大和特攻始末記   作:オットー・カリウス中尉

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思惑

昭和二十年四月五日・八丈島上空

 

「高槻さん、敵機は見つかりましたか」

 

「いや、見つからない。日高、電探に反応はあるか?」

 

「ありません」

 

「そうか、東に変わるぞ」

 

「了解」

 

空中の早期警戒を命じられた高槻が飛ばす彩雲は東に向きを変えた

 

「高槻さん、赤煉瓦は大和をどうするんですかね?やっぱり沖縄に突っこませるのですかね?」

 

「ああ、赤煉瓦は機を見て突っ込ませるぜ」

 

「いいんですかねぇ?先のある若い連中が大和に乗ってるんでしょ?」

 

水上艦隊の誇りとやらに、もっと大きなことができる若い連中を巻き込むのですかねぇと溢す日高を高槻が嗜めた。

 

「大和も若い連中を巻き込みたくはないだろう!だが、その若い連中も沖縄の連中を見殺しにするのは不本意だろうさ。貴様もいよいよ本土決戦となったら、全てを忘れて敵艦に突っ込むぜ」

 

「そうなりますかね~」

 

「俺がそうさせてやるよ!俺もいよいよとなれば、突っ込む!!」

 

「わかりました。龍鳳ちゃんに言われて付き合ってきましたしね。修羅道までお付き合いしますよ~」

 

「ああ。その時には、貴様が納得する形で突っ込ませてやるよ」

 

理由を付けて逃げ出すだろう司令と飛行長・・それにあのションベン野郎は縄に縛り付けてでも艦爆に乗せないと駄目だと考えながら、大和とのやり取りを思い出す高槻だった。

 

同じ頃・沖縄沖

 

「ゴーヤー、敵艦隊を発見したよ!」

 

「よし~、潜ったまま敵に近づくのでち」

 

「アレは打たなくていいの?」

 

「今回は、大和長官の返事を届けるのが目的なのでち」

 

「そうだね」

 

近づいてくるイ47とイ58を発見した駆逐艦がペアで接近するや、ヘッジホッグを投下した。

 

「シーナ、潜行するでち!」

 

「そうね・・・行くよ」

 

急速潜航して爆雷をやり過ごしたイ47とイ58は偽装用のゴミと排油と一緒に信書を入れたケースを魚雷発射管から放出した。

 

2隻とも撃沈したと思った駆逐艦娘は、浮かんでいるケースを回収した。

 

「信書が入ってるわよ」

 

「見せなさいな。・・・第五艦隊長官宛の信書だって!?長官に伝えるわよ」

 

駆逐艦娘より信書を渡されたニューメキシコは、それを読んだ。

 

「ご苦労様、ユー達は引き続き敵潜水艦に気を付けなさい!」

 

「はい!」

 

「何があったのかしら?」

 

コロラドがニューメキシコに尋ねた。彼女はコロラドに親書を見せた。

 

一読したコロラドも、我が意を得たりと頷く

 

「そう、ヤマトは受けて立つのね・・どうするの?」

 

「ブンゴ・ストレイトにいる潜水艦娘に追跡をするよう命ずるわ」

 

「攻撃はさせないよね」

 

「もちろん・・発見次第、追撃に専念しろと伝えるわ」

 

「そう・・キャリア連中には伝えるの?」

 

連中に任せるとロクなことをならない、と心配するコロラドが尋ねる。

 

ニューメキシコは答える。

 

「第5艦隊長官の権限でアンタ達は後ろに下がって、カミカゼに備えなさいと伝えるわ」

 

「頼むわね。ウェストバージニア達には私が伝える。あの子達も喜ぶわよ」

 

「任せるわ」

 

コロラドからの伝言は皆を喜ばせたが、機動部隊に御注進する者がいた。

 

その内容は空母機動部隊の耳にも入った。

 

「司令、どうするの?ヤマトは年増連中に任せるの?」

 

「姉さん、そんなことさせないわよ。今度こそ私達の手でヤマトをハントするよ!」

 

長姉になるエセックスに聞かれたバンカーヒルが答えた。

 

エセックスが焚きつける。

 

「私達は、ニューメキシコの指揮下に入ってるわよ。勝手に動いたら軍令違反で訴追されるわね?」

 

「でも、『機動部隊司令官は必要と判断すれば独自の判断で動ける』との但し書きがニミッツ長官とスプルアンス提督との間にあるじゃん・・それを利用するわ」

 

「そう・・アンタ、ワルね?」

 

「褒め言葉と取っておくわ。空母は私が説き伏せる。姉さんは巡洋艦と駆逐艦を抱き込んでね」

 

「サウスダコタやニュージャージーには伝えなくていいのかな?」

 

「アイツらに伝える必要にはないわよ・・四の五のゴネたら数で押し通します!」

 

「心得た」

 

戦局は動こうとしていた。

 

75年後の天界

 

「ニム、そろそろやるデチ」

 

「そうだね・・水偵発進」

 

「ニム、このリーパーとかいうドローンは水偵だけでなく爆撃もできるそうね~今のゲタばきは凄いね~」

 

アヤカシから現代版・晴嵐を貰った伊401が笑う。

 

伊58は、伊47に録音機の具合を尋ねた。

 

「シーナ、マシーンの調子はどうかしら」

 

「バッチリ、音声クリアーだよ。あの時にこれぐらい性能のいい音響装置さえあれば・・・」

 

「昔の愚痴は後だよ。今は仕事!」

 

3隻から発進した晴嵐は、米国村本部に接近し録音を始めた。

 

「間違いない、大統領クラスの空母も襲撃に参加するのデチ!」

 

「アヤカシが言った通りね・・・晴嵐を近づけるよ。シオイ、ニム、ゴーヤー、頼んだよ!」

 

接近した晴嵐に気づいてない米国空母部隊は、あの時と同じ様に、闇討ちの計画を立てていた。

 

(続く)


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