オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結) 作:ハヤモ
シンボリルドルフ→地方に走る芦毛がいたので中央にスカウトしたった
ゴールドジュニア出走決定後
オグリ、周りの気持ちを思ってみろって!
北原→夢か中央かで苦しんだ挙句、勝手にレースで"賭事"する
ベルノ→行かせたくないだろうトレーナーの気持ちを汲み取っていたのに…
マーチ→約束を反故されたと誤解、キレる
不良サン→行って欲しくない
オグリ→今まで走って勝てば喜んでくれたのに、今度はソレで悲しむ者がいると思うと…
リョウマツ→ただのファンだよ。
北原はルドルフに最初の電話にて、貴方には1番の選択を考えてと言われた後、彼女にとって1番の選択をとも言っています。
ハイレベルな中央に挑戦させたい気持ちと、夢を諦めきれない気持ち。
この所為で矛盾が発生、レースにオグリの意志を無視した"賭事"をする暴挙に。
オグリの為としつつ、結局は大きな溝が生まれてしまいますが……。
「リョ……リョウ! リョウマツ!」
ハッ!? 俺はナニを!?
周りを見やる、いつものグラウンドだった。
何バかのウマ娘が練習して、目の前には愛バのオグリキャップ。
「なんだかリョウ、ボーッとしてる。 疲れているのか?」
オグリに顔を覗き込まれた。
いかんな、気を遣わすなんて。
「あー……寝不足かもな、ハハハ……」
事実である。
魔王との攻防戦、哲学的な夢の所為で頭が疲れてるのよ。
「何かあったのか?」
いけない、話を打ち切ろう。
練習中だろうに、時間を割かせてはいけない。
「ベッドの上で激しい戦いを繰り広げたんだよ……」
そう、メールの攻防戦を。
「ほぅ? 詳しく聞こうじゃないか」
あれ、なんでオコグリになってるの?
超怖い顔してるよ、耳が背後に倒れてるよ。
「私が1番だ」
「あ、ああ……モチロンさ」
急に何の話だい。
オグリが1番に決まってるよ。
「それで、ベッドの上ではナニを?」
「何って……あー、決まってるだろ」
頭が回らない、適当に言って終わらそう。
「なんだったか……献花の話で……」
「喧嘩したのか? ベッドの上で? 誰と?」
誰……くそっ、思い出せん。
シンバル?
ションボリ……ルドルフ。
ションボリ……じゃなかった。
なんだっけ。
「はやく。 誰か聞きたいんだが?」
威圧感を放たれても眠気を飛ばす程じゃない。
回らない頭を回して、言葉を繋いだ。
ションボリ、しおれる……コレで良いや。
「萎れたルドルフ」
「萎れるほど激しくした?」
「激しかったな、参ったよ」
「……泥棒猫、いや泥棒ウマ娘には いずれ礼をしなければな……ふふふっ」
オグリ、性格変わってない?
黒いオーラまで出して、どうした。
「その前に、無節操な"主人"を躾けるか♪」
何事か呟かれたら。
「へ?」
次の瞬間には、天地がひっくり返り地面とディープキスを交わす羽目になった。
意識が更に遠くなり、危うく永眠しかけた気がするが、苦痛から現実に戻される。
「ぐふぅ……ッ!」
飛ばされて、眠気も飛んだ。
命は飛ばずに済んだ。
「1番は私だ。 だが2番を赦す訳じゃない、忘れないでくれ♡」
小さい頃から鍛えられていたとはいえ、慣れるもんじゃないな……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
両者落ち着いて、土手に並んで座る。
学舎の喧騒も、目の前で走り回るウマ娘の足音も、遠く聞こえた。
風音だけが心地良く過ぎ去ってく。
なのに、どこか重たい空気。
理由なんて とっくに分かりきっている。
もう逃げるワケにもいかない。
この時間は、そういう時間なんだって。
「リョウ」
堰を切ったはオグリキャップ。
「リョウは、どう思うんだ?」
何が、とは言わない。
君達の問題だとも言わない。
オグリから聞いてきたんだ、向かい合おう。
特別でいたいなら、尚更に。
「逆に、オグリは どうしたかった?」
「私は……」
「東海ダービー。 走りたかったんだよな」
「…………」
コクリ、と頷く。
そうだよな。
マーチと東海ダービー、共に走ろうって約束したらしいし。
「私はッ!」
オグリは声を荒げて言う。
握り拳からは、あの時みたいに血を流して。
「私はキタハラに走り方を、勝ち方を教わった!
だから、私はキタハラの夢を叶えてやりたかった!
なのに……なのにッ!! マーチとの約束も……夢も果たせない……キタハラは私が……今度のレースに勝ったら中央行き、負けたら東海ダービーって。
どうして、そんな事を……夢を諦めた訳じゃないのは分かる。
ならどうして、最初から断らなかったんだ!」
嗚咽するオグリ。
天然でも、レースに賭ける情熱はウマ娘。
闘争心を侮辱されれば怒りも沸く。
その点、マーチが知ったらキレる、容易に想像がつく。
ダシにされた事、追いかけていた夢、目標を失った事。
勝つ為に走るのに、負けてしまいたい気持ちも混ざり、その苦悩を与えられた屈辱は図り知れない。
俺は落ち着くまで、よしよしと頭を撫でてやる。
今は そうするのが良い。
下手な慰めの言葉よりマシだ。
でも現実は来てしまう。
だから、オグリには決意して欲しい。
落ち着いてきたのを見計らい、俺は口を開いた。
「ジョーも夢は大切だった筈だよ」
「なら、なんで……」
「断らなかったのは、挑戦して欲しかったからだろうね」
いちトレーナーとして、才あるウマ娘として。
「カサマツじゃ、オグリが1番希望を皆に与えている娘だよ。
誰よりも速くて強いんだって。
でもトゥインクルシリーズは、そんな速くて強い娘が いっぱいいる。
だから中には地方を見下しているだろう。 ヒト、ウマ娘に関わらず。
そんな上の奴等を見返す為にも、地方にも……カサマツにもスゲーヤツがいるって、オグリキャップがいるんだって見せつけたかったのかもね」
それっぽい事を言い、納得して貰おうとする。
行くにしても、相応の理由があるんだって。
だが。
「それでも、夢。 叶えたかったな……」
心残りを呟いた。
やはり、俺なんかじゃ支えにならないか。
オグリはでも、と言う。
「カサマツの皆が応援してくれる。 なら、負ける訳にはいかない。
ジョーに、これが私だって見せつける」
……少しは悩みが晴れたかな。
「その意気だ。 それに」
オグリの特別で、ファンならば。
やる事は ひとつだ。
「なにより俺が応援する! それなら、本気で走るしか無いだろ!?」
「ッ! ああ! 勿論だ! 全力で応えるからな!」
笑顔で、勇ましい表情で答えてくれた。
そうだ。 それで良い。
お前は、オグリキャップなんだから。
最初との落差で風邪ひくかも知れない(今更感。