オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結)   作:ハヤモ

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シングレ後半の あらすじ
シンボリルドルフ→地方に走る芦毛がいたので中央にスカウトしたった

ゴールドジュニア出走決定後
オグリ、周りの気持ちを思ってみろって!
北原→夢か中央かで苦しんだ挙句、勝手にレースで"賭事"する
ベルノ→行かせたくないだろうトレーナーの気持ちを汲み取っていたのに…
マーチ→約束を反故されたと誤解、キレる
不良サン→行って欲しくない
オグリ→今まで走って勝てば喜んでくれたのに、今度はソレで悲しむ者がいると思うと…
リョウマツ→ただのファンだよ。

北原はルドルフに最初の電話にて、貴方には1番の選択を考えてと言われた後、彼女にとって1番の選択をとも言っています。
ハイレベルな中央に挑戦させたい気持ちと、夢を諦めきれない気持ち。
この所為で矛盾が発生、レースにオグリの意志を無視した"賭事"をする暴挙に。
オグリの為としつつ、結局は大きな溝が生まれてしまいますが……。


第31R「最善とは」

 

 

「リョ……リョウ! リョウマツ!」

 

 

ハッ!? 俺はナニを!?

 

周りを見やる、いつものグラウンドだった。

 

何バかのウマ娘が練習して、目の前には愛バのオグリキャップ。

 

 

「なんだかリョウ、ボーッとしてる。 疲れているのか?」

 

 

オグリに顔を覗き込まれた。

 

いかんな、気を遣わすなんて。

 

 

「あー……寝不足かもな、ハハハ……」

 

 

事実である。

 

魔王との攻防戦、哲学的な夢の所為で頭が疲れてるのよ。

 

 

「何かあったのか?」

 

 

いけない、話を打ち切ろう。

 

練習中だろうに、時間を割かせてはいけない。

 

 

「ベッドの上で激しい戦いを繰り広げたんだよ……」

 

 

そう、メールの攻防戦を。

 

 

「ほぅ? 詳しく聞こうじゃないか」

 

 

あれ、なんでオコグリになってるの?

 

超怖い顔してるよ、耳が背後に倒れてるよ。

 

 

「私が1番だ」

 

「あ、ああ……モチロンさ」

 

 

急に何の話だい。

 

オグリが1番に決まってるよ。

 

 

「それで、ベッドの上ではナニを?」

 

「何って……あー、決まってるだろ」

 

 

頭が回らない、適当に言って終わらそう。

 

 

「なんだったか……献花の話で……」

 

「喧嘩したのか? ベッドの上で? 誰と?」

 

 

誰……くそっ、思い出せん。

 

シンバル?

 

ションボリ……ルドルフ。

 

ションボリ……じゃなかった。

 

なんだっけ。

 

 

「はやく。 誰か聞きたいんだが?」

 

 

威圧感を放たれても眠気を飛ばす程じゃない。

 

回らない頭を回して、言葉を繋いだ。

 

ションボリ、しおれる……コレで良いや。

 

 

「萎れたルドルフ」

 

「萎れるほど激しくした?」

 

「激しかったな、参ったよ」

 

「……泥棒猫、いや泥棒ウマ娘には いずれ礼をしなければな……ふふふっ」

 

 

オグリ、性格変わってない?

 

黒いオーラまで出して、どうした。

 

 

「その前に、無節操な"主人"を躾けるか♪」

 

 

何事か呟かれたら。

 

 

「へ?」

 

 

次の瞬間には、天地がひっくり返り地面とディープキスを交わす羽目になった。

 

意識が更に遠くなり、危うく永眠しかけた気がするが、苦痛から現実に戻される。

 

 

「ぐふぅ……ッ!」

 

 

飛ばされて、眠気も飛んだ。

 

命は飛ばずに済んだ。

 

 

「1番は私だ。 だが2番を赦す訳じゃない、忘れないでくれ♡」

 

 

小さい頃から鍛えられていたとはいえ、慣れるもんじゃないな……。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

両者落ち着いて、土手に並んで座る。

 

学舎の喧騒も、目の前で走り回るウマ娘の足音も、遠く聞こえた。

 

風音だけが心地良く過ぎ去ってく。

 

なのに、どこか重たい空気。

 

理由なんて とっくに分かりきっている。

 

もう逃げるワケにもいかない。

 

この時間は、そういう時間なんだって。

 

 

「リョウ」

 

 

堰を切ったはオグリキャップ。

 

 

「リョウは、どう思うんだ?」

 

 

何が、とは言わない。

 

君達の問題だとも言わない。

 

オグリから聞いてきたんだ、向かい合おう。

 

特別でいたいなら、尚更に。

 

 

「逆に、オグリは どうしたかった?」

 

「私は……」

 

「東海ダービー。 走りたかったんだよな」

 

「…………」

 

 

コクリ、と頷く。

 

そうだよな。

 

マーチと東海ダービー、共に走ろうって約束したらしいし。

 

 

「私はッ!」

 

 

オグリは声を荒げて言う。

 

握り拳からは、あの時みたいに血を流して。

 

 

「私はキタハラに走り方を、勝ち方を教わった!

だから、私はキタハラの夢を叶えてやりたかった!

なのに……なのにッ!! マーチとの約束も……夢も果たせない……キタハラは私が……今度のレースに勝ったら中央行き、負けたら東海ダービーって。

どうして、そんな事を……夢を諦めた訳じゃないのは分かる。

ならどうして、最初から断らなかったんだ!」

 

 

嗚咽するオグリ。

 

天然でも、レースに賭ける情熱はウマ娘。

 

闘争心を侮辱されれば怒りも沸く。

 

その点、マーチが知ったらキレる、容易に想像がつく。

 

ダシにされた事、追いかけていた夢、目標を失った事。

 

勝つ為に走るのに、負けてしまいたい気持ちも混ざり、その苦悩を与えられた屈辱は図り知れない。

 

俺は落ち着くまで、よしよしと頭を撫でてやる。

 

今は そうするのが良い。

 

下手な慰めの言葉よりマシだ。

 

でも現実は来てしまう。

 

だから、オグリには決意して欲しい。

 

落ち着いてきたのを見計らい、俺は口を開いた。

 

 

「ジョーも夢は大切だった筈だよ」

 

「なら、なんで……」

 

「断らなかったのは、挑戦して欲しかったからだろうね」

 

 

いちトレーナーとして、才あるウマ娘として。

 

 

「カサマツじゃ、オグリが1番希望を皆に与えている娘だよ。

誰よりも速くて強いんだって。

でもトゥインクルシリーズは、そんな速くて強い娘が いっぱいいる。

だから中には地方を見下しているだろう。 ヒト、ウマ娘に関わらず。

そんな上の奴等を見返す為にも、地方にも……カサマツにもスゲーヤツがいるって、オグリキャップがいるんだって見せつけたかったのかもね」

 

 

それっぽい事を言い、納得して貰おうとする。

 

行くにしても、相応の理由があるんだって。

 

だが。

 

 

「それでも、夢。 叶えたかったな……」

 

 

心残りを呟いた。

 

やはり、俺なんかじゃ支えにならないか。

 

オグリはでも、と言う。

 

 

「カサマツの皆が応援してくれる。 なら、負ける訳にはいかない。

ジョーに、これが私だって見せつける」

 

 

……少しは悩みが晴れたかな。

 

 

「その意気だ。 それに」

 

 

オグリの特別で、ファンならば。

 

やる事は ひとつだ。

 

 

「なにより俺が応援する! それなら、本気で走るしか無いだろ!?」

 

「ッ! ああ! 勿論だ! 全力で応えるからな!」

 

 

笑顔で、勇ましい表情で答えてくれた。

 

そうだ。 それで良い。

 

お前は、オグリキャップなんだから。




最初との落差で風邪ひくかも知れない(今更感。
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