棺と踊れ、ジルバを刻め   作:ザタキシード

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課題

 

件のレイプ未遂事件から1週間と少しが経過した。

 

あの2人は近い内に査問委員会への出頭が命令されると、あの憲兵が言っていた。

 

まあ、要するにあの2人は銃殺刑か、良くて強制除隊後留置所行きかのどちらかが待っているということだ。

 

それでも。

 

アイツはまだ立ち直りきれていない。

 

流石に泣き寝入り、とまでは行かなかったがそれでも豹変という言葉が合うくらいには変わった。

 

昨日も、一昨日も、一昨々日も、戦闘訓練の参加を俺が無理矢理辞退させた。

 

本人は至って不本意そうと言うか、文句あり気な態度を示してきたが、アレは無理だ。

 

俺が事故に巻き込まれる。

 

そう思わせるほどに、アイツの発する気配から覇気が抜けきっていた。

 

眼もまるで死んだ魚。

 

心なしか、少し顔がやつれてもいた気がする。

 

とにかく、今のアイツには銃火器はおろかナイフ1本を持たせることさえ危険極まりない。

 

・・・・・・面倒が多い女だ。

 

「・・・どうしたものか・・・・・・・・・」

 

分隊の事務室で自分のデスクにつきながら右手でこめかみを揉みほぐす。

 

「ん? 何がだ?」

 

「っ!?」

 

「お前が人目をはばからずにボヤくなんて珍しいこともあるもんだな」

 

「長門! お前いつから・・・」

 

「ん~? 結構前から? お前の百面相、面白かったぞ」

 

不覚だ。

 

まさか、悩み事にとらわれすぎて、独り言どころかまず人の存在さえ気付けなかったとは。

 

「で? どうしたんだ、んな難しい顔して」

 

長門が、俺の目を見据えながら言った。

 

「・・・・・・・・・」

 

俺も負けじと見据え返すと、長門がニヤリと口元をゆがめた。

 

「当ててやろうか? ズバリお前のバディことお嬢のことだろ?」

 

「・・・・・・・・・」

 

何なんだコイツ、人の悩み、否、当面の課題を勝手にズバスバ言い当てやがって、などと内心不貞腐れてみる。

 

「その拗ねた顔は当たりだな? お前はもうちょっとポーカーフェイスを覚えろ」

 

「うるせぇな。で、もしそうだとして何て言うつもりだ?」

 

うるせぇな、の下りで俺は長門の視線から逃げるようにして顔を少し逸らした。

 

「お前のその天性のチャッカリした性格、気に入ってるよ」

 

「チャッカリって何がだ」

 

「相手の指摘を否定しつつも、寛仁なところは自然と聞き出そうとするところ」

 

「んなことねぇよ。で、何なんだ?」

 

「そうだな、俺から言うことか・・・・・・」

 

「・・・・・・?」

 

「んんン~・・・・・・」

 

「・・・・・・何かあるんだろ?」

 

「・・・・・・そうだな・・・まぁ、早いとこ関係修復しろよってくらいかな。それなりの規模の作戦が控えてるってもっぱらの噂だしな」

 

「? それなりの規模の作戦? 何だそれ?」

 

「人様に向かって銃ぶっ放したあげくトラウマ植え付けたバカちんにはこれ以上教えてやんねぇよ」

 

「バカちんって、ああでもしねぇとアイツは」

 

「はいはい、弁明は聞かんよ~。そう言うのは査問委員会の時に言うべきだったな。とりあえず、ケアはしっかりしろな。これバディの義務」

 

長門は右手の人差し指を立てていった。

 

それからしばらく問答が続いたが、それも結果的に俺が長門に言いくるめられる形で決着が付いた。

 

「ま、お嬢の早期復帰、期待してるぜ~。じゃまたな」

 

ああ言えばこういう、を見事に体現して見せた長門は俺の言うことも無視して事務室を出ていった。

 

・・・・・・言いたいことだけ言って手前ぇとんずらこきやがるのか。

 

ドアが閉まる音が認識できた瞬間、この文言が頭の中に刻まれた。

 

恐らく今の俺は苦虫を噛み潰したような顔をしていると思う。

 

実際、今の心境はまさにそれだからだ。

 

「・・・・・・ケアって・・・何すりゃ良いんだよ」

 

取り残された俺は、力なくそう呟いていた。

 

 

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