オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結) 作:ハヤモ
シンデレラとなる娘を見届けましょう。
また、漫画ではベルノライトのデビュー戦の日でもあります。
ほぼ描写なく終わりますが……。
また、北原の叔父さん初登場。
正式名称
「日刊スポーツ杯 ジュニアクラウン」
漫画内では ここまでは表記してません。
他、間違えてたら ごめんなさい。
ウマ娘の世界でもスポンサー等が同じなのか分からないです……。
だとしても、あまり出さない方が良い気もするので、短縮出来れば した方が良いのかも。
嫌な事件だったね。
ナニが起きたのか、それは誰にも分からないが。
正確には覚えてないし、思い出したくもない。
ただ、一歩間違えばダルマさん(比喩)が転がる(物理)事態になっていた。
その上で永遠に世話されそうな……マッドでクレイジーな愛を捧がれるところだったと思う。
やけに具体的だって?
本能が囁くのだ。 仕方ない。
取り敢えず、今は切り替えていこう。
今日はオグリのレースの日である。
それだけでなく、ベルノのデビュー戦。
よって、俺は いつも通りにレース場へと赴いた次第。
今回はベルノが先。
その為か、とても張り切っていた。
「体調は万全、天候は晴れ。 必ず勝ってみせる……私のデビュー戦!」
凛としてレースへ挑んでいくベルノ。
色々世話になっているので、オグリ同様 応援してあげた。
のだが。
「負けました」
ボロボロになって帰ってきた。
即落ち2コマ!
「まぁ その なんだ……ドンマイ」
俺じゃなかったら見落としてたね。
そんなベルノを、ジョーが不器用に励ます。
「そ、そう落ち込むなって! 最初なんだし そんなモンだろ!」
下手である。 上手い言い方は知らないが。
「オグリちゃんは初めてでも1着でした」
「そりゃお前……」
中途半端に言い淀むなよ。
残虐を混ぜてどうする。
お前には期待してないぞと言ってる様にも聞こえるぞ。
一方で、オグリからは天然の闇。
「速くてごめん……」
ヤダこの娘、悪意ゼロだわ!
タチが悪い!
実は灰被りじゃなくて闇そのものだろ?
「オグリに悪気は無いから……」
「……分かってます」
フォローを入れるも、下向きに涙を流してしまう。
いや、分かってる。 レースが原因なのは。
でもタイミング的にオグリが泣かしたみたいだ。
最低だ。
全部ジョーの所為だ、許さないぞ!
「レースを走って初めて分かった……」
「うん?」
ポツリポツリと。
涙と同じ様に言葉を落とし始めるベルノ。
「タイミング、位置取り、ペース配分。
そんな1つ間違えただけでも、深刻なミスに繋がるような事を一瞬で判断し続けねばならない。
それも全力で走りながら……私には駆け引きも勝負勘も……何もない。
足りないものが多過ぎる……」
「…………」
ウマ娘にしか分からない感覚。
それをベルノは呟いた。
努力すれば良い、とか。
自分で勝手に決めつけるな、とか。
言葉が浮かんでは喉元以前で消えていく。
所詮、俺はヒトだ。
勝負の世界にすらいない。
残酷だが、努力の問題じゃない……敵わないのだと現実に打ち負かされた本能が囁くのだ。
幼い頃は、自分こそ何でも出来る天才で唯一秀でた最強である様に錯覚する。
誰もが活躍を夢見るのだ。
世界から讃えられて喝采を浴びたいのだ。
それらは脳内で夢想すれど、現実に無惨にもブチブチと潰されて消えていく。
世界は敵なのだと思い知らされる。
ある種、その感覚は老いや限界だ。
それを感じたくなくて……勝負から逃げている者もいる。
俺とかな。 卑怯者だ、何れ代償を払わされそう。
「……今は切り替えていこう」
ジョーはキャスター付きホワイトボードを転がしてきた。
「今日はベルノのデビュー戦だけじゃない」
そう言い、ホワイトボードの文字を叩く。
「ジュニアクラウン。 準重賞レースだ」
そこには……。
第15回
ジュニアクラウン
……と書いてある。
「だそうです皆さん。
ご大層な名前だよ、その通り大きいレースなんだろう」
「準重賞って言ってたじゃないですか」
目が腫れたベルノに突っ込まれた。
同情は要らないらしい。 互いに。 ちくせう。
……まぁとにかく、重賞……目玉となるレースに準ずるという事。
頭に入らない説明に相槌を打つと、ジョーが構わずオグリに説明した。
「距離は1400M。 今までより600Mも長い。
よって、これまで以上にペース配分が重要になってくる。
作戦としては、まず前半ストライドを」
「広く取り、ゆったり楽に走る……でしょ?」
オグリが続きを言った!
スゲェ。
あの食っちゃ寝天然が、頭良さそうな事を!
「耳にイカができるくらい聞いた」
クール顔で深刻なミス!
前言撤回だよ!
「だから筋力とか いるかなと思って、ずっとこれ着けてた」
ポイッと片手で軽々しくUの字の塊……蹄鉄をジョーに放るオグリ。
「へ?」
次の瞬間、ズンッとジョーの腕が沈む!
「って重ッ!!
何だコレ!? バトル漫画かよ!!」
「ハッ、大袈裟なんだよジョー!
大の大人がみっともない声を……重ッ!!
重力が凄い星にでも来たとでも!?」
「お前の方がみっともねぇよ」
ジョーから受け取った蹄鉄はガチで重かった!
これを常時着けられ、片手でポイ出来るオグリ……改めてウマ娘なんだと再認識させられた。
「満月の日に暴れないよう、春雨を切り落とさなきゃ……」
「春雨言うな」
暴れんなよ暴れんな……。
暴れウマはヤバい、展望台のトラウマが復活する。
「バカは放置して、話戻すぞ」
おいこらジョー!?
ナニ急に賢者になるんだよ!
悪ノリしろよ、寂しいだろーが!
せめてキン●コン●するんだよ!
後、バカって言ったヤツがバカ!
「オグリちゃん出来たよ」
ジョーに並んで俺を無視していたベルノが声を出す。
どこからか出した玄能で、オグリの靴を叩き始めていたが、調整が終わったらしい。
その靴を受け取ったオグリ。
それを履いて、ぴょんぴょんと飛んで塩梅を見ると。
「軽すぎて飛べそう……」
感動して震え始めた。
またもバリキが上がったか、嬉しい様な悲しい様な。
「これなら大丈夫そうですね」
ベルノも嬉しそうに言うが、クビを縦に振らないジョー。
「いや、まだ油断はできん。
不安材料は2つ。 この1400Mは外枠の……それも先行するタイプが有利だ。
今回のレースで その2つを満たしているのが」
「「フジマサマーチ」」
またも言葉が挟んだ。
今度は俺とオグリからだった。
「……その通りだ。 勉強してたのか?」
「マーチには負けられないから」
「トラウマなので」
ただし理由は違うがな!
名前を あまり覚えられない俺ですら覚えてしまうくらいには、傷跡は深い。
後、本能だけで それが誰かを当ててしまうくらいには。
これが本当の当てウマ……喧しいわ。
「……心中お察しします」
「……お前も早く切り替えろ」
無慈悲! 冷血!
もっと愛を下さい、減るもんじゃないだろ?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
レース直前。
レース場の傍らで、ジョーとオグリは前を見ていた。
いつもならイラッとくる場面も、レース前なので堪える。
だけど背後で聞き耳は立てておく。
愛を語るならドロップキックの刑に処する為。
「……キタハラ」
「うん?」
「東海ダービーって……そんなにすごいの?」
「……あぁ凄いぞ。 俺の目標だ」
フッと笑うジョー。
なんか、ムカついた。
「……そうか。 なら私も そこを目指すよ」
言うと、パドックへ向かうオグリ。
その背中を見つめるジョーは、どこか驚き……そして嬉しそうだった。
ナニふたりだけの空間を作ってんだ。
許さねぇ。
「北原! アウトッ!」
「グハッ!?」
背中にドロップキック!
くの字に曲がり、地面を転がる!
「立て! 立つんだジョー!」
「テメー! いい加減にしろよ!?」
今度は俺が微笑む番だった。
郷愁にも似た感覚は嫌じゃなかったから。
「何してるんですか! 早く観覧席に行かないと怒られますよ!?」
ベルノが制止を掛けるまで、男同士じゃれ合っていた。
意外と楽しかったから仕方ない。
「またやろうぜ。 次やるまでには●メ●メ波を習得して来いよ」
「やらねぇよ!」
やって来るスタッフから逃げる様に席に向かう俺ら。
勝負じゃない、こういう走りも悪くないね!
「悪い事している自覚は持って下さい!」
ベルノ、スマン!
こういう走りは悪かった!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『さぁ登場しました!
今話題の大型ルーキー! このレース1番人気!
5枠5番オグリキャップです!』
パドックにオグリが現れた。
わあああっと、盛り上がる観覧席。
観客が多い。
準重賞のチカラ故か。
それともオグリの影響?
『デビュー戦ではフジマサマーチと激戦を繰り広げ、見事勝利を収めました!
今回、リベンジを挑まれる形となるか!?』
なるか、じゃなくて なるんだよ。
その後は俺に挑んでくる。
終わったら脱兎の如く遁走しなきゃ(使命感)。
でないとWうまぴょいさ。
アシゲ・サンドイッチ。
ぼくは詳しいんだ。
「───まさかキャップが あんな事言うなんてな」
一方で、ジョーとベルノは俺の心配なんかせずに お喋りに夢中。
他人事だからって酷くない?
「オグリちゃん言ってました。
『ライバルと目標を得た私が どう強くなるか楽しみだ』って」
ねぇ、それ本当にオグリの言葉?
ベルノの妄想じゃなくてマジで?
「この間の収穫は思った以上にあったようだな」
俺の犠牲の上にな!
「『切磋琢磨』とはよく言ったモンだ。
トレーナーの立場無ぇな」
ホントだよ、手綱を引けよ。
「バカ野郎」
ここで謎のジジイが罵倒した!
良いぞ、もっとやれ。
「それを焚き付けんのもトレーナーの仕事だろう」
あ?(威圧)
老害だわ、焚き付けんじゃねーよ。
こちとら人命に関わるんだよ。
「ろ、ろっぺいさん!!?」
「六平(ムサカ)だ、バカ野郎」
バルスッ!!
……くそっ! 何故発動しない!
……しまった、ム●カじゃねぇ!
代わりにジジイ、ムサカが杖でジョーの足を突く。
「痛い!!」
暴力により悲鳴をあげるジョー!
良いぞ! やっぱ応援しよう!
「トレーナーさん、こちらは?」
そんな男達のやり取りもそこそこに、ベルノは会釈して尋ねた。
答えずとも分かるがな、優秀な老害だろう。
……優秀な老害ってなんだよ。
「あ……あぁ、俺の叔父さん。 中央(トゥインクル)でトレーナーやってんだ」
「ちゅ、ちゅ、ちゅ、中央!!?」
驚愕の声を上げるベルノ。
前にも聞いたが、中央ってなんだよ。
「雲の上の おヒトやぁ〜……」
語学崩壊してない?
……どう凄いのか分からない。 聞くか。
「なぁベルノ」
「あっ、いたんですか」
ひでぇ。
「……その、トゥインクルってナニ?」
「えっ!? 知らないんですか!?」
知らねぇよバカ野郎。
いかん、ジジイの口癖が移ったか。
で、ベルノ先生によりますと。
トゥインクル……トゥインクルシリーズとは、国民的スポーツ・エンターテイメントで、ウマ娘達が繰り広げるレースの総称。
で、ここカサマツ等、地方で行われるローカルシリーズとの違いはレベルもそうだが、詳細な違いは(ry。
「ごめんパス。 もう良いです」
「テキトー過ぎません!?」
口頭で言われても、どうせ忘れるし。
聞いても分かった気になるだけだ。
詳しく知りたいなら、ネットで調べれば良い。
ベルノと俺がワイワイしている中。
親族同士の方では、あまり平和的じゃない会話が聞こえてくる。
「───ハッ! しっかしオメェがトレーナーねぇ……。
あの どうしようもなかったクソガキが、生意気に」
クソムカついたわ。
親族に他人が割り込む余地は無いって?
関係ないね、遠慮しない。
昔のジョーは知らないが、今のジョーを知っていての発言か?
「おいこらジジイ」
割り込もうとしたら。
「よせよ」
ジョーに止められた。
「何でだよ。 身内だからって悔しくないのかよ」
「……ろっぺいさんの言ってる事は本当だ。
否定出来ないくらいに、そのままだ」
「ほぅ、自覚出来たか」
「この野郎ッ!」
「やめろって!」
頑なに止めてくるジョー。
身内だからって、こうも言われて良いのか。
昔何があったのか知らないけど、今のお前は良いヤツじゃねえかよ。
「俺だって頑張ってんスよ……」
やっと、申し訳程度の反抗を見せた。
「今日だって、ほら! 1番人気のオグリキャップ!
今年ウチに入った新入生なんスから!」
まるで話を逸らすように、紹介を始めた。
昔の事は触れて欲しく無いという事か。
「ほぉ〜1番人気。 人気通り走ってくれんのか?」
『全ウマ娘、出揃いました』
そんなオグリキャップを見やる。
マーチに指をさして、何かを宣言した。
やる気MAXってか。
……あのままヤられない様にしたい。
『ゲートへ移動します』
芦毛2バとも、良い笑顔だ。
敵同士なのに笑い合ってるようにすら見える。
良きライバルってヤツ?
だとしても俺には どっちも怖い。
レース終わったら逃げるんだぁ…………。
それでもレースを見届けようとする主人公。
漫画では、この辺までで1巻終了。