イッチ「“個性”と言う特殊能力がある世界に転生したら“緑谷出久”って子が自殺したんだけど…どうしたらいい?」スレ民達『ハ?』   作:DestinyImpulse

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閑話「天翔る鬼滅の龍」

 

  

 聖火が居る世界とは違う世界……そこは人を喰らう鬼とそれを切る鬼狩りが居る【鬼滅の刃】の世界。

 

 その『鬼滅の刃』のラスボスである鬼舞辻無惨に思いもよらぬ情報が入った。

 

 猗窩座が殺された……あの上弦の参がたった一人の柱に…!

 

 

 人を鬼に変える自らの血を大量に与え数百年の間、変わることなく歴代鬼殺隊の柱を殺してきたまさに無惨が誇る精鋭部隊、上弦の鬼。

 

 その上弦の鬼が……しかも三番目に強い筈の猗窩座が殺された。

 

 

 

 その柱の名は“龍柱”と呼ばれる男だ。

 

 

 

 

 龍の呼吸と言う気が遠くなる程の年月を生きた無惨さえ知らない技を使う剣士。しかも、たった今、上弦の陸も殺された。

 

 たった一人の人間に上弦が二人も殺された事で鬼舞辻無惨の怒りが頂点に達するのはそう時間は掛からなかった。

 

 故に放つ。最強の下僕。上弦の壱、黒死牟を……。

 

 さぁ、行け!思い上がった人間を!忌々しい耳飾りを付けた小僧を!殺してこい!!

 

 

 

 数多の世界に存在する転生者……………コレは聖火がUSJで激闘を繰り広げる裏で起こった鬼狩の戦いである。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ハァ…ハァ…!」

 

 

 赤が混ざった黒髪に左額に大きく目立つ赤い痣を持っている少年、“竈門炭治郎”は目の前の現実に困惑していた。

 

 

 炭治郎は二人の仲間と一人の柱と共に日本一、欲望が渦巻く町、吉原。そこに潜む上弦の陸を見事倒す事ができた。

 

 その直後だ……突然新たな鬼が現れたのだ。

 

 

 その鬼は一言で言えば【侍】のような出で立ちをしており、服装は紫色の上着に黒い袴。長い黒髪を一つに束ねた総髪。

 

 しかし、顔には目が六つもあり、真ん中の二つに文字が刻まれており、右目に【壱】、左目の【上弦】……すなわち……

 

(上弦の……壱…!?)

 

 

 その鬼から、目を離すことができなかった。瞬きすることすら許されない重圧。濃密な死の匂い。

 

 身体中の細胞が叫んでいる、この鬼は今まで出会ってきたどんな鬼よりも……!今さっき倒した上弦の陸よりも…!あの上弦の参よりも…!この鬼は強い!!もし一瞬でも目を離せば、自分の頸は一瞬で断たれる。

 

 

「はっ、はっ、はっ…!」

 

 炭治郎は自らの身体の震えを止めることができずにいた。手が震えて刀が持てない。今すぐ逃げたいと心が叫ぶ。数多の恐怖の感情が身体の奥底を支配する……!

 

 

「落ち着け炭治郎……呼吸だ」

 

 

 その時、自分の肩を誰かが叩き語りかける。顔を動かせば赤い着物を羽織り、緋色の髪をした剣士。

 

 

 炭治郎と共に上弦の陸を討伐した鬼殺隊の柱の一人。

 

 

 

 龍柱・天野剣聖(あまのけんせい)が居た。

 

 

 

 炭治郎にとって彼は兄の様な存在であった。彼との出会いは炭治郎が鬼殺隊士になったばかりの頃、東京で家族の敵である“鬼舞辻無惨”。そして鬼でありながら打倒無惨を志す“珠世”と出会い、二体の鬼に襲われた所を助けてくれた。

 

 最初は鬼にされた妹の“禰豆子”が殺されると焦ったが、彼は珠世と鬼殺隊の中継役をしており、珠世の鬼を人に戻す研究の手伝いをしている鬼殺隊の柱。

 

 故に禰豆子の事も理解してくれて、彼と共に行動するようになった。

 

 

「は、はい……!」

 

 

 

 そんな天野の言葉に落ち着きを少し取り戻した炭治郎は、呼吸を繰り返し、改めて上弦の壱に向き合った。

 

 上弦の壱は、じっとこちらを見たまま動かない。けれど、いつでもこちらに攻撃できる自然体であると、実戦経験がまだ少ない炭治郎でも分かった。

 

 

(落ち着け炭治郎…大丈夫だ、俺は天野さんの元で鍛練をしてきたんだ…呼吸だ……呼吸を忘れるな)

 

「その耳飾り……!」

 

 すると上弦の壱は独特な口調で話し始めた。炭治郎を見ながら……いや、睨みつけながら。

 

 

(耳飾り? それに怒りの匂い……いや、嫉妬の……………え?)

 

 その時、炭治郎の視界はすべてがゆっくり動いていくのが見えた。

 

 上弦の壱の姿が一瞬で消えたかと思った瞬間、次の瞬間には自分の背後からあの鬼の匂いがしたからだ。

 

 声をあげる間もなく、後ろを振り返れば……鬼の刀が、自分の身体を斬り裂こうと迫ってきている。

 

 炭治郎は自分の死を感じた。刀がこっちに迫ってくるのは見えているのに、身体がまったく動かせなかった。

 

 

 

 

     【龍の呼吸 伍の型 龍巻閃】

 

 

 鬼の刀が炭治郎の身体を両断しようとした、その瞬間、天野の刀が間に滑り込み、弾き飛ばした。

 

 

 

「……ほう」

 

 自分の刀を弾かれるとは思ってもみなかった上弦の壱は、天野が返しに放った刃を難なく躱し距離を取る。

 

「そこの小僧を切ったと思ったが……なるほど……猗窩座を切ったのは……運によるモノではないか…」

 

 

 上弦の壱は多少驚きながらも鞘に刀を収めた。

 

 

「俺の弟分に手を出してんじゃねぇよ」

 

 

 それとは対象的に天野は刀を構える。この世界でも本来の歴史とはかけ離れた戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

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 甘かった……見通しが甘かった…!

 

 

 頬に流れる汗を感じながら天野剣聖……鬼斬り抜刀斎こと抜刀斎ニキは自分の見通しが甘かった事を感じていた。

 

 この鬼滅の刃の世界に転生してから様々な準備をしてきた。原作前から柱になり、珠世との協力関係を築いたり、炭治郎達と共に行動したり。

 

 その結果、無限列車編では猗窩座を倒し、煉獄杏寿郎を生存させる事に成功した。

 

 しかし、それが無惨を本気にさせた。無惨は下弦を解体したりと馬鹿だが…間抜けじゃない。自分が脅威と感じたモノを全力で排除する奴だ。

 

 こうなる事は容易に想像できた筈だ。

 

 

 

「名は……何と言う……」

 

「……龍柱、天野剣聖だ」

 

「私の名は……黒死牟」

 

 

 上弦の壱……黒死牟が口を開く。先程刀を弾いてみせたが内心では戦慄していた。上弦の参である猗窩座とは比べ物にならないほどの速く、重い一撃だった。

 

 

 自分との鍛錬の結果、上弦の陸ともそれなりに戦えるようになった炭治郎でも、虫を祓うが如く簡単に殺されてしまう。故に庇うように、黒死牟の前に立つ。

 

「ッ……」

 

 炭治郎もその事を理解したのだろう。下手に動かず、ジリジリと距離を取る。一方で黒死牟は炭治郎など気にも止めずにジッと天野を見ていた。

 

 

「……………素晴らしい」

 

 

 不意に黒死牟が言葉を溢す。黒死牟は『透き通る世界』と言う極致に至っている。開眼した者は他者の身体の中が透けて見え、それによって相手の骨格・筋肉・内臓の働きさえも手に取るように分かるようになる。

 

 

 黒死牟はそれにより天野の肉体を見ていた。

 

「鍛え上げ……練り上げられた肉体。そして先程、私の刃を弾いた技量……………これ程の剣士は三百年振りか……」

 

 

 そして黒死牟は、天野に手を差し伸べながら言う。まるで、同士を歓迎する仲間のような気安さで。

 

 

「天野よ、私と共に来い……猗窩座を討った剣士……欠けた上弦の穴埋めに……相応しい………先程の呼吸……我流だろう…龍の呼吸と言ったか……なるほど……龍の名に恥じぬ素晴らしい技だ……………鬼となればその技を永久に保存できよう……お前も鬼となるがいい…」

 

 

 人を鬼に変える鬼舞辻無惨の血は、必ずしも全ての人間に適合するわけではない。多くの者は細胞の変化に耐えられずに死んでしまう。故に上弦になれる鬼は、本当に一握りの素質を持った者だけ。

 

 故に上弦の代わりなど易易と見つかる筈もない。

 

 しかし天野なら、上弦に相応しい力を得られる。強さを求めて鬼となることを選んだ黒死牟。剣技を鍛え続けることを至上とするこの鬼は、鬼となればどれだけ素晴らしいか天野に説こうとする。

 

「人の身は……脆く、柔い……肉体が朽ちていくと共に……その技も鍛え抜かれた肉体も滅びていくのだ……このような不条理が他にあるか?」

 

 

「煩いんだよ……断る!」

 

 

 しかし天野は、そんなの知るかと言わんばかりに断った。言葉に黒死牟は眼を見開く。

 

 

「確かに時間は残酷だ……老いていくってのは確かに怖いモノだろう……でもな、だからと言ってお前みたいに惨めたらしく生きていくなんて……俺はごめんだね」

 

 

「ならば……力づくで連れていくまで……」

 

 

 黒死牟から殺気が迸る。さっきまでとは比べ物にならないほどの重圧。ここからは瞬き一つすれば即死に繋がる戦いだ。

 

(それでも……俺は死ねない!)

 

 天野は刀を強く握りしめる。彼の脳裏には髪の両横に青い蝶々の髪飾りをつけている、一人の愛する人の姿があった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふう……今日はこれで終わり」

 

 

 場所は変わり、鬼殺隊本部の直ぐ側にある蝶屋敷。傷を追った隊士を治療するこの場所で髪の両横に青い蝶々の髪飾りをつけている、一人の美少女…神崎アオイの姿があった。

 

 ここで料理や診察などを担当しているアオイは一通りの仕事を終わらせて休息を取っていた。時計を見ると、すでに針は深夜を回っている。

 

「剣聖は……明日には帰って来るかな」

 

 不意にそんな事を呟く。天野剣聖……アオイが誰よりも無事を祈る愛する人。上弦の鬼を討伐と言う快挙を成し遂げた彼は鬼殺隊の柱として恥じぬ戦いをしている。

 

 戦う事から逃げた私とは違って……

 

 

 ふと、夜空を見上げると月の光に照らされて何かが見える……鴉だ。

 

「アレって……剣聖の鎹烏!」

 

 鬼殺隊隊士に振り分けられた特殊な鴉……鎹鳥。よもや、愛する人の鎹烏を見間違える筈も無かった。

 

 

「カァー!カァー!上弦ノ壱!上弦ノ壱襲来ィィ!現在、“龍柱”ガ応戦中ゥ!付近ノ隊士!手ノ空イタ柱ニ応援ヲ求ム!!応援ヲ求ム!!!」

 

 

 それを聞いた瞬間、アオイの呼吸は一瞬止まった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

【月の呼吸 壱ノ型 闇月(やみづき)宵の宮(よいのみや)

 

 

【龍の呼吸 壱ノ型 龍槌閃】

 

 

 月の刃と龍の刃がぶつかり合う。黒死牟の居合斬りから放たれた斬撃を天野は縦一文字に切り裂く。

 

 戦いが始まって10分が経過した。たった10分で辺りは悲惨なモノへと変わっていた。元々、上弦の陸とは町中で戦っていた。町の人ごと巻き込んで攻撃する上弦の陸の攻撃を天野が防いで炭治郎が避難させるまでの時間を稼ぎ、終わった後に討伐したのだ。

 

 しかし、今は地面は抉れ、家は斬り倒されている。街灯はひっくり返り、ここが元々町だったなどと誰も信じないほどだ。

 

 この惨状は、全て一人の鬼と、一人の人間が起こしたことだった。

 

「はぁ…! ハァ…!」

 

 しかし、どちらが優勢でどちらが劣勢かは火を見るよりも明らかであった。大きく息をする天野は身体中に切り傷があり血だらけだった。

 

 

「素晴らしい……我が剣技を前に……これほどまで生き延びた者は片手で数えるほど……しかも、この身が傷を負うなど……それこそ三百年振りだ」

 

 

 そんな天野に対して、黒死牟は数か所傷を負っているものの鬼の再生速度で実質無傷だ。

 

 鬼の力と呼吸法の合せ技は柱を容易にしのぐ。更には何百年も鍛え続けたであろう黒死牟の剣技が相手では流石の飛天御剣流でも……

 

 だがそれで諦める龍柱、天野剣聖ではなかった。

 

「まだ諦めぬか………ならば」

 

 

【月の呼吸 伍ノ型 月魄災禍(げっぱくさいか)

 

 

 それは黒死牟の血鬼術によるものか、刀を全く振らずに竜巻のような斬撃を出現させる。その斬撃の中に不規則な三日月状の刃が幾つもついており掠っただけで身体が切り刻まれるだろう。

 

 

「クソ…!」

 

 

【龍の呼吸 陸ノ型 龍巣閃】

 

 

 それは相手の全身を高速で連続攻撃する乱撃術。それを用いて迫りくる刃を叩き斬った。

 

 しかし、それでも全ては防ぐ事はできずに数か所斬られてしまうが、軽傷だ。

 

 それでも既に天野の身体には幾つも傷が刻まれている、長期戦になれば先に音を上げるのは天野だ。

 

(早くケリをつけないと!)

 

 故に天野が仕掛ける。刀を鞘に収めて迫るその姿で、次の攻撃が何なのか分からぬ黒死牟ではない。

 

 

(……抜刀術か……面白い)

 

 

 天野を迎え撃とうと、黒死牟も技を放つ。

 

 

【月の呼吸 参ノ型 厭忌月(えんきづき)銷り(つがり)

 

 

 横薙ぎの形の斬撃を月型の刃を纏わせて放つ。この技は一撃で終わらず互い違いに2連続で放つ特異な技。

 

 

【龍の呼吸 参ノ型 双龍閃】

 

 

「……なんだと」

 

 

 しかし、それは天野も同じだった。抜刀から放った一閃が一撃目を相殺し……帯から外した鞘を振るい二撃目を相殺した。双龍閃は刀の鞘を帯から外した状態で放つ抜刀術。一撃目の刀を躱されても、抜刀の勢いを利用して鞘による二撃目に繋げることが出来る、二段構えの抜刀術。

 

(今だ…!)

 

 

 まさか、鞘で抜刀術をするとは思わず黒死牟も目を見開く。その一瞬の隙に天野は勝負をつけるべく必殺の一撃を放つ。

 

 

 

【龍の呼吸 玖ノ型 九頭龍閃】

 

 

 それは飛天御剣流の神速を最大限に発動させ、剣術の基本である九種類の斬撃を同時に繰り出す上弦の参である猗窩座を破った大技。

 

「ッ!」

 

 しかし、黒死牟も剣の極みに達した者、九頭龍閃の恐ろしさを本能で理解し迎撃する。

 

 

【月の呼吸 陸ノ型 常世孤月(とこよこげつ)無間(むけん)

 

 

 一振りで縦方向に無数の斬撃を乱れ撃ちして敵を細切れにする絶技。一瞬のうちに前方の広範囲に放たれるこの斬撃を見切る事はおろか間合いの外に出る事すら困難……。

 

 

「うおおおおおおぉぉぉぉ!!!!」

 

「なに……!?」

 

 

 しかし、九頭龍閃は同じ乱撃術でも龍巣閃と違って斬撃の一つ一つが一撃必殺の威力を持っている。黒死牟の斬撃を突き破り雄叫びを上げて天野が突撃する。

 

 

 そして、九つの必殺の一撃が黒死牟に突き刺さり、激しく吹き飛ばされ轟音と土煙が巻き上がる。

 

 

 

「やった……やったぁ!!」

 

 邪魔にならないように離れて見ていた炭治郎が歓喜の声を上げる。

 

 やっぱり天野さんは凄い人だ!あの上弦の壱を倒すなんて!!

 

 

「ハァ…ハァ…!」

 

 しかし、天野は激しく息をして膝をつく。天野の身体は既に傷だらけ……立っているのがやっとだ。

 

「天野さん!」

 

 それを見てすぐに応急処置をしなければと炭治郎は天野の元へ駆け寄ろうとした……………

 

 

「……来るな!! 炭治郎!!」

 

 しかし、返ってきたのは怒号だった。その意味が分からず駆け寄ろうとした歩を止める炭治郎。

 

 

 

 

 

 

【月の呼吸 漆ノ型 厄鏡(やっきょう)月映え(づきばえ)

 

 

 それと同時に地を這う高速の斬撃が5本、凄まじい速さで迫ってくる。

 

 

「クッ…!」

 

【龍の呼吸 肆ノ型 土龍閃】

 

 

 刀で地面を叩いて巻き上げた土砂を放つがそんなモノで防げる程甘くない。しかし、時間を稼ぐ事は出来、回避する。

 

 

「………これも躱すか」

 

 土煙を払い黒死牟が現れる。上半身の上着は脱ぎ払われ、その刀身は黒死牟の身長を上回り、枝分かれしたような歪な形へと姿を変える。

 

「……………届かなかったか」

 

 

 それを見た天野は勝負を決められなかった事を悔やむ。九頭龍閃は確かに黒死牟に届いた。

 

 しかし、黒死牟が咄嗟に放った常世孤月・無間を突破するのに力を使い過ぎたのだ。黒死牟は耐久面でも他の上弦の鬼を遥かに上回る。九頭龍閃には黒死牟を倒すだけの力が残されていなかった。

 

 

「……………」

 

 

 黒死牟は静かに己の首元を擦る。擦った手には“血”がついていた。九頭龍閃の一撃が黒死牟の頸に浅く、傷をつけたのだ。

 

 

「く……!」

 

 

 その傷もすぐに回復する。しかし、黒死牟の全身を襲う焦燥。浅かったとはいえ頸に一太刀を入れられたのはこれが二度目だった。

 

 蘇るのは四百年前の記憶。

 

 それは……老骨となった弟と相対した記憶。

 

「ッ!」

 

 

【月の呼吸 捌ノ型 月龍輪尾(げつりゅうりんび)

 

 それを振り払う様に強烈な力で抉り斬るような横薙ぎの一閃を放つ。その斬撃はこれ迄の技の倍以上に大きかった。

 

 

「くそったれ…!」

 

  

 普通、あんな歪な刀身ならば、刀を振る速さは遅くなるはずだが、先程と同じ速さ、いや、それ以上の速さで刀を振るっている。

 

 その事に舌を巻きながら付近を舞う小さな刃を切り払い飛び上がって回避する。

 

 

【龍の呼吸 壱ノ型・改 龍槌閃・惨】

 

 

 そのまま、落下の際に刀の切っ先を下に向け頭上から刺し貫こうとする。

 

 

【月の呼吸 拾ノ型 穿面斬(せんめんざん)蘿月(らげつ)

 

 しかし、回転鋸のような形状の巨大な二連の刃を横一線に放つ。咄嗟に防御するが防ぎきれず大きく吹き飛ばされる。

 

 それでも体勢を整え着地…………するかと思われた。

 

(あ……)

 

 

 突如意識が朦朧とし、上手く着地する事ができずにふらついてしまう。

 

「……血を流し過ぎたな」

 

(しまっーー)

 

 それを見逃す黒死牟ではない。放たれた斬撃を回避も防御もする事ができずに…………

 

 

 

「天野さぁぁぁん!!!?」

 

 

 

 

  炭治郎の絶叫と共に夥しい鮮血が舞った。

 

 

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179:炎のヒロアカセイバー

 そんな……!?

 抜刀斎ニキ!?応答してください!!

 

180:対魔忍リバイ

 おい、何だよこれ…!

 

181:OCGトマト

 何で黒死牟が出てくんだよ!

 お前の出番はまだ先だろうが!!

 

182:ありふれナインギーツ

 な、何なんですか、アイツは!?

 

183:極み主任

 ……… 奴の名は黒死牟。

 鬼滅の刃のラスボスである無惨の右腕。つまりは敵のナンバー2だ。

 本来なら最終決戦に初登場の筈だが。

 

184:赤目の主人公Z

 無限列車編で上弦の参である猗窩座を倒した事で無惨も重すぎる腰を上げたのか…!

 

185:最高最善のグランドマスター

 くそ!無能上司筆頭のくせに!

 

186:SAOテイマー

 な、何とかならないんですか!?

 

187:神を薙ぐ超古代の光

 …………あんな致命傷を受けてたら…!

 

188:ねっぷねぷにしてやんよ!!

 例え戦えたとしても黒死牟の剣の腕は凄まじいモノよ。

 

189:最高最善のグランドマスター

 ああ、カルデアの剣豪達とも遜色ない。

 

190:炎のヒロアカセイバー

 そんな……!

 

191:マゼンタの旅路

 現に抜刀斎ニキも勝てなかった。

 

192:ありふれナインギーツ

 それじゃあ!?

 

 

 

 

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『君は何が欲しい?』

 

 

 神様転生なんて言葉があった。死ぬと違う世界に転生し、何かしらの特殊能力を手にすることができるという夢のある話だ。

 

 テンプレの如くトラックに轢かれた俺は気づけば真っ暗な空間にいた。聞こえてきた誰かの声……。

 

 それを聞いて神様転生が頭に浮かんだ俺は随分古いが、生前格好いいと憧れていたジャンプのキャラクター……。

 

 緋村剣心の飛天御剣流が欲しいと言った。

 

 

 

 そうして生まれ変わった俺が居たのは大正時代辺りの日本だった。俺の両親は“熊か何か”に襲われたらしくこの世にはおらず、変わりに仲良しだった“青髪の女の子”の家の世話になっていた。実の子でもない俺にも愛情を注いでくれた彼らとの日々は幸せだった。

 

 そんな幸せも続かなかった。

 

 家が、化け物に……鬼に襲われたのだ。

 

 この時、俺はこの世界が【鬼滅の刃】の世界で、仲良しだった女の子“神崎アオイ”が原作キャラだった事を思い出した。

 

 俺は特典として頼んだ飛天御剣流で助けようと思った。だけど、出せなかった。

 

 当然だ、子供が使える程簡単な技じゃない。転生して当たり前のように使えるなんて都合の良い話じゃなかった。

 

 あの神は“飛天御剣流”をくれたんじゃない。

 

 “飛天御剣流が使えても可笑しくない生き方”を俺に与えたんだ。

 

 

 結局、アオイの両親は喰われた……きっと俺の両親も鬼に喰われたんだろう。

 

 その後、鬼殺隊士が来てくれて俺達は助かり、育手の元で修行した後に最終選別へと参加。無事に生き残る事ができたが……。

 

「……嫌……戦いたくない…!」

 

 

 アオイは戦う事ができなかった……元々、戦いとは無縁の彼女には荷が重かった。でも、鬼殺隊士となったからにはそうはいかない……。

 

「ねぇ…貴方達、私の所に来ない?」

 

 そんな俺達を花柱・胡蝶カナエ……姐さんが拾ってくれた。原作通りにアオイは蝶屋敷で働く事になり、俺は鬼狩りを全うした。

 

 そんな日々を重ね、姐さんの元で修行し血の滲む努力の末に俺は龍の呼吸……飛天御剣流を完成させた。

 

 飛天御剣流の前に敵は無い。当時の下弦の壱を容易く倒した俺は歓喜した。

 

 この力ならこれから待つ未来を変えられる!

 

 そう思い下弦の壱を倒した事を報告しようと帰った俺を待っていたのは……姐さんが………花柱・胡蝶カナエが上弦の弐に殺された知らせだった。

 

 結局……俺はまた何もできなかった。

 

 このままでは繰り返すだけだと姐さんの「鬼と仲良くなる」理想を建前に、お館様に珠世さんとの交流関係を結ぶ事を進言した。

 

 無惨討伐に炭治郎と並んで珠世さん程重要な人は居ない。今の内に交流を結び研究に協力すれば何か変わるかもしれない。

 

 こうして俺は様々な準備をしてきた。炭治郎と出会い原作以上の実力をつけさせたりもした。

 

 そして無限列車編では猗窩座を倒し、煉獄さんを生存させる事ができた。

 

 

 

 ……でも、結局は駄目だった。俺は黒死牟に負けた…この傷じゃもう……。

 

 

 

「しっかりしなさい。死ぬ事は許しません」

 

 

 

 声が聴こえた……でも、ありえない!だってこの声の人は…!カナエの姐さんは……!

 

 

 

「立ちなさい」

 

 

 

 …………無茶を言わないでくれ。俺の身体はボロボロだ!力が入らねぇ……刀を握る余力もねぇ。

 

 

 

 

「関係ありません、立ちなさい。龍柱・天野剣聖」

 

 

 

 そんな俺の弱音を姐さんは躊躇なく否定する。

 

 

 

「このまま死んで本当に良いのですか?後悔はないのですか?」

 

 

 ……………イッチは……聖火は今、USJでヴィラン連合と戦ってるんだっけ……トマトはこれからヤバイ戦いが待っている……ありふれちゃんが一番心配だ……。

 

 俺がここで死んだら……アイツ等を不安にさせちまう。それに炭治郎だって殺される。最初は必要な事だと一緒に行動していたが、今じゃ聖火達と変わらない俺の可愛い弟分だ。殺させる訳にはいかない!

 

 

 顔を上げた俺の目の前にカナエの姐さんが居た、もっとも身体は透けていたが……………

 

 

 姐さんが双眸を潤わせながら、俺に近付いて来る。そしてしゃがんで額をくっつけた。その瞬間、姐さんの双眸から涙が溢れて流れ落ちて行く。

 

 

「あの娘が………アオイが貴方の帰りを待ってる。貴方まであの娘を置いて行っちゃ駄目」

 

 

 ……………何時だって、どんな時だって、アオイは俺の帰りを待ってくれていた……………そうだ、俺はまだ死ねない!!

 

 

「貴方ならちゃんとやれる。頑張って」

 

 

 ありがとう、姐さん。

 

 俺は……まだ戦える。

 

 まだそっちには行かないよ。

 

 

「……………」

 

 

 姐さんの身体がどんどん消えていく。だけど、その顔は何時もの様に花のような笑顔だった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「天野……………さん……!?」

 

 夥しい血を流し倒れる天野を炭治郎は震えながら見ていた。上弦の参を倒した天野さんでも本気を出した上弦の壱……………黒死牟には勝てないのか!?

 

「……痣もないのにその強さ………初めはお前もまた………“縁壱”のように神に愛された者だと思ったが………お前の剣は……積み重ねた末に……生まれた力の重みを感じた」

 

 一方で…黒死牟は死にゆく天野を悲しむように見つめながら呟いた。

 

「その技も……人の身では脆く儚い……嘆かわしい」

 

 そっと瞳を閉じる、先程迄の戦いを思い出しているのだろう。素晴らしい戦いだった。これ程までに力を開放したのは数百年振りだ。

 

「……あの方の命には……お前の抹殺もある」

 

 やがて、瞳を開けた黒死牟は炭治郎に静かに歩み寄る。刀を握ろうとしたが……震えて満足に戦えない。

 

 

「しかしお前など……我が刀を振るう価値もなし……如何に日の呼吸の使い手と言えど……縁壱の……天野剣聖の足元にも及ばぬ……」

 

(どうして俺は……こんなにも無力なんだ……!)

 

 憐れむように、見下すように黒死牟は炭治郎を指差す。しかし、それに異を唱える資格を……強さを……炭治郎は持っていなかった。

 

 

(ごめんなさい……!ごめんなさい、天野さん!俺が…!俺がもっと強ければ……!一緒に戦えた……え?)

 

「……………なんだと」

 

 非力な自分を恨み、天野への謝罪の為に視線を向ける。しかし、向けた瞬間、考えが止まった。炭治郎に迫っていた黒死牟も足を止め後ろを振り向くと……

 

 

「……………」

 

 

 血を流し倒れていた天野が立ち上がっていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

213:炎のヒロアカセイバー

 抜刀斎ニキ!?

 

214:ありふれナインギーツ

 よかった!立ち上がった!!

 

215:仮面ライダーニケワン

 ……しかし、立ち上がったとはいえ勝ち目がなければ…。

 

216:対魔忍リバイ

 ああ、繰り返すだけだ。

 

217:屋根裏ジョーカー

 それにあの傷で今度まともに喰らえばもう…!

 

218:SAOテイマー

 な、何か手はないんですか!?

 

219:極み主任

 …………いや、ある!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 全身が切り傷で血塗れ……生きている筈がない。黒死牟と炭治郎が、目を見開く。

 

「何故だ……何故動ける……何故立ち上がれる!」

 

 

「……待っている」

 

「……何?」

 

「俺には……俺の帰りを待っている人が居る」

 

 

 静かに、そう呟いた天野は少しずつ呼吸をする。

 

 深く……

 

  身体の隅々までに行き渡らせる様に……

 

 

「だから……俺は死ねない」

 

 

 次第に身体が熱くなる……心臓が今までにないほどに鼓動する。

 

 

「生きる意志は……何よりも強い」

 

 

 そして……遂に浮かび上がった。

 

 天野の背中に天翔る龍の痣が……。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

235:OCGトマト

そっか!痣だ!鬼滅には痣があったんだ!!

 

236:炎のヒロアカセイバー

 痣……?あの背中の龍のヤツは……

 

237:ねっぷねぷにしてやんよ!!

 鬼滅の刃には“痣者”という要素があって、痣が発現した者は身体能力が飛躍的に上がり、鬼から受けたダメージが通常では考えられない速さで回復する。これにより、上弦の鬼のような強力な鬼とも戦えるようになるの。原作の後半で重要な要素になって、主人公達の切り札なのよ。

 

238:赤目の主人公Z

 だが、そんな上手い話じゃない。「痣者は二十五歳を待たずに死ぬ」というとんでもないデメリットがある。

 

239:マゼンタの旅路

 抜刀斎ニキはそのデメリットをどうにかするべく、本作の万能キャラの立ち位置の人物と交流して研究していた。今後どうなるかは分からないが今はこの場を切り抜ける事が先決だ。

 

240:ありふれナインギーツ

 パワーアップしたって事は!

 

241:神を薙ぐ超古代の光

 いや、まだ足りない。

 

242:最高最善のグランドマスター

 そうだ。あの黒死牟も元は痣者の剣士だった。幾ら抜刀斎ニキに痣が発現しても痣に鬼の身体能力を持つ黒死牟の方が有利だ!

 

243:極み主任

 その通り。抜刀斎ニキが勝つにはあと二つの要素が必要だ!

 

244:炎のヒロアカセイバー

 それは………ッ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「龍の……痣?」

 

「………背に痣など…! ッ!……有り得ぬ」

 

 

 炭治郎は浮かび上がった痣に困惑していたが、黒死牟は天野のもう一つの変化を見逃さなかった。

 

 

「刃が……赤く……!」

 

 天野が握る刀……その刀身が赤く……赫刀になっていた。

 

 冷や汗を流し黒死牟は無意識に後ずさる……。

 

「何故だ…! 日の呼吸の使い手でもないのに……何故……縁壱と同じように……!」

 

 有り得ない…!有ってはならない……!と、言わんばかりに黒死牟は声を上げる。しかし天野はそれに答える事なく振り返り刀を構える。全身血だらけで生きているのが不思議なくらいなのに……その瞳の光は消えてなかった。

 

「……決着をつけよう」

 

 

 動揺していた黒死牟だが…少しずつ冷静になる。天野の命の灯は、まさしく風前の灯だ。いつ消えてもおかしくない。

 

 わざわざトドメを刺す必要などない。天野の命が尽きるまで待てば……それでいい。

 

 

「……まさか逃げるなんて言わないよな」

 

 

 しかし天野の言葉が黒死牟からその判断を奪った。

 

「……否」

 

 黒死牟は再び刀を構える。

 

 自分が逃げるなど、あってはならぬ。少しでも怖気づいたなど、あってはならぬ。

 

 人を捨ててまで勝ち続けることを選んだのだ……。

 

 このような、醜い姿になってまで。

 

 

 

【月の呼吸 拾肆ノ型 兇変(きょうへん)天満繊月(てんまんせんげつ)

 

 

 周囲を埋め尽くす量の渦状の斬撃を折り重ねて放つ波状攻撃。無数にある刃の一つにでも当たれば死は免れない。正に死の渦だ。

 

 

「……ハッ!」

 

 

 しかし、天野は一切の恐れ無く突っ込んだ。痣が発現し、先程とは比べ物にならない程の身体能力で攻撃の隙間に滑り込む。

 

 

【龍の呼吸 伍ノ型・改 龍巻閃・旋】

 

 

 無理なモノは無理矢理こじ開ける。きりもみ状に回転しながら刀を振るい幾つもの刃を弾く。

 

 

 

【龍の呼吸 伍ノ型・改弐 龍巻閃・凩】

 

 

 続け様に技を繰り出し、道を作る。

 

 

【龍の呼吸 伍ノ型・改参 龍巻閃・嵐】

 

 

 前方宙返りしながら刃を躱し、邪魔な物を切り砕き遂に間合いに入り込む。それを黒死牟は信じられないと言わんばかりに見ていた。

 

(有り得ぬ…! いくら痣が出たとはいえ…! まさか……視えているのか! ……私と同じ世界が…!)

 

 

 そう、痣と赫刀を発現した天野は黒死牟と同じ『透き通る世界』の極致に至っている。故に黒死牟の血の巡りや筋肉を動きを見る事ができたのだ。

 

 既に天野は射程圏内に入っており刀を鞘に収めている。間違いなく抜刀術。痣が発現した天野の抜刀術は正に神速と言って差し支えない。

 

 

 それでも……それでも負ける訳はいかない。縁壱以外の剣士に負ける事など……有ってはならない!

 

 

 回避は不可能、防御も不可能……ならば迎え撃つ他ない。歪だった刀を元に戻して鞘に収める。抜刀術による速さに対してならこちらも抜刀術で迎え撃つ。

 

 

 如何に天野の抜刀術が神速と言えど……痣と呼吸。それに加えて鬼の身体能力がある此方に軍配が上がると、黒死牟は自分を鼓舞する。

 

 

 そして両者は踏み込んだ。黒死牟は右足に対して……天野は“左足”で……。

 

 

 

(なん……だと……!?)

 

 

 

 抜刀術とは抜刀の際に自分の足を斬らないように右足を前に出すのが常識。

 

 しかし天野はその常識を超え抜刀する絶妙のタイミングで左足を前に踏み込むことで、神速の抜刀術を超神速の抜刀術へ昇華させる。

 

 それは黒死牟の速度を上回る。自らの頸、目掛けて迫る刃をスローモーションの様に見ていた黒死牟。しかし反応はできない。そんな時に脳裏に過るのは弟……縁壱の言葉。

 

 

 

 

 

浮き立つような気持ちになりませぬか、兄上

 

 

 

 

 

 

     全集中 龍の呼吸

 

 

 

 

 

いつか、これから生まれてくる子供達が……

 

 

 

 

 

       拾ノ型 (奥義)!!

 

 

 

 

 

 

私達を超えて更なる高みへと……

 

 

 

 

 

 

 

    天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)!!

 

 

 

 

 

 登りつめていくんだ

 

 

 

 

 

 天を翔ける龍の牙が……月を切り裂いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

268:仮面ライダーニケワン

 や、やったのか……?

 

269:ねっぷねぷにしてやんよ!!

 ニケワンニキ、それはフラグ……と言いたいけど。

 

270:神を薙ぐ超古代の光

 ああ、抜刀斎ニキの勝ちだ!

 

271:屋根裏ジョーカー

 シャア!

 

272:対魔忍リバイ

 かなりヤバかったぜ。

 

273:極み主任

 ああ、この土壇場で勝つ為に必要な残り二つの要素を会得できたが故の勝利だ。

 

274:炎のヒロアカセイバー

 それが、あの“赤く染まった剣”と“奥義”ですか?

 

275:マゼンタ旅路

 そうだ、上位の鬼の再生すら阻害する“赫刀”は上弦の鬼と戦うのに必要な物だ。幾ら痣が出ても攻撃が意味の無いモノなら話にならん。

 

276:最高最善のグランドマスター

 そして最後に放った飛天御剣流の奥義である天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)。あれはもう剣聖の域にある絶技だ、如何に黒死牟でも初見でどうにかできるモノではない。

 

277:ありふれナインギーツ

 とにかく!抜刀斎ニキの勝利ですね!

 

278:SAOテイマー

 よかった……。

 

279:赤目の主人公Z

 たが、代償はデカい……。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 黒死牟の首が、宙へと跳ね上がる。六つの瞳全てが、自身の首から下を見下ろしている。有り得ぬものが存在しているとでもいうように驚愕だけを表情に貼り付けて。そして数秒ほど滞空した後、ドサリと地面に落ちた。

 

 

 本来の歴史ならここから再生するのだが、赫刀で斬られたが故に再生はできない。黒死牟の胴体は膝から崩れ落ちる。地に伏せると同時に消滅が始まる。

 

 

「…ま…まだだ……まだ負けては…!…私は……俺は…!」

 

 

 斬り飛ばされた頭部も消滅していく、しかし、黒死牟は喋るのを止めない。

 

 

「鬼になってまで……負けたくなかったんですか」

 

 

 その時、炭治郎が口を開く。その瞬間、黒死牟は目を見開いた。

 

 

「……炭治郎」

 

「強くなりたかったんですか?人を喰ってまで?」

 

 

「やめろ…!……私を憐れむな…!」

 

 

 戦いの場に立っていない炭治郎に言葉を語る資格が無いのは本人が一番理解している。それでも炭治郎は何かに突き動かされるように口を開く。

 

 

「貴方は……………何になりたかったんですか?」

 

 

 

「…私は………私はただ…………お前になりたかったのだ」

 

 

  ーー縁壱

 

 

 

 弟の名を最後に上弦の壱、黒死牟……………継国巌勝は消えていった。そして彼が脱ぎ捨てた着物から溢れた二つに斬られた笛が月明かりに照らされていた。

  

 

 それを静かに見ていた炭治郎と天野。しかし、突然天野が糸が切れた人形のように倒れる。

 

「ッ、天野さん!」

 

 慌てて炭治郎が駆け寄る。呼吸でなんとか生きてはいるが本来なら死ぬのが当たり前の傷だ。

 

「……ハハハ、無茶し過ぎた」

 

「天野さん……!」

 

「心配…すんな。死には…しないさ」

 

 今にも泣き出しそうな炭治郎に、天野は笑みをかける。そして右腕を上げると………“根本から先が砕けた日輪刀”があった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

295:SAOテイマー

日輪刀が!?

 

296:赤目の主人公Z

 上弦の陸と黒死牟との戦いで既にダメージが大きかった。奥義を発動しなくても遅かれ早かれ砕けていた。

 

297:対魔忍リバイ

 むしろよく持った方だぜ。

 

298:鬼斬り抜刀斎

 ああ……本当にな。

 

299:ありふれナインギーツ

 ツ!抜刀斎ニキ!?

 

300:OCGトマト

 大丈夫なんですか!?

 

301:鬼斬り抜刀斎

 まぁ……死ぬわけじゃ無いさ。

 姐さんとの約束もあるし……とは言え……暫くは安静にしなくちゃならないから掲示板に顔は出せねぇな。

 

302:炎のヒロアカセイバー

 そんな……

 

303:鬼斬り抜刀斎

 ま、俺が居なくても……レジェンドや主任ニキ達が居るから問題ないだろ。

 

304:神を薙ぐ超古代の光

 そんな事ないよ。君の戦いは…生き抜く意思の強さはイッチやありふれちゃん達に刻まれた。それはこの先彼らが戦う上できっと役に立つ。

 

305:ねっぷねぷにしてやんよ!!

 ええ、貴方は立派です。この運命と勝利の司るプラネテューヌの守護女神パープルハート。貴方が見せた絶技に心から祝福を……

 

306:鬼斬り抜刀斎

 ハハハ…レジェンドにそう……言われると照れるな。

 …………へぇ。イッチ……

 

307:炎のヒロアカセイバー

 ………はい。

 

308:鬼斬り抜刀斎

 今、見たけど……お前の抜刀術……なかなか良かったぜ。

 

309:炎のヒロアカセイバー

 ッ!…抜刀斎ニキ!

 

310:鬼斬り抜刀斎

 イッチ、ありふれちゃん……それに対魔にニケワン、トマト、テイマーよく聞け。

 半分は…煉獄さんの受け売りだけど……俺も新人時代に言われて心に刻んだ言葉だ。

 

 胸を張って生きろ。己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと、心を燃やせ。歯を喰いしばって前を向け。

 

311:対魔忍リバイ

 ……………

 

312:鬼斬り抜刀斎

 この世は残酷だ。原作を知って行動しても……何も変えられなかったり…逆に裏目に出てしまう事なんて沢山ある…。助けたかった手を掴めず現実に打ちのめされた時もある。

 

313:OCGトマト

……………

 

314:仮面ライダーニケワン

 …………

 

315:鬼斬り抜刀斎

 それでも…!俺達は…生きるんだ!苦しい事もある…傷つく事もある…でも…無意味じゃない……

  

316:SAOテイマー

……………

 

317:ありふれナインギーツ

 ……………

 

318:鬼斬り抜刀斎

 絶望に負けない為に心を燃やせ…!

 自分は負けないと魂から叫べ…!

 決して折れない精神の刃を研ぎ澄ませ…!

 

 そうすれば…コレからお前達を待ち受ける困難があっても……大丈夫だ!

 

319:炎のヒロアカセイバー

 ……………抜刀斎ニキ…!

 

320:鬼斬り抜刀斎

 ……………俺は…!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

俺は信じる、お前達を信じている

 

 

 それを最後に抜刀斎ニキの……天野剣聖の言葉は聞こえなくなった。死んではない、気絶しているだけだとマゼンタニキの言葉を聞いて聖火は安堵のため息を吐いて、自身が居る病室の窓を見る。

 

 夕焼けが眩しく輝いておりもうすぐで夜になる。

 

「……貴方の言葉と生きる力を…決して忘れません」

 

 彼の生きる力を…言葉を…魂に刻む様に拳を握りしめて決意を固める聖火。そんな聖火に反応してベットの側にあるテーブルに置いていた火炎剣烈火とブレイブドラゴンが静かに赤く輝く。やがて最初から何もなかったかの様に静まった火炎剣烈火とブレイブドラゴンの横には通常の物よりも大きな……

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()が置かれていた。

 

END

 

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