棺と踊れ、ジルバを刻め   作:ザタキシード

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原因 1

 

俺は今、人事課の管轄である個人資料データバンクを覗いている。

 

調べているのは、無論あの小娘のことだ。

 

俺は、あの新人について知らないことが多すぎる、ソレが判明して俺はこの部屋に来た。

 

薄暗い部屋の中で、人事管理コンピューターのディスプレイが光る。

 

長時間見ていたら、目を悪くしそうだ。

 

検索人物名に「イリス・ローレンツ」と入力して、検索をかけた。

 

ディスプレイに、いくつもの顔写真が表示された。

 

どれもこれも、「イリス・ローレンツ」と言う名前の、

統合軍兵士達だ。

 

検索に引っかかった、同姓同名の人間の数はざっと5000人以上。

 

多い、多すぎる。

 

俺は、詳細の欄に「陸軍、装甲歩兵」の文字を追加して、さらに絞った。

 

それでも、1000人弱の人物が出てくる。

 

諦めて、俺は画面を下にスクロールし始めた。

 

同姓同名の違う顔、違う顔、違う顔。

 

何人目を数えたのかが、完全に分からなくなり始めたとき、お目当ての人物の顔写真を見つけた。

 

その顔写真にカーソルを持って行き、クリック。

 

すると、俺達の分隊にいる方の「イリス・ローレンツ」に関する履歴が表示された。

 

じっくりと、時間をかけてその1つ1つを丁寧に確認していく。

 

10数分かけて、全てを読んだ。

 

あの新人について分かったこと。

 

名前、イリス・ローレンツ。性別、女性。

 

2074年5月9日産まれ、血液型はA。

 

現在年齢、19歳で今年20歳になる。

 

統合軍個人認証コード、S1138TR5452A。

 

日本国籍所持、人種アングロサクソン。

 

両親は父親が元統合陸軍指揮官で最終回級は准将、母親は専業主婦。

 

しかし現在、どちらも死亡が確認されている。

 

死因は、少し前にあった第4次播州防衛戦に、父親は参加しそこで戦死、母親はその戦闘で出てきた撃ち漏らしに襲われたから。

 

何とも不運なことだ。

 

2092年4月1日、統合陸軍に入隊。志望兵科、装甲歩兵科。

 

入隊同期、親の敵を討ちたいから。

 

これも今の世の中じゃよく聞く安い台詞だ。

 

入隊した後の配属先、伊丹教育連隊第2大隊第1中隊守谷隊。

 

成績、座学実技ともにかなり優秀、しかし人付き合いを苦手とする傾向あり。教育隊内でも孤立気味だった。

 

教育隊を卒業後、一時的に臨時編成大隊に所属。

 

で、2094年3月8日、こっちの補充要員要請で、アイツがこの分隊にやってきた。

 

公式な最新情報はそこで更新が止まっていた。

 

「・・・・・なるほど」

 

俺は、顎に手を添えながら呟いた。

 

俺も、ようやくあの新人の周りの見えていない戦い方の原因を垣間見ることが出来た。

 

畜生、伊丹教育隊のアイツがいた小隊の教官がちゃんと仕事をしていないせいで、俺が今面倒な思いをしなきゃならないのか。

 

今この場にいたら、ソイツの土手っ腹にスパイク弾を撃ち込んで中から肉片に変えてやるのに。

 

そしたら、俺も少しは優しくなれるかも知れない。

 

まあ兎に角、なっちまったものは仕方がない。

 

ここに来たからには、新入り教育係である俺が、どうにかしなきゃいけない問題だ。

 

しかし、これは一筋縄でいくような問題じゃない。

 

怒鳴り散らかして口で言うのもだめ、殴る蹴るで体に刷り込ませることもまたしかり。

 

しかし、1回どこかでドギツい灸を据えないと、アイツはなかなかこっちの言うことも分からないだろう。

 

「何をやったらアイツは堪える・・・・・・?」

 

データファイルを閉じて、俺は独り言た。

 

何をすれば、アイツはこっちの言うことを理解してくれるのか?

 

オイタの過ぎるクソガキには、お仕置きが必要なのは確かなのだが、どうするべきかが分からないのだ。

 

アイツは、周りとの関わり方や頼り方をよく知らないまま、前時代的な兵士の鑑みたいな根性だけが深く根付いた、半端者なのだ。

 

記録に残っている情報と、今のアイツの評価を合わせるに、アイツは伊丹にいた頃は避けられるか、いじめられていたのかも知れない。

 

で、結果独りぼっちになって、頼れる仲間もいなかったから独りでも勝てる戦い方を身に付けることになったのだろう。

 

自分の命を粗末にして。

 

それが、今の俺たちにとっては目の上のたんこぶ以上に厄介な問題になっている。

 

とりあえず、だ。

 

今のアイツに必要なことは、まず命を粗末にさせないように考え方や性格を根本から更正することだ。

 

じゃないと、これからもこんなクソッタレな空気が続くのだろう。

 

教育係としての責務を果たさねばならない。

 

アイツ専用の再教育プランを作成するか・・・・・・。

 

俺は部屋を出て、分隊の事務室へ戻った。

 

頭の中で、出来うる限りの更正方法を考え出しながら。

 

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