ。 頂上を決めなければ山は登れない」
マーチは身体を向けて。
「ジュニアクラウンに出ろ、オグリキャップ!」
威圧するように、勝負を挑んできた。
「貴様を倒して、私は頂上へ行く。 大切な者と共にな」
目標……頂上……。
漠然として、よく分からない。
だけど。
誰にも絶対に譲れないものが、私にはある。
「奪わせない。 誰にも」
だから言ってやった。
シンデレラは ひとりで良い。
「なら私に勝て」
マーチは言うと、展望台を後にした。
後に残されたは私だけ。
暗くなってきた空を見上げた。
夕陽が沈み、星空が降りてくる頃か。
次に街を見下ろした。
「でもまぁ……確かに」
無数の光が瞬き動き、一面を輝き尽くす。
それ以上を一望に収めている様にさえ思う。
「この景色は、中々良いな」
この感動をリョウと共有出来たら、どれだけ幸福な気持ちになれるだろう。
そうだ。 リョウを連れてここに……。
「しまった!?」
最も大切な事を忘れていた!
リョウ達の飲み物を買いに来たのに、時間を掛けてしまった!
慌てて戻る!
道中、マーチに追いついた。
何故かリョウマツの方向に……まさか!
「そういう事か!?」
「そう言う事さ」
フッと鼻で笑われた。
「ゴールは決まってるだろう? 先に行っても構わないぞ?
勝敗の判定は貴様じゃないしな♪」
なんだかカチンときた。
その後は互いに押し合い圧し合い下り坂。
大した距離じゃない。
だけど接戦だった。
リョウの前に来た時は、ナニかを判定して貰いたくて……共に同じ景色をみたくて。
自然に併せて糸を紡ぐ。
「「リョウは どっちが好き?」」
「マジなんの話だよ!?」
元気になっていて良かった。
いや、今は そんな事より。
「リョウ。 この先に展望台があるんだ。
一緒に景色を見よう。 アレは良いものだ」
「価値を知らない生娘に、正当な評価が下せるとでも?
私と共に来い。 良い思いをさせてやる❤︎」
私とマーチが手を差し伸べる。
だけど、私だけを取るに決まってるんだ♡
ところが。
リョウはガタガタ震え始めるだけで、一向に手を伸ばしてくれない。
何故?
「あぁ」
寒いのだな。
「仕方ないな、隣で温めてやる♡」
リョウの片腕に抱き着き、密着して温もりを与えていく。
汗の匂いなんて構やしない。
リョウの匂いだ。 嫌いになんてならないよ。
寧ろ好き。 大好きだ♡
だから一緒に……♡
そう言おうと、隣を見たら。
「なっ!?」
マーチが私の反対側で、同じように抱き付いていた。
「ナニをしているんだ。 リョウは私のだ。
私と一緒に景色を見るんだ」
「過ごした時間が決定的差だとでも言いたげだな。
だが、さっきも言ったろう?
決めるのは貴様じゃないんだ。 これからじっくりと、私の色に染めていけば良い♪」
「それは泥棒だ!」
「誰が貴様のモノだって?」
互いに啀み合う。
勝利は絶対譲らない。
リョウは言ってたんだ。
私は特別だ!
1番は私なんだ!
「あの、さ」
リョウの寂寥感漂う声。
表情は苦笑い。 誤魔化すような、苦笑い。
私達の本気を茶化す欺瞞の笑み。
勝負の世界を知らないが故の無邪気な笑顔。
だが許されざる表情だ。
「一緒に見れば良いだけ、だよな?」
刹那。
ぶっちん。
ナニかが弾ける音が私とマーチの中でした。
その後の事は良く覚えていない。
マーチもだそうだ。
ただ、山の展望台が暫く封鎖される事に。
それとジョーとマーチのトレーナーが始末書? とやらを書かされたらしい。
「ベルノ、ナニが起きたんだ?」
「ナニも見てない知らない喋らない……」
ベルノは震えながら、クビを横に激しく振った。
余程怖いモノを見たのだろう。
「リョウに聞いてみるか」
「やめて! これ以上、ナニを見せたいの!?」
「?」
止められた。 何故だ。
運命の赤い(血の)糸
(ボソッ。