イッチ「“個性”と言う特殊能力がある世界に転生したら“緑谷出久”って子が自殺したんだけど…どうしたらいい?」スレ民達『ハ?』   作:DestinyImpulse

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 今週のセイバーは戦闘が少ない代わりにシリアス多めでしたね。そろそろデザストと蓮のコンビが消えそうで少し寂しいですね…


悪との対面!こぶたが織り成す剣士の乱舞!!

 

 聖火が元教師を倒したその頃……広場では思わず息を呑む光景が広がっていた。

 

 かなりの人数のヴィランが倒されているが、その中央には黒い巨躯で鋭い牙、鳥のような尖った口、脳みそが剥き出しの頭部。聖火が倒した奴とは別の脳無が血塗れで腕をへし折られている相澤を押さえ込んでいる。

 

 

「個性を消せる。素敵だけどなんてことはないね。圧倒的な力の前ではつまり、ただの無個性だもの…」

 

 脳無は、手を体中に取り付けたヴィラン……死柄木のその一言で相澤の左腕をまるで枯れ枝を折るように粉砕した。

 

 

 そんな惨劇から少し離れた水辺に人影が見えた。蛙吹に峰田、上鳴……それに拳藤の4人がいた。水難ゾーンのチンピラ達を片付けて、広場に向かって居たが相澤が倒された光景を見て身動きが出来なくなっていた。

 

「……せ、先生……!」

 

「ダメだ…あれは無理だ…!」

 

「ケロ…」

 

「ウ、ウェイ…」

 

 悲鳴をあげないように口を両手で押さえながら、ガタガタと震えている峰田。蛙吹も表情こそ変わらないが恐怖心を必死で堪えている。個性の使い過ぎでショートしてる上鳴もその顔が恐怖に染まっていた。

 

 拳藤も必死に打開策を考えるが……恐怖で考えが纏らない。その時、死柄木の側に靄のヴィラン……黒霧が現れる。

 

「黒霧、13号は殺ったのか?」

 

「行動不能には出来たものの、散らし損ねた生徒がいまして……一人逃げられました」

 

「は?はぁ~!!」

 

 黒霧の報告に手を全身に付けた男…死柄木弔の首を掻きむしるスピードはエスカレートして行く。

 

「黒霧……お前……お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ…!流石に何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ。あーあ、今回はゲームオーバーだ。帰ろっか」

 

 

 帰る……死柄木のその言葉は拳藤達にも届いており峰田は脳天気に喜ぶが拳藤の内心は恐怖で一杯だった。

 

(オールマイトを殺したいんじゃないのか!? ここで帰ったら雄英の危機感が上がるだけだぞ!! ゲームオーバー? 何だ…何考えているんだ、こいつら!!)

 

「けどもその前に…平和の象徴としての矜持を少しでもーー」

 

 

 死柄木はそう言うと……

 

 

「ーーへし折って帰ろう」

 

 一瞬で拳藤達と距離を詰め……蛙吹に手を伸ばす。最初から気づかれてた!その事を拳藤が理解する間に死柄木は既に蛙吹に触れるが………何も起こらなかった。

 

「……ホントに格好いいぜ、イレイザーヘッド」

 

 既にズタボロだった相澤が個性を無効化していた。しかし、それも束の間、再び脳無が相澤を地面に叩きつける。

 

(ヤバい……ヤバいヤバい!全然違う…!さっきの奴らと全然違う!助けないと…!梅雨ちゃんや先生を助けないと!!)

 

 それを見て拳藤が咄嗟に拳を巨大化させて死柄木に殴りかかる。

 

「梅雨ちゃんを……………離せぇぇえ!!」

 

「……………脳無」

 

 そんな拳藤を見て特に焦りもせずに脳無の名を呼ぶ死柄木。すると先程まで相澤を掴んでいた脳無が一瞬で死柄木の盾となるべく拳藤に立ち塞がる。それでも構わず拳藤は脳無を思いっきりぶん殴るが……………

 

「……………え?」

 

 脳無は全くダメージを負った気配がなく、それどころか後退りもしなかった。

 

「ハハハハ……イイねその顔!」

 

 訳がわからないと言いたげな拳藤を嘲笑う死柄木、次の瞬間、脳無が拳藤にその腕を伸ばす。掴まれば最後、相澤みたいに潰される。

 

「ッ!」

 

 思わず目を瞑ってしまう。そんな事しても意味はないのに理性よりも恐怖が勝っている。

 

 しかし、何時まで経っても何も起きない……不思議に思い目を開けると……

 

 

「もう、大丈夫!」

 

 火炎剣烈火で脳無の腕を切り飛ばす仮面ライダーセイバー……剣聖火の姿が其処にはあった。

 

 

◆◆◆◆

 

 

 危なかった…!飛ばされた皆を耳郎達に任せて広場に向かっていたらボロボロになった相澤先生と今まさに襲われている拳藤達の姿を見て、間髪入れずにさっきとは別個体の脳無の腕を切り飛ばす。

 

 そのまま火炎剣烈火で炎の斬撃を放ちヴィラン達を吹き飛ばす。その隙に相澤先生を回収する。

 

「ホントに間一髪だったな」

 

「つ、…剣!!」

 

「剣ちゃん!」

 

 俺の姿を見て少しは恐怖が和らいだ様だ……色々と話したい事はあるが時間がない。

 

「拳藤…相澤先生と皆を連れて逃げろ!アイツ等は俺が食い止める!」

 

「で、でもよぉ剣…お前1人で…」

 

「峰田…気持ちは分かるが時間がない!」

 

「……皆、相澤先生を連れて行こう…今の私達じゃ足手まといになるだけだ」

 

 

 拳藤の言葉に皆、顔を俯かせつつも気絶した相澤先生を抱えてゲートの方に向かう。

 

「剣………負けないでね!」

 

「……………あぁ、心配するな」

 

 最後にそう言って離れていく拳藤を背後に感じながら、俺は構える……………爆煙が晴れると其処に脳無が無傷の姿で現れる。

 

 しかも、俺が切り飛ばした腕まで元通り……再生の個性か……。

 

「なんだ…?あのご当地ヒーローみたいな奴…?」

 

「あれは……仮面の剣士!」

 

 

 そしてコッチを品定めする様に見てくる体中に手を取り付けたヴィランと靄のヴィラン……あいつ等が死柄木と黒霧か……。

 

「一年前に噂になった、謎の剣士……まさかこの場で出会うとは……!」

 

「つまりレアキャラって事か!いいねー面白くなってきた……脳無!」

 

 死柄木の命令で脳無が動き出す……さっきの別個体と戦って分かった事がある……コイツら生き物というよりは、ロボットとかを見てる気分だ。

 

 

 

 だからこそ……人を殺すのに躊躇いがない。

 

 

 

 

 ニキネキ達や雄英での戦闘訓練とは全くの別……ホントの戦い。無意識に仮面の下で冷や汗が流れる。今の俺の姿は右半身が赤い龍、中心が赤い鷲、左半身が緑のブタを模した鎧で覆われている。

 

 コレは【ブレイブドラゴン】、【ストームイーグル】、そして【こぶた3兄弟】の3つのワンダーライドブックを使って変身した姿。【仮面ライダーセイバー ドラゴンイーグルぶた3】。機動力と防御力……そして“ある特殊能力”を備えた形態。

 

 そして俺は……とある事情で“フォームチェンジができない”……この姿でやるしかない。

 

 

「……ヤれ」

 

 

 一瞬だった。

 

 死柄木のその一言の後一瞬で距離を詰めた脳無がその巨腕を振り下ろしてきた。

 

(速い……!?)

 

 だけど捉えられない程じゃない……【ストームイーグルマスク*1】が備わったセイバーなら十分対処できる。

 

 そして……振り下ろしてきた拳を左前腕部に備えた防御シールド【ステッピッグワイズ】で防いでカウンターで切り裂こうと身構える。

 

 

 

 

 次の瞬間……俺は思いっきり壁に叩きつけられていた。

 

(……!?嘘だろ!今のセイバーは体重115.7kg、それをガード越しに殴り飛ばしやがった!)

 

 

 体中から激しい痛みがする。“初期状態”とはいえ【ステッピッグワイズ】の防御力を凌駕してる……“最初に防御しといてよかった”。

 

 攻撃力もデタラメだが速さもある……脳無は更に追い打ちをかけようと信じられない速さで距離を詰め再びパンチを繰り出してきた。

 

 だが……スピードなら俺も負けてない!即座に【バーミリオンウイング】を展開して旋回、パンチを回避してそのまま腕を切り落とす。

 

「……クソ」

 

 ……………が、やっぱりすぐに再生してしまう。痛みを感じないのだろう……痛がる素振りすら見せない。

 

「さっきのカマキリよりずっと強いじゃねぇか……!」

 

「ヘェ~アレを倒したんだ。少なくともガキに倒せる代物じゃないのに?」

 

「彼は我々の想定より上だったという事ですね」

 

「……はぁ、凄いなぁ…最近の子どもは…恥ずかしくなってくるぜ敵連合……まあいいや。コイツは別格だ!」

 

「そうかよ!!」

 

 そう言ってる間に空から急降下して顔面にケリを叩き込むが……

 

「効いて…ないのか?」

 

 

 脳無は全くダメージを負った気配がなく、反撃の拳を振り下ろしてきた。ギリギリのところでそれを避け、距離を取ると死柄木が楽しそうに手を叩いているのが視界の隅に見えた。

 

「残念!脳無には【ショック吸収】の個性があるから、打撃は一切通用しない」

 

 再生に加えてショック吸収……完全なるオールマイトアンチ。コイツがオールマイトを殺す切り札か…!

 

「だったら!!」

 

 

【ヘッジホッグ!ふむふむ…】

 

 黄色のライドブック、【ニードルヘッジホッグ】を火炎剣烈火の剣先にかざす。

 

「受けるがいい……我が刃!!」

 

【習得一閃!】

 

 

 火炎剣烈火を振るうと共に無数の針が脳無に突き刺さり、次の瞬間爆発した。

 

「普通ならこれで話は終わり……なんだけどな」

 

 残念な事にアイツは普通じゃない。多量の血がドバドバと流れ出すほどの怪我なのに……その体は、十秒と経たずに復元した。

 

「ハハハハ、お前凄いな!でも、無意味だ!こいつは対オールマイト用のヴィラン。叩こうが潰そうが切り刻もうが、ショック吸収と超速再生があるからどれだけダメージを与えた所でぜーんぶパーだ。肉片をゆっくり抉り取るぐらいの事はしないと」

 

 

 まるで玩具を自慢するかの様に嘲笑う死柄木……殴りたいその笑顔……だけど脳無の猛攻を凌ぐだけで精一杯だ。

 

 遂に防御にも綻びが生まれ脳無の拳が迫る……回避は不可能……再び、【ステッピッグワイズ】を構える。

 

「おいおい、ガードは無意味だって理解しただろ?」

 

 回避できないと分かって馬鹿にした様な死柄木の言葉が聞こえたと同時に脳無の拳が【ステッピッグワイズ】に叩き込まれた。

 

 

 

 

「……………間に合ったか」

 

 ……………が、最初と打って変わって俺は吹き飛ばされずに少し後退りだけだった。

 

「どうした、鳩が豆鉄砲喰らった様な顔して?」

 

 

 死柄木の訳がわからないと言わんばかりの表情が目に映る。それはそうだろう、最初はガード越しに殴り飛ばされた俺が今度はしっかりと防ぎきっているのだから。

 

「なんでだよっ!?なんで防いでるんだ!?おかしいだろ!?」

 

 まるで、チートをしても勝てなかった子供みたいな癇癪を起こす死柄木。……そのまま叫んでろ……こっちは“時間を稼がせて貰う”!

 

 

◆◆◆◆

 

 

141:名無しの転生者ハンター

 間に合ったか!

 

142:ありふれた赤龍帝

 どういう事ですか、ハンターニキ?

 

143:名無しのトマト

 最初、ガードしても思いっきり殴り飛ばされたのになんで今度は防ぎきれたんですか?

 

144:赤目の主人公

 あの盾に何かあるのか?

 

145:名無しの転生者ハンター

 その通りだ、ドラゴンイーグルぶた3の左腕の防御シールド【ステッピッグワイズ】は高い学習能力を持ち、外敵から受けた攻撃を学ぶことで更に防御力を上げる事ができる。

 

146:グランドマスター

 なるほど、だから最初に防御したのか……

 

147:名無しのライダー

 流石、仮面ライダー、便利な能力持ってるな。

 

148:名無しのわんわんお

 これで、脳無と最低限戦えるな!

 

149:名無しのゴッドイーター

 だが、戦えるだけであって勝てる訳ではない。

 

150:赤目の主人公

 そうだな…脳無の超再生を上回るダメージを与えないと勝てない…今のままじゃ火力不足だ。

 

151:名無しの転生者ハンター

 その点は心配ないだろう……

 

152:グランドマスター

 そうだね、問題はそこまで耐えられるか……

 

153:名無しのトマト

 そこが勝負の分かれ目ですね…!

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

「剣……!」

 

  

 USJの広場で激闘を繰り広げる聖火と脳無……その様子をゲート前に相澤達を避難させた拳藤が心配そうに見つめていた。

 

 火炎剣烈火から放たれる斬撃が脳無の皮膚を切り裂きその身を焼くが……次の瞬間超再生で瞬く間に元通り。そして脳無の剛腕を聖火は紙一重で躱したり【ステッピッグワイズ】で防御してやり過ごす。

 

「……………剣の奴…ホントに勝てるのか?」

 

「ッ……剣が負けるって言うのか!?」

 

 近くで呟いた峰田に拳藤が猛反論。

 

 自分達の為に戦ってるのに勝利を信じきれてない事に拳藤は怒りを見せた。

 

「で、でもよ…!あの化け物、斬っても斬ってもすぐに再生するんだぜ!キリがねぇよ!」

 

「だけど……!」

 

 峰田もその事は悪いと思ってるだろう……だけど、確かに言う通りでもある。

 

 斬っても焼いても無慈悲に再生する脳無に対して、ダメージを最小限に抑えているとはいえ、脳無のデタラメなパワーではその最小限すら、聖火の身体に響く。

 

 このまま状況が拮抗すればいつか聖火の方が音を上げるのは火を見るより明らかだ。

 

 

「ハハハッ! 残念だったな! お前のチンケな攻撃じゃ脳無の超再生は破れない!」

 

「……そうだな……確かにその通りだ」

 

「剣でも勝てないのか……!」

 

「クソぉぉ……!」

 

「あぁ……主よ…!」

 

 

 死柄木の言葉に反論しない聖火………その言葉にゲート前に居た者達の表情に絶望が浮かんできた。

 

「確かに…俺だけじゃその脳無は倒せない……“俺だけじゃな”」

 

 

 

【ピーターファン!ふむふむ……】

 

「ハァっ!」

 

 

【習得一閃!】

 

 

 その時、全く別の方向から伸縮自在の【キャプチャーフック】が飛び出し脳無を吹き飛ばした。

 

 飛んできた先を見てみれば……

 

 

「主役は遅れてくるってね」

 

 

 仮面ライダーセイバー・ドラゴンイーグルぶた3が其処に居た。

 

「な、ナニィィィ!?」

 

「剣が二人……そうか!」

 

 

 しかし、今まで戦っていた聖火とは別者だ!誰もが目を見開く中、現れたセイバーと共に聖火は脳無に火炎剣烈火を叩きつける。

 

「ど、どういう事だ!?何故、仮面の剣士が二人も居る!?」

 

「どんな手品か知らねぇが二人になった所で脳無には勝てねぇ!!」

 

 予想外の事に慌てふためく黒霧と死柄木。しかし、二人になった所で脳無には勝てないと落ち着こうとする。

 

「「さ~て、二人かな?」」

 

 脳無に火炎剣烈火を叩きつけた二人の聖火は【バーミリオンウィング】を展開して共に距離を取る。

 

 

【ジャックと豆の木!!ふむふむ!】

 

【習得一閃!】

 

 

 次の瞬間、上空から大量の土豆の弾丸が脳無に降り注ぐ……まさかと冷や汗を流し始めた死柄木が視線を上に向ければ……

 

 

「俺も居るよ!」

 

 

 上空から三人目の聖火……仮面ライダーセイバー・ドラゴンイーグルぶた3が現れる。

 

 

「……………もう一人、増えやがった……………何なんだよアイツはさぁ!?」

 

 

 二人に増えた事すら驚きを隠せないのに、三人目が現れた事で最初の余裕はもう無くなっていた。

 

「フンッ!!」

 

「げぼぁっ!」

 

 故に現れたブラドキングに気づかず顔面に拳を叩き込まれ殴り飛ばされる。

 

「死柄木弔!」

 

 

 当然、黒霧は死柄木の安否の為に駆け寄ろうとするが……

 

「ナニ!?」

 

 突如として下半身が凍りつき動けなくなる。

 

「やっぱりお前、実体部分を靄で覆ってたんだな。だから「危ない」って言葉が出た……違うか?」

 

「ぬぅ…!」

 

 次に現れた轟の言葉に反論できない黒霧……周りを見回すと他のエリアに飛ばした者達が集まっていた。

 

 

「皆無事だったのね!!」

 

「よ、…良かったァァァ!」

 

「あぁ、主よ…感謝します」

 

 

 飛ばされた皆は無事なのか不安だったゲート前の生徒達もそれを見て安堵する。

 

 

「そうだったのか!剣は広場に来る前にこぶた3兄弟の力で三人に分身してたんだ!!」

 

 そう拳藤の言う通り、聖火は広場に来る前にドラゴンイーグルぶた3に変身し、こぶた3兄弟の3人に分身する能力を使っていた。

 

 本体は広場に行き、首謀者達の足止め。残った2つの分身で飛ばされた皆の救出。それが終わり次第、三人がかりで首謀者達を撃破する作戦だったのだ。

 

 しかし、問題もあった。分身は現在の姿で現れる。故にフォームチェンジしてしまうと分身は消えてしまう為、フォームチェンジができない。そして本体が大きなダメージを負ってしまうと分身は消えてしまう。

 

 だから聖火はそれまで回避と防御に専念して時間を稼いでいたのだ。

 

 

「剣、大丈夫!?」

 

 飛ばされた皆を連れてきた耳郎が聖火*2に駆け寄る。耳郎自身、皆の救出をしている間、聖火の無事を心配していた。

 

「心配するな耳郎、この通り問題ない。……………合図をしたら心音を頼む」

 

「……………うん、分かった」

 

 そんな耳郎に聖火は己の無事と“ある頼み事”をする。顔を強張らせつつも承諾してくれた耳郎に感謝しながら死柄木に視線を向ける。

 

脱出口(黒霧)は抑え、お前もブラド先生に拘束された……………これで話は終わりだ」

 

 

 黒霧は轟によって腰から下まで凍らされ、死柄木自身、地面に叩きつけられ凝固された血と共にブラドキングによって拘束されていた。ブラドキングの個性“操血”は自身の血を自在に操ることができる。故にヒーローコスチュームの管に血を伝せて籠手等から血を放出でき、瞬時に凝固させて拘束する。

 

 

「その通りだ…潔く投降しろ」

 

 ブラドキングも投降を呼びかける……………見守る生徒達もこれで終わってほしいと願う。

 

「……ざけん……な……ふざけんな!まだ殺し(ゲーム)は終わってねぇ!!」

 

「…やっぱ駄目か……頼む耳郎!ブラド先生は俺が回収する!」

 

「うん!」

 

 が……拘束から逃れようと我武者羅に暴れる死柄木の目から諦めは感じず、狂気だけが宿っていた。それを感じた聖火はすぐに耳郎に合図を送る。

 

「殺れ!プロも!ガキも!そこの剣士も!そいつら全員ぶっ殺せ!!脳『♪〜!!!!』ーーグァァァァ!?」

 

 再び脳無を動かそうと命令を下すが……それを遮る様に耳郎から心音が放たれた。ブラドキングは聖火*3に回収され、唯一人取り残された死柄木は絶叫する。

 

 主がそんな状態だと言うのに脳無はピクリとも動かない……やっぱりそうだと聖火は自分の考えが当たった事を察した。

 

 戦っていて分かったのは脳無は死柄木の命令を聞いて動いている。つまり命令が聞こえなければ脳無は動かない!

 

「……ウチはココまで、剣!」

 

「充分過ぎる、サンキュー耳郎!!」

 

 

 脳無が動かぬ隙をついて三人の聖火が勝負に出る。

 

 

 

「「「さぁ、フィナーレだ!!」」」

 

 

 二人の分身がそれぞれ火炎剣烈火をドライバーに戻してトリガーを2回引いた。

 

 

【【ドラゴン!イーグル!3匹の子豚!三冊斬り!ファ・ファ・ファ・ファイヤー!!】】

 

 

「「火炎舞飛斬(かえんぶひざん)!!」」

 

 

 轟との特別試合に放たれた時よりも激しい獄炎の竜巻……火炎舞飛斬。それが2つ合わさり激しく燃え上がる竜巻となって脳無を飲み込む。

 

 切り裂かれて再生、燃やされて再生……何度も何度もそれを繰り返す。しかし……次第に脳無の再生スピードが落ちていく。

 

 確かに脳無の超再生は凄まじい…聖火一人では火力が足りない。しかし、聖火が三人居れば話は別だ。

 

 再生スピードが落ちた脳無にトドメを刺すべく聖火*4はバーミリオンウィングを展開してUSJギリギリの高さ迄跳び上がり納刀状態の火炎剣烈火のトリガーを2回引いて……………

 

 

【必殺読破!!】

 

【ドラゴン!イーグル!3匹の子豚!三冊撃!ファ・ファ・ファ・ファイヤー!!】

 

 

 

火龍蹴撃破(ひりゅうしゅうげきは)!!」

 

 

 一気に降下!3冊分のエネルギーを糧に激しく燃え上がる獄炎が右足に宿り、脳無を飲み込んだ火炎舞飛斬を吹き飛ばし脳無の土手っ腹に深く突き刺さる。

 

 それと同時にページ型のエネルギー体が脳無の後ろに出現し、同時に現れた火炎剣烈火型のエネルギー体と共に突き進む。

 

「ハァァァーー!!」

 

 合計十一枚のページを突き進んだ先に待っていた本型のエネルギー体に脳無を叩きつけ、火炎剣烈火型のエネルギーが本ごと脳無に突き刺さり聖火が本を突き破った瞬間、本が脳無を巻き込み大爆発を起こす!

 

 

「ふぃー……」

 

 地面に着地し一息入れる聖火、分身もいつの間にか消えており少し間を置いて脳無が地面に激突する。超再生もショック吸収も意味をなさない程のダメージを叩きつけられた脳無は全身大火傷を負って沈黙した。

 

 

「勝った……………剣が勝ったんだ!!」

 

 

 拳藤の歓喜の声が響くと同時に他の生徒達も我が事の様に歓声を上げる。

 

「剣……………良かった」

 

 そんな中で耳郎はそっと、自分が感じていた不安は気の所為だったと……剣が無事だった事を安堵する。

 

 

 

 

 ……………それが錯覚とも知らずに……

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

154:名無しのトマト

 よっしゃ!イッチが勝った!

 

155:ありふれた赤龍帝

 スペックじゃあ脳無が上だったけど、能力を完璧に使いこなしたイッチの作戦勝ち!

 

156:名無しのゴッドイーター

 ………………まだだ。

 

157:名無しのトマト

 神喰ニキ?それってどう言う……

 

158:赤目の主人公

 まだ終わってないって事だ。

 

159:ありふれた赤龍帝

 アスカニキ……でも、脳無は再起不能!死柄木達だって拘束されてる!

 

160:グランドマスター

 確かにその通りだよ。だけどね……死と隣り合わせの人生を歩んでいると……身に付くんだ、直感とも言うべきモノが。

 

161:名無しのトマト

 ……………直感?

 

162:名無しのわんわんお

 イッチやトマト君、赤龍帝ちゃんはまだ日が浅いから分からないかも知れないが……言葉では言い表せない本能とも言うべきモノが言ってるんだ。

 

163:名無しの転生者ハンター

 戦いはまだ終わらない!…ってな!

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「う、嘘だろ!?あの脳無が…先生の最高傑作が!あんな餓鬼なんぞになんで負けんだよ!?クソぉぉ…!巫山戯んな!離せ!離せよ!!」

 

 “脳無の負け”と言う現実がよっぽど受け入れられないのか子供の様に喚き散らす死柄木。

 

 正直、結構ギリギリだった……脳無の肉体的スペックはセイバーを大きく上回ってた。回避するにも全神経を集中させないといけないし、幾ら【ステッピッグワイズ】があっても脳無のデタラメなパワーを完全に防げる筈もなく全身が痛い……

 

 だけど、…ワープの黒霧は轟によって下半身が凍らされ、死柄木はブラドキングに拘束され脳無は聖火によって再起不能。

 

 これにて一件落ちゃーー『気をつけろ!まだ終わっていない!!』ーー神喰ニキ?

 

 

「………オールマイトならともかく、まさか生徒に脳無が倒されるとは…夢にも思いませんでしたよ」

 

 突然聞こえてきた神喰ニキの声に驚いたその時、喚き散らす死柄木とは対照的に顔を俯かせ黙っていた黒霧が突然喋りだした。

 

「しかも、負傷したのは教師たった二人だけ、生徒は全員無事……此方の完全敗北と認めざるをえない。……故に手段は選んでられない」

 

「させるものか!」

 

 まだ何かあるのかよ!ワープさせない為に下半身は凍っているが上半身は無事のまま、奴が何かする前に止めようとブラド先生に続く形で俺も動く。

 

 

 

「……………え?」

 

 

 

 だけど、黒霧が懐から出した“ソレ”を見て俺は一瞬、判断が遅れた。外見は掌に収まる程度大きさの細長いUSBメモリの様なそれは…まるで仮面ライダーWに登場する“ガイアメモリ”の様だった。

 

 

「下手をすればこっちが危ないですが……背に腹は変えられない!」

 

 

「T-REX」

 

 

 黒霧がメモリ下部に付いているボタンを押すと俺のとは違い、禍々しい掃き溜めの底から聞こえてくるような音声が流れ、ブラド先生が取り上げるよりも先に……メモリを投げた。

 

 その先には………ッ!脳無だ!再起不能になった脳無にメモリが突き刺さるとメモリは脳無の体の中に溶けていった。

 

「な!」

 

「しまった!」

 

 自らではなく再起不能となった脳無に……その選択が思いつかなかった俺とブラド先生は止める事ができなかった。

 

 

 

ドクンッ!

 

 

 

 そして……全身に大火傷を負った脳無の閉じていた目が再び開き体が大きく脈動した!何度も跳ねた後、手足が震え始め、全身の血管が浮き彫りになっていく…肉体は膨張を始め…その姿が変わっていく……

 

 

「なに……何が起こってるの?」

 

 近くに居た耳郎が顔を青くする。耳郎だけではない…その悍ましい光景に誰もが震える。

 

 

 鳥の様だった顔は何倍にも大きくなり刃物の様に鋭い牙を何本も備えた、凶悪なモノへと……

 

 腕は小さくなり指も三本迄減って、拳は無くなったが代わりに足がまるで大木の様に太くなりUSJの大地を踏み砕く……。

 

 

 元々、オールマイトの様に筋骨隆々だったその身体はその面影すら感じさせずに……メモリから流れた音声の通りにT-REX……ティラノサウルスの化け物へとその姿を変えた。

 

 

 

「グオオオオオオオオ!!!!」

 

 

 

 

 戦いはまだ終わっていなかった………

 

 

 

END

 

*1
セイバー ドラゴンイーグルぶた3の前額部。ストームイーグルワンダーライドブックの力を得たことで上空から地上の標的を的確に捉える鷹の目をもたらし、どんな些細な挙動も見逃すことはない。

*2
本体

*3
分身

*4
本体




 
 今回は死柄木との対面と脳無戦………今回はドラゴンイーグルぶた3が登場。分身能力を使って見事脳無を撃破しました。

 普通ならコレでUSJ編は終わりなんですが……本番はここからです!

 最初に言っておきますが今回登場したメモリは本物のガイアメモリではありません……脳無の姿が変わったのは個性です。なんでその様になったのかは……追々明らかにします。

 脳無の姿は黒い肌色をしたティラノサウルス。頭部は脳無特有の脳みそ丸出し状態です。

 連戦続きで心身ボロボロな聖火はどうやってこのピンチを乗り越えるのか……ヒントは私がこれまで出した後書きの中にあります。

 

外伝について

  • 別に分けてほしい
  • このままでいい

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