オグリが心配で、スタッフにさせて貰った。(完結) 作:ハヤモ
なるべく漫画通り過ぎないようにしたいところ。
指摘を受け、一部単語の修正と厩務員の言葉を排除しました。
お恥ずかしい……知識不足で申し訳ありません。
?「ニワカ乙ww」
?「流行に無理矢理乗っかるなm9」
?「愛が足りない^p^」
?「辞めたら この作品?(無慈悲意見)」
ハヤモ氏:orz
ですが皆さまの意見、感想、お気に入り登録が日々を過ごす励みになります。
今後とも宜しくお願いします。
走れる。
立つ事も出来なかった私が、今は走れる。
それだけの事実が、価値が代え難く尊いものだ。
それも お母さんが毎日 膝を何時間もマッサージしてくれたから。
なにより、リョウが いつも居てくれたから。
リョウは同じアパートに住む、少しだけ年上の男の子。
私の側にずっといた。
優しくて、もうひとりの お母さんのようで、料理人のような、親友のような、家族のような。
一緒にいると安心して、体が ぽかぽかする。
どんな記憶の中にも、必ず彼が思い浮かぶ。
それ程までに深い絆が間にあった。
立てない時、元気が出る言葉で励ましてくれた。
歩けるようになったら、手を取って外の世界に連れ出してくれた。
お母さんが仕事で居なくて泣きそうな時は慰めてくれた。
他のヒトより遅くなってでも、一緒に走ってくれた。
私の為に料理を作ってくれた。
頑張りすぎて動けなくなった時は、おぶってくれて、一緒に夕陽を眺めた。
物心つく前から、リョウは側にいてくれた。
いつの間にか脚が良くなって、彼を置いてしまう程の速さを手に入れても、私が望めば手を取ってくれる。
リョウは私と共にある。 これからも、この先も。
道に迷っても、これだけは間違いようが無い。
そして、私は この関係のままで良いと思っていた。
私がカサマツトレセン学園に行く事になった。
リョウはウマ娘じゃない。 ヒトだ。
当然、生徒として行く事は叶わない。
全寮制になるし、会える時間は うんと減る。
お母さんと離れるのも寂しいけど、リョウと会えなくなるのは もっと寂しかった。
なんなら、引き止めて欲しかった。
行くなって。
そうしたら、私は学園に行かなかったかも知れない。
それだけ大切な半身なんだ。
ところが、リョウは行動に出た。
トレセンの門を叩いたんだ。
ウマ娘にでもなるのかと、変な事を考えたが、そうじゃなかった。
なんとスタッフとなり、共に学園生活を送るのだという。
驚いた。
まさか、そこまでして一緒にいようとしてくれるなんて。
同時に嬉しかった。 とても喜んだ。
一緒にいたいという想いが、私だけじゃないって。
そんな彼との学園生活は始まったばかりだけど。
さっそく不満がある。
食堂にリョウがいて、食べ放題だと聞いたから、入学式に遅刻しないで来たのに。
ちょっと お代わり しようとしただけで、思いっきりシャッターを閉められた。
お代わりは、出来なかった。
───何故だ。
思わず声に出た。 涙もでた。
あれだけ私を期待させて、ここで裏切るなんて酷いじゃないか。
哀しみに暮れ、両肩を震わす私に、ベルノライトという子が ご飯を分けてくれた。
ご飯をくれるなら、良い子に違いない。
腹より心が満たされた。
さっそく友だちになった。
その後、外を走って汗をかいてから寮に戻る。
タイムが昨日より落ちていた。
ペース配分間違えたか? 修正しないと。
「テメェ無視してんじゃねぇ!!」
突然、誰かに胸倉を掴まれた。
「話し掛けてんだから返事くらいしろや! 愛想の無ぇヤロウだな!!」
……?
なにか怒っているのか?
よく分からない。
「ちょっと! やめなよ!」
「うるさいチビ」
「そこは お互い様だよ!?」
今度はベルノとメガネの子がいがみ合っている。
どうしたんだ。
「泥ウサギちゃんさぁー……」
携帯を弄っている子が話しかけて来た。
さっきは話を聞かず怒られたようだし、今度はちゃんと聞こう。
「あーしと同室だったよね? けど あーし荷物多くてさぁ……まだ全然片付いてないんだぁ」
そうなのか。 つまり。
「まぁ要するに、アンタの寝るスペースなんて無いワケよ。 つーワケで悪いんだケド、泥ウサギちゃん」
そして先生が教えてくれるように、丁寧に寮内地図の『物置部屋』をコンコン叩いて見せてくれた。
大きい!
2部屋分はある!
しかも個室か!?
「今夜はココで寝てくれる?」
分かった! 行こう!
そう思ったら、またベルノが怒る。
「───ッ!!」
止めよう。 原因は分からないけど。
「いいかげんに……」
バッ。
両手をふたりの前に出して、制止。
「何があったか知らないけど、ケンカは良くない。 みんな仲良く!」
キリッと止めた。
分かってくれたか。 もう争う様子は無い。
良かった。
私は行くべき所に行くだけだ。
「部屋の件は了解した。 片付け頑張って、それじゃ」
物置部屋を開ける。
広い!
個室だ! こしつを賜ってしまった!
私は今、感動している!
夢の1人部屋……!
ふかふかの布団! 枕!
蛍光灯まである……!
すごい! なんて贅沢!
天国かここは!?
寮は個室! ご飯は美味しい上に食べ放題!
ああいや、リョウには小言を言いたいけど。
でも友達は みんな良い娘達ばかりだ!
カサマツ学園に入学させてくれて ありがとう……お母さん……リョウ……。
「オ……リ。 オグリ。 オグリキャップ」
聞き慣れた声が、私を呼んでいる。
コロッケの良い匂いもする。
うーん、でも寝てるんだ。 このまま……。
「オグリキャップ! 起きろハツラツ!」
ハツラツ!?
幼き記憶で、思わず飛び起きる。
「ごめんな。 でも今のうちに会わないとさ」
見やれば頭が段ボールのヒトがいた。
夢を見ているのか?
「段ボールが喋ってる」
「寝ぼけてるのか。 俺だ、リョウマツだよ」
頭を外すと、下から頭が生えてきた。
見慣れたリョウの顔だった。
「リョウは段ボールだったのか?」
「口籠をつけたろうか? 頭に被っていただけだよ」
「なんで?」
「素顔がバレたら大変だろ。 その、夜の女性寮に男がいるとか」
そういうものだろうか。
十分、変なヒトに見えるが。
リョウが言うなら、そうなんだろう。
納得する私に満足してか。
リョウは服を渡してきた。
予備のジャージと、例のアレだ。
「これを渡しにきたんだ」
「腰布だ」
「制服だコラ。 明日から、これを着て登校するんだ分かったね?」
むぅ……恥ずかしいけど約束したから。
私は渋々受け取った。
「と、本当なら以上なんだが」
「うん。 お休み」
「そうしたいが……なんで、物置部屋で寝てたんだ。 お前の部屋を覗いても、別の娘がひとりだけいるし」
「片付いてなくて私の寝るスペースがないそうだ。 代わりにココを賜った」
説明すると、リョウは目を細める。
ちょっと怖い。
こういう時、リョウはケンカするのを見てきた。
それはダメだ。
私は耳を後ろに倒しつつ、阻止する事にする。
「へぇ? そりゃ、あの部屋にいたギャルなウマ娘が言ったのか?」
「だ、ダメだぞ! 何かしようとしたら、したら、ご飯を満足にくれないと言いふらす!」
「お前が食い過ぎなだけだ。 5年分の備蓄が消し飛びそうだぞ」
「大袈裟だ」
「マジだ。 少しは遠慮しろ」
「じゃあ、リョウがココに来た事を皆に言う!」
ここでハッとした。
そんな事をしたら、今度はリョウが酷い目に遭う。
どっちに転んでも、私は窮地だった。
でもリョウは察してくれたのか。
溜息をついて、引いてくれた。
「分かった。 ただ聞いただけだよ」
「信じるからな」
「そうしてくれ。 で、話変わるが」
な、なんだ?
身構える私。
「敷布団はちゃんと広げて使え。 寝る前に電気は消しなさい。 てか風呂入ったか? 歯磨いたか? 汗掻いたままだと臭うぞ。 その泥だらけのジャージは着替えろ、俺が洗濯してくる。 寝巻きも持ってきてやる、靴も新調してくる、またボロボロだからな」
いつもの世話好きなリョウだった。
私は安心した。
「風呂入ってくる」
「そうしてくれ。 流石にソコに俺は入れない」
「ジャージ、渡す」
「ここで脱ぐな!?」
脱ごうとしたら、赤面して慌てるリョウ。
昔は平気で脱がしてきたのに。
でも、この変化は寂しくはない。
何故だろう。
面白くて、嬉しくすら感じる。
そう思うほど、笑みが溢れて。
ますます赤くなるリョウが可愛かった。
明日は、なんだったかな……。
…………。
まあ良いか。
明日になれば分かる。
次回、レース回。
北原さんを出したい。 ベルノライトちゃんも。