遊戯王 リスペクトストーリー   作:tbrh

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デュ↑エル↓だぁ!!→
描写を色々盛っていたら想定より随分長くなってしまったので更に分割してしまいます。




第四話 戦う意味

屋外デュエル場で、二人のデュエリストが向き合っている。

一人は遠野悠。デュエルアカデミアセントラル校に新たに赴任してきた、実技教師である。

もう一人は火野紅璃。デュエルアカデミアセントラル校に今年入学した生徒である。

デュエルディスクを構えた二人の間にはカードやモンスターがあり、デュエル中であることが分かる。その周囲を囲み、デュエルを見守る生徒達は皆怪訝な表情でモンスター達を見ていた。

先攻だった紅璃のターンが終了し、遠野にターンが移る。

 

「見事な展開だ。まさか初見で、そのデッキの力をここまで引き出すことが出来るなんて」

 

感嘆の声を上げる遠野とは裏腹に、生徒達の反応は芳しくない。しかし、一部の生徒達はその盤面に遠野と同じ感想を抱いていた。

 

「サイバー・ドラゴン・インフィニティは一ターンに一度、カードの効果が発動した時、オーバーレイユニット一つを取り除くことでその発動を無効にして破壊することができる。セイクリッド・プレアデスは互いのターンに一度、オーバーレイユニット一つを取り除くことでフィールドのカード一枚を対象に取り、手札に戻すことができる。サーチしたサイバネティック・オーバーフローは手札、墓地のサイバー・ドラゴンを任意の枚数除外することで、除外した数まで相手フィールドのカードを破壊することが出来る。つまり、私のフィールドには、相手の動きを妨害する三つの要素が揃っている」

 

目を細め、紅璃はフィールドのカード効果を逐一説明してみせる。

案の定それは、生徒達の盛大な不興を買った。

 

「何やってんだよ紅璃ぃ!?」

 

困惑する者。

 

「先生相手になんて酷い……」

 

動揺する者。

 

「あ、あれ? でも今使ってるデッキって先生の……」

 

混乱する者。

反応は様々であるが、中でも多かったのは。

 

「そんなインチキカード使って一方的にデュエルして、楽しいのかよ!」

 

「そんなんじゃ、相手も満足できねぇぜ……」

 

「あーあ。つまんねぇデュエルになるな……」

 

その様な生徒達である。

 

(やっぱり、こうなるか)

 

細めた瞳を完全に伏せ、紅璃はこの場に立ったことを後悔し始めた。

遠野の口車に乗って始めてしまったこのデュエルだが、例え先生のデッキだったとしても、サイバー・ドラゴンだったとしても、生徒達の心に響く事はなさそうだ。やはりこのまま、アカデミア生活は無意味に過ぎていくのだろう。

そんなことを考えた時である。

 

 

パァン!

 

 

空気を打つ、鋭い打撃音。

驚いた皆が音の方を向くと、そこには叩き合わせた両掌に涙目で息を吹きかける遠野の姿があった。

 

「いったたたた……思いっきりやり過ぎた。でも!」

 

気を取り直して笑顔を浮かべ、デッキに引っかけていた手札を再び手に持ち、彼は言うのだ。

 

「そうでもないさ」

 

事も無げに言い放たれたその台詞に、生徒達はおろか盤面を築いた紅璃も目を丸くした。

 

「君がこのデッキにかけている信頼がよく分かるよ。そんなに本気で自分のデッキに立ち向かうなんて、中々出来ることじゃないと思う。けど、それは間違いじゃない」

 

そして笑顔のまま、紅璃の赤茶色の瞳を真っ直ぐに見据えた。

 

「それを今から見せよう。僕のターン、ドロー! メインフェイズ。僕はエクストラデッキ六枚をランダムに除外し、手札の強欲で金満な壺を発動。インフィニティの効果を使うかい?」

 

強欲で金満な壺を通せば一枚分のアドバンテージを獲得される。しかし、これを止めても手札は五枚。

 

「(こっちには三妨害もある。それにあの自信……ここは、温存しておいた方がいいかな)インフィニティの効果は使わない」

 

多少の迷いはあったが、紅璃はその効果を見過ごすことにした。

 

「それなら、強欲で金満な壺の効果でカードを二枚ドロー!」

 

そして遠野は、引いたカードの一枚を手に取った。

同時に、紅璃のフィールドのサイバー・ドラゴン・インフィニティが光に包まれ消えていく。

 

「!? これはっ……」

 

光を引き裂き現れたのは、黒い甲殻と灼熱の身体を持った、星を破壊する宇宙生物。

 

「サイバー・ドラゴン・インフィニティをリリースして、壊星怪獣ジズキエルを特殊召喚させてもらったよ」

 

驚く紅璃に、遠野はしたり顔で応える。

 

「攻撃力3300のモンスターを相手に渡すなんて、どういう事なんだ」

 

「相手をリスペクトするための構築……とか?」

 

その呑気な会話に、流石の遠野も苦笑を浮かべた。

 

「あはは……それは素敵な解釈だけど、ちょっと違うかな。とにかく、これでサイバー・ドラゴン・インフィニティの効果無効はなくなった。続けていくよ! 僕は手札の、おろかな副葬を発動。デッキの魔法罠一枚を墓地に送ることが出来る。僕が墓地に送るのは、ブレイズ・キャノン・マガジン。そしてブレイズ・キャノン・マガジンの効果発動! デッキからヴォルカニック・モンスター一体を墓地に来ることが出来る。僕が墓地に送るのは、ヴォルカニック・バックショット。そしてヴォルカニック・バックショットの効果発動! 相手ライフに500のダメージを与え、更にこのカードがブレイズ・キャノンの効果で墓地に送られていた場合、デッキのヴォルカニック・バックショット二枚を追加で墓地に送り、相手フィールドのモンスター全てを破壊する!」

 

地響きと共に地面を割り砕き、炎の奔流が吹き出す。墓地のブレイズ・キャノン・マガジンによって地面に送り込まれたバックショット達が一斉に起爆し、その衝撃が相手に襲いかかったのだ。

 

「ただ破壊されるくらいなら……! 私はサイバー・ドラゴン・コアを対象にセイクリッド・プレアデスの効果をチェーン発動。サイバー・ドラゴン・コアを手札に戻す」

 

「そこに気づくとは、流石だね。なら僕も手札から速攻魔法、緊急ダイヤをチェーン発動! 相手フィールドのモンスターが自分フィールドのモンスターより多い時、デッキから地属性・機械族のレベル4以下のモンスターとレベル5以上のモンスター一体ずつを特殊召喚する! ただしこのターン、僕は機械族モンスター以外で攻撃することはできない」

 

「プレアデスの効果をすり抜けての発動とは、そっちこそ抜け目ない。更にチェーンして、手札の増殖するGの効果を発動。このカードを手札から捨てることでこのターン、相手がモンスターを特殊召喚する度に私はカードを一枚ドローする」

 

一気にチェーンが組まれ、カードの処理が始まる。

 

「な、何がどうなってんだ!?」

 

「えーっと、チェーンは逆順処理だよな。だから先ずは増殖するGの効果が適用されて……」

 

紅璃の足下に、黒光りする名前を言ってはいけないあの虫が大量に現れる。容赦の無いソリッドビジョンの演出に何人かの生徒が悲鳴を上げた。

 

「次に緊急ダイヤの効果でデッキからモンスターが特殊召喚されるだろ?」

 

遠野が選択したモンスターは無頼特急バトレイン及び弾丸特急バレット・ライナー。フィールドに現れた二組のレールを走り、巨大な列車達が姿を現わす。

 

「増殖するGのドローはチェーンとか関係ないからこの時点でドローして……」

 

ソリッドビジョンを視界に入れないよう細心の注意を払いながら、紅璃がカードをドローする。

 

「セイクリッド・プレアデスの効果でサイバー・ドラゴン・コアが手札に戻るんでしょう?」

 

爆炎に飲まれながらもセイクリッド・プレアデスは仲間を救わんと手を翳す。それによって生じた光の柱が、サイバー・ドラゴン・コアを上空に引き上げていった。

 

「皆凄いね! よく出来ました! そして最後に漸く、ヴォルカニック・バックショットの効果が適用される。紅璃さんのフィールドのモンスターを全て破壊した後、500ポイントのダメージを与えるよ!」

 

爆炎が壊星怪獣ジズキエルとセイクリッド・プレアデスを焼き尽くし、飛び散った火の粉がライフポイントにまでダメージを与える。

 

 

紅璃 LP7500

 

 

「そして一連のチェーン処理が終了した後、墓地に送られたもう二体のヴォルカニック・バックショットの効果が発動。それぞれの効果で、更に500ずつのダメージを与える」

 

 

紅璃 LP6500

 

 

「盤面が……しかも、先生のフィールドにはモンスターが二体も残っているなんて」

 

「まだまだ行くよ! 僕は墓地のモンスター全てをデッキに戻し、手札から究極封印神エクゾディオスを特殊召喚!」

 

黒褐色に染まろうとも、その姿を知らぬ者はない。伝説のモンスターを模した巨大なモンスターがフィールドに現れる。そしてそのレベルは10。遠野の使うデッキのことを誰よりもよく知る紅璃には、絶対に対処しなければならない相手である。

 

「バレット・ライナーがいる以上、絶対に通せない。罠カード発動、サイバネティック・オーバーフロー。墓地のサイバー・ドラゴン・ヘルツとサイバー・ドラゴンを除外し、究極封印神エクゾディオス、弾丸特急バレット・ライナーを破壊する」

 

地面を割って現れたサイバー・ドラゴン達が、その口腔から一斉に光線を放つ。限界以上の出力で放たれたそれは自身より遙かに強大なモンスター達を破壊するも、自分自身をも完全に崩壊させた。

 

「流石にこれで……」

 

「いいや、君のデッキはまだ動けるよ。手札からヴォルカニック・ロケットを通常召喚し、効果発動。デッキからブレイズ・キャノン・マガジンを手札に加える。そしてフィールド魔法、転回操車を発動!」

 

爆撃によってボコボコにされた地面がコンクリートに覆われ、放射状に伸びる線路が二人の足下を走る。それぞれの線路は格納庫へと通じ、その中で列車モンスター達が今か今かと出番を窺う。

 

「手札一枚、ブレイズ・キャノン・マガジンを墓地へ送り、転回操車の効果発動。デッキからレベル10機械族モンスター、深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイトを手札に加える」

 

格納庫の一つに発進準備OKのランプが点る。

 

「さて、攻撃することはできないし……ドローされるのは痛いけど、ここは守りを固めるとしよう。丁度良いモンスターもエクストラデッキに用意してるみたいだしね。僕はレベル4のヴォルカニック・ロケットと無頼特急バトレインでオーバーレイ! 励輝士ヴェルズビュートをエクシーズ召喚!」

 

現れたのは輝く鎧と羽を纏った、昆虫の様な騎士。

 

「カードを一枚セット。これでターンエンドだよ」

 

 

伏 伏せカード

励 励輝士ヴェルズビュート

転 転回操車

 

 

遠野 手札1 LP8000

 

 伏□□□□

 □□励□□転

  □ □

□□□□□□

 □□□□□

 

紅璃 手札6 LP6500

 

 

 

「私のターン。ドロー」

 

紅璃がカードを引く。

 

(手札はあるけど、盤面は完全にひっくり返された。しかも、守備表示のヴェルズビュートの効果はこのデッキだと対処できるカードが限られる上、墓地には既に再装填済みのマガジン)

 

流石、実技教師だけの事はある。と納得しかけて、思い出す。

 

(相手をしているのは、私のデッキだっけ……)

 

「どうだい? 自分のデッキを相手にしてみた感想は」

 

一枚の手札を手に、遠野の声が響く。高揚しているのか、その声には力がこもっているように感じられた。

 

「……強い。とても」

 

応える紅璃の声も、どこか冷めたような今までのそれではない。

相手は全てを焼き尽くす灼熱と、全てを挽き潰す剛力を求め考え抜いてきた己のデッキ。全てを理解しているからこその、一瞬も気を抜けない緊張感。求め焦がれてきたそれに、遂に彼女はありつけたのだ。高揚するなという方が無理な話である。

 

「挨拶代わりのやり取りは終わり。ここからが本番! 君の考える一番のリスペクトを、君の一番大切なデッキにプレゼントするんだ!」

 

興奮気味な遠野の台詞に、怪訝な表情でデュエルを見ていた生徒達も、興味深げにデュエルを見ていた生徒達も、一様に気がついた。

デッキが求めていたのは相手を気遣うことでも、ただ全力のデュエルをすることでもない。ただ、この熱さだったのではなかったのか、と。

 

「メインフェイズ。相手フィールドにのみモンスターが存在することで、手札のサイバー・ドラゴンは特殊召喚することが出来る」

 

三度登場する、白銀の機械竜。その名を持つカードは増えども、このカードこそがこのデッキの中心である。

 

「そして銀河戦士の効果を発動。手札一枚、サイバー・ドラゴン・フィーアを捨てることでこのカードを手札から特殊召喚する。そして特殊召喚成功時に効果発動。三枚目の銀河戦士を手札に加える。これでレベル5のモンスターが二体だけど、どうする?」

 

「インフィニティも強いけど、サイバー・ドラゴン・ノヴァには隠された効果があるからねぇ。ここは使わせてもらうよ。墓地のブレイズ・キャノン・マガジンを除外して効果発動! ヴォルカニック・バックショットを墓地に送り、ヴォルカニック・バックショットの効果を発動! さっきと同じ手順で君のモンスターを全て破壊する!」

 

再び地面が爆発し、膨大な量の爆炎が吹き上がる。為す術もなく二体のモンスターは飲み込まれ、破壊された。

 

 

紅璃 LP5000

 

 

「これでブレイズ・キャノン・マガジンは消えた。手札の増殖するGを墓地へ送り、ワン・フォー・ワンを発動。デッキからレベル1モンスター、サイバー・ドラゴン・ネクステアを特殊召喚」

 

機械の翼と継ぎ目のない流線型の機体を持つ、小さな機械竜。それは、次へと繋がる先駆けたるモンスター。

 

「特殊召喚成功時に効果発動。攻撃力、または守備力が2100のモンスター一体を墓地から特殊召喚する。私が召喚するのは、サイバー・ドラゴン・ノヴァ。伏せカードを使う?」

 

再び現れたサイバー・ドラゴン・ノヴァに遠野は幾らか表情を鋭くした。

 

「……いいや。通そう」

 

「(あの反応。あのカードで間違いない。それなら)特殊召喚したサイバー・ドラゴン・ノヴァを素材に再度オーバーレイ。サイバー・ドラゴン・インフィニティを……守備表示でエクシーズ召喚。更に手札に戻っていたサイバー・ドラゴン・コアを召喚。効果発動。デッキから手札に加えるのは、サイバーロード・フュージョン」

 

その狙いを、遠野はたちどころに理解した。伏せカードと、そこから召喚されるモンスターの弱点。目の前の相手は両方を理解していると言う事である。

 

「それならここで使うしかないね。効果処理後に罠カード、死魂融合を発動! サイバー・ドラゴン・インフィニティの効果を使うかい?」

 

「(先生は既にエクストラデッキを六枚除外してる。あちらがもうデッキにない可能性もある)……まだ効果は使わない」

 

「それなら僕は墓地の炎族モンスターと機械族モンスター、ヴォルカニック・バックショットと弾丸特急バレット・ライナーを裏側表示で除外することにより融合召喚を行う」

 

墓地から湧きだしてきた二つの魂が混ざり合い、新たな形を作っていく。それは鋼の機体と灼熱の弾丸を持つ機械の獣。

 

「灼熱の弾丸に想いを込め、起動せよ! 融合召喚、起爆獣ヴァルカノン! そして融合召喚成功時、サイバー・ドラゴン・インフィニティを選択して効果発動。このカードと選択されたモンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

「……まだ残ってたの。それなら仕方ない。オーバーレイユニットとなったサイバー・ドラゴン・ノヴァを取り除いてサイバー・ドラゴン・インフィニティの効果発動。ヴァルカノンの発動した効果を無効にして破壊する」

 

大量の弾丸を撒き散らしながら飛来する起爆獣ヴァルカノンを、サイバー・ドラゴン・インフィニティが迎撃する。口腔から放たれた光の奔流が弾丸ごとその身体を穿ち、起爆獣ヴァルカノンは爆発四散した。

 

「ああ! やっぱり無効にされちまった!」

 

「やっぱりあのカード強すぎんだって」

 

「いや、でもそれじゃあなんで無効にされるってのに今発動したんだ?」

 

生徒達が訝しむ中、紅璃は遠野が即座に下した判断に舌を巻いた。

 

(ここからの私の行動全ての中で、ヴァルカノンが効果を使えるタイミングはない。そこまで読んで、ということ)

 

もし自分が目の前のデッキを使っていたとしても、もしかしたら躊躇してしまっていたかもしれない。

 

「それでも、やれることはやらせてもらう。サーチしたサイバーロード・フュージョンを発動。フィールド・除外ゾーンのモンスターをデッキに戻し、サイバー・ドラゴンを融合素材とする融合モンスターを融合召喚する。ただし、このカードを発動するターン、私は融合召喚したモンスターでしか攻撃できない。私がデッキに戻すのは、サイバネティック・オーバーフローで除外していたサイバー・ドラゴンとサイバー・ドラゴン・ヘルツ」

 

時空の裂け目が開き、帰還してきたサイバー・ドラゴン達が咆哮を上げる。彼らの叫びが新たな進化の扉を開き、その姿を望む形へと変じていく。

 

「その進化は破壊の力。星をも砕く、黒き暴威。融合召喚! キメラテック・ランページ・ドラゴン!」

 

二体の竜が変じた、クリスタル状の黒い機体。そこからサイバー・ドラゴン・ヘルツとサイバー・ドラゴンの首がズルリと生え伸び、甲高い咆吼を上げる。

 

「融合召喚成功時、キメラテック・ランページ・ドラゴンの効果発動。融合素材としたモンスターの数まで、フィールド上の魔法、罠カードを破壊する。今存在する魔法、罠カードは先生の発動した転回操車のみ。破壊させてもらう」

 

中空に浮いたキメラテック・ランページ・ドラゴンの首が、それぞれ光線を放つ。回転しながら放たれたそれは転回操車によって展開されていた車庫を抉るように破壊していき、やがて倒壊させた。

 

「流石にこのカードを残してはくれないか」

 

「それがあると、こっちはいつ即死してもおかしくない」

 

瓦礫を避けるように腕を翳す遠野に、紅璃は呆れたように肩を竦めた。

 

「キメラテック・ランページ・ドラゴンの効果を発動。デッキから機械族・光属性モンスターを二体まで墓地に送り、その数だけこのカードは追加攻撃の権利を得る。私が墓地に送るのはサイバー・ファロス、サイバー・ドラゴン・ヘルツの二体。そして墓地に送られたサイバー・ドラゴン・ヘルツの効果、デッキからサイバー・ドラゴンを手札に加える」

 

追加の攻撃権を得る効果。しかし、その表示形式は守備表示。しかもこのターンに攻撃できるのは、キメラテック・ランページ・ドラゴンのみの筈である。

 

「折角融合召喚したってのに、攻撃しないのか?」

 

そんな声が生徒達の間から上がる。

 

「励輝士ヴェルズビュートには自分のカードが相手より少ない時、自分か相手のバトルフェイズにフィールドのカードを全て破壊する効果があるんだ。インフィニティの効果は使ってしまったし、攻撃で突破するのは厳しいと思うよ」

 

遠野の解説に、生徒達は納得したように頷いた。

 

「その為に死魂融合を使ったのか」

 

「先生の奴そこまで考えて……」

 

「そんなカード使うなんて、汚いぞ!」

 

「いや、あれ先生のデッキじゃなくて紅璃の……あれ?」

 

それに加えて、相手を一撃で倒せない攻撃を、あのデッキを相手に行うと言う事がどれ程危険な事か、デッキを構築した紅璃は知りすぎるほどに知っている。

 

「解説通り、そのカードに居座られると困る。少し無理をしてでも除去させてもらう。手札からサイバー・レヴシステムを発動。墓地のサイバー・ドラゴン一体を特殊召喚して破壊耐性を付与する。そして、レベル5のサイバー・ドラゴンとキメラテック・ランページ・ドラゴンでオーバーレイ。超量機獣マグナライガーをエクシーズ召喚。そして、オーバーレイユニットとなったサイバー・ドラゴンを取り除き、励輝士ヴェルズビュートを対象に効果発動。そのカードを破壊する」

 

赤色に輝く機械の獅子が、守りの態勢にあった輝く昆虫の騎士をその牙で引き裂き破壊した。

 

「今度は攻撃表示のサイバー・ドラゴン・コアをそのままにしておく訳にはいかない。開け、進化のサーキット。アローヘッド確認。召喚条件はサイバー・ドラゴンを含む機械族モンスター二体。私はサイバー・ドラゴンとなっているサイバー・ドラゴン・ネクステアとサイバー・ドラゴン・コアをリンクマーカーにセット、サーキットコンバイン!」

 

八角形のゲートが出現し、自らを光の渦へと変えたサイバー・ドラゴン・コアとサイバー・ドラゴン・ネクステアが矢印へと飛び込んでいく。準備が整い、ゲートが異なる存在を結びつけ、新たな機械竜が姿を現わす。

 

「その進化は勝利の鍵。新たな戦い、その凱歌。リンク召喚! サイバー・ドラゴン・ズィーガー!」

 

それは電子の力を得た、サイバー・ドラゴンの新たな姿。

 

「インフィニティの効果が使えなくなっているのも、困る。表側攻撃表示の超量機獣マグナライガーを対象にサイバー・ドラゴン・インフィニティの効果発動。そのカードを、このカードのオーバーレイユニットとする」

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティによって光の球に変えられてしまった超量機獣マグナライガーに、またもデュエルを見守る生徒達はざわついた。

 

「そんな除去効果もあったのか……」

 

「でもそれって相手に対して使う効果だろ? なんで相手に使わな……ってそうか、だから守備力0なのにヴェルズビュートは守備表示だったのか」

 

「そもそも、さっきから先生の使ってるデッキって除去ばっかりじゃない? なんで紅璃さんはあんなに攻撃を恐れる様なプレイングを……?」

 

「まだ何か手を隠してるっていうのか」

 

その反応は、最初に比べれば随分と変わってきていた。互いのデッキを熟知するが故の駆け引き、読み合いに、何より全力でそのせめぎ合いを楽しむ二人に、皆が感化されてきているのだ。

 

「エンドフェイズに移行する」

 

「ならそのエンドフェイズ、このターン墓地に送られた無頼特急バトレインの効果を発動。デッキから重機貨列車デリックレーンを手札に加えさせてもらうよ」

 

「仕方が無い。これでターンエンド」

 

 

 

遠野 手札2 LP8000

 

 □□□□□

 □□□□□□

  ズ □

□イ□□□□

 □□□□□

 

紅璃 手札2 LP5000

 

 

ズ サイバー・ドラゴン・ズィーガー 攻撃表示

イ サイバー・ドラゴン・インフィニティ 守備表示

 

 

 








ちなみに作者はリアルだと弱デッキを使う方が好きだったりします。
年を取ると頭を使うのが面倒臭くなるのです。
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