遊戯王 リスペクトストーリー   作:tbrh

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最終話 デュエル!

「よし、僕のターンだ。ドロー!」

 

(先生の手札には既にナイト・エクスプレス・ナイトとデリックレーンがある。何を引いた……?)

 

知らず、デュエルディスクを構える紅璃の左腕に力が入る。

 

「このままメインフェイズ。深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイトはリリース無しで召喚することが出来る。深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイトを召喚!」

 

フィールドに線路が引かれ、その上を騎士の上半身をつけた列車が走り来る。

 

「リリース無しで召喚したこのカードの攻撃力は0になるよ。更に深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイトの召喚成功時、手札の重機貨列車デリックレーンの効果を発動。このカードを特殊召喚するけど……」

 

「当然、通せない。サイバー・ドラゴン・インフィニティの効果発動。その効果を無効にして破壊する」

 

現れようとした重機貨列車デリックレーンの線路を、サイバー・ドラゴン・インフィニティが光線で焼き払う。脱線した重機貨列車デリックレーンはそのまま破壊された。

しかしもう、生徒達は騒がない。

なぜなら遠野の浮かべる笑みは変わりなく、これが想定内である事を物語っているからだ。知らず籠もる力によって、紅璃と同じように手を握る者達もいる。

 

「まだまだ、君のデッキはこれくらいじゃ止まらない! 自分フィールドのモンスターが地属性・機械族のみである時、手札の弾丸特急バレット・ライナーの効果発動。このカードを特殊召喚することが出来る!」

 

再びの登場となる弾丸特急バレット・ライナー。ジェットエンジンの炎を後に引きながら、猛スピードでフィールド上に駆けつけた。

 

「まさか引いてくるなんて」

 

そうは言いつつ、紅璃に動揺した様子はない。むしろこの事態に備え、フィールドの状況を整えていたのだ。

 

「ようやく君のデッキの本当の力を、皆に見せる事が出来るね。僕はレベル10の弾丸特急バレット・ライナーと深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイトの二体でオーバーレイ!」

 

線路の先に、黒い渦が現れる。二輌の列車は猛スピードでその中に突っ込み、光が炸裂する。

 

「灼熱の砲弾に想いを込め、咆吼せよ! エクシーズ召喚! 超弩級砲塔列車グスタフ・マックス!」

 

現れたのはこれまでの列車達より尚大きい、自身より巨大な大砲を備えた列車砲のモンスター。

 

「オーバーレイユニットとなった弾丸特急バレット・ライナーを墓地へ送り、超弩級砲塔列車グスタフ・マックスの効果発動。相手ライフに2000のダメージを与える。照準良し、ビッグ・キャノン発射だ!」

 

放たれた砲弾は大きな弧を描き、紅璃を守るモンスター達を飛び越えて紅璃の頭上に直接降り注いだ。

 

 

紅璃 LP3000

 

 

「くっ」

 

「続けていくよ! 僕はランク10機械族エクシーズモンスターである超弩級砲塔列車グスタフ・マックス一体でオーバーレイネットワークを再構築、エクシーズチェンジ!」

 

砲身から硝煙をくゆらせながら、超弩級砲塔列車グスタフ・マックスは再度現れた渦へと前進する。渦からは先程までと同じように線路が現れるが、その車線数は先程までの比ではない。

 

「灼熱の炉心に想いを込め、蹂躙せよ! エクシーズ召喚! 超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ!」

 

現れたのは、最早荒唐無稽な大きさの超巨大列車。横幅だけでフィールドを埋め尽くさんばかりの存在感に、度肝を抜かれた生徒達の声が上がる。

 

「オーバーレイユニットとなった深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイトを取り除き、超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベの効果発動! このカードの攻撃力を2000ポイント上昇させる代わりに、このターン僕はこのカードでしか攻撃できなくなるよ。そしてバトルフェイズ! 超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベでサイバー・ドラゴン・ズィーガーに攻撃!」

 

仰角を頭上に向けていた砲身が唸りを上げて駆動し、フィールドのサイバー・ドラゴン・ズィーガーを見据える。圧倒的なそのサイズ差は、蟻と象にすら例えられそうだ。しかし臆することなく、

サイバー・ドラゴン・ズィーガーはその身に凄まじい紫電を滾らせ迎え撃つ。

 

「ダメージ計算開始時、サイバー・ドラゴン・ズィーガーを対象にサイバー・ドラゴン・ズィーガーの効果発動。対象のモンスターの攻撃力を2100ポイント上昇させ、このターンこのカードの戦闘によってお互いに発生する戦闘ダメージを0にする」

 

発射された巨大な砲弾が、サイバー・ドラゴン・ズィーガーに直撃する。しかしサイバー・ドラゴン・ズィーガーの発したエネルギーが爆炎を遮り、その衝撃が紅璃にまで届くことはない。

 

 

サイバー・ドラゴン・ズィーガー 攻撃力4200

        VS

超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ 攻撃力6000

      ダメージ0

 

 

「まだまだ! 超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベはオーバーレイユニットの数+1回、モンスターに攻撃することが出来る。オーバーレイユニットは一つだから、もう一回攻撃できるよ。サイバー・ドラゴン・インフィニティに攻撃だ!」

 

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティ 守備力1600

        VS

超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ 攻撃力6000

      ダメージ0

 

 

守備表示なのでダメージは発生しない。しかし、唐突に繰り出されたこの攻撃力に生徒達は戦慄した。隙を晒すことを極端に嫌う紅璃の戦い方の意味が、漸く理解できたのである。

 

「もう攻撃はできないね。メインフェイズ2に移行するよ」

 

すると突然、攻撃を終えた超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベの装甲が展開し、形を変え始めた。そしてその周囲を黒い渦が取り囲む。

 

「このカードは一ターンに一度、このターンに戦闘を行ったエクシーズモンスター一体の上に重ねてエクシーズ召喚することが出来る。超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ一体でオーバーレイネットワークを再構築! エクシーズチェンジ!」

 

完全に闇に包まれた超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ。その闇を光と共に雷が吹き飛ばし、巨大な影が降臨する。

 

「灼熱の雷霆に想いを込め、降臨せよ! エクシーズ召喚! 天霆號アーゼウス!」

現れたのは、雷を放つ巨大な翼を携えた機械の巨人。その力はプロの世界ではよく知られた物であり、このカードへの対策が課題とされることも多い。

 

「エンドフェイズ、墓地の機械族モンスター、深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイトを対象に墓地に送られた弾丸特急バレット・ライナーの効果発動。そのカードを手札に戻す。これ以上できる事はないね。ターンエンドだ」

 

 

 

天 天霆號アーゼウス 守備表示

 

遠野 手札1 LP8000

 

 □□□□□

 □□□□天□

  □ □

□□□□□□

 □□□□□

 

紅璃 手札2 LP3000

 

 

 

天霆號アーゼウスの登場に、生徒達がざわめき始める。

 

「なぁ、アーゼウスってあれだろ? フィールドのカード全部を墓地に送る奴。こつ使うなら、なんで態々素材使ってまでジャガーノート・リーベでサイバー・ドラゴン・ズィーガーを倒したんだ?」

 

「そういやグスタフ・マックスの効果も、止めまで刺せないなら何で使ったんだろ。素材の無駄だよな」

 

「あんた達、アーゼウスの種族忘れたの? サイバー・ドラゴン・ズィーガーはサイバー・ドラゴンとして扱う効果を持ってるんだから、そのままターン回したらキメラテック・フォートレス・ドラゴンに吸収されちゃうでしょ」

 

「あ、そうか機械族! 結局除去しなきゃならないなら、ダメージ2000分こっちの方が得してるのか」

 

しかしそこに、ネガティブな雰囲気はあまり感じられない。

強力なカード一つとっても、そこには数多の駆け引きが存在する。それに触れる高揚が、彼らの意欲をかき立てるのだ。

それは、彼らが忘れていた感覚。デュエルモンスターズ最大の見せ場であるバトルにのみ傾倒してしまっていた彼らが避けていた、互いの裏を読む読み合い。相手の使うカードやプレイングを最大限理解し、それに適切な対処を重ねる、より積極的な意味でのリスペクト。

 

「私のターン。ドロー」

 

武者震いに震える手を制し、紅璃は勢いよくカードを引く。ここまで来たら使える手は少ない。やれるようにやるだけだ。

 

「メインフェイズ。私は墓地の、サイバー・ドラゴン・コアの効果発動。相手フィールド上にのみモンスターが存在する時、このカードを除外し、デッキからサイバー・ドラゴン・モンスター一体を特殊召喚する。サイバー・ドラゴン・ネクステアを特殊召喚し、効果発動。墓地のサイバー・ドラゴン・インフィニティを特殊召喚する!」

 

「サイバー・ドラゴンである以上、使わざるを得ないね。天霆號アーゼウスの効果発動! このカード以外のフィールドのカード全てを墓地へ送る」

 

天霆號アーゼウスの翼が発する雷が、より巨大なものとなる。それはやがてフィールド全てに降り注ぎ、あらゆる物を撃ち抜き、打ち砕き、焦土へと変えていった。

 

「これで、アーゼウスの素材はもうない。手札のサイバー・ドラゴンを捨てて銀河戦士を特殊召喚。サーチ先がいないためサーチ効果は使えない。そして……私は、フィールド及び墓地の機械族・光属性モンスター全てを除外し、このカードを特殊召喚する!」

 

紅璃の墓地のモンスター達が、光る魂となってフィールドに現れる。それらは天に昇り、新たな光に進化の道を指し示す。

 

「その進化は導きの光。天より轟く、竜の嘶き。 顕現せよ! サイバー・エルタニン!」

 

天より光と共に降り来たったのは、巨大な機械の竜頭。そこから更に伸びたサイバー・ドラゴンの頭が咆吼し、それに呼応した数多の魂がその周囲に竜頭として顕現する。そしてそれぞれが、その口腔に眩い閃光を滾らせていた。

 

「ここで、そのカードを引いていたのか!」

 

流石に驚きを隠せず、その偉容を見上げる遠野が叫ぶ。しかしその様子は驚愕と言うより、出会えた嬉しさが勝るようであった。

 

「このカードの攻撃力は召喚時に除外したモンスターの数×500ポイントの数値となる。私が除外したモンスターはサイバー・ドラゴン・インフィニティ2、サイバー・ドラゴン・ノヴァ1、サイバー・ドラゴン・ズィーガー1、銀河戦士3、サイバー・ドラゴン3、サイバー・ドラゴン・ネクステア2、サイバー・ドラゴン・ヘルツ1、サイバー・ファロス1、サイバー・ドラゴン・フィーア1の合計15体。よって攻撃力は7500!」

 

先程の超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベを大きく上回る攻撃力。それもこの土壇場で。生徒達のどよめきはデュエルを行う二人に心地よかった。

 

「特殊召喚成功時、サイバー・エルタニンの効果発動! このカードを除くフィールド上のモンスター全てを墓地に送る。コンステレイション・シージュ!」

 

降り注ぐ、光の雨。如何に天霆號アーゼウスといえど、抗うことなど出来ない。膨大な光に飲み込まれるように、その巨体は消滅していった。

 

「もう、これで、止められない。バトルフェイズ。サイバー・エルタニンでダイレクトアタック! ドラコニス・アセンション!」

 

続いてその光は、遠野本人に向けられた。光の渦は、今まで傷一つ無かった遠野のライフを焼き尽くしていく。

 

 

遠野 LP500

 

 

「うわあああああああ!? ったたた、これは強烈……」

 

「やっとだけど、通したよ。これで私は、ターンエンド……!」

 

愛おしげに遠野の使う自分のデッキを見やり、しかし次の瞬間には挑戦するような笑みを小さく浮かべ、紅璃はターンを終えた。

 

 

 

遠野 手札1 LP500

 

 □□□□□

 □□□□□□

  □ □

□□□エ□□

 □□□□□

 

紅璃 手札0 LP3000

 

エ サイバー・エルタニン 攻撃表示

 

 

「ま、またフィールドが更地になっちまった……」

 

「どっちもフィールドにカードが残ってるターンがないなんて、なんて怖いデュエルなんだ……」

 

「いや、でも、そこから毎回巻き返してんだろ。ライフはずっと紅璃が削られっぱなしだったけど、これで先生が一気に追い詰められたしな」

 

「除去も妨害も使いまくってるってのに、なんで俺、今こんなに熱くなってんだ!?」

 

「ああもう、どっち応援すれば良いのよ!」

 

「どっちもだろ!」

 

「俺たちゃリスペクトデュエリストだぞ! デュエルしてる奴らは皆リスペクトしようぜ!」

 

遂に、先生に一撃を加えた紅璃に盛り上がる生徒達。そこに現れるのは、二人に対する気遣い。相手のことを尊重しようとする姿勢。

そんな姿を見ていると、紅璃自身自分の考えの浅さが身にしみるようであった。相手を理解する事、相手を想う事。どちらも大切なことであったはずが、いつの間にか相手の戦術を理解し、それを上回ることに傾倒しすぎていた事を、紅璃は認めざるを得なかった。結局は彼女も、自分のことしか考えていなかったのだ。デッキを交換したことで、愛する自分のデッキを前にしたことで、やっとその事に気づくことが出来た。

 

(そうか。私も、皆も、どっちも、間違えてた。足りなかったんだ)

 

少しの間瞑目し、再び顔を上げる。

相手への理解、相手への想い。その二つの事を教えてくれた先生は、困ったように笑いながら生徒達を宥めるようと手を振っていた。

 

「う、嬉しいけどもうちょっと静かにしてね。っと、いい加減ターンを進めないとね。僕のターン!」

 

遠野が、デッキに手をかける。

瞬間、周りは水を打ったように静まりかえった。

 

「先生の手札には、ナイト・エクスプレス・ナイト。私のデッキには、この状況を切り抜ける事の出来るカードがある」

 

「そうだね。そのカードを引けば僕の勝ち。引けなければ紅璃さんの勝ち。このドローで全てが決まる。正にこれが、デュエルの醍醐味って奴だね!」

 

生徒達も、紅璃も、そして遠野自身も、その心地よい緊張に身体をこわばらせる。

深く息を吸い、そして時間をかけて吐き出す。デッキに置いた右手に、力がこもる。

 

 

「ドロー!!」

 

 

果たしてそのカードは。

全員が見守る中、遠野は力強く笑った。

 

「このデュエル、僕の……いや、君の勝ちだ!!」

 

「っ!」

 

その言葉に、紅璃は彼が何を引いたのか理解した。

 

「メインフェイズ! 僕は手札から、爆走軌道フライング・ペガサスを召喚!」

 

数多の客車を後ろに引き連れ、機械の天馬に跨がった騎士が遠野のフィールドに現れる。それは正に、勝利を引き連れてきたのだ。

 

「召喚成功時、爆走軌道フライング・ペガサスの効果発動! 墓地の機械族・地属性モンスター一体を、効果を無効にして守備表示で特殊召喚する事が出来る。僕は重機貨列車デリックレーンを特殊召喚!」

 

フィールドに現れることの叶わなかった重機貨列車デリックレーンが、遂に姿を現わす。煙突から溢れるディーゼルの黒煙は不機嫌そうにも見えた。

 

「更に重機貨列車デリックレーンを対象に爆走軌道フライング・ペガサスの効果を発動! このカード以外のモンスター一体を選択し、選択したモンスターとこのモンスターのレベルをどちらかのレベルにすることが出来る。僕が選択するのは当然、重機貨列車デリックレーンのレベル10! そして、レベル10の重機貨列車デリックレーンと爆走軌道フライング・ペガサスでオーバーレイ!」

 

二輌の列車達が、後ろに引き連れた客車や貨物車ごとエクシーズ召喚の渦に飛び込んでいく。黒い渦に光が差し、眩い閃光と共に炸裂した。

 

「灼熱の機関に想いを込め、到来せよ! エクシーズ召喚! No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ!!」

 

現れたのは、これまで同様に巨大な砲塔を備えた巨大な砲塔列車のモンスター。しかしその砲塔は人の姿を模り、その中央のカメラが紅璃の姿を真っ直ぐに見つめる。

 

「……流石」

 

その呟きには、嬉しさと共に幾らかの悔しさも込められていた。それは、己のデッキの、最大の力を発揮して見せた他人への嫉妬だろうか。

 

「オーバーレイユニットとなった重機貨列車デリックレーンを取り除き、No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラの効果発動! このカードはこのターン、あらゆる効果を受けない。そしてエクシーズモンスターの効果を発動するために墓地に送られた重機貨列車デリックレーンの効果を、サイバー・エルタニンを対象に発動! そのカードを破壊する!」

 

No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラの薬室に、光の球となった重機貨列車デリックレーンが宿る。その巨砲は真っ直ぐに、上空に浮かぶサイバー・エルタニンの巨体を捉え、膨大な砲煙と共に轟く砲声を響かせた。放たれた砲弾は狙い過たず、主を守らんと割入った竜頭達を粉砕し、サイバー・エルタニンの巨体にすら大穴を穿つ。巨大な閃光と共に、サイバー・エルタニンは爆発した。

 

「バトルフェイズ! No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラでダイレクトアタックだ!!」

 

上空を向いた主砲の代わりに、多数の副砲群が紅璃に照準を合わせる。

もう、防ぐ術はない。

その弾幕が、紅璃のライフ全てを削り取った。

 

 

紅璃 LP0

 

 

 

 

勝敗が決すると共に、ソリッドビジョンが消滅する。砲撃や爆撃でボコボコになった筈の校庭も元の姿を取り戻して行った。

 

「ありがとう。とても良いデュエルだったよ!」

 

紅璃が顔を上げると、遠野が紅璃のデッキを差し出していた。

 

「……こっちこそ、ありがとう」

 

紅璃もデュエルディスクからデッキを外し、遠野に渡す。共にデッキを交換し、二人のデッキは再び元の主の元へと帰った。

遅れて差し出された遠野の手を、紅璃も握り返す。その手は、デュエルの緊張の所為か大分汗ばんでいた。

 

「……ちょっと気持ち悪い」

 

「え!? あ、ごめん! 気がつかなくって……」

 

慌ててハンカチを取り出して手を拭き始める遠野に、生徒達も顔を綻ばせる。

 

「セクハラだぜ先生!」

 

「今はそう言うのでも捕まるそうですよ」

 

「MA☆TTE! そういうんじゃないって!?」

 

やいやいと騒ぎ始める皆の雰囲気は、デュエル前より遙かに和やかだ。

そんな中、一人の生徒が紅璃に話しかける。

 

「今回のデュエルってあれだよな! 実質的に紅璃が先生に勝ったって事で良いんだよな」

 

「え? 確かに……そうなる、のかな」

 

答えている間に、他の生徒が寄ってくる。

 

「凄いじゃない! そ、それでなんだけど……後で私にも、デッキのこととか教えてくれると嬉しいなーなんて」

 

「ん。構わない」

 

頷く間にもそこに割り込むように、更に生徒が集まってくる。

 

「ずるいぞ! 抜け駆けすんなよ!」

 

「何よ、やるの!?」

 

「それじゃあ今のうちに俺が……」

 

急に生徒達に取り囲まれ、紅璃は目を白黒させた。

そして思い出す。それは、このデュエルアカデミアセントラル校で初めて本気でデュエルをした時。その時は、皆が彼女の事を批難していた。

だからだろうか。皆の態度は少々バツが悪そうにも見える。

そして悟る。

 

(なんだ。皆も、私も、同じ物を目指していたんだ)

 

「あー皆静かに! 静かに!」

 

揉みくちゃにされながら遠野が声を上げ、漸く少しばかり声が収まる。

 

「とりあえず! まだ授業中だから、騒ぐのはまた後でね! それでどうかな、皆? 僕のデュエルは皆に受け入れてもらえそうかな?」

 

 

『はい!』

 

 

満場一致である。

 

「よかった! それじゃあ早速始めていこうか。皆もデュエルしたいだろうけど、まずはさっきのデュエルの分析から入ろう」

 

「えー!?」

 

「そりゃないぜ!」

 

不満の声が上がるが、遠野は苦笑しながら続ける。

 

「それも相手と自分を理解するには大切なことだよ。皆をリスペクトする! でしょ?」

 

「そ、それはそう……か」

 

「お前が余計な事言うから……!」

 

「ぜってぇ許さねぇ!」

 

ふざけあいながらも、生徒達はデュエルログを見るための小屋に向かう遠野の元に集まっていく。いつもなら遠巻きにしているだけだった紅璃も、そこに加わっていった。ずっとやりたかった、学びたかったデュエルが、やっとできるのだ。いや、本当のデュエルは彼女のそんなちっぽけな想像を上回っていた。

 

「これがデュエル、か」

 

突然やってきた先生の熱意と優しさに思いを馳せるその横顔には、優しい笑みがあった。

 







と言うわけで、短いですがこれで遊戯王リスペクトストーリーは完結とします。


他の方の小説を殆ど参考にしなかったので、そんなに長くないお話である事もあって、どうすればリスペクト流に勝利する事が出来るのかがわからない……。デュエルで勝つだけではどうも難しいような……と言うわけで、結局デュエルは実戦級デッキ二つになりました。
そして実戦級デッキ……しかも火力過剰なデッキ同士。ちょっと作っては「あ、これ決着付いちゃうじゃないか……」の繰り返しで、デュエル構成担当と一緒にとても頭を悩ませる羽目になりました。
思想系のデュエル小説って、難しい……。


自分はもう続きを書くことはありませんが、この作品やキャラクターに関しては自由に使って下さって構いません。
と言うより、使って下さったり続きを書いて下さったり等という事が万に一つもありましたら、作者は泣いて喜びます。
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