大和特攻始末記   作:オットー・カリウス中尉

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待機

75年後の天界

 

アヤカシに魂を抜かれた摩耶と羽黒は、た金剛(二世)達に出会った。

 

「金剛姐ぇに、霧島姐!?やられたののか?」

 

「ミーは、三日連続に悪夢を見せられたアヤカシに突き倒されて、魂を抜かれて~それっきりだヨ。ユーは」

 

「私たちも同じ手でやられました」

 

戸惑う羽黒達の前にアヤカシが現れた。

 

「心配スルコトはナイゾ、実体は無事だ。用がスんだら、地上に戻してヤルさ」

 

「フザケないで!今、戻しなさいよ!」

 

霧島(二代目)が戦闘モードになった。

 

他の娘も戦闘モードになったが、アヤカシは嗤う

 

「ツマラナイことはヨセ・・・攻撃スル前にワタシの話を聞いてクレよな?」

 

「・・・武装を解きなさい!あなたの目的とやらを聞かせなさいな?」

 

三笠より『菊一文字の太刀』を託された加賀(二代目)はアヤカシと相対

した。

 

「カガ、ワタシの顔をオボえてるか?」

 

フードの下の顔を見て誰かを悟った加賀は、アヤカシに聞き質した。

 

「ええ、よく覚えてるわよ」

 

「・・そうか、なら話は早い、ワタシのアソビに付き合ってホシイ、どうだ?」

 

「貴女がやりたい遊びは何かしら?」

 

「・・・姉サン達とアイオワ姉妹達を対決サセて長年の論争に決着をツケる。それだけダヨ?」

 

「アイオワ姉妹の魂も抜いたのかしら?」

 

「ソウダ!カガ達にシタようにナ!」

 

嗤うアヤカシに加賀は聞き返す。

 

「そんな事に、私達を呼び出すのはずいぶんじゃないかしら?」

 

「マア、そうだ・・・しかし、姉サン達の寝込みを襲ウのをミスゴすのはどうかな?」

 

「でも、米国村を奇襲するのは断るわよ!」

 

天界の秩序を壊すのはダメだと答えた加賀にアヤカシは答える。

 

「ソコまでは要求セン!加賀達は姉サン達を守ってクレさえスレばいい・・・」

 

「それならいいわよ。みんなもいいですね!」

 

加賀は周りにいる金剛、村雨、秋月達に命じた。金剛達は手を上げて応と答えた。アヤカシはニコリと笑って頷いた。

 

「アリガタイ。が今のカガ達では、超音速機多数をモツ米国空母機動部隊から姉サンたちを守レン。ワタシがヨイ装備を用意シヨウゾ!」

 

「できるの?」

 

「今時ノ海軍ノ最新鋭装備ハ、コウでアロ?」

 

アヤカシ魔法をかけられた加賀の装備が、今日日の米国で試験中のそれに替わった。

 

昭和二十年三月二十八日、佐世保行きに備えて三田尻沖に移動した第一遊撃部隊

 

「司令、響を無事に呉に届けました」

 

敵の機雷に触れて参加できなくなった響の護衛より戻った朝霜が矢矧に報告する。

 

「朝霜、ご苦労様。作戦までお休みなさいな」

 

「ありがとうございます。栄光の第二水雷戦隊も私を含めて7隻、次で終わりかな?」

 

「そうかもしれないわね。その時は私も阿賀野姉達のところに行く時・・・」

 

「わかりました、私も命をかけて戦います!魚雷を撃てぬまま散った清霜達のために!」

 

姉妹艦を全て失った朝霜は自らの決意を矢矧に告げて下がった。

 

この日の夜、内地の桜を見るのもこれが最後と覚悟した第二水雷戦隊の駆逐艦娘は、夜桜の下で宴を始めた。

 

「雪風、どうしたんだよ~」

 

「少し飲みすぎました。厠に行ってきます!」

 

「そうか・・すぐに戻れよ。戻らないとお菓子がなくなるぞ~」

 

「はい。すぐに戻ります!」

 

千鳥足で海岸に降りた雪風、正気に戻った雪風は周囲を見回して、そこに泊めてあったボートを漕いだ。

 

「中尉、どうしたのかしら?」

 

夜桜の下、矢矧が池山中尉を誘う

 

「矢矧・・ごめん、立たないんだよ」

 

「そんな・・マリアナとサマールで男を見せた中尉らしくないわ。『艤装時から私と一緒なんだ、死ぬ時も一緒だ』と私に約束したじゃない?しっかりなさいよ!」

 

励まされても決意できない池山は矢矧に聞いた。

 

「矢矧、君も初めてだろ?どうして積極的になれるのかな?」

 

「私は女、いざとなれば覚悟ができるわよ。男は違うの?」

 

「うん・・違うらしい」

 

気ばかり焦って事が進まない二人のところに雪風が現れた。

 

「司令、見つけました!心配してた通りですねぇ~」

 

「雪風、どうしてここに?」

 

「司令と中尉がどうなってるのか気になったのですぅ~司令も中尉もこういことは初めてだからわからないのも当然ですよねぇ~。いいですよ。中尉には私が事の次第を教えてあげますよ~」

 

「雪風、何をするんだ!?」

 

池山に馬乗りになった雪風は草叢に押し倒して、彼の下半身を眺めた

 

「うふふ、中尉、これじゃ、司令を愉しませてあげることはできませんよぉ~雪風にお任せてください!」

 

「雪風、君は男女の交わりを知ってるのか」

 

「外見で判断しちゃダメですぉ~飲む・打つ・吸うは、駆逐艦娘の嗜みですよ~中尉も知ってますよね?」

 

一年前の今頃、酔っ払った雪風達が配属されたばかりの矢矧に絡んでいたことを思い出した池山は頷いた。

 

「そうか・・雪風、全部君に任せるよ」

 

「任せてください。中尉を男にしてあげます!」

 

一時間後、雪風の手で男になった池山は打って変わって積極的になった。

 

「矢矧、一気に行くぞ!」

 

「ああ、中尉!私を好きにして!」

 

雪風が見守る中、愛し合う二人はお互いの思いを伝える事ができた・・・

 

「中尉、もういいかしら?」

 

「うん。満足したよ!今度は平和な世界で人として生まれて君と家庭を作りたいな・・・」

 

「ええ・・桜の木の下で家族と一緒にお花見弁当を広げたいわ」

 

中尉と思いを遂げて満足な矢矧だったが、愛し合う中で中尉の本心を聞いた。

 

「俺は死にたくない!生きたいんだ!」

 

中尉と愛し合ったことより本心を知って満足した矢矧は思った。

 

「中尉・・それが本心?いいわ、私の命が尽きる最後まで生き残るのよ。私の最後の力は中尉にあげる!それが中尉にしてあげられること!」

 

矢矧もまた現世への思いを断ち切った。

 

翌日朝、日吉の連合艦隊司令部から第一遊撃部隊に、出撃中止が告げられた。

 

通信を傍受した矢矧が大和にそのことを報告した。

 

「どういうことでしょうか?」

 

「五航艦の増援にやってきた三航艦が敵機動部隊に叩かれて護衛機が足りなくなった。今回は見合わせるとのことです」

 

「そうですか、残念ですね。ですが、矢矧、あなたにも見せたいものがあります」

 

「何でしょうか・・・・これは挑戦状!?」

 

偵察に来たB29から落とされた挑戦状には、沖縄上陸部隊の援護部隊として参加するコロラド達の署名を添えて以下の事が記されていた。

 

「このWarの終わりとともに、バトルシップの時代も終わる。ヤマト、オキナワに来い!キャリアのアシストは借りぬ!心ゆくまで戦おうぞ!」

 

 

(続く)


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