オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結) 作:ハヤモ
ズボンやスカートにも穴はあるんだよなぁ(殴。
とある過去の日常回。 本編とは逸れます。
勘違い系。
───これは幼き記憶である。
ウマ娘には尻尾が生えている。
コーラを飲んだらゲップが出るくらい当たり前の話である。
だが、知識の続きを変態紳士は夢想したに違いない。
ウマ娘用のズボンやスカート。
その穴に言及したのは聞くまでもない。
さらに言えば、ウマ娘用の帽子もあって、やはり穴がある。
そちらはウマ耳用であるが。
穴が空いていても、羞恥心が彼女らには無く、寧ろ生物的に自然な事であるから、街中で はしたなく尻尾をフリフリしていても気にしないのであった。
ならば、世のうまぴょい盛りが花に誘われるハチの様に、段々と根元に視線を這わせたとしても仕方ないのだ。
嗚呼、あの尻尾の根元は どうなっているのだろうか……と。
お尻の上の際どい部位、尾骶骨から生えているのだろうと。
アソコは敏感なのだろうかと。
姿勢制御に役立っているのだろうかと。
実に うまぴょい である。
一方、同情もあった。
手間を考えれば当然、背後が見えない穴に尻尾を通すのは大変だ。
特にウマ娘の尻尾は毛並みがモサモサしている、娘によるが暴れてしまう。
だから少しでも通し易い様に、チャック式になっていたり、強度を確保する為、または穴が拡がらない様に枠が組まれている。
裁縫せずとも、普通に売っている穴付き衣服。
だがしかし。
貧乏だった俺やオグリは、新たに服を買える金が無かった。
中古品は勿論双方売られているが、それだって安易と購入出来ない。
そんな時、身内の おさがり を着せるワケで。
その おさがり というのが、俺の着ていた服で。
当然ヒト用であり穴が無かった。
開けなければならなかった。
開けないと履けない。
履けても盛り上がって大変な事になる。
ルビーさんが裁縫をしてくれる事もあったが、なにぶん忙しい身。
俺も出来る事は やらなければならない。
だから、幼きオグリの採寸を取る作業をしなければならなかったのだ。
これは 疾しい行為では無い。
断じてだ。 変態に成り下がってなぞいない。
もし変態だったとしても、変態という名の紳士。
うまぴょい ではないのだ。 決して。
「ハツラツ。 採寸取るから、ジッとしてて」
ルビーさんとオグリの小さな部屋。
アパートの一室、セピア色の記憶が蘇る。
まだオグリの事をハツラツと普通に言っていた頃だ。
「……シンドい」
小さなオグリは足をプルプルしている。
立つのは、まだ大変そうだ。
「なら手を壁にやって。 お尻を突き出してよ」
「わかった」
そう言って、ほっそりした両手を壁につけ。
採寸を取る場所の都合、小さな お尻を突き出される。
灰色の、綺麗な尻尾が揺れていた。
……幼き頃故、本当に無邪気であった。
「ねぇ、はやくして」
「わ、分かってるよ……」
急かされて、慌てる俺。
巻尺を持っているものの、どう寸法を取れば良いのか分からない。
兎に角、目の前に尻尾があって穴がある。
その位置を調べなければならない。
……何故、だからといって触診しようと思ったのだろうか。
目の前に揺れる尻尾があったから?
眠れる本能が そうさせたのだろうか。
ああ、つまり。
自制心が未だ足りず、子猫の様に戯れついてしまったのだ。
さわさわ……。
その春雨みたいな尻尾を触った!
そして、そのまま根元までいって……。
ズボッ。
「!!!?!?」
声にならない声と共に、俺は背後蹴りを喰らった。
ボロアパート全体が揺れるくらいの威力であった。
この悲劇で学んだ事がある。
ウマ娘には敵わないと悟ったのだ。
これを機に、自分の事はなるべく自分でやって貰うようにした。
歯磨きにしろ風呂にしろ、触れる機会は減らそうとも。
ある意味では、男女の分別である。
または初めて経験したジェンダー問題かも知れない。
デリケートである。
だが、大切だ。
こうしてヒトは失敗からナニかを学ぶ。
学ぶべきだ。
学校では学べない、ナニかを。
学ばずとも、自然と覚えてしまうナニかを。
学校の保健体育の教科書の性知識を国会で非難、その応酬をした政治家達がいたのを思い出す。
くだらない、国会で答弁するなと唾棄するのは簡単だったが、結構重要なファクターではなかろうか。
学ぶ機会は絶対に必要なのだ。
俺の場合は健全な方だったが、やはり無知識故に危険な うまぴょい が起きてからでは遅い。
俺はルビーさんに、事の顛末を説明した。
やはり"ほうれんそう"は大切だよね。
そうしたら。
「あらー? あらあらー? うふふ……」
意味ありげな笑顔を向けられた。
片手を頬に添えながら。
なんか怖かった。
「男になるには、ちょっと早いかなー?」
はい?
最初から男だよ。
「お母さんがいない時、あまりハメを外しちゃ駄目よ?」
意味が分からないです。
「キチンと手順を踏んで、ね?」
……分からない事は聞かないとならない。
だから勇気を持って聞く事にした。
純粋キラキラな目で。
「俺にその"手順"を教えて下さい!」
全てはオグリの為に。
このままでは採寸の方法が分からない。
「ルビーさんは経験がある筈! そのテクを俺にも!」
採寸の方法。
今までルビーさんは様々な事を教えてくれた、裁縫だってそうだ。
「俺を男にして下さい。 そして認めて下さい。 俺を男だって!」
舐められてる様にも感じたのもあり、威勢を張ってお願いした。
すると、ルビーさんは赤くなってしまう。
「だ、ダメよ! ナニを言っているの!
リョウマツ君には まだ早いわ!」
「ルビーさんはきっと経験豊富だと思っての事です!」
素人なワケが無いのである。
今までオグリと俺を養えた家庭スキルは、確かなのだ。
「何故です。 俺が そんなに(裁縫に)見合わない男ですか?」
「そ、そうじゃなくて……ご無沙汰というか」
ご無沙汰?
そんなワケないのだが。
「後ろの穴でも前の穴でも大丈夫でしょ」
俺のズボン、前のチャックだって直してくれたし。
オグリのズボンにだって、尻尾穴を開けていたじゃないか。
言うのは簡単だが、作るとなると別だ。
だがその技術を確実に持っている。
自信が無いなら実用性を見せてやれば良い。
「ほら! 俺のココだって、ちゃんと動きますよ!」
チャックが。
「引っ掛かりもなく、スムーズです!」
これで学校の立ちションの時、ズボンごと下げなくて済む。
同時にバカにされずに済んでいる。
「こんな立派なのに!」
「あ、貴方にはオグリがいるでしょう?」
オグリ?
オグリは家庭スキルが皆無!
台所ではダークマターを生成し、添い寝すれば足蹴りをくらい、外に出れば泥んこに、転けて生傷だ。
どちらかと言うと、そんなオグリだからこそ俺がスキルを習得しなければならない!
針を持たせたら悲劇を見る羽目になる。
てか、なんでオグリの名が出るのだ。
「今はオグリじゃなくて、ルビーさんが良いのです!」
話を逸らさないで欲しい。
そんなに針を持たせたく無いのだろうか。
でも俺はマジだ。
「えっ、えっ」
「俺は本気です! 覚悟の準備をしておいて下さい!
そんなに不器用じゃないつもりです! 安心して下さい!」
「じゃ、じゃあ安全な日に……」
安全?
仕事がない、時間がある時か。
「今日は大丈夫でしょう。 心配ならオグリが寝た後でも」
オグリが邪魔してくるとは考え難いが、針を使う以上は危険だからね。
「なんで安全だって」
「そりゃチェックしてますもの」
仕事の日、いない時をね。
把握してないとオグリが ひとりぼっち になるからね。
ぼっちは寂しいもんな。
「どうして そこまで……」
「好きだからです」
「!?」
オグリが。
「それ以上に理由が必要ですか?」
「……も、もう少し大きくなったら、ね?」
「もう大きいですよ」
幼稚園児じゃないやい。
「うぅ……その歳で……? でも、そこまで本気なら私も応えないと……」
やっと心が決まったか。
なんで こんなに回りくどくなったのだ。
「じゃあ、早速お願いします」
そう言ってズボンを脱ぐ。
予備は自室にあるから良い。
穴空きズボンになろうと構わない、隣部屋に移動するくらいだ。
それより教えて貰いたい。
その為には、ズボンの1着くらい平気さ。
「大胆過ぎない!?」
「ナニを狼狽えるのですか」
相変わらず意味が分からない。
大人の事情があるのかな。
「さあ早くして下さいよ……」
「じゃ、じゃあ……先ずは口を……」
くち?
ああ、穴の入り口周りか。
「硬くするんですね、分かります」
強度が必要そうだもんな!
尻尾は揺れるし、それでズボンが広がったら大変だ。
ああ、ところで……。
「道具が必要ですよね? 無い感じで?」
補強の為の布とか、固い下地とか。
当然、布とか糸とか針も。
……ハッ!
「まさか道具ナシで問題無いと?」
流石はベテラン勢という感じか?
すると、ルビーさんはしゃがみ込み、俺の小さな背丈に合わせる。
紅頬を浮かべながら、同時に熱に浮かされた様な融けた表情のまま。
「大丈夫よ」
それだけ言った……!
おお、頼もしいね!
ところで、なんでズボンじゃなくて俺の腰に手を回し始めてるの?
「あのー、ルビーさん?」
「ふふっ。 怖がらないで……全部任せてね」
「いやー、これは下着なんで。 ズボンは床に置いてあるんで、そっちでお願いします」
「いきなり本番は怖かった? でも誘ったのはリョウマツ君よ?」
「なんの本番ですか。
俺は ただ、オグリの尻尾穴をズボンに作る方法を教えて欲しいだけですよ」
「えっ」
「えっ」
静寂。
詳細不明ながら勘違いされていたらしい!
それが発覚した時には、だいぶ時間が掛かった様子!
子どもでも分かる、気不味い雰囲気……!
それを破ったのは、来襲の天然オグリ。
「どうしたの、お母さん……リョウのズボンを脱がせて」
「ち、ち、ち、違うのよ!? これには事情があってね!?」
その後、ルビーさんと微妙な雰囲気になったが、なんとか仲直りした。
そうした後、ようやく目的である裁縫を学べた。
どんだけ回りくどかったか。
それに……。
ルビーさんはあの時、ナニを勘違いしていたのだろう。
謎である。
うまぴょい事案?
危険な場合、削除する可能性があるやも知れぬ……。
次回、中京レース辺りを書けたら……。
そしてシンボリルドルフ登場……!?
未定ですが(殴。