大和特攻始末記   作:オットー・カリウス中尉

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決断

昭和二十年四月一日・呉上空

 

「参謀、そろそろ着陸です」

 

「わかった」

 

戦力の見極めと作戦指導のために、西日本出張を命じられた三上参謀は頷いた

 

高槻の操縦する97艦攻は広飛行場に着陸した

 

「少尉、帰りは別の便で戻る」

 

「了解しました。参謀、お気をつけて!」

 

三上参謀を見送った日高は、高槻に尋ねた

 

「酷い様ですね・・水瀬さん、無事なんですかね?」

 

「大丈夫だよ。水瀬さんの生命力はゴキブリ並みだ。社屋が焼けようと商売を続けてるよ」

 

「でしょうね・・・顔を見せなくていいのですか?」

 

「いや、やめておこう。明日、厚木に戻るぞ」

 

「それは残念・・・でも、大和は見当たりませんね」

 

大和や矢矧の姿を見つけられなかった日高は尋ねた

 

「いないということは、上の連中は大和を沖縄に突っ込ませる腹なのさ」

 

「でしょうね・・伊勢さんと日向さんに聞きますか?」

 

「貴様に任せる」

 

「では、伊勢さんに連絡をとります」

 

75年後の天界

 

「編成は、これでいいわね」

 

「第一遊撃部隊は愛宕、第二遊撃部隊は足柄、敵をおびき出す第三部隊は扶桑姉妹に任せるのだな」

 

「そうよ・・うふふふふ」

 

愛宕は意味ありげに笑う。

 

「水上部隊の編成はいいとして私達潜水艦にも働く場所を用意してくれるのでしょうね」

 

潜水艦を代表して、蒼龍(二代目)が尋ねる。

 

「そうね。蒼龍達は個別に狼群を編成して、敵艦の追尾と追い撃ちを任せるわ」

 

「先制奇襲をかけないの?」

 

同じく潜水艦として転生した雲龍(二代目)が尋ねる

 

「ダメよ。加賀は相手に殴らせてから思い切りぶちのめすよう命じてるわ」

 

「そうですか・・・狼群の編成は、満潮教官と親潮教官に任せてます」

 

話を振られた満潮(三代目)は新型の18式魚雷をなでながら、頷く

 

「編成と朝雲達の仇討ちのついでにこれのテストもしたいわ。ねえ黒潮?」

 

「もちろん、野分らの弔い合戦がさせて欲しいな~満潮、編成はこれでエエか?」

 

「問題はないわよ・・蒼龍に伝えるわよ」

 

蒼龍から報告を受けた愛宕に編成案を知らされたアヤカシに、この騒動に協力を申し出た高槻が話しかけた。

 

「愛宕と足柄は何と?」

 

「所定ノ場所ニ待機シテ敵ヲ待ち伏せスルと言ッテル。高槻、イイのか?・・事が公にナレバ、キサマは縛リ首サレテ、修羅道に突き落とサレるぞ?」

 

「貴様に、長輔、愛ちゃん、舞ちゃんの魂を質に脅迫されたらしょうがないぞ。それに・・・」

 

「ソレに?」

 

「いざとなれば水瀬さんに泣きついて腕利きの弁護士を用意してもらうさ。401達に仕掛けさせるか?」

 

新しいドローンをプレゼントする約束で、イ401達を参加させたアヤカシに高槻が尋ねた。

 

「そうダナ・・401にシカけさせよう?高槻、用意シタF35は気にイッタか?」

 

「勿論さ!ゴッドも松っちゃんも虎徹もお気に入りさ!いいオモチャを用意して感謝する!日高行くぞ!」

 

パイロットスーツに身を包んだ高槻が日高と共に加賀の元に向かった。

 

「フフフフフ、万事、順調デアルか・・・」

 

アヤカシは思わせぶりな笑いで見送った

 

四月三日、三田尻沖に待機する第一遊撃部隊

 

部下達の意見を纏めた古村第二水戦司令が作戦会議で発言した。

 

「長官、数も燃料も訓練度も装備も不足な現状で、沖縄に出撃しても全滅です。残念ですが、艦隊を解散させるのが上策と思われます」

 

新型電探を手に入れられなかった上に、春に卒業したばかりの士官候補生を押し付けられたことが納得できない古村提督は、意見具申した。

 

開戦以来、前線で戦ってきた古村と意見を同じくする森下参謀長が伊藤長官に発言を求めた。

 

「そうか、駄目か・・わかった。先任参謀、私の名前で連合艦隊に意見具申してくれ」

 

「わかりました」

 

軍令部次長として戦争を指導した責任を死で持って詫びたかった伊藤だったが、武蔵艦長だった古村、大和艦長だった森下が出撃中止を訴えたらしょうがないと考え、山本先任参謀に意見書の作成をするよう命じた。

 

同じ頃、東京

 

「・・幾ら貴様が訴えても作戦部長の俺は、大和を沖縄に突っ込むことに同意できんぞ」

 

富岡提督が再度反論する。激昂した神は叫んだ

 

「なら、片道でもやらせます。私を第二艦隊の参謀にしてください!」

 

「そんなことはさせないぞ!」

 

「じゃあ、大和を残して手を上げて国民は納得するのですか?いや、明治以来の海軍の誇りはどうなるのですか?」

 

「それは・・・・」

 

戦局が覆らない事を良く知る富岡も大和を残して負けを認める事はできない本音を突かれて押し黙った。神は再度叫ぶ

 

「・・あなたでは話にならない!小沢次長に意見具申します!」

 

「待て、話が違うぞ!」

 

富岡の制止を無視して小沢軍令部次長と及川軍令部総長に意見具申した神、及川はいつもの調子で聞き流していたが、小沢は神に聞き返す。

 

「連合艦隊長官は貴様の意見に同意したのか?」

 

「はい、長官は同意されました」

 

「・・・・そうか、やむを得まい、連合艦隊司令長官が決意したのならそれもよかろう」

 

豊田提督も神に押し付けて責任逃れする腹だと察した小沢であったが、去年まで第一機動部隊指揮官として前線を過ごした経験から大和を有したまま降伏することはできない事もよく分かる彼も突入に同意した。

 

軍令部の同意を取り付けた神は作戦会議の開催を豊田に要求した。九州に出張した三上の代わりとして出席した千早参謀は傍の補給参謀に燃料の事を尋ねた。

 

「補給参謀、燃料は?」

 

「燃料は2000トンしか用意できません」

 

「・・・片道しか用意できないとあれば、作戦参謀として同意することはできません!」

 

草鹿参謀長と三上作戦参謀の頭越しに作戦を実行させようとする神の態度が許せない千早は反論したが、神は反論する

 

「・・参謀、これは陛下が決められたことだ。それでも君は反対するのか!?」

 

「・・わかりました。補給参謀、至急徳山に連絡、超簿外の燃料がどれだけあるか確かめてください」

 

「わかりました」

 

中座した補給参謀が徳山に確認したところ、超簿外の燃料が6000トンあると報告があった。止められなかった千早は神に告げた。

 

「作戦参謀として今回の作戦に同意します」

 

「ご苦労、鹿屋に出張された参謀長達には俺から話すぞ」

 

なし崩しで決定された出撃計画はその日のうちに第2艦隊に伝えられた

 

「長官、いかがいたしましょうか?」

 

作成を命じられた意見書を片手にした山本先任参謀が聞いた。伊藤提督は呻いた

 

「陛下の名前を出されては仕方あるまい・・だが、先任参謀、私も連合艦隊に意見したい」

 

「何でしょうか?」

 

「大和と矢矧に乗ってる士官候補生を全員下ろしたいと思う」

 

「もっともですが、省の同意を得る必要があります」

 

正規士官の異動は海軍省にある事を懸念した山本が心配する。伊藤は腹案があると答えた。

 

「幸い、第一航空艦隊の指揮官を兼ねる私の指揮下に葛城がある。候補生全員を配属するよう手配したまえ」

 

「わかりました。候補生にはいつ伝えますか?」

 

「三日後に伝えよう」

 

これ以上若い人材を失うことに疲れた伊藤は、山本に命じた。

 

同じ頃・沖縄沖

 

「スーパーヘビーシェルの積み込みは終わったかしら」

 

「完了しました!」

 

「よし、訓練に移るわ。一隻とはいえヤマトはただ者じゃない!本気でいくわよ!」

 

ニューメキシコ・テネシー・アイダホ・コロラド・ウェストバージニア・メリーランドの6隻を中核とする巡洋艦7隻・駆逐艦21隻で構成された大艦隊は、数日後の大決戦に向けての訓練を開始した。

 

(続く)

 

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