大和特攻始末記   作:オットー・カリウス中尉

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序章

2021年正月

 

「霧島姐さん、あけましておめでとう。今年もよろしくな!」

 

「あけましておめでとう、高槻。野球に向けての体つくりは大丈夫かしら?」

 

「ドッグ入りと試運転は終わった。2月1日から野球できるぜ」

 

「そう・・今年の目標も打率4割かしら」

 

中学生の時、島風(二代目)から分けてもらった力を3年間精進し、底辺校だった龍田学園を3年連続甲子園に導き、北海道ベアーズ入団後は新人王を皮切りに、2年目から4年目の去年まで、首位打者と盗塁王に輝いた高槻長輔は頷いて答えた

 

「ああ、それとチームの優勝だ」

 

「そう・・でも、エースをポスティングで米国に売ってしまったんだよね。残りのメンバーで戦える?」

 

「『大丈夫だ、問題ない!』と答えたら察してくれるかな?」

 

どこぞのゲームの迷台詞で答えられた霧島(二代目)は苦笑して答える

 

「戦時中の帝国海軍と言いたわけか、イーグルス、レオポルズ、ドルフィンズは待ってくれないしね、それに金鳶もかっての大エースをヤンキースから呼び戻すんだってね」

 

「・・うちもかっての大エースをカブスから買い戻してくれたらなんとかなるけど、チームの予算がギリギリでね」

 

「四条グループがバックで予算ギリギリ?」

 

貴音夫妻を新会長に迎えてからは経営は堅実なんでしょ?と聞いた霧島は首を傾げた。

 

「姐さん、貴音さんに私財出していただいてチーム経営してるんだ。ない袖は触れないよ。有名どころを取るのは難しい。若い連中を鍛えて戦力にするさ」

 

「80年前の帝国海軍航空隊ね・・・」

 

「ああ、高槻元中尉の苦労がわかるよ・・日高元曹長みたいな即戦力がドラフトくじにいたらいいね」

 

「そう。奥さんはお元気?」

 

霧島は高槻の嫁になった、かってのトップアイドル、日高愛のことを聞いた。

 

「ああ、元気だぜ。夫婦円満そのものさ」

 

高槻は家族写真を見せる。霧島が口笛をあげる

 

「愛ちゃん、妊娠してるね?」

 

「ステイホームで一緒にいる時間が長くなったからな」

 

「3人目だっけ・・・30FFMのようなペースね」

 

エンジントラブルで進水が遅れてる一番艦も含めて今年中に3隻が進水予定の新型艦に例えて苦笑する霧島に高槻が聞く。

 

「熊野はここにいるのか?」

 

「ええ、いるわ・・羽黒にも会う?」

 

「会わせてくれ。羽黒は3月から佐世保に行くのだろ?ゆっくり話ができるのも今のうちだな?」

 

「そうね・・」

 

霧島に呼び出された羽黒(二代目)と熊野(三代目)がやってきた。お互いの挨拶の後に高槻が尋ねる。

 

「去年、俺がプレゼントしたバットは大切にしてくれてるか?」

 

「はい、野球の練習用に使ってます」

 

稽古の一つに取り入れている野球の道具で使ってると答えた羽黒に高槻は頷く

 

「そうか、練習で使ってるのか?木製バットは扱いにくいぞ」

 

「指物は使ってなんぼだぞと霧島姐さんに言われましたの。いけませんか?」

 

「いや・・・まあいい、折れたら10本ぐらい送ってやるよ?」

 

「ありがとうございます」

 

「どういたしまして・・熊野はじめまして、ここは楽しいか?」

 

11月の進水したばかりの子供である熊野に高槻は話しかける。

 

「三笠大姉様のお世話をしながら、鹿島先生と天龍先生について学んでますわ」

 

「先生達は優しいか?」

 

あのゲームのキャラクターなら天龍はガミガミ言う方かなと思った高槻は笑いながら尋ねる。

 

「はい、思ったより、優しく丁寧に教えてくれますわ」

 

「そうか、それは良かったな。今、建造中の一番艦は昔のお姉さんが来て欲しいと思ってるのかい?」

 

「はい、最上か三隈が戻ってきたら嬉しいですわ」

 

「そうか、三笠さんは元気か?」

 

「はい、元気です、でも武道は教えてくださらないですわ」

 

「それは残念だ。だけど、昔の姉妹が3月に来るといいね」

 

「はい。楽しみですわ」

 

熊野と話し終えた高槻は霧島に三笠の近況を訪ねた。

 

「あの一件以来、三笠の心が折れたままか?」

 

「ええ。私達も少しやりすぎたのかもしれないけどさ。でも、あの子が、大姉様を憎悪してたとは思ってなかったわ」

 

「三笠さんに代わって誰が羽黒に太刀を授けるのだ?」

 

「金剛姉様立会いで、加賀が彼女に太刀を授ける予定よ」

 

「そうか、姉さん、長崎で建造中のFFMは誰なんだ?」

 

「一応知ってるけど、まだ教えるわけにはいかないわよ。予想してみなさいな」

 

高槻は少し考えて答えた。

 

「最後の戦闘で、大和と運命を共にした彼女じゃないのか?」

 

「彼女だったら、池山元大尉が喜ぶわね」

 

「笹井氏も半藤先生も亡くなられらた。池山氏が、ご健在のうちに、再会できたらいいな」

 

今から振り返ること75年前より物語は始まる。

 

(続く)


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