オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結) 作:ハヤモ
漫画だと第10R「国内最高水準」辺りへ行きたいところですが……。
シンボリルドルフが登場すると言ったな?
アレはウソだ
うわあああああああ!!
▂▅▇█▓▒░(’ω’)░▒▓█▇▅▂
代わりに不良サン再登場。
はいそこ。 釣り合わないとか言わないの。
重バ場からの……良バ場。
漫画ではジュニアクラウンから10日後に中京レースなので、その間の出来事という事で。
色々と主人公が悪い。
矛盾があるかも。 お兄さん許して。
トレセンに戻った時、またも理不尽な目に遭う。
みなまで言う必要は無い。
芦毛だよッ!
「前もそうだったが、私の1着に興味が無いのか?
なんでレースの後、私の元に来なかったんだ?」
「観客席が騒ぎになっていたが……小さな芦毛がいたな。 まさか そういう趣味が?」
目に光の無い芦毛2バに責められて、俺は肩身が狭い……どころでは無い。
なんで こうなるんだ。
「い、いや! 相手が無理矢理ッ!?」
弁明する俺を尻目に、オグリはポケットを弄ってきた!
「じゃあ、これはなんだ?」
手には1枚の紙切れ。
タマモトの連絡先が書かれたもの。
「ほぅ? 大変興味深い」
マーチが汚物を見る様な目を向けてくる。
ヤダ。 恐怖を禁じ得ない。
「いやなんで紙があるって知ってるの!?
レース中だったよね? 席を見ている暇無かったよね!?」
「女の臭いがしたからだ」
「ああ、やはり勘違いじゃなかったか」
「嘘だと言ってよポニーちゃん!?」
小さいのはタマモトの方だが。
絶叫するくらいにはエグかった。
「私は哀しいぞ」
「俺も哀しいよ!? そんな嗅覚があったなんて!?」
そんな問いに、冷静をもって対応された。
目の前で紙をビリビリにして見せるという対応を。
「マジ?」
善意の縁を切るとか。
天然腹ペコ オグリが そこまでするなんて。
ショック。
まだヤギさんみたいにモグモグされた方が可愛気がある。
まぁ……既に登録してるんですけどね。
「勘違いするな。 酷いのはお前だ」
「浮気は駄目、絶対」
「偶然居合わせたんだって!」
嘘じゃ無いもん。
たまたま出会ったんだもん。
「なら連絡先の紙を持っていたのも偶然なのか」
「うぐっ……!」
グゥの根も出ない。
偶然にしては出来過ぎィ!
「ほらな。 芦毛なら誰でも良いんだ」
「ち、違う!」
「なら この際だ。 男としてハッキリして貰おう」
「そうだな。 それが良い」
な、ナニを?
そう疑問に思う俺の前に、ズズイと寄せてくる ふたり。
近いよ!?
次にはマーチが真っ直ぐな目で語ってきた。
「私はジュニアクラウンで……オグリキャップに敗北を喫した。 だが まだひとつ、勝負がついていない事がある。
それが お前だ……さあ、どっちが1番か決めろ」
「勿論、決まっているよな?」
嗚呼、逃げられない!
甲乙付けるとか、無理ィ!
今まで勝負から逃げてたんだもん!
いや心には決めているんだ。
でも、それを言葉にするのはキツい。
片方を捨てるみたいじゃないか。
マーチを傷つけたくない。
……。
いや待てよ。
寵愛を受けたいだけなら、両方でも良いじゃん!
俺はスタッフ。
トレセンの皆を愛しても問題無い筈。
善は急げだ!
「じゃ、両方で」
───蹴りが飛んできた。
ドカバキボコドンドスメキミキボキッ。
そんな音が身体中で響く。
視界が暗転したが、どうやらサッカーボールにされたらしい。
……誰かを傷付けない様にしようとしたら、自身が傷付く。
何かを失わなければ、何も得ることは無い。
哲学である。
ウマ娘には勝てない。
これは結論。
幾度となく そう思ったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
どんな目に遭おうと、仕事は仕事。
生きて動けるなら、動かねばならない。
包帯を身体中に巻いてでも厨房に立ち、その他雑務を熟す。
ナニ、アパートの頃にも似た事があった。
これくらいなんだ。
「リョウマツ君。 何があったのかは聞かない。
だが、その身体で厨房に立つのは無茶だ」
が、しかし。
料理長に追い出された。
いや、まぁ、優しさ故かも知れないよ?
でもね察して。
隠れ蓑が無くなるじゃないか。
「リョウ」
「ひっ!?」
ほら来たー!
オグリが来たよー!?
例え愛バでも、暴力を振るわれるとね、本能が拒絶するんだよね。
…………。
あれ。
いや、拒絶する程度の絆だったっけ?
そもそもオグリは愛バなのだろうか?
今までそう思ってきたが、家族愛なのでは?
異性として見てきた筈なのに、うまぴょい したいと下衆な思考すらしたのに。
こう、暴力を振るう大飯食いの天然牝バと付き合っても生活が脅かされるだけだし……。
「すまない、やり過ぎた」
ぺこり、と頭を下げられても。
気持ちは揺らいでしまう。
レースの世界に生きている彼女。
学生の間だけの話かも知れない。
ほんの短い、花のような儚さ。
だからこそ、貴重な時間を俺なんかが削って良いワケが無い。
例えば、今みたいな。
「こっちこそ ごめん、オグリ」
だから言わなきゃ。
「もう俺なんかに構わなくて良い」
「えっ……?」
何を言っているんだ……なんて。
そんな不安になって、瞳が揺らいで。
それも全部俺の所為だ。
「お前はレースに生きている。 俺なんかの為に時間を取ったら勿体ない」
「なにを……いって……」
今度は泣きそうになるなよ。
笑って欲しい。
だから、俺は努めて笑顔で言い出した。
「特別扱いしてさ、ごめん。 変に靴を買ったりさ、洗濯物したり。
お互いに普通になろうよ。 それが1番だよ。
それぞれ やる事があるんだからさ」
オグリが目を見開いて、真ん中に点を浮かべた。
目尻には涙が溜まっていく。
おいおい、何故泣くのだ。
笑えよ。
仕方ない、俺だけでも元気良くするかー。
「じゃあね。 レース、頑張れよー!」
「ま、待ってくれ!」
オグリに背後から抱きしめられた。
また暴力かな?
「私、変わるから!
もう2度と蹴ったりしない! ご飯だって、ワガママ言わない!
紙を破ったりもしない! 添い寝してとも言わない!
他の娘と一緒にいても怒ったりしないから!
だから頼む……行かないでくれ………側に、いてくれよ……」
「それだよ」
「えっ……?」
「俺でオグリを縛りたくないんだ。 今までだって、その所為で学園の皆に迷惑を掛けた。
もうやめよう、こんな付き合い。 距離を取った方が幸せなんだよ。
そもそも、俺はヒトだ。 一緒に歩めなかったんだ」
オグリは悪くない。
俺がいたが為に、オグリは不幸になる。
大切な時間を奪いたくはない。
「だから……離せよ」
現実だと、冷たく言った。
「イヤだ……」
「優しい内に離してくれ」
「イヤだと言っている!」
「俺は離せって 言ってんだよ!」
「ッッ!!?」
振り解く。
案外、あっさりだった。
俺は走った。
逃げる様に走った。
身体中が痛むのも構わず、角まで走る。
背後から幼馴染の、最初の時みたいな……泣き声が聞こえて来るのも構わずに。
振り返らない。
角を曲がる。
曲がって……止まった。
床を見ながら息を整えた。
「ハァハァ……ああ、くそっ……いや……これで良かったんだ……」
言い聞かせる様に独り言を呟く。
気持ちが落ち着いていないが、それでもここから離れよう。
オグリから、少しでも離れよう。
そう前を向いたら。
「ガッ……!?」
誰かに襟首を掴まれた。
見やれば いつかのヤンキーと取り巻き。
不良サンバカだった。
皆、耳を背後に倒している。
怒っていた。
「ツラ借せや」
こっちの了解も得ず、怪我人である俺を容赦無く引き摺る。
そのままヒト気もウマ気も無い校舎の影に連れ込まれると。
バキッ!!
思いっきり殴り飛ばされた。
「ゲホッ……!」
身体が地面に転がる。
校舎の壁で やっと止まった。
すんごく痛い。
口に血が溜まる。
さすが、ウマ娘。
バリキが違いますよ。
でも、なんだろうね?
放心しているからか、他人事に出来た。
「テメェ! なんで殴られたか分かってるよな!?」
さぁ?
何の事かな?
血を吐き出しながら、生気なく答えた。
「は、はは……お礼参りか。 俺がケガして弱ったところを よって集って。
見上げた根性だな……」
「どんだけ根性腐ってんだァ!?
いっぺん死んでみっか アァッ!?」
「ルディ! これ以上はダメだって! 本当に死んじゃうって!」
「離せよミニー! ノルンもだ!
もっと殴らねぇと気が済まねぇ!」
死ぬ、か。
ウマ娘に本気で殴る蹴るされたら、それこそ一瞬でオダブツだよな。
その意味では、あのふたりは加減してくれたんだろう。
だからなんだ。
加減してくれれば良い話じゃない。
十分、死傷事件になり得る。 アレは。
「別に。 殺したって良いさ。 なんか、どうでも良くなった」
刹那。
ベチィンッ!!
乾いた音が響き渡る。
頬が痛い。
平手打ちをかまされた。
ギャルからだった。
「あんたさー、それでも男なワケ?
そうやって腐ってオグリ泣かせて、あーし達にぶたれて。
アンタ、アイツが好きなんじゃないの? マジで何してんの?」
「へっ。 流石は学園でぬくぬくしているだけはあるな。
俺みたいなクズにまでクビ突っ込んでよ」
「なにー、その理屈。 ルームメイトを心配しちゃ悪い?」
「ハッ! 笑わせるなよ、最近まで部屋にすら入れず、イジメていた分際で。
所詮、狭い世界で座学やレースの成績に仲間内で一喜一憂している小娘だよ。
いつかウマ娘達もレースを取り上げられて、誇りも脚も役立たない、外の世界に投げ出されるというのに」
「なら」
そう、口を開き始めたのはチビメガネ。
座学成績は良さそうなヤツだ。
「私達ウマ娘より広い世界に生きてるって言うなら、何で堂々としていないんだよ。
大切な娘を偽って、惑わせて、泣かせて、そんな生き方の どこに誇りがあるんだよ」
コイツ、生意気そうだと思っていたが……!
「お、お前らに……何不自由なく生きてきたお前らなんかに、俺の何が分かる!!」
「捻くれたヒトの無様が分かる。 不自由なんか どこにだってある。
失敗も、絶望も、レースじゃなくたってありふれて珍しくも何とも無い。
リョウマツさんは自分に自信が無いから、誇りが無いから いじけて 自分から傷付いて、好きな娘を自ら遠ざけて、勝負から逃げ続けているだけだ」
「言わせておけば! ウマ娘とヒトの俺とは根本が違うんだよッ!」
「……『ヒトは大志へと続く道を共に歩む、信頼に足る杖に値する』……そうマーチに言ったんだってな」
「ッ!」
また そんな情報、どこで仕入れやがった。
「共に走れないからなんだよ。 杖が逃げ出しちゃ、誰がアイツを支えるんだよ」
「それは……ジョーやベルノが……」
「まだ分かんねーヤツだな!?」
またヤンキーが再燃。
吠え始める。
「泥ウサギ、いや、オグリキャップは! お前が良いんだよ!!
お前に支えて欲しいんだッ!! 他の誰でも無い、リョウマツに!!
お前がいなきゃ……駄目なんだよ……!!」
付け加えるように、ギャルも言う。
「オグリ、ウチの親がやってるダンス教室に通ってるの知ってるー?」
「ダンス……?」
「そー。 ウイニングライブの為にね。
そんでねー、部屋で言ってたワケ。 1番アンタに見てもらいたいって。
だから一生懸命なんじゃないのー?
そんなヤツがいなくなって……オグリは さぞ不幸のドン底よねぇ」
「…………」
嗚呼。
俺はバカだ。
コイツら不良に説教されるくらいの、大バカ野郎だ。
むくり、と俺は痛む身体に鞭打って立ち上がる。
「いかなきゃ……俺、オグリに謝らなきゃ」
ふらふらの足取りで、さっきの廊下まで駆けていく。
ウマ娘とは比較にもならない、傷付きまくった身体と両脚を引き摺って。
幸せを願った。
でも、それは逃げる為の口実だった。
オグリを、大切な娘を不幸に陥れていた。
オグリは俺が特別で、俺もオグリが特別だ。
その関係が怖かった。
壊すのが怖かった。
好きだって告白したら、全て壊れそうで。
学園に来て、色んな娘と絡み合って複雑になって。
余計に脆く、怖く、不自由になった。
だから自ら壊したんだ。
どうせ壊れると決めつけて、それならと自分から壊したんだ。
逃げ出した。
気がついたら、どんどん出走してくる娘たちから。
恋のダービー。
そんな歌のタイトルが浮かんだ。
物覚えが悪いのに、なんでこんな時に。
笑えるよ。 俺のバカさには。
「はっはっ……くっ……はっ!」
身体中が痛む。
それでも走る。
走って走って……やっと、オグリと別れた廊下についた。
いた。
オグリは、廊下の隅で蹲って泣いていた。
昔みたいに。
歩けなかった時みたいに。
杖を失ったシンデレラが そこにいた。
「オグリーッ!」
「ッ!」
声はガラガラ。
身体はボロボロ。
あちこち血だらけ。
「リョウ……?」
「ごめんッッ!!」
顔が合った瞬間、土下座した!
「俺、最低だ! ずっと特別でいたいのに、学園で色んなウマ娘と絡んで!
その中で、関係が壊れるのが怖くなって逃げ出した!」
「リョウ……」
「でも もう逃げたくない! だから言う!」
ガラガラ声、ボロボロの最悪な身体。
そこに息を大きく吸い込み。
オグリの顔を見て、吐き出した!
「オグリキャップ! お前の事が好きだッ!
大好きだッ! 愛しているッ!!」
「!!!?!?」
嗚呼。
長年言えなかった事を やっと……言えた。
憑き物が取れたように、スッキリした。
壊れるなら。
なんで、最初から堂々と当たって砕けに行かなかったんだろうな、俺。
「最低な状態で、最低な流れだよな……ハハッ……でも、これだけは本当だから」
「……っ! …………ッ」
綺麗な両目から、涙がボロボロ溢れている。
オグリか、俺か。
いや両方から。
「無理だよな……こんなダセー男」
踵を返して、背中を見せた刹那。
「そんな事ない!」
また、背中から抱きつかれた。
「オグリ?」
「私もリョウが! リョウマツが好きだ!
ずっとずっとずっと、好きだったんだ!
大好きだったんだッ!」
マジか……。
両想いなのに、ずっとすれ違っていたのか。
「でも私も怖かった! 上手く言葉で言い表せない この気持ちを伝えるのが!」
「そっか……」
「うん……」
互いに向き合った。
そして口を開く。
「「おわいこ だな」」
って。
ハモった。
やっと、気持ちが1つになった気分。
「じゃあ……その」
「うん」
「返事としては……?」
「勿論、良いに決まってるさ!」
「ッ! オグリーッ!」
「これからも宜しく頼む!」
「ッ!? 締まる!? 鯖折りキマるッ!?」
こんな最底辺の王子なんて、後にも先にもいないだろうて。
これからも大変だ。
特に俺の身体はバキバキであった……。
「やれやれ。 世話焼けるぜ」
「くっついて良かったじゃん」
「(ブワッ)」
「ノルンが泣いた!?」
「涙は とうに枯れたものかと!?」
「そうか……やはりオグリキャップには敵わない、か」
大胆な告白。
もう少し引っ張るつもりが、グダる前に。
不良が 変にカッコよくなってしまったかも。