イッチ「“個性”と言う特殊能力がある世界に転生したら“緑谷出久”って子が自殺したんだけど…どうしたらいい?」スレ民達『ハ?』 作:DestinyImpulse
U S Jの襲撃で最初以外は見ている事しかできなかった耳郎の視界に映っているのは襲撃の首謀者である死柄木が脳無との戦いでボロボロになった聖火に襲いかかる瞬間だった。
このままじゃ剣が危ない!!でもウチなんかの力じゃ!
聖火を助けたい自分と命懸けの戦いを間近で見て怖がっている自分。二人の自分が言い合いしていて動けなかった彼女の視界の隅に脳無との戦いで弾き出された火炎剣烈火が地面に突き刺さっていた。
「ッ!」
行動は早かった。突き刺さっていた火炎剣烈火を引き抜き、素早く聖火と死柄木の間に駆け出し………
「…………………え…?」
自分が火炎剣烈火を持って駆け出した時には死柄木は聖火を射程圏内に捉える二、三歩前だった。だからこそ聖火を死柄木の触れた物体を崩壊させる手から守る為に火炎剣烈火を突き出した。
「ぎゃあアアアアアァァァァァァ!!!!?」
(え、なんで…?)
なのにどうして
持ち上げて振り下ろすよりも、突き出した方が圧倒的に速いのに、自分は突き出す選択をして、ギリギリ聖火の前に火炎剣烈火を突き出して死柄木の手を防いだ筈なのに。
おかしい、絶対におかしい。
そう思い視線を向けると……
真っ赤な血で染まった自分の両腕があった
「…………!」
その光景を見た途端、耳郎は目を覚まし、身体を勢いよく起き上がらせる。呼吸が荒く、全身にびっしょりと汗を掻いている。
震える身体で両腕を見る。
血など一滴もついてない綺麗な腕だった。
「………ここは?」
ホッと息を吐いてふと気になった。ここは一体、どこなのだろう、と。
「此処は保健室ですよ。耳郎さん」
そこまで考えたところで、ベッドのある場所から遠い位置にある扉が開かれる。現れたのは髪が全体的に紺色でつむじ周辺が黄色のツートンカラー、瞳には横一線のハイライトが入っている女性だ。体の至る所に包帯が巻かれており、ギプス棒を使って歩いている。
見慣れない人物だが、彼女は保健室と言った。ならば此処は雄英の保健室で彼女は雄英の人間の筈だ。
「素顔でお会いするのは初めてですよね。僕です、13号です」
「うそ!じゅ、13号先生!?」
しかし、正体はまさかの13号。確かに13号は宇宙服の様なヒーロースーツを身に纏い素顔が分からなかったが……正直言って驚きだ。
「あはは、さっき剣君にも驚かれましたよ」
「ッ!剣!?剣は大丈夫なんですか!?」
「落ち着いてください。彼ならリカバリーガールの治療で完治しています。何も問題はありません」
聖火の名前を聞き、今にも飛び上がりそうになる。USJ襲撃からずっと戦ってボロボロになった彼の安否は!しかし13号の説明で安堵し、落ち着きを取り戻す。
「……そうですか…よかった。あ、先生達は大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ。僕達はプロヒーローです。この様な負傷は何度もありますし、対応も身についてます」
包帯が巻かれ痛々しい姿の13号や脳無にやられた相澤を心配するが、13号は問題ないと即断する。プロヒーローとして幾多の修羅場を超えてきた教師が言うのだ、問題ないのだろう。
「さて、耳郎さん。僕が此処に来たのは貴女と話す為です」
「ウチと…ですか?」
質問も終わり落ち着きを取り戻した耳郎と13号は視線を合わせる。真剣に真っ直ぐ見つめる13号、一体何を話すのかと疑問と若干の緊張を抱いた耳郎。
「………耳郎さん」
13号の言葉は……
今の耳郎の核心を的確に突いていた。
◆◆◆◆
「耳郎……」
「耳郎少女……」
13号先生がやって来たその後、俺達は耳郎の居る保健室の前に居た。俺が見た“耳郎が死柄木の腕を切り飛ばす光景”。
第三者だった俺はまだいい。だが、耳郎は死柄木の腕を切り飛ばした当事者だ。幾ら相手がヴィランであり現実ではなく幻だったとしても人の腕を切り飛ばしたのだ、精神的ショックは大きい筈。
13号先生が任せてほしいと言ってたが心配だ。
「師弟揃ってソワソワしすぎだよ。もうちょっと落ち着きな」
そんな俺とオールマイトをリカバリーガールが呆れた様子で注意してくる。因みに塚内さんは刑事の仕事が残っているそうで此処にはいない。
「しかし、リカバリーガール。耳郎少女は……」
「此処は13号に任せるんだよ。アンタがNo. 1ヒーローだとしても教師としては13号の方が遥かに先輩なんだ」
確かに今年に教師になったオールマイトよりも雄英に何年も勤務して教師として活躍する13号先生に任せた方がいい。
それに……
『超人社会は個性の使用を資格制にし、厳しく規制することで、一見成り立っているように見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる、いきすぎた個性を個々が持っていることを忘れないで下さい。相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したと思います。この授業では心機一転!人命のためにどう個性を活用するかを学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない、助けるためにあるのだと心得て帰って下さいな。以上!ご清聴ありがとうございました』
耳郎のショックが人を傷つけた事だとすれば13号先生ほど適任は居ない筈だ。
◆◆◆◆
「な、何を…」
13号が言った言葉「自分が怖いですか」。先程まで血で真っ赤に染まった自分の両腕の悪夢を見た耳郎の心に確かに響いていた。
「僕もヒーローとしてそれなりに長いですからね……知ってるんですよ。
「っ……」
「ヴィランとの戦いで関係ない人を知らずに巻き込んでしまった人、必要以上にヴィランを傷つけてしまった人……そして
それはこれ迄のヒーロー活動の中で経験した事だろう。淡々と語った後、13号は耳郎を見つめ…
「耳郎さん…あの時、何があったんですか?」
核心に迫る。優しく真剣に寄り添おうとする13号に先程の悪夢で本人の気づかぬ内に精神がすり減っていた耳郎は俯きながら語りだす。
「………剣は凄い奴でした。誰よりもヴィランに立ち向かって、ヴィランに恐怖して動けなかったウチを勇気づけてくれて…」
「………」
「ウチも戦えるって、剣の力になれるって、剣を一人で戦わせないって…思ったのに……結局何もできなかった。剣が全部なんとかしてくれた……」
「……そうですね。剣君は雄英の歴史を見ても頭一つ飛び出てます」
オールマイトの弟子である聖火。彼の実力はプロヒーローである13号からしても目を惹くものがある。
「でも剣だって無敵じゃない……ウチ達を守る為にボロボロになって…見ているだけの自分が辛くて……」
次第に瞳に涙が溜まっていく。脳無との戦いでボロボロになった聖火を思うと無力な自分が嫌で苦しくなる。
「剣が殺されそうになって…助けたいのに…!何もできないって…思ってる自分が居て…!そんな時に剣の火炎剣烈火が目の前にあって…」
気づけば火炎剣烈火を引き抜いて走っていた。不思議と恐れは消えていた、聖火の火炎剣烈火があれば無力な自分でも…!そう思っていたのかもしれない。
「ウチは火炎剣烈火を突き出した…!突き出した筈なのに!
「……いいえ、耳郎さん。貴女は確かに火炎剣烈火を突き出し、剣君を助けました。貴女は火炎剣烈火を振り下ろしていません」
そう、アレは現実じゃない。それでも
「……あ」
ようやく理解できた。13号の「自分が怖いですか?」の意味が……
そう怖いのだ……死柄木の腕を切り飛ばした火炎剣烈火でも、怒りや憎しみが籠った目で自分を見る死柄木でもなく、大切な人を守る為だとしても剣を手にして、躊躇い無く力を使い、人を傷つけた……
「あっ……あぁ…………!」
それを認識した途端、耳郎は震えが止まらなくなった。それだけではなく、両腕がとても重く感じる。
「耳郎さん!」
「ッ!」
耳郎の名前を呼ぶ13号による一喝が入る。これ迄の13号からは考えられない大声に驚いた耳郎だが、お陰でパニックから目を覚ますことができた。
「分かりましたか?今の貴女は自分自身に対する恐怖心があるんです。貴女は確かに剣君を助ける為に行動しました。それは誇るべき“勇気”です。ですが闇雲に前に出るのは“無謀”です。そして無謀のままに行動すれば、耳郎さんが見た“もしもの未来”になってしまいます」
みんなの安全の為に思考を巡らせ脳無に立ち向かった聖火の行動は正しく“勇気”あるモノだった。しかし、「剣を助けたい!」の一心で行動した耳郎の行動は“勇気”とも“無謀”とも言える。
「僕達はヒーローです。誰かを助ける為には決して闇雲に行動してはいけません」
「13号先生…ウチは…!」
どうしたらいいか?震える耳郎から13号は決して目を離さずに真剣に見ていた。
「簡単です……学べばいいんです」
そして13号が出した言葉は単純なモノだった。
「え?」
「耳郎さん。貴女は力を振るう危険性を正しく理解しました。理解したのなら同じ事を繰り返さない様にすればいいんです。今の自分には何が足りないのか、何が必要なのか…。それを知り、それを得る為の環境が雄英にはあります」
13号が動かせる左腕を耳郎の左肩に置き優しい目で耳郎を見る。
「そして、
それは紛れもなく教師の言葉であり、耳郎が一番に聞きたかった言葉だった。自分自身への恐怖による壁は壊され……
「……先生。泣いてもいいですか?」
「……ええ。勿論です」
13号に抱きつきながらポロポロと涙を流していた。
聖火がボロボロになっていくのが怖かった。そんな聖火に加勢できない自分が情けなかった。そして、剣を助ける事で頭が一杯で力を闇雲に使う自分が怖かった。一歩間違えれば、あの“もしもの未来”になっていた事が怖かった。
そんな思いと共に涙を流す耳郎を13号は優しく受け止めていた。
◆◆◆◆
857:ねっぷねぷにしてやんよ!!
………立派な人ね。
858:赤目の主人公Z
ああ、大人として教育者として完璧な回答だった。
859:極み主任
流石は雄英高校。殆どの教師があれ程の人格者とは……。根津校長の手腕と育成は凄まじいな…。
860:対魔忍リバイ
そりゃ平和の象徴も生まれる筈だ。
861:モンハンライダー
なお、No.2は……
862:ゴールデンわんわんお
次第に良くなるから言うな。
863:仮面ライダーニケワン
どっかのミサイルスCEOに爪の垢を飲ませてやりたいぜ。
864:ありふれナインギーツ
………こんな先生が居る学校なら、腐ったクラスの奴らのイジメを止めてくれたんだろうな。
865:OCGトマト
分かります。俺も臆病者の息子と呼ばれる事は……
866:SAOテイマー
俺も現実に戻ったらあんな先生が居る学校に行きたいな…
867:マゼンタの旅路
>>864
まぁ、止めてもあの勇者(笑)を筆頭にピタッと止まるかは疑問だが。
868:炎のヒロアカセイバー
『…………私もまだまだ学ぶべき事が多いですな』
『当たり前だよ。この新米教師、精進を怠るんじゃないよ。アンタもだかんね、剣聖火。確かに今回の襲撃でアンタはみんなを守った。でも、全てが上手くいった訳じゃないだろ?』
「………はい。俺は無茶をしました。それは必要な無茶で、みんなが居なければできない無茶でした。今でもアレしか手はなかったと思います。でも……」
『そうさね。結果的に倒したが、本来はプロヒーローが到着する迄の時間稼ぎ、その為にアンタは格上相手に挑んだ。アンタの心意気も、行動も、考えも、“勇気”あるモノだ。それは間違いない。このヒーロー馬鹿が気にいる訳だ。だがね、見ているコッチは生きた心地がしないんだ。あの娘はずっとアンタと行動してたんだろ?だったら尚更だ。必要な無茶と必要ない無茶が分かっているのは良いが、それでも可能な限り自分を犠牲にするじゃないよ。分かったね?』
「……はい、肝に銘じます」
……………難しいですね。
869:神を薙ぐ超古代の光
多分、火炎剣烈火は警告したかったんだ
耳郎ちゃんの行動は“勇気”に限りなく近い“無謀”だった。だからこそ、無謀の果てにある物を、闇雲に力を使う事の危うさを“もしもの未来”を見せる事で教え。
イッチには必要な無茶とは言え、全てを無茶で乗り越えればいい訳じゃない。側で見ていた近しい人物がどんな思いをして、どんな行動をするのかを理解してほしかったんだ。
870:最高最善のグランドマスター
まぁ、イッチも良くやってる方だが。まだまだ、改善点があるって事だ。少しずつやっていけばいい。
お前には仲間や頼れる教師に俺達がついてるんだ。
871:炎のヒロアカセイバー
ッ!………はい!!
872:屋根裏ジョーカー
おい!大変だ!
873:極み主任
>>873
屋根裏ニキ?いったいどうしたのだ?
874:仮面ライダーニケワン
確か抜刀斎ニキの様子を見に行ってたんだろ?
875:屋根裏ジョーカー
ああ、抜刀斎ニキがヤベェ!
このままだと……殺される!
876:炎のヒロアカセイバー
………え。
END
如何でしたかか?
耳郎ちゃんの葛藤や13号の教師として言葉。
やりたかった事ができたと思います。
次回はリメイク前に大好評だった鬼斬ニキこと、抜刀斎ニキの話です。
これは来年ですね。
それでは皆さん良いお年を!!