pixivでダメだったやつの供養です。
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(ユーザー名は同じです)
「ん……」
頭上のカーテンの隙間から白い微粒に取り巻かれた日の光が当たり、彼女の頭を徐々に覚醒させる。
遠くの方で雀のさえずりが聞こえた。
天気は快晴のようだ。
きっと同じように疲れているであろう彼を起こさないよう、ゆっくり起き上がる。
服を着ようとも思ったが、このままシャワーを浴びた方が勝手が良い。
そっと彼の上から身体をどかし、ベッドから降りてぐっと手を上にあげる。
全身の筋肉もしっかり起こしたところで、彼女―――メジロライアンは風呂場に向かった。
◇◇◇
身体を拭いているところで、彼も起きてきたようだ。ちっとも目は覚めていない様子で、頭を掻きながらこちらに向かってくる。
「おはようございます!あ、あの、またシャワーお借りしました!」
「んー」
一応の挨拶はしてみたが、覚醒しきってない彼からは適当な返事が返ってくる。
自分と同じように彼もベッドからそのままシャワーに直行した。
とりあえず服を着る。一瞬迷ったが、今日くらい日課である朝のランニングをサボってもバチは当たらないだろう。生憎と、いつものマラソンコースを走る体力は無さそうだ。
ともなれば、食事。彼がシャワーを浴びている間に朝食を用意してしまおう。簡単なものなら作れる。
こんなだらだらとした日常。
彼女にとって、これ以上の幸せは無いかもしれない。
トレセン学園に入ったはいいものの、自分の夢だとか目標が判然としなかった当時。
そういう熱いものを他の子から見せられると、自分はどうして走ってるのかよくわからなくなっていた。
そんな時に、トレーナーと出会った。
自分のトレーナーになったわけでもないのに、親身になって相談に乗ってくれた。
ただがむしゃらに体を鍛えるだけだった自分に道を示してくれた、と言っても過言ではない。
「レースで勝ちたい」なんて単純な夢だけど、見つけられなかった。そんな自分の中に隠れていた闘志を、トレーナーは引っ張り出してくれたのだ。
ようやく正式に担当してくれることが決まってからも、トレーナーは変わらず隣にいてくれた。
マックイーンに勝てなくて、悔しさを感じた時
思い詰めて思い詰めて、食事すら忘れてしまった時
自分を特集する取材に戸惑っていた時
“本物”の実力者と対峙した時
「あなたがいないと生きていけない」なんてよく聞く文句があるが、彼女も半ばそんな状態だったのかもしれない。
――――――――――――――――――
「っと、そろそろいいかな」
たしか、目玉焼きは半熟が好きだと言っていた。
ふと思い出して思い火を止める。
風呂場から物音がする。ちょうど彼も出てきたようだ。
テーブルに二人分の食器を並べながら、ふと懐かしむ。
そういえば、
一番「苦手」だった、恋愛
ある意味、彼が克服させてくれたと言ってもいいだろう。
自分の専属トレーナーになるようお願いした時、
『あたしだけのトレーナーさんに、なってもらえませんか!?』
直後に、愛の告白のように思えて赤面し、忘れてくれと騒いだ。
でも、今は
「えへへ…」
そんなことを考えていたら、意図せず口角が上がってきた。
まさかここまでになるとは。
そんなことを思いつつ左手薬指に目を落とす。
少し傾けると、陽を反射させ光ってみせた。
「お、朝ごはん作ってくれたの?」
すっかり着替えてきた彼が顔をのぞかせる。
「はい!もう準備は出来てますよ!」
「ありがと〜」
彼が席につき、彼女も席につく。
いただきますと声を揃え、トーストを持ち上げる。
この幸せな時間を、口に含んだパンと一緒に噛み締めるライアン。
美味しそうに食べる彼を見ると、思わず微笑んでしまう。幸せすぎて罪悪感すら感じてしまうほどだ。
でも、この幸せは誰にも邪魔されることなんて無い。
独り占めできる。
この先も、ずっと。
「そういやどうしたんだ、変な座り方して」
「え!?いや、その…筋肉痛で……」
「はっはっは、やっぱりライアンですら筋肉痛になるか!」
「……もう、からかわないでくださいよう」
「骨盤底筋はちゃんと鍛えられたか?」
「〜〜〜〜〜〜ッ!ト、トレーナーさんってばぁ!!」
「あはははは!ごめんごめん」
「…こうなったら!午後はあたしのトレーニングにみっちり付き合ってもらいますからね!!」
「げ、ちょ、ちょっと流石にそれはきついって!俺だってもう疲れてるし…」
「だめです!すぐへこたれない体力を付けるためにも、たくさん筋トレしてもらいますから!」
「ライアン〜!ごめんって〜!」
「あたしをからかった罰です!さあ、食べ終わったらストレッチから始めますよ!!」
「しんじゃうってば〜!」
幸せな時間は、今日も流れていく。