オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結) 作:ハヤモ
一巻のラストから時々登場します。
ただし、カサマツ編ではオグリとは直接会ってません。
後半、ややギャグ回。
最後らへん、伏線を張りました……。
高評価及び、お気に入り1000件ありがとうございます!
励みになります!
『第15回ジュニアクラウン、間もなくスタートします』
9バのウマ娘が出揃った。
オグリは5枠5番。
マーチは8枠9番。
予定通り外枠出走だ。
『緊張の一瞬です……』
芦毛故目立つが、分かりやすい。
オグリ……頑張れよ。
「ふぃ〜、なんとか間に合うたっぽいな」
不意に可愛らしい方言が。
「ん?」
見やれば、小さな芦毛のウマ娘。
見た事が無い制服。
外来バか……外来バってなんだよ。
「……ん? なんや、芦毛の娘ぉが ふたりもおるやん。
ウチも芦毛やし、キャラ被るから やめて欲しいねんけどなぁ……」
幼女は笑顔でボヤく。
この娘も競走バなのかな。
だが推しを応援するのみ。
ロリコンじゃないし。
「おいアレ……」
ところがザワつく周囲のヒト。
ロリコンかな?
「中央の制服じゃね……?」
「はぁ!? うっそマジで……?」
でたな中央。
そろそろ聞き飽きた。
どんだけ偉い連中でエリート様なのか知らんが、ブランドを下げてる連中は良いイメージが無い。
妬みもあるが、プライドが高そうだなぁとか、その地位に猫撫で声で集るスカベンジャーみたいのを見ると……巻き込まれたくないのだ。
努力してきたのだろうし、苦労もあるだろう。
それは労うが……鼻にかけられるのは嫌だ。
つまり面倒臭い。 面倒事は勘弁。
それに幼女様は芦毛である。
芦毛なのである。
芦毛だからと差別したくないが、最近は芦毛絡みで碌な目に遭わない。
その意味でも近付きたくない。
無視しよ。 触らぬ芦毛に祟りなし。
「ま、兎にも角にも お手並み拝見や」
ほら、柵で頬杖ついてエラい事言ってる。
偏見なのは承知だが。
それよりレースだ。
ガシャンッと音と共にゲートが開き、ウマ娘が一斉に飛び出した。
『スタートしました!』
居並んだのは一瞬で、大外のマーチが先行。
相変わらずウマいらしい。
『出走する9バの先行争い!
良いスタートを切ったのは大外フジマサマーチ!』
マーチが大外が有利で、かつ先行する理由。
ジョーが教えてくれた。
カーブを曲がる時、遠心力が働く……これは前回に教えてくれた通りだ。
内側程キツく、外程緩い。
単純に見れば内側が短距離だが、遠心力の分、減速せざるを得ない。
逆に言えば外側は遠心力が少ない分、減速せずに済む。
加えてカーブは追い抜き難い。
勝負所はラスト200M。
その時までに良いポジションを得ておきたい。
だからマーチは、有利な大外で先行したのだ。
『───先頭はオーカンメーカー。
今回は逃げに徹するようです』
3コーナー手前まで来た。
1番手は王冠作り? で。
2番手にマーチ、1半身後方にオグリ。
残りは大体600M。
勝負所は、恐らくこの後で───。
───ドッ!!
ふたりの芦毛が、強く大地を蹴った!?
「このタイミングでか!?」
「早いッ!?」
「同時だと!?」
「一騎打ちだ!」
スパートが早い!
しかも同時に仕掛けやがった!
騒つく観客。
幼女様も目を丸くする。
『フジマサマーチ、オグリキャップほぼ同時に仕掛けたァ!
第4コーナーの手前でふたりが先頭へ躍り出る!』
初戦同様一騎打ッ!
先行しているのは以前マーチ。
速度は並列的。
余程の実力差が無い限り、覆すのは困難。
それでも俺は……ッ!
「オグリ頑張れーーッッ!!」
推しを応援ッ!
是即ち誉れ!
否、言い過ぎた!
「もう出られるチャンスは無いんとちゃう?」
「おおんッ!?」
オグリを貶す様な発言に、変な声が出ちまった。
睨み返す様に隣を見る。
いない。
「幻聴か」
「下や下ッ!」
下?
ハッ!?
いつの間に芦毛の幼女が隣に!?
「悪魔ダァ……!」
「誰が悪魔やねん!」
ツッコミを入れられた。
嬉しくない。
だが事実である。
酷い目に遭うのは もう嫌や。
「迷子かい? 迷子なら……」
「なんでやねん! いい加減にせえよ!」
「コッチのセリフなんだよなぁ」
見ず知らずの男に声を掛けるな。
しかも暴言、やめて欲しい。
おまわりさんの世話になりたくないんだよ。
……漫才をしている場合では無い。
レースに目線を戻しつつ、会話だけはする。
今、オグリとマーチが凄い速さで競い合っている。
差は……縮まらない。
「……勝つと信じて応援するのみ」
「ほぉん?」
「君もレースを見に来たんだろ?」
「せやで」
幼女が偉そうに振舞って見えるので、こっちも偉そうに対応してあげよう。
「なら、ロリコンだと思われたくないんで離れてくんね?」
割と真面目な話。
中央の制服ってだけで、一部の男達は彼女をチラチラ見ている。
レースを見ろ。
このロリコンどもめ!
「失礼なやっちゃな!?
あの娘らと同い年くらいや!」
「ハイハイ背伸びしちゃって ま〜可愛い」
「それに……芦毛だから なんやねん……」
急にしょげたぞ。
あかん。
差別されたと思われたか!?
『芦毛は走らない』
だから応援しない。
期待しない。
見向きしない。
そんな差別が、レース界にある。
完全じゃない。
だけど。
彼女も苦労したのかも知れない。
芦毛への陰口は、予後不良以上に冷酷か。
早く弁明しなきゃ!
「いや! いやいや! 芦毛は綺麗だし好きだぞ!」
「えっ?」
「俺の幼馴染も芦毛で強い! 愛してる!」
刹那、観客席が白けた。
目の前の幼女様も、口をパクパクしている。
しかし無言の世界。
されど霹靂、稲妻の如く沈黙は破られた。
「きゃー!! このヒトロリコンですっ!」
「誰か警備員呼んでーッ!」
「ヒト……いや、ウマ攫いか!?」
「捕まえろ!」
えっ、なんで?
これこそ弁明。
いつヤるか。 今でしょ。
「待て! 俺は被害者だぞ!」
「しかも罪を擦り付けるか!」
「ヒトでなし!」
聞く耳持たず!
くそっ!
これこそ差別!
レースを見ていたいだけなのに!
『オグリキャップ前へ出た!』
「ッ!」
これだけは……見るぞ!
『先頭はオグリキャップ!
オグリキャップだ!!』
「「!!?」」
皆も我を忘れてレースを見た。
最初からそうしろ。
「あの状況から!?」
「2度目のスパート……だと!?」
「バカな!」
「限界を超えたとでも!?」
皆が驚く。
幼女様、またも目を丸くする。
それがどれだけ凄いのか知らないが……。
推しが またも1番!
オグリは やっぱり!
「サイコーーだッ!!」
思わず近くの手頃な娘を抱き寄せ、喜びを分かち合うくらいに感動した!
『オグリキャップ、1着でゴーール!!!』
…………。
……。
『ジュニアクラウンを見事制しました オグリキャップ!』
アレ?
またナニかやらかした気がするぞ……。
腕の中に抱きやすい娘がいる。
……いたんだから、仕方なくない?
周囲を見る。
レースより俺に釘付けである。
……茶を濁そう。
「こ、この娘にもジュニアクラウンを……」
意味不明ッ!!
「捕まえろッ!」
結局こうなるの!?
芦毛の娘が嫌いになる! いや好きだけど!
「チクショウ! せめて君の名は!」
「えっ!? た、タマモクロスって言います……」
「そうかタマモト! 機会があれば また会おう!」
「た、タマモクロスやっ!」
「どっちでも大丈夫だ!
俺は芦毛だからって差別しない! 寧ろ好き!」
そう言い、レース場からトンズラしようとしたら。
ガッチリと腕を掴まれた。
タマモトの、ほっそりとした 白い腕。
だけどチカラ強さは間違いなくウマ娘。
「こ、これ連絡先! ここで会ったのもナンかの縁!」
何かの紙切れをポケットに捻じ込まれた!
「やはり この男、凶悪な精神犯罪者じゃないのか!?」
確認している場合じゃねぇ!
「摘み出せ!」
「二度と会えないようにしてやる……!」
コイツらの方が余程 差別的!
「2度目、か。
その時は、名前聞かせて欲しい……それから、名前も ちゃんと覚えて貰わんと……。
その温もり……あの娘のモンじゃないなら……覚えたでオグリキャップ」
ナニか聞こえたが、どうせバ声だろ。
どっちの意味でも。
「くっ! アイツ脚が速いっ!?」
「アスリートかよ!?」
追手を引き剥がす。
兎に角、今は逃げて生き延びねば……!
タマ●シにされたくない。 去勢勘弁。
面倒事を嫌がる割に、面倒事を増やす主人公。
そして、渡された紙には連絡先。
やったねリョウマツ! 浮気プレイが出来るよ!(殴