カーズ、面白いよね。

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ピットに入らないマックィーン並に見切り発車


雷鳴

歓声が聞こえる。

「集中」

口々にウマ娘の名を叫んでいる。

「スピード」

彼らの声に、目に、耳に、全てが求めるのはレース。一心不乱の心躍るレース。

「僕は、速い」

『各ウマ娘、ゲートに入っていきます』

「勝つのはただ1人、15人は負ける」

『注目のウマ娘、1番人気、ライトニングマックィーン』

「スピード、僕は速い!蝶のように舞い、蜂のように差す!」

『さあ、まもなく出走です』

目を開けると、ゲートが開く寸前の時。ピッタリだ。ルーティーンは完璧だ。スタートの姿勢をとる。

極限まで研ぎ澄ました集中が、ゲートの開くスピードさえもゆっくりとした物に見せる。踏み出す足に思いっきり力を込める。この程度のメンバーに、僕の前は誰も走らせない。

『さあ、レースも中盤に差し掛かりました、1000mを通過したところですがライトニング現在トップ!後方2番手を大きく引き離しております!』

『掛かっている訳では無いでしょう、レースが完全に彼女のペースですね』

『芝2000は短いレースでは無いというのにこのスピード、落ちない落ちない!ぐんぐん差が開く!』

当たり前だろ。僕は稲妻。追いつけるわけないだろ!

『さあ最後の直線に入った!これはセーフティリードだ!余裕の走りです!』

『今1着でゴールイン!中山金杯、稲妻には誰も追いすがれない!見事な勝利です!』

ゴールした先で軽く流しながら観客に拳を突き上げてみせる。ペロリと舌が出てしまう。楽勝すぎなんだよね。

─────────────────

「ふぅ、フフ」

思わず笑えてくる。観客はみんな僕に釘付けだった。やっぱり、僕は速い。この調子で、三冠路線でG1を連戦連勝、皇帝に並ぶ、いや追い越すウマ娘に僕は…

「や、やあライトニング。今日も素晴らしいレースだったよ。」

「……なんだ、トレーナーか。あのさぁ、レースの前も後も、話しかけないでって言ったよね?僕は集中を乱されるのが嫌いなんだ。」

「い、いやそうは言ってもね、取材が来てるから伝えない訳には……」

「はーーーー……そんなのもうちょっとタイミング見て言えないわけ?あー、もういいや。君さぁ、要らないよ。」

「え、えっ?」

「要らないって言ってるの。クビ、クービ!」

「な、何を言ってるんだ!」

「僕の満足するトレーニングメニューも考えられないようなトレーナーなんてさ、レース資格のために付けてあげてるんだからもっと感謝を持って僕に配慮して欲しいのにさぁ。こんな簡単なことも出来ない奴要らないよ。どっか行ってよ。」

「な、な……!も、もう我慢ならない!ふざけやがって!いつもいつもトレーニングメニューを出しても文句しか言わない、雨や重馬場のレースは渋る!トレーナーとしてやって欲しいことは『何もしないこと』だと!?どこまで傲慢なんだ!お前みたいなワガママはこっちから願い下げだ!」

そう捲したてると、名前も忘れた誰だかは走り去っていった。

「お元気でー。レース資格のためのトレーナーくらい、すぐ見つかるからさー。」

フン、僕の才能にあやかって名声を得ようとする寄生虫には相応しいさ。そりゃあ、まあ、僕だってマトモなトレーニングならするけど、僕にとってアイツらの出すメニューは満足出来ないし、泥臭くて嫌だ。

「あ、っと、ウイニングライブまでに汗を落としておかないと。」

クソ、クビにするの、ウイニングライブ終わってからにすればよかった。小間使いがいないと、制汗剤とかタオルとか自分で持ってきて用意するの面倒なんだよな。

─────────────────

「ウイニングライブ、つまんなかったな。」

僕以外のメンツはモブばっかりだし、ま、仕方ないか。

「知り合いがライブとか見に来る訳でもないし、さ」

別に、どうでもいいけどね。

控え室でちょっと時間潰してからトレセンに帰ろう。今は取材受ける気分じゃないし。

手持ち無沙汰になって頬のタトゥーシールに触れながらボーっとしていると、控え室のドアが叩かれる音がした。

『シンボリルドルフだ、ライトニング、今いいか?』

「ルドルフ会長!?勿論です!」

ドアを開けると、制服の会長が立っていた。

「ど、どうされたんですか突然。!!もしかして、レースを見に「君の担当トレーナーを通じて学園に連絡が入ってな。またトレーナーと揉めてクビなどと口走ったそうだな」っ!」

会長の視線が痛い。睨みつける、と言うよりはただ冷ややかにこちらを見つめられているのが余計にこたえる。

「別に、あんなのいてもいなくても変わらなかったので。レースに出るために、仕方なく付けてやってたんですよ。」

「ハァ……ライトニング、君は確かに速い。ジュニア級の今の時点で、国内有数といってもいいだろう。だが、1人では勝てない。良いトレーナーとの信頼関係、友やライバルとの切磋琢磨があってこそ勝利が掴めるんだ。」

「……そうですか、大変ためになるお話、ありがとうございました。じゃあ、僕はこれで。」

「ッ!おい待て、ライトニング!」

聞きたくない聞きたくない!僕は、僕は速いんだ!他に何もいらない!雑音だ!

僕はライトニングマックィーン。稲妻の如く速い、最強になるウマ娘。そこに、トレーナーとか、友達とか、ライバルとか。そんなものは何一つ要らないんだ。僕は僕だけで十分強いんだから。誰も僕については来れない。来させないんだ。




ライトニングマックィーン
頬にイナズマのタトゥーシールを貼った赤髪、ウルフカットのウマ娘。
新人ながら短距離から長距離までこなせる自由自在の脚質と天性のスピードで有頂天になっていた。
傲慢な性格でトレーナーと折り合いがつかず、今までに3度変わっている。
レースに勝った時や撮影の時「カチャウ!」という決めゼリフをよく使う。その時はイナズマタトゥーを見せつけるようにポーズをとる。
レース前のゲートの中では、目を閉じて「集中、スピード、僕は、速い」と念じるのがルーティン。
ダートは苦手。汚れるのが嫌いという理由で雨や重馬場、内ラチも嫌って走りたがらない。
よく舌を出す。おおかた調子に乗っている時や脱力している時。



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