イッチ「“個性”と言う特殊能力がある世界に転生したら“緑谷出久”って子が自殺したんだけど…どうしたらいい?」スレ民達『ハ?』 作:DestinyImpulse
今回は展開に関わる話しで、ちょっと重めになるかも…
体育祭まで残り三日となり、当日に響かない様に放課後の訓練はひとまず終わりを迎え各日の判断の元、放課後を過ごす事となった。
「最後に剣、耳郎、八百万の三人はホームルームが終わり次第、応接室に迎え」
先日の課題の様に午後のホームルームに相澤先生が俺に視線を向けて言ってくる。
俺だけじゃなく…耳郎や八百万までって事は…
「先生それってーー「詳しい話は応接室だ、既に客人を待たせてある」ーー……はい」
八百万も同じ事を思ったのか相澤先生に質問を投げかけるが、続きは応接室だと話を切られてしまう。
そうしてホームルームが終わり、皆が各自自由になるが俺達三人はすぐさま教室を出ると…
「む、剣氏」
隣のB組の教室から出てきた宍田と鉢合わせる。
放課後になってクラスの皆んなと会話する事なく即座に教室を出たって事は…
「宍田も応接室にか?」
「ええ、ブラド先生に直ぐに向かう様に言われましたぞ」
「………この四人って事は…」
「ほぼUSJの一件で間違いありませんわ」
俺、耳郎、八百万、宍田はUSJ襲撃の際に山岳地帯に飛ばされて奮闘した。この四人が集められると言う事は十中八九その件だろう。
応接室で誰かを待たせている為に余計な事はせずに若干早歩きで応接室に向かい、ドアをノックする。
「入っていいのさ!」
「失礼します」
中から聞こえてくる根津校長の声を聞き応接室に入る俺達。応接室には先程聞こえてきた声の主である根津校長の他に……
「やぁ、剣君」
「塚内さん!」
オールマイトの友人であり秘密を知る数少ない人物…塚内警部が居た。根津校長に着席する様に言われ、根津校長と塚内さんと対面になる様にソファーに座る俺達。
「体育祭が間近に迫っているのに呼び出してすまないね」
「いえ、大丈夫です。……俺達四人を呼んだって事はUSJの一件ですよね?」
「ああ、アレからヴィラン連合について調べる日々でね。今回君達に聞きたい話と言うのは……君達が出会った
「「「「!!!!」」」」
折寺中学校の元教師……USJで俺達の前に現れた自殺してしまった
余りの醜悪な姿と狂人じみた言動の奴は耳郎達も忘れる事はできないのだろう、顔には緊張があった。
「彼の言動や思想……何か分かる事について教えてほしい」
「……はい」
当然、拒否する理由もなく俺達はアイツの言動や思想など、覚えている事を洗いざらい話した。
「……酷いモノだね。生徒を贔屓し、それによってクラスで差別が生まれ、結果として追い詰められた緑谷君は生きる事を諦めてしまった。生徒に生きる事を諦めさせるなど、未来ある若者を預かり導く教師として最もしてはならない事だと言うのに己は悪くないと言い張るなんて」
話を黙って聞いていた根津校長の表情には明らかな嫌悪があった。
「そうですね…ヤオモ、じゃなかった八百万の被害者発言に反応してましたし…」
「目に見えて狂人って印象でした……アイツは今どうなっているんですか?」
「刑務所に収監されて我々警察が事情聴取をしているが……違法薬物の摂取が確認されてね、その副作用でコミュニケーションが取れずに難航しているよ」
「「「「………………」」」」
「……ヒーローをやっていれば薬物中毒者、薬物売人と言った薬物事案にも対応する事がある。しっかりと心に留めておくのさ」
あの狂人具合から見てやっぱり違法薬物をやっていたのか……根津校長の言葉通り今後、違法薬物の事件にも当たる時があるかもしれない。
「それで校長先生…何故、彼の話を私達に?確かに他のチンピラヴィランとは毛色が違っていましたが中心人物と言う訳には…」
宍田の言う通り、確かにヤツは他のチンピラと比べて異質だったのは間違いないが所詮は使い捨て、そこまで重要性があるとは思えない。
「………君達はあの自殺事件について何処まで知っている?」
「……無個性の緑谷出久。彼は幼少期から幼馴染のイジメを受け、それが折寺中学校で増長し彼はクラスほぼ全員からイジメを受け、あの外道教師を含めた教員は校内で唯一この雄英に入学できる才能を持った首謀者を贔屓し、イジメを見て見ぬふりをして………頼れる人間が誰一人居ない緑谷出久は最終的に自殺してしまった」
結構詳細を語る俺に耳郎達は驚いていたが、根津校長と塚内さんは特に驚いた様子はない……それもそうだろう、俺とオールマイトが出会ったきっかけがあの事件だ。オールマイトの秘密を知る二人からすれば俺が詳細を調べていても不思議じゃない。
「そうだね、剣君の言う通りだ。自殺が起きた後、警察で詳しい捜査が入り緑谷君をイジめていた生徒は、彼のクラスだけでなく他のクラスでも少数が発覚したんだ」
「………よく分かりましたね」
「…………緑谷君は校舎の屋上から飛び降り自殺をした。時間帯も人の多い放課後で目撃者も多く直ぐに世間に広まった。これだけ事件性が多くなれば警察も早期の原因究明や解決に動かなければならない。故に多くの人材が動いてね、尋問や真相解明に特化した個性持ちを集めた部署を回してもらったよ。……聞いた話じゃ証拠は一つ二つどころじゃなく、かなり参っていた」
…………胸糞悪いな。
「……それだけの不祥事を起こしたのです。それ相応の罰を受けて然るべきですわ!」
「そうだね、彼等には然るべき罰が下されたよ。担任を含め、イジメを黙認した教師達には解雇及び教育権の剥奪、他の教員は数年間の減給、そして3年生の生徒達は深くイジメに加担した者は矯正施設を兼ねた教育機関への強制転校、その他には停学が言い渡されたよ」
………そんで社会的信用を失った外道教師は薬物に走り狂い、ヴィランとなったか…因果応報だな。
「結構な騒ぎだったからね。ウチ等の学校まで噂が広まってたし」
「ああ、耳郎氏も剣氏と同じ静岡県出身でしたな」
耳郎の言う通り、同じ県の中学で起きた事だから噂も広がったし、イジメに関する校内アンケートや特別授業とかやったな。
「さて、長くなったけど本題だ。イジメを黙認した教師陣はともかく、イジメに加担した生徒達の名前や顔写真といった個人情報は秘匿された」
………秘匿?
確かな違和感があるが今は話を黙って聞く事にする。
「彼等のした事は到底許される事じゃない。だけど、彼等もまた君達と同様に若者である事は間違いない。“相手を虐めて自殺させた”なんて肩書きを背負って人生をやり直せる人はそういないさ。馬鹿正直に生徒の名前や顔を指名手配犯の様に晒せば両親は仕事を失い家庭が崩壊…親から暴力を振るわれる事になるか…最悪勘当されてしまうケースもある」
………自業自得と言えばそれ迄だ。
だがそれは何処まで真相を知ろうとも第三者である俺達の無責任な言葉でもある。
「彼等はヒーロー志望と聞いていたが…こんな事実が知られた社会ではヒーローどころか職に就くことすら厳しく、生活が困難になるだけじゃない…マスコミや世間は容赦なく生徒達を追い詰めていく…そうなれば彼らは世間の目を恐れながら細々と生きていかなければならなくなってしまう……」
「………そして最後にはあの外道教師の様にヴィランになって社会に復讐する」
俺の言葉に根津校長は静かに頷いた。
「………ん?確か、イジメをした加害者達って…」
その時、黙って話を聞いていた耳郎が何かを思い出した様に口を開く。それを聞いて塚内さんが険しい表情で語った。
「だが何者かによってネットに生徒達の個人情報やイジメの証拠とも取れる写真や映像が晒されてしまったんだ」
そう…感じた違和感、それは爆豪勝己を含めたイジメの加害者達の個人情報は秘匿されていない事だ。
当時、SNSや動画配信サイトで無個性1人……緑谷出久を相手に個性を使い複数人で痛め付ける折寺中学の生徒を映した防犯カメラや監視カメラの映像がアップされた。
それら等の映像が数えただけでも十数個はあった。
唐突な出来事に掲示板のニキネキ達も戸惑い、皆んなで映像を確認したが……胸糞悪いなんてもんじゃない。特に“ありふれちゃん”や“トマト君”の荒れようは凄かった。
「………当時、何個か見ましたけど…酷いもんでしたよ」
「…ウチもサムネイルがよくある考察系みたいな感じで、学校中で噂になってたから怖い者見たさで見ちゃいましたけど…胸糞悪かったですよ。校内でも問題になって動画を見ない事と、折寺中学の近辺に一人で行かない様に先生達が注意してました」
当時を思い出して苦虫を噛み潰した様に表情を歪ませる俺と耳郎。あの時期は本当に学校中がピリピリしていた。
「今の時期、個性も立派な個人情報の一つ。その個性を使っている所を晒されているなら今の情報社会で特定するのにそう時間はかかりませんわ」
「無論、動画は直ぐに削除はされたけど、このご時世で完全に消すのは不可能でね。今も残っているモノがあるのさ」
そうして彼らは転落人生を送ることとなる…
何人かの生徒や生徒の親族は行った悪行に対しての謝罪文をSNS等に投稿したが、それは炎上を引き起こし余計に状況を悪化させるだけだった。
「そうして完全に周囲の人達から腫れ物扱いされた彼等は…
「え!?」
塚内さんからの言葉に俺達の思考は一瞬だけ止まった。
確かにオールマイトの特訓を受けている傍ら、あの事件の事は俺なりに調べてはいた…無論、イジメを行った生徒達の事もだ。まぁ、無抵抗な人間を差別して集団で自殺する迄追い詰めた奴等の事なんて知りたくもなかったし、手に入る情報もネットの晒し者みたいで興味も無かった。
でも、ある日を境に彼等の情報が出なくなったのを思い出す。あの時は時の流れで収まったのだと思っていたが……
「丁度三ヶ月前になるね…生徒とその家族を含めた約百人の足取りが突如として消えたのさ」
「親戚からの知らせを受けて警察が家宅捜査を行ったところ……どの家にも貴重品や最低限の荷物を持った…所謂、夜逃げの痕跡があった」
「環境に耐えられなくて夜逃げしたって事ですか…でも、ネットに晒されているのなら何処に行っても…」
耳郎の言う通りだ。
例え夜逃げしても今の情報社会でネットに個人情報が拡散されてしまっては何処に行ってもバレる。
「耳郎君の言う通りだ。一般人が警察や世間の目を掻い潜るなんて不可能だ。……何か裏の大きな組織が関わっている」
裏の大きな組織……、オールマイトが平和の象徴として君臨し組織的なヴィラン組織が殲滅された現代で……いや…
「…………ヴィラン連合」
「「「っ!?」」」
俺の呟きを聞いた耳郎達がハッとした表情で俺を見る、今の俺が知る限り今の社会でヴィラン組織と言える存在は奴等しか居ない。一方で根津校長と塚内さんはその通りと言わんばかりに頷いた。
「今の所その可能性が高い、ヴィラン連合のメンバーにはワープの個性持ちが居る。彼等に何からのコンタクトを取って誘導してワープで誘拐。そうすれば最低限の足取りしか残さず、多くの人間を確保できる」
「私達に元教師の話を聞きたかったのは、拉致された人達の手掛かりを求めての事……申し訳ありません」
「いや君達が謝る事じゃない。元教師は完全なる捨て駒、重要な情報を持っている可能性は低かったからね」
そうして他言無用の念を押されて話は終わった。応接室を出た俺達は特に何かを喋る訳でもなく歩を進め…
……… 折寺中学校の前に居た。
目の前の折寺中学校は不気味な程に静かで誰も居なかった。
在校生が放課後に飛び降り自殺した中学などに新しい生徒など来る筈もなく、在校生は漏れなく転校……生徒の居ない学校に価値はなく、そう遠くない未来に取り壊しが起こるだろう。
「ヤオモモと宍田は大丈夫?ウチと剣は家が遠くないけど……」
「心配はいりませんわ耳郎さん」
「ええ、あの様な話を聞いたのです。…こう、何かをしたいと言う気持ちで一杯で、とても我が家に帰っていつもの様に過ごせる心境ではないのです」
耳郎の心配に静かな笑みを浮かべる八百万と宍田。二人も思う所があるのだろう…気休めかもしれないし、自己満足かもしれないが……せめて、緑谷出久の冥福を祈ろう。
道中で買った花を校門脇の電柱に添える。
オールマイトと出会い、黙祷を捧げたあの場所には
「「「「……………………」」」」
俺達も花を添えて静かに手を合わせる。
少しでも何かが違えば、緑谷出久はオールマイトと出会い、雄英で掛け替えのない友と出会い、最高のヒーローになる為の青春を謳歌する。
その事を知るのは、この世界で俺だけ……。でも、きっと耳郎達は俺と同じ事を祈っているだろう……
友に恵まれなかった彼の来世は、良き出会いに恵まれます様に…と…
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同時刻・???
此処には何処にあるかも定かではない場所。至る所に大小様々なコードが絡み合い、もはや足場となり、細長い培養液が入ったカプセルが至る所に設置されて不気味な薄紫の輝きを放ち、この部屋を照らす光源となっている。
もし聖火達がこの光景を見れば目を疑うだろう…
カプセル内部の培養液に浸かっているのは、正気が抜けた目に剥き出しになった脳の怪人……U S Jで暴れた“脳無”なのだから。
「ふふふ、研究は順調そうだね“ドクター”」
「当然じゃ、アレだけの“素材”があるのだ。試したい事を何でも試せる、あんたの“教え子”への玩具にも困らんよ“先生”」
その、脳無を満足そうに見つめる二人の人物。
一人は黒いスーツに身を包んだ“先生”と呼ばれる男性。もう一人は医服に身を包んだ“ドクター”と呼ばれる老人だった。
「それは良い。U S Jでコテンパンにやられて“ 弔”もかなり憤っていたからね、そろそろご機嫌取りをしようと考えていた所だよ」
「U S Jと言えば、保険として渡していた試作品じゃったが…アレはやはり負荷が大きく、此方の制御が外れてしまい駒としては使えん」
そう言ってドクターが取り出したのはU S Jで黒霧が取り出し脳無をT-REXの化け物に変えた禍々しい注射器だった。
「まぁ元々、“本命”のオマケで考えついたモノじゃし大して問題ではないじゃろ。本命の“試作品”もそろそろ完成の目処が立つ」
「それは行幸……集めた甲斐があると言うモノだよ」
「ですな!下位が八割、上位が二割なのは予定通りとは言え肩透かしでしたが最上位に成りえる個体が“二体”いたのは運が良かったと言えますな」
正に悪の親玉とその右腕の科学者の会話とも言える光景……フィクションとして腐るほど液晶越しで見てきた光景は確かな現実に存在していた。
「そうそう…“配合”の件ですが…。……もしかすると、“例の件”。…できるかもしれませんですぞ」
「!。それは本当かい?」
「先生に嘘が通じる訳ないじゃろ。…まぁ、予想通り“本来の計画”通りに進めた方が最上なので、飽くまでも計画が頓挫してしまう時に備えた“予備プラン”ですな」
「勿論だよ。……ふふ、オールマイト。君も“良い後継者”を見つけた様だけどね。僕の運もまだまだ捨てたモンじゃないみたいだよ」
そう不敵に笑う巨悪。
聖火達が進む一方で悪意もまた、着実に大きくなっていた。
END
裏話ですが、先に花を添えたのは爆豪です。彼は更生施設で過ごしながら罪と向き合い、時折り花をたむけています。
そしてヴィラン連合がやったのは…
イジメをした生徒の個人情報のばら撒き → 結果、今度はイジメをした生徒&その家族が迫害 → そうして心身弱った所に“先生”お得意の救世主ムーブで接触 → 君達を不憫に思った、保護したい…とか言って彼等を集めて黒霧で誘拐 → 安価で脳無の素材大量ゲット!
と言う感じです。
そうしてドクター研究が盛んになり、下位なるが脳無も増えてU S Jで元教師が使役していた、と言う訳です。
爆豪はどうしたのかと言うと、当時の爆豪は注目度が高く、監視もあるので、無闇に手を出さなかった訳です。