なんとなく頭の中に湧いてでた妄想を書き起こしたもの。

何か似合いそうだと思ったの。
他にもトレセン学園を雛見沢に見立ててひぐらしっぽくするのもありかと思われ。

誰か書いてくんないかなー(チラッチラッ)

※無言でチラ裏へ移動。

※Fate/staynightとウマ娘のクロス物。ぶっちゃけウマ娘側のキャラを掴みきれてないまま書いた。

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妄想を書き起こしたもの。
だからキャラも掴みきれてない。

この界隈の二次創作って、原作ガチ勢よりもリアル馬主の方が怖いと思うの、ぶっちゃけ。


『―――ついて来れるか―――』 そんな無銘のウマ娘の、最後のレースの話

 12月の末にある、日本の競バ界のドリームレースとされる、『有マ記念』。

 

 千葉県船橋市にある中山競バ場で開催されるそのGIレースには、このレースに出走するウマ娘達、並びに彼女らのレースを一目見る為に、多くの観客が詰めかけていた。

 

 観客達の人気をその身に集めているウマ娘は2人。

 

 1人目は、パドックの中で鍛え抜かれた完璧な肉体を披露し、緑色の軍服の様な勝負服を身に纏っているウマ娘―――その名を『シンボリルドルフ』。

 

 彼女は菊花賞や天皇賞・春など、名だたるGIレースを7勝し、見事七冠をその手に掴み取った、正真正銘の『皇帝』である。

 

 彼女がこれまでのレースで敗北を喫した事は三度しかなく、『勝利より、たった三度の敗北を語りたくなるウマ娘』とはよく言った言葉である。

 

 今レースにおいては、彼女はその勝率から1番人気をその身に背負い、パドックからゲート前へと歩みを進めんとしている。

 

 ―――そして、そんな皇帝に挑むウマ娘が、ここに1人。

 

 長く腰の辺りまで伸び、鈍く錆び付いたかのような赤銅色の髪の毛を滑らかに払い、真紅の外套を風に翻しながら前へと、ゆっくりと1歩ずつ着実にその足を進めるのは、2番人気のウマ娘。

 

 その名を―――

 

 

―――『ムメイ(無銘)』。

 

 彼女は1年前にデビューを迎えると、立て続けに桜花賞、オークス、秋華賞を勝利し、トリプルティアラを達成。

 その功績を認められ、今回の有マ記念への出走権を手に入れることのできたウマ娘だ。

 

 が、彼女の戦績はその3勝しかなく、彼女が手に入れたトリプルティアラも、まぐれで手に入れただけでは無いのかと疑問視する声も少なくは無かった。

 

 だが、これまでに出走したレースで、彼女は3位以下になった事はなく、なおかつその成績もハナ差での敗北という、かなりの好成績である事が事実として残っている為、今回の2番人気となった。

 

 赤銅色の髪を持つ彼女は、ただ前のみを見据えて歩みを進める。

 

 その鈍い銅色をした目にはもはや目の前(ターフ)の景色などは映っておらず、映っているのはただ自身が優勝カップを手にした光景だけだ。

 

 彼女は薄らと顔に笑みを浮かべる。

 しかしその笑みは、なにかに微笑むかのような柔らかい笑みではなく、ただ目の前の獲物を捉える、捕食者の笑みだった。

 

 ゲート内に集まるは16人のウマ娘。

 全員がレースの始まりを今か今かと待ちわびている。

 

 ファンファーレが辺り一体に鳴り響き、レースの始まりを嫌が応にも意識させる。

 

 ファンファーレが鳴り終わると、彼女は左足を後ろへゆっくりと下げ、両手を地に付ける。

 

 陸上競技の用語で『クラウチングスタート』と呼ばれる体制をとった彼女に、自然と観客の目は集まる。

 

 ―――一体彼女は何をしているんだ、と。

 

 確かに、クラウチングスタートというのは主に短距離走において使用されるスタートの方法であり、まかり間違っても中距離、ひいては今回の有マ記念の様な長距離走で使う様なスタート法方法では無い。

 

 だが、この光景を目にした皇帝はひとり歓喜する。

 

 ―――あぁ、ようやく彼女は本気を出してくれたのか、と―――! 

 

 そして、ゲートが開く瞬間が近づいてくるのを、この場にいる全員が感じ取る。

 本来、それは感じとれるようなものでは無いが、高揚感、そしてこの場の一体感が、全員の感覚を完全な物へと研ぎ澄ませていくのである。

 

 そして、歓声の鎮まった一瞬を切り裂くかのように、鈍く金属音を立てゲートが開く。

 

 ゲート内に居たウマ娘達は、この瞬間が分かっていたかのように、ゲートとのタイミングを合わせて、夢へと繋がる舞台へとその足を回転させる。

 

 しかし、彼女は開いたゲートから一切前に進むことはなく、クラウチングスタートの体勢のままゲート内に佇んでいる。

 

 観客達から、困惑の声と視線がぶつけられる。

 

 しかし、彼女はそんな物が見えていない、聞こえていないとでも言うかのように、直立不動を保っていた。

 

 そんな彼女の思考は、3年前、つまりデビュー前の、あの瞬間へと回帰していた―――。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ―――3年前。

 

 スピードも高くなく、逃げ切るだけの足もパワーもない、そんなどこにでも居るような、ごく普通のウマ娘であった『ムメイ』は、東京の府中にある、『日本ウマ娘トレーニングセンター学園』内にあるターフの上で、黙々とトレーニングを積んでいた。

 

 トレーニングを終えたムメイが、自身の宿舎である『栗東寮(りっとうりょう)』へと引き上げている途中、彼女は不思議な光景を目にした。

 

 午後も8時を迎えようとしていて、本来なら誰もいるはずのない、トレセン学園の校舎裏。

 そこから、何故か青白い、月の光のような光が漏れていたのだ。

 

 真っ当な人間やウマ娘なら、見なかったことにしてこの場を立ち去るのだろうが、彼女は少しの好奇心と、あの奇妙な生物である『ゴールドシップ』という友人のことを想いながら、足をそちらの方に向けてしまったのである。

 

 歩いて数分もかからないような、そんな近い場所から光は漏れていた。

 

 壁の陰となるような部分から、そっと彼女は頭を出し、そして辺りを見回した。

 

 ―――そして少女は、運命と出会った。

 

 時間は止まっていた。

 恐らくは1秒すらなかった光景。

 

 されど。

 その姿ならば、たとえ地獄に落ちようと、鮮明に思い返すことが出来るだろう。

 

 

『――――――』

 

 少女は宝石のような瞳で、なんの感情もなくムメイを見据えた後。

 

『―――問おう、あなたが私の担当か』

 

 凛とした声で、そう言った。

 

 

 

 


 

 

 そうして、トレーナーを名乗る少女と契約を結んだムメイは、6戦3勝という普遍的な成績ながらもトリプルティアラを獲得するという偉業を達成し、この有マ記念、そして今度新設されるという『URAファイナルズ』というレースへの出走券を獲得できたのだ。

 

 ムメイは未だ一人、ゲートの中に佇んでいる。

 

 しかし、いつの間にかその頭は前を向き、何周もした後にようやくたどり着くことの出来る、先頭の者だけが見ることの出来る景色を、その手に掴まんとしていた。

 

 ―――機は整った。後はこの足を全力で前へ飛ばし、ゴールを掴むだけだ―――! 

 

 

 ―――時間にしておよそ30秒。先頭との差は約30バ身。

 

 

 一瞬だ。そうムメイは直感した。

 

 そう、ムメイの本気ならば、この程度の差など、数十秒もしないうちに埋められてしまうのだから……! 

 

「I am the bone of my sword―――」

 

 こんな体になってしまったが故に、使える訳も無い詠唱を、ゲート内で一人呟く。

 

 そしてムメイは、先頭の景色を掴み取るために駆け出していった―――!! 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ターフの先頭を駆け抜けているシンボリルドルフや、それに続くウマ娘達、そして、観客席からこのレースを見ている者たちは、大いに困惑していた。

 

 と言うのも、事前人気では2番人気を獲得していたウマ娘―――『ムメイ』が、レース開始から三十秒近く経っても、ゲートから走り出す気配が見えないからだ。

 

 ―――一体彼女に何が、とレースを見ていた観客達や、レースを走るウマ娘達は思っていた。

 

 しかし、皇帝―――シンボリルドルフだけは違っていた。

 彼女は歓喜していたのだ。

 

 

 ―――あぁ、ようやく本気の君と戦える。

 

 

 そう思うと、この息苦しさもなんてことないように感じられるのだ。

 

 そしてレースが進み、シンボリルドルフが1500メートルの表示を踏んだ瞬間。

 

 ―――ゲートから、何かが爆発するような音が聞こえてくる。

 

 見れば、ようやくムメイがゲートを飛び出し、爆発的な推進力―――比喩ではなく、実際に彼女が踏み込んだところは爆発したかのようになっている―――を伴って、先頭を目指して駆け抜けてくるではないか。

 

 なんだ、と他のウマ娘達は困惑―――否、恐怖する。

 

 だが、皇帝だけは違った。

 

 本気の彼女と戦える楽しさを、そして、あの速さでこちらへと迫ってくる彼女―――『赤原猟犬(フルンティング)』の二つ名を冠する彼女への恐怖すらも糧にして、今、『皇帝』シンボリルドルフは加速する……!! 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 私は疾走する。

 

 たった一人、レースに勝った者のみが見ることの出来る景色を目指して、疾走する。

 

 だんだんと視界から色が消えていき、周りの景色はまるで引き伸ばされた絵画のように固定され、私はその中を突き進んで行く。

 

 

 ―――瞬間、私の目の前に広がるのはありえない景色。

 

 逆風の吹き付ける丘に、()()()は立っていた。

 憎たらしいほどニヒルに笑うソイツの後ろ姿は、有り得ない筈なのに、どうしてもかの皇帝様と重なって見えてしまう。

 

 

 

 "―――ついて来れるか―――"

 

 

 

 

 そう語る背中を見せる奴に向け、私は獰猛に笑い、そして猛り狂ったかのように叫び、ありったけの力を持って加速する。

 

「―――ついて来れるか、じゃねえ 

 てめえの方こそ、ついてきやがれ───!」

 

 はるか遠くで、否、すぐ目の前で、皇帝の顔が驚愕に歪む。

 

 あぁ、どうだ見たか。

 これが、貴様に挑む―――『猟犬』の姿だッ……!!! 

 

 

 

 


 

 

 

 

 その日、私―――シンボリルドルフは、初めてレースにおいて純粋な『恐怖』という感情を抱いた。

 

 ムメイ―――最近になってようやく頭角を表してきたウマ娘の1人で、なおかつ私と古くからしのぎを削りあっている好敵手(ライバル)同士だ。トレセン学園の副会長である『エアグルーヴ』を破り、見事トリプルティアラを達成したその実力は伊達ではない―――は、ゲート内に佇み、スタートをするタイミングを自身で計っていた。

 

 ……その、はずだった。

 

 その彼女が―――

 

「うをおおおぉおおぉおおぉっ!!!!!」

 

 ―――30バ身近くあった差を、その自慢の脚力をもって、およそ30秒足らずで詰めてきていた……!! 

 

 背後からは、まるで地面が爆発しているかのような振動と音が、彼女の踏み出す足に呼応して生み出されている。

 その音は私の背後に常にピッタリとくっついているかのように、脳内に焼き付いて離れることがない。

 

 私は背筋に冷たいものが流れ落ちるのを感じながらも、自身を鼓舞するかのように口角を上げる。

 

 それと同時に、自身の体に紫電が纏わり付き、体の内から力が溢れ出るのを感じる。

 

()ッ―――!」

 

 私は呼吸を少し浅くすると、長距離ではありえないようなペースで足を回転させる。

 

 最後尾、それもスタート地点からの急なダッシュであったと言うのに、全くスピードの衰える気配のない彼女と横一線になり、残り1000メートル近くあるターフを駆け抜ける。

 

 ―――どうだ見たか、これが貴様の超える壁……。『皇帝』シンボリルドルフの力だ……!! 

 

 その時の私は、『皇帝』なんて肩書きは投げ捨てた、ただの『好敵手』だった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 私は横を駆けるシンボリルドルフを横目に、体全体に更に力を入れる。

 

 体の内側、本来なら内臓などの器官があるそこ。

 そこに私は、決して多くは無い『力』を注ぎ込む。

 

 その力は、この世界ではありえないもの。

 

 ここではない、とある並行世界で、最上級の神秘とされるその力を、私はこの時のために、全て使い果たす。

 

 ―――ピシリ、と視界に亀裂が入り、何だかモヤもかかり始める。

 

『おい、その先は地獄だぞ』

 

 かつて私の事を担当していた元・トレーナーの声が、何故か今になって頭の奥から湧いてでる。

 

 ―――これが私の忘れたものだ。確かに始まりは憧れだった。けど、根底にあったものは願いなんだよ。この地獄を覆してほしいという願い……誰かの力になりたかったのに…… 結局、何もかも取りこぼしたウマ娘の果たされなかった願いだ。

 

 だから、今の私はこう答える。

 

 ―――たとえその先が地獄だとしても、私は戦う。それが、今の自分に出来る最大限の努力で、尚且つ過去の自分に出来る、最高の恩返しなのだから……!! 

 

「「うをおおぉおおっ!!!」」

 

 私達は体の限界なんてとっくに迎えているはずなのに、そんな枷なんて無いかのように、トップスピードを上げ続ける。

 

 あぁ、これで最後。

 これで最後なのだから、両者ともに出し惜しみなんてしていられない。

 

 白くモヤのかかる、ひび割れた視界に映るのは、横を競い合うシンボリルドルフと、地の緑一色。

 そして、先頭の者だけが手に入れることの出来る、ウマ娘ならば誰もが憧れる世界―――。

 

「―――届け」

 

「―――届けっ……」

 

「「―――届けぇっ!!!」」

 

 私とシンボリルドルフは力一杯手を、それも同時に、全力で伸ばしながら、中山のゴールへと向かいゆく。

 

 ―――タァンッ……。

 

 そんな軽快な音が、辺りに響く。

 私と彼女が、ほぼ同時にゴール板の前を駆け抜ける直前、力一杯足を踏み込ませた、その音だ。

 

 私はターフに倒れ込むようにして、着順を示す電光掲示板を睨み付けるようにして、その表示される順位をこの目に焼きつける。

 

 視界の端に映るシンボリルドルフも、どうやら私と同じようなことをしているらしかった。

 

 観客席から段々と熱狂の声が湧き始める頃、ようやく掲示板に光が点る。

 

 

 その、表示されるゼッケンの内容は……―――。

 

 




レースの結果はご想像におまかせします。

それとすごいシリアスとか含みのある感じの文章だったけど、続きも過去編も書く気も無いし考えてない、まる。

【追記】
上げてから10数分で誤字報告が来るバ鹿です、すいませんでした。


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