大和特攻始末記   作:オットー・カリウス中尉

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挑戦

1945年3月末・沖縄近海

 

来たる上陸に備えて、沖縄沖に集結した第5艦隊の旗艦を務めるニューメキシコは、グアム基地娘と連絡を取った。

 

「あの挑戦状はヤマトに届いたかしら?」

 

「ヤツらをミタジリで発見した。アガノ型の近くに落してヤッタ。オッツケ、返事くるゾ

!」

 

「そう、ありがとうね」

 

計画通り進んでると思った彼女は、返事を待つ仲間に言った。

 

「もう一度聞くわね・・抜けるなら今よ。16インチじゃない大和から逃げるのは恥ずかしいことじゃないわよ。マリーンの上陸支援も立派な仕事だからね」

 

皆の意見を代表するように、コロラドが答えた

 

「馬鹿なことは言わないで!この腕でヤマトのヘッドをネジ切ってやるわよ!この戦いがバトルシップ同士が撃ち合う最後になるわよ!次はない!みんな、行くよね!」

 

「いきます!」

 

目の前の9隻の戦艦たちは拳を上げて決意を示した。覚悟を受け取ったニューメキシコは改めて告げる。

 

「皆の決意はとても嬉しい・・だけど、上陸支援の仕事も大事だから全員を連れて行くわけにはいかないわ」

 

「何隻、連れていくつもりなの?」

 

「私を含めて6隻ね」

 

「そう・・・私達3姉妹は当然、連れていくわよね?」

 

自慢の16inch 砲をアピールして参加を訴えるコロラドにニューメキシコは答えた

 

「ええ、貴女達三姉妹は当然連れて行くわよ」

 

「嬉しい・・・ナガトとムツと戦えなかったのは残念だけどね」

 

「そうね、解散、皆、次の命令に備えなさい」

 

「最終回答はいつになるのかな」

 

「マリーンの上陸作戦は4月1日だからそれ以降になるわ」

 

「ありがとう、エイプリルフールにならないことを祈るわよ」

 

その日に備えて解散したコロラドに、体の半分が機械化さてパールハーバーから復活した妹のウエストバージニアが話しかけた

 

「姉サン、Defeatサレたら、ミー、ヤマト、Killスル!」

 

「ええ、その時は頼むわよ・・断じて空母にはやらせないでね!」

 

「Riglt!ヤマト、ハラワタ抉リ出して、BloodをSuckスル!」

 

コロラドはサイボーグされた右腕のヘルズクローをガチャガチャ言わせて凄む妹に苦笑した。

 

75年後の天界

 

アヤカシの力により電磁カタパルトからのF35が使用可能になった加賀がアヤカシに聞き返す

 

「私たちに協力してくれるのはいいけど、私、出雲、伊勢、日向の4隻では米国機動部隊を凌ぐのは少し骨ね・・・」

 

「でアルな・・・助っ人ヲ用意したヨ!来イ!」

 

加賀達と同じくF35を使えるように改造された瑞鶴達が現れた

 

「瑞鶴、翔鶴、あなたたちも来るのかしら?」

 

「あら、加賀姉さん・・昔みたいに『5航戦なんかと一緒にしないで!』とおっしゃらないのですか?」

 

翔鶴の煽りに苦笑した加賀が答える。

 

「いや、私がいなくなった後の1航戦として戦ったあなた達の働きを知った今、それを言う資格はないわ。協力感謝します!」

 

「ええ・・うんと協力してあげる、ところで私達の仕事はあの時と同じ囮でいいの?」

 

F35を使用できるようになった瑞鶴がアヤカシに聞いた

 

「アア、加賀タチは専守防衛をモットーにシテるからナ」

 

「そう・・76年前と逆をしたかったのですがね・・・」

 

翔鶴と共に参加することにした大鳳が対艦ミサイルを装備したF35妖精を弄びながら呟いた。アヤカシが答える

 

「ソウ言うな・・ソレは愛宕・金剛・足柄達の仕事だ。だが、敵艦隊への接触任務も重要な仕事ダゾ。コレは加賀が望んだ事なのダ・・現世に生きる彼女タチの希望を優先スレばなるまい、大鳳、ワカルな?」

 

「加賀さんがそういう言うなら仕方がないわね・・・で、加賀さん、私達、第三艦隊はどこまで近づけばいいのかな?400海里なんて冗談は嫌ですよ」

 

現代化したとはいえ、装甲甲板は尚も健在な大鳳は冗談交じりに、加賀に聞く

 

加賀は答える

 

「200海里・・150海里まで近づくわよ」

 

「できるかしら?」

 

「そうよ。大鳳、F35に乗る志賀少佐や岩井中尉の腕を信じなきゃダメですよ!」

 

「わかりました。敵機動部隊への攻撃は愛宕達に任せます」

 

納得した瑞鶴達は加賀と護衛と「初月達の無念を晴らしたい」秋月(三代目)と照月(三代目)達を連れて去っていた。

 

彼女達を見送ったアヤカシは愛宕達に向いて聞く。

 

「愛宕達ニモ助っ人ヲ用意シタ!扶桑・山城、出マセい!」

 

扶桑姉妹が現れた。武装を見て愛宕がアヤカシに聞いた

 

「あんな武装じゃ、夏冬のコミケでも通用しないわ・・・何とかならなかったの?」

 

愛宕に訊かれたアヤカシは扶桑姉妹に言う。

 

「愛宕タチに本当の姿を見せてヤってクレ!」

 

「はい・・・私たちの真の姿は・・・」

 

「こうです・・」

 

昭和19年10月時のダミー武装を外した2人は、下に着込んだ真の武装を見せた

 

「155ミリ・レールガン!?」

 

「ええ、米帝の試作品だそうですが、118キロから大和の装甲を抜けるそうで・・」

 

どこぞの宇宙世紀物の主役ロボよろしく、背中に装備した2本を抱え込んだ扶桑が微笑む。

 

「でも、エネルギー源はどうするのかしら、レールガンはエネルギー食うぞ」

 

「私達は戦艦だから大ジェネレーターを内臓できますよ~私だって・・ほら!」

 

同じくダミー武装を外した山城も自分に与えれた武装を見せた

 

「LaWSシステムじゃないないの!?」

 

「これも米帝の試作品だそうですね。これを使ってこういう事ができるのですよ~」

 

昔なら偵察機の置かれていた後部から人口衛星らしきものを発射した山城は、それらを周りに展開した。

 

「とある宇宙世紀物の悪役マシーンを元に作ってみました~。これで敵艦の撃沈は難しいですが、誘導弾の迎撃は可能ですよ~」

 

その悪役マシーンのように全身にレーザー砲を装備した山城も微笑んだ。

 

アヤカシが話を続けた。

 

「扶桑姉妹は、第三部隊とシテ、キミ達ト満潮達・潜水艦娘ニ協力スル!協力者ハまだイルゾ、雪風コイ!」

 

合図と共に、雪風、矢矧、那智、霞が現れた。矢矧と那智は狙撃銃に改造した155ミリレールガン、雪風と霞は127ミリレールガンを手にしていた。

 

昭和二十年四月一日

 

慶良間諸島を制圧した米軍は沖縄本島に上陸を開始した。

 

「赤羽根、怖いか?」

 

「はい・・・おかしいですか?」

 

学生士官として動員された赤羽根健二郎・少尉は双眼鏡越しに敵上陸部隊を眺めながら、相棒の三浦松太郎・中尉に尋ねる。

 

「ははは・・・俺だって怖いよ。相手は10万の上陸兵、沖合は観艦式でその向こうには空母部隊が控えてござる。ビビらない方が不思議さ!」

 

「でしょうね・・・」

 

「だが、俺たちは士官は、兵隊達の前で根性見せるのが商売だ。辛いだが頑張れ。植物学に詳しい貴様に死んでは後々困る!」

 

田舎にいた頃、不作と不景気のせいで娘達が遊郭に売られていく光景を見て、強い農作物を作る夢を見て東京農業大学に入った赤羽根を三浦は激励した。

 

「ええ、頑張ります!」

 

「ああ頼むぞ。長生きしたいのなら俺から離れるなよ!」

 

「はい、三浦さんの言った通りですね・・」

 

「俺が言いたいことが、わかったか?」

 

三月の陣地偵察の時、三浦に貴様が司令官なら敵をどう迎え撃つと聞かれた赤羽根は、『水際でまごついている敵に全火力を集中して・・』と答えて、『教科書通りだな』と三浦に切り捨てられたことを思い出した赤羽根は答えた。

 

「はい、よく分かりました。この状況で撃ち合いをしたら3日で踏み潰されますね」

 

「だろ?俺は、こうも付け加えた。飛行場も呉れてやって、砲兵で嫌がらせしたらいいとな」

 

「でしたね」

 

「まあ、飛行場に地雷をばら撒くことを東京の馬鹿どもが許可してくれたら良かったが、今は何も言うまい・・赤羽根、俺たちがこの地上で生きられるのは何ヶ月だと思う?」

 

「そうですね・・硫黄島が1ヶ月と少しでしたから、2ヶ月でしょうか?」

 

貧しい百姓を救う強い米を作りたかった赤羽根は、残念がって答えた。

 

三浦は勇気付けるように答えた。

 

「東京のバカどもが幕僚指導なぞせずに現地に任せれば、3ヶ月生きていられるぜ」

 

「本当ですか?」

 

「そうだ・・だから、3ヶ月頑張るんだぞ。俺も頑張るから貴様も生きろ!」

 

「はい・・それはそうと大和は助けに来てくれるのでしょうか?」

 

「やめておけと言いたい・・・が、赤煉瓦どもは大和と二水戦を突っ込ませる腹だろうな」

 

双眼鏡越しに敵艦隊を再度眺めた赤羽根はどうしてと、三浦に聞き返した

 

「5000人以上を無駄死にさせるだけなのにですか?」

 

「ああ、そうだ。が、俺たちが何を言おうと赤煉瓦は突っ込ませるよ。30年近く海軍で飯食ってる俺にはわかる。そういうことだ」

 

「はあ・・・・そういうものですか?」

 

「愚痴っててもしょうがない。今は生きることを考えろ!」

 

沖縄の最前線でそんなやり取りがあるのを知らぬ第一遊撃部隊では、敵部隊上陸を知った大和が先日の挑戦状の返事を書いた。

 

「これを敵第五艦隊に届けなさい」

 

「了解しました。長官が突撃される時は、現地で運命を共にしたいと思います」

 

「お願いします」

 

大和より信書を受け取った伊47と伊58は光を出撃、沖縄西方の第五艦隊に向けて出撃した

 

(続き)

 

 


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