オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結)   作:ハヤモ

33 / 35
ゴールドジュニア。
カサマツ編、ラストラン。
その時、オグリは。 皆は。

仕事事情もあり、頭が回らない時もある作者です……。
前半の寄り道とかね。 ならするな(殴)。
でも書きたい欲求には勝てなかったよ……。

違う会話展開を用意しました。


第32R「ゴールドジュニア」

ゴールドジュニア当日。

 

オグリがカサマツで走る、最後のレースになる可能性。

 

いや、そうなる。

 

場所は あの時と同じ、カサマツレース場。

 

昨日雨が降り、ぐちゃぐちゃの重バ場である。

 

泥臭く、走り辛く、怪我の危険だってある。

 

それはカサマツの皆の気持ちを表しているようにも感じた。

 

だけど。

 

 

「───そうだろう、オグリキャップ」

 

 

愛バを信じるだけだ。

 

トレーナーは、ジョーは どうだ。

 

まだ苦しんでいるか。

 

踵を返す。

 

……不良サンがいた。

 

正確には土産店に向かったのを見ただけ。

 

だけど嬉しくもある。

 

こういう勝負所の……それも通常とは違う緊張感に馴染みの顔が居並ぶのが分かるだけで、少しは気楽になるものだ。

 

それで つい ついて行く。

 

別に買うものもなし、それでも不良サンが何をするのかと思い。

 

 

「いつもより、混んでない?」

 

 

中は客で ごった返す。

 

これもオグリキャップの成した術か。

 

誇らしくもあり、寂しくもある。

 

特にアレ。

 

目立つように大小様々なオグリ人形が飾ってある事。

 

完成度が高く、中には ゆっ●り風まで。

 

それが多くの客の手に渡る。

 

ナニされてるかと思うと鳥肌モノだ。

 

おのれ運営……ッ!

 

 

「オグリが不特定多数に穢されてる!」

 

 

どけ! 俺は彼氏だぞ!

 

 

「ナニ言ってんだ、お前……」

 

 

嘆いていたら、ヤンキーウマ娘、略してヤンウマに捕まった。

 

いつものヤツだったので内心ホッとした。

 

 

「君か。 いつぞやは世話になったな」

 

「構わねぇよ、それで丸まったならな」

 

 

別に恨み節を吐く事はしない。

 

殴ったのだって、俺が悪かったし。

 

 

「で、ここで何してる?」

 

「店なんだから、買い物に決まってるだろ」

 

 

ごもっとも。

 

顎で指された方を見ると、いつかのギャルがオグリ人形を手に持っていた。

 

 

「……ノルンのヤツ」

 

 

呆れた様な声を出すヤンキー。

 

俺もなんか、同じ気持ちかも知れん。

 

対して側にいたチビメガネが、俺らを代表してツッコミを入れる。

 

 

「デレが顕著」

 

 

それな。

 

 

「うっさい!」

 

 

恥ずかしそうにも、キレるギャル。

 

うーん、ギャップ差。

 

この勢いのまま、ギャロップしそうなまである。

 

だが一方で……。

 

 

「かくゆう チビもナニ持ってんの」

 

 

チビメガネも、両手に団扇を持つ。

 

それぞれオグリキャップ、フジマサマーチと書いてある。

 

 

「応援するんだから必要だろ」

 

「そうか……俺がやったら殺されそうだよ」

 

 

彼女に格好付けた後、他の女を応援してたら……ねぇ?

 

観覧席が血の海になるよ?

 

両方でもダメです。

 

 

「あー……」

 

 

分からないなら良い、と言いたいが。

 

チビメガネは賢いが故か理解してしまう。

 

 

「でもさ、リョウマツさんも悪いじゃん」

 

「なんも言えねぇ」

 

 

仕方ないね。

 

 

「素直にオグリを応援しなよ。 そのつもりでしょ」

 

「モチロンさぁ!」

 

 

笑顔でグッジョブしたら、ギャルが八つ当たり。

 

 

「ウザッ」

 

 

ギャルから渾身の一撃!

 

やめて!

 

ガラスのハートが傷付くよ!

 

 

「おい、そろそろ観覧席いかねーと」

 

 

助け船がきた。

 

ヤンキーが1番マトモに見えて来た俺は病気。

 

 

「会計済ませてくっからー」

 

 

呑気な声で、しかし早歩きでレジへ向かうギャル。

 

それを見送るヤンキーとチビ。

 

 

「早くしろよ」

 

 

さて。 俺も行くか。

 

 

「じゃあ、俺も用を足してくる」

 

「何の用?」「買い物か?」

 

「そりゃ男の用ってたらション……」

 

 

刹那、顎に強烈な痛み。

 

 

「ゴフッ」

 

 

次には宙を舞った。

 

ヤンキーによるスカイアッパーだと知ったのは、床にディープキスしてからだった。

 

不良で花を恥じらう乙女ってか。

 

なら拳で語るなよ……痛いのは嫌だよ。

 

 

「次言ったら、その口縫い合わすぞ」

 

「裁縫出来るのかよ……?」

 

「減らず口に付き合うより楽しそうだからな……」

 

 

青筋立てて、手をパキポキしないで。

 

 

「やめろよ、チビにチビるぞ。 オマケで遺伝子も付けちゃう」

 

「死にてーらしいなァ!?」

 

「サイテーだね」

 

 

チビは軽蔑の目。

 

ヤンキーは顔を真っ赤にして、怒れる拳を振り上げる。

 

が、周りの目を気にして すぐ引っ込めた。

 

 

「振り上げたモノを仕舞うとか、シャバくね? 俺は仕舞いたくても仕舞えねぇーのに」

 

「誰の所為だよ!?」

 

「下ネタ連発とか。 見損なうな」

 

 

ほら、すぐそうやって見下す。

 

これだから不良は嫌いだよ。

 

 

「はっ! 土下座して敗北宣言しな!」

 

「オグリに言い付けるわ」「同じく」

 

「調子コキました、すいません、ごめんなさい 何でもしますから」

 

 

土下座して敗北宣言。

 

土産店の中心でかまし続けてるので、そろそろ店員に怒られそう。

 

 

「ん? 何でもするって言ったよね?」

 

 

今度は悪そうな笑み。 チビが!

 

 

「ロリコンだと思われたくないんで無理」

 

「私の事、そんな目で見てたのか……恥ずかしくないの?」

 

「下ネタだとナニかを妄想しているお前らこそ、恥ずかしくないの?」

 

「やっぱオグリに言おう。 あとマーチにも」

 

「二股ロリビッチに言われたくない」

 

「それ、結構重い言葉だから!?」

 

「上等じゃん」

 

 

ワイワイして時間を浪費するバカ騒ぎ。

 

で、結局ギャルが戻ってきて いつもの面子になる。

 

 

「何の話?」

 

「聞いてくれよ、このクズがね……」

 

「時間無いんじゃないの? 早く席着きなよ、俺も用事あるんだよね」

 

 

水に流しに掛かる。 二重の意味で。

 

 

「……チッ、まぁ良い。 互いに応援しに来てんだ、ちゃんとしようぜ」

 

「おうよ」

 

 

そう言って喧嘩を止め、仲良くオラつきながら観覧席へ向かう事にする。

 

 

「ところでさー」

 

 

ギャルが話しかけてくる。

 

胸元に、オグリ人形を大切に抱えて。

 

 

「オグリが中央行くって……ガセでしょ?」

 

 

……行って欲しく無いのね。

 

ファンか、君も。

 

 

「ガセだったら、良かったんだが」

 

 

これで魔王がドッキリ大成功の看板を下げて来たら、逆に引ったくって殴るまである。

 

正義執行、問答無用。

 

 

「マジなの……?」

 

 

哀しげに言うギャル。

 

対して信憑性を高めるような話をするチビとヤンキー。

 

 

「さっき中央の制服連中を見掛けたよ」

 

「もし本当なら、挑戦して欲しい気持ちもあるけどなぁ」

 

「うるっさい!! 私は東海ダービーで ぶっちぎるオグリが見たいのよ!!」

 

「過激派かよ」

 

 

ギャルがキレて2バが呆れる。

 

まぁ……でもさ、気持ちは分かる。

 

俺も見たかった。

 

北原の夢。

 

それを叶えるオグリキャップ。

 

だがヤンキーが言った様に、挑戦するオグリも見てみたい。

 

そして……オグリは今日、それを決める。

 

きっと勝つ。

 

それのみを信じる。

 

それがファンとして、特別枠として、ひとつの礼儀。

 

全力で応援する。 その為にも。

 

 

「ごめん用足してくるわ、席取っといて」

 

「情けなく無いのかよ」

 

「何よ、こんな時に」

 

「ノルンは知らなくて良いの」

 

 

ナニか聞こえたが聞こえないフリした。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

コトを終わらせてレース場へ辿り着いた時、オグリとベルノはコース内に踏み入っていた。

 

関係者だと無理言って立ち会わせて貰う。

 

出走しないベルノもいるし。

 

ウマ娘だから良いとか、理由にならないと反論……我儘を通す。

 

その点、ジョーはこの場にいない。

 

観覧席を見る。

 

いた。

 

1番前で、最初の頃より死んだ目で。

 

ジョー。

 

お前、またレースから目を背けて。

 

隣にはムサカさんがいた。

 

さぞ、イラついてる事だろう。

 

いちトレーナーとして、身内として。

 

だが、今はオグリだ。

 

 

「オグリーッ!」

 

 

俺は駆け寄った。

 

 

「リョウ! 見に来てくれたんだな!」

 

「当たり前じゃん、彼女の大一番だぞ!」

 

「……お邪魔なら、外しますよ」

 

「いや大丈夫だから。 それと外すと言いつつハンマー構えるの止めて。

それは外さず当てる気だろ、マジヤメテ」

 

 

ベルノが無表情で、どこからともなくハンマーを見せてきた。

 

怖い。

 

ウマ娘のパワーで殴られてみろ、花が咲くぞ。

 

 

「暴力良く無い」

 

 

庇う様に抱きついてくるオグリ。

 

嬉しいけどさ、今はヤメテ。

 

ベルノからドス黒いオーラが漂い始めたから。

 

そこに、別の声が流れてくる。

 

見ればもう1バの芦毛、マーチだった。

 

 

「…………そうだなオグリキャップ、お前をぶったところで変わりはしない。

だがな、言いたい事ならあるぞ」

 

「マーチ?」

 

 

耳が倒れて、激オコマーチが立っている。

 

元々怖い目付きは更に怖くなっている。

 

抱き着き行為に怒ってるワケじゃない。

 

片手には新聞。

 

見出しには大きく、オグリキャップの中央行きの記事。

 

オグリの胸倉を掴むと見せつけながら、怒声を放つ。

 

 

「これは なんだ!! 東海ダービーは どうした!?」

 

「マーチさん! 誤解です!」

 

 

ベルノも、突然のシリアスに対応しようとシフトする。

 

が、マーチには届かない。

 

……マーチには怒って良い権利がある。

 

そして、オグリと俺は聞く義務があるんじゃないか。

 

例え、トレーナーの所為だとしても。

 

だから黙った。

 

弁解なんて何の詫びにもならん。

 

 

 

「私との……約……束……ッ」

 

 

声を詰まらせ、涙を流し始めるマーチ。

 

ウマ娘として、闘争心を裏切られた哀しみと怒り、憎しみが混ざり合った涙だ。

 

 

「バカに……しやがって……ッ!」

 

 

やっと言った。

 

苦しみが伝わり、聞いていたベルノもウマ娘としてか、名を溢しながら同情する表情を浮かべる。

 

これは……俺が謝っても仕方なく。

 

どんな言葉を掛けてすら、意味が無い。

 

オグリを見る。

 

もうレースは、戦いは始まってるんだと。

 

 

「すまない」

 

「謝って済むか!」

 

「そうだな、私は約束を破った。 もう謝って済む話じゃない。

だから、これが……このレースで」

 

 

オグリは逃げない。

 

こんな事になっても、いや。

 

こんな事だからこそ。

 

 

「私と走ってくれ」

 

 

真っ直ぐな目で、視線を逸らさず、マーチに言う。

 

 

「あの時と同じ様に、同じこのレース場で、最高のレースをして欲しい。

私と、勝負して欲しい。 それがせめての償いにしたい」

 

「ふざけやがって……ッ!」

 

 

約束を反故された挙句、ダービーの代走の様に話すオグリに、マーチはギリッと歯軋りした。

 

 

「……なら私が勝つ!

ここでも東海ダービーでも、貴様は私に負けるんだ!」

 

 

クワッと。

 

凄い剣幕で捲し立て、マーチは宣言する。

 

 

「貴様を中央になど行かせない!」

 

 

オグリは逃げない。

 

例え発端が どうであれ。

 

健全な勝敗で無いにしても。

 

それでも、それこそが勝負の世界である。

 

それが、レースなのだ。

 

受けて立つ。

 

 

「負けるつもりは無い。

悲しむヒトがいても、喜ぶヒトだっているのを知っている!

なにより応援してくれてるヒトがいる限り、私は全力で走ると決めたんだ!」

 

 

オグリの顔は未だかつて無い程、真剣そのものであった。




会話内容の変更は、主人公と話をした事による気持ちの変化です。
*オグリキャップは決意に満たされた。

ファンから こんな事言わないだろ等、ツッコミもあるやも知れませんが……(ガクブル。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。