オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結)   作:ハヤモ

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ジョーか、リョウマツか。
両方だとしても関係ない。
いただけで変わる事がある。
僅かかも知れないが。

北原 穣 視点。
歳や何年前かは、回想内に出てきたイワノフラッシュという名のウマ娘や、そこからのwiki等を見ての予想。
その他、ウマ娘等の情報も同様。
シンボリルドルフの話をしてますが、まだこの時点でのレース数は……とか、歴史や勝利数は……レースの名称といった点で間違いがあるやも知れません。
素人故に……すいません(脚質:逃げ)。
指摘があればお願いします。
漫画内の北原の回想では25、対する六平は47とあります。


第27R「ジョーの夢」

 

あれは10、いや15年前だ。

 

25の時だった。

 

ああ、お前より歳上なのに碌でも無い奴だったよ。

 

家もそれなりに大きかったし、家族もいて恵まれてた。

 

お前は……そうか。

 

なんとなく聞いていたが、苦労してたな。

 

…………。

 

仕事辞めて暇ぶっこえてた俺は、実家で自堕落に過ごしてた。

 

求人も碌に見ずに煙草呑んで、レースを画面越しに見て、意味無い野次を飛ばしてよ。

 

髪の毛も染めてたか、他にも色々と尖ってた。

 

間違いなく迷惑だったろう。

 

だからって動く気になれない。

 

何か興味も、したい事もない。

 

この世界は つまんねぇ とさえ思っていた。

 

腐った時間だった。

 

だからか。

 

ある日ろっぺい叔父さんが部屋にけし掛けてきやがった。

 

いきなり扉をバァンッて開けてよ。

 

え?

 

ハハッ、お前みたいに いきなり蹴ったり殴ったりはしてこなかったぜ?

 

代わりにトレーナー募集の紙を投げつけられてな。

 

どうせ暇だろって、トレーナーになれと言い出してきたんだよ。

 

中央のトレーナーやってんのもあるのか、発言力があるっつーか。

 

無い様に見えたって?

 

……ああ、そういう意味じゃねーよ。

 

偉いって事だ。

 

カサマツに口 利いてやると言ったんだよ。

 

俺みたいな学無し、経歴無し、ウマ娘絡みの経験無しの腐ったヤツが地方とはいえ、トレーナーになれるワケねぇからな。

 

それを知った上で、このまま腐ってるかって挑発を添えられた。

 

少なくとも画面越しに眺めてるよか楽しいぜとも。

 

そうしてレース場に連れられた。

 

テレビ越しじゃねぇ、生のレース場。

 

それがあの、中京レース場だった。

 

そこで見たんだ。

 

東海ダービーを。

 

在らん限りのチカラを尽くして走るウマ娘達を。

 

熱狂の渦の中、皆が生き生きとしていたんだ。

 

心の奥底から応援したくなる様な世界が、そこにあった。

 

ここが良い。 いや、ここにいたい!

 

いつか俺も東海ダービーに……!!

 

そう。

 

それが俺の原点、俺の夢が出来た瞬間だ。

 

とまぁ、そんな風にトレーナーの道を進んで、今の今まで目立った成績を挙げられずに来たんだがな、ハハハ……ハァ。

 

心の底から応援したくなる様な、情熱で身体を焦がしても後悔のねぇ、そんなウマ娘が現れなかった。

 

だけどよ、オグリキャップの走りを見て、やっと巡り合えたと思った。

 

勝って、勝ち進んで、キャップは走った。

 

良く走ってくれた。

 

俺と……俺達と共に走ってくれた。

 

キャップもマーチをライバルに据えて、俺の夢を聞いて、東海ダービーを走ると、目指すんだと走ってくれた。

 

夢が。

 

夢が届く所まで来たってのに。

 

やっと叶うって思っていたのに……!!

 

 

『オグリキャップを中央にスカウトしたい』

 

 

シンボリルドルフの……スカウトだ。

 

くそっ……。

 

ろっぺいさんの警告を、もっと理解してりゃあ、こんな事には ならなかった!

 

分かってる。 後悔先に立たず、ってな。

 

だが お前が怒ってくれたからかな、幾分かは楽にレースを見れた。

 

問題が現実になった後も。

 

……。

 

お前は素直に反対してくれたな。

 

夢も語ってくれた。

 

俺らを代弁してくれたとさえ思っているよ。

 

俺も、お前みたいに怖い者知らずなら良かったがな……。

 

あんな大物を前に下ネタ言って挙句に何かで怒らせて、怖気ずに平然と立ってられる お前は何者なんだよ。

 

……実は怖かった?

 

嘘つけ、謙遜だとしても嫌味に聞こえっぞ。

 

俺なんて気を失ったしよ……。

 

あの顔はヤベェ。

 

魔王ってのも、強ち間違いじゃないな。

 

お前は皇帝よりソッチ呼びが好きなのか。

 

何にせよ、思い出す度に震えが止まらん。

 

…………おい。

 

……その話題は二度と言うな。

 

特に公共の場。

 

マジ捕まるぞ お前。

 

俺は"ハッキリ"警告しといたからな。

 

……何も知らないんだな。

 

レース場についてくる癖して、その辺は無知って……。

 

オグリと付き合ってるんだろ、少しは学べ。

 

俺も教えられる事は教えっから。

 

お前のトレーナーじゃねえが。

 

……シンボリルドルフ。

 

トゥインクル史上初、"無敗"でクラシック三冠を達成したウマ娘だよ。

 

圧倒的な強さを誇り、レースには絶対は無いが、彼女には絶対があるなんて言葉がある程に。

 

どうだ? これだけでもう畏怖して……。

 

……音楽家じゃねえよ!?

 

ウマ娘の、レースの話してるっての!

 

ワザとだな!?

 

真面目に解説してやってんだよこっちは!?

 

クラシックってのは皐月賞、ダービー、菊花賞の事!

 

全部連勝して、ウマ娘史に名を刻む大業を成したのッ!

 

他にもG1をいくつもだな……。

 

皇帝の名は伊達じゃないって事だ。

 

……もうツッコむまい。

 

皇帝を前に無礼(なめ)るのも分かる、お前はバカ過ぎだ……。

 

 

───さて、どうする。

 

 

こうなっちまった以上、返事はしなくちゃならない。

 

オグリキャップを中央に行かすべきか否か。

 

いや違う。

 

地方に居て良いのか悪いのか。

 

……居て良いに決まってる?

 

そうじゃねえ、そうじゃねえんだよ……。

 

そういう意味じゃねぇんだ。

 

レースを知らねえから、そんな事を言えるんだよ、お前は。

 

それは私情だろうが。

 

レースの世界で、勝負の世界に持ち込んで良いモノじゃないだろ。

 

……ヒトの事、言えねぇか、ハハッ。

 

笑えよ。 女々しいって。 構いやしねぇさ。

 

レースを走るなら、上を目指して頂点を取り行くべきだ。

 

……キャップが勝てたのも、1番人気になれたのも。

 

全部アイツ自身の実力だ。

 

すげぇのはキャップであって、俺じゃない。

 

アイツは俺みたいな三流のもとじゃなくて。

 

中央の……一流のトレーナーのもとで戦うべきウマ娘だったんだ。

 

…………。

 

そうだな、1番大切な事を忘れていた。

 

何勝手にテメェで決めてんだよってな……。

 

キャップの気持ち、聞かねぇとな。

 

聞いてくる。

 

中央行くか、ここに残るか。

 

たぶん、お前の言う通り残る道を選ぶ。

 

東海ダービー走るって決めてんだ。

 

だが……アイツの幸せを願うなら……。

 

俺の夢が、脚引っ張ってるなら……。

 

…………。

 

それも独善か。

 

救われねぇな。 お前も、俺も。

 

…………立派じゃねぇ、お前ほど。

 

地元走りを教えただけだぜ、俺は。

 

まぁでも。

 

ありがとよ、そんなんで一流って。

 

オグリキャップの唯一無二だと。

 

トレーナーなんだと、言ってくれて。

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